新たな時代へ
その後、世界では、魔物の数が減っていきます。
魔王は約束通り、新たな魔物を生み出すのをやめたのでした。
ところが、それは新しい社会問題の始まりでもありました。
1つの問題が解決すれば、別の問題が生じる。それが、世界の歴史というものなのです。
歴史は、常に繰り返します。
表面上はその姿を変えながら、根本的には同じ問題を繰り返しながら、その時代その時代に暮らす人々を悩ませ続けるのです。
けれども、それは人類の進化の歴史でもあるのです。
根本的な問題が完全に解決される日は、永遠にやってこないかも知れません。それでも、少しずつ少しずつ、人々は世界を変え、暮らしやすく、改善しながら生きているのですから。
勇者アカサタが暮らすこの世界も例外ではありません。
以前の問題が解決され、新しい問題が生じたならば、またそれに対応して生きていけばよいのです。
ある意味で、それは“世界を救う”ことになるのでしょうが、同時に“この世界を破壊する”ということでもあります。
その行為・その現象をどう捉えるかは、それを見ている人の視点によって変わってくるものなのです。
勇者アカサタが行ったコトも同じでした。
ある種の人々にとって、それは世界を平和に導く行為でしたが、別の人々からすれば、世界を破壊する行為に他ならなかったのです。
いずれにしても、いつまでも変わらぬ世界などありはしません。
たとえ、一時、止まっているように見えたとしても、停滞しているように思えたとしても、ゆっくりゆっくりと世界は変わり続けているのですから。
変化こそが唯一の真実。それを止めることができる者など、どこにも居はしません。
この世界においても、それは同じ。
1つの時代が終われば、新しい時代が始まる。
1つの価値観が破壊されれば、別の価値観が生まれる。
それを繰り返しながら、時は流れていくのです。
こうして、世界は新たな時代へと突入していきます。
~第1部 完~