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風のイースティンとの再戦

 風の城にて。

 ここは1年中、風の吹きまぬ土地。風力発電の設備でもあれば、効率よく電力が得られそうです。


 勇者アカサタと四天王の1人である“風のイースティン”が戦っています。

 流れるような動きからアカサタの剣が振り下ろされると、それを同じく剣で受け止めるイースティン。

 キンッ!キンッ!キンッ!と、何度も剣と剣がぶつかり合います。


 とっさに背後に飛びすさり、距離を取るイースティン。

 そこに、勇者アカサタの放った光の矢が飛んできます。

 かろうじて、それをけると、感心しながら風のイースティンが言いました。

「どうした?この短期間に?やるようになったじゃないか」

「“男子3日会わざれば刮目かつもくして見よ”ってな」と、勇者アカサタ。

「フッ…難しい言葉を知ってるな」


 再び、接近すると、今度は手にした“稲妻の槍”で攻撃を始める勇者アカサタ。さらに、槍での攻撃の合間に、炎の魔法での攻撃をはさみます。

 それらの攻撃を華麗かれいにかわしていく風のイースティン。再度、距離を取ると、なにやら呪文を唱え始めます。

 すると、何体もの風でできた生き物が空中に生まれていきます。

 キツネでしょうか?あるいは、オオカミ?


 風でできた生き物は、勇者アカサタに向って次々と襲いかかります。

 それらを一体ずつ、“気の力”を込めながら手にした稲妻の槍で叩き潰していくアカサタ。一撃一撃が強力な威力を誇っています。瞬く間に、敵を撃退してしまいました。


 その間にさらなる呪文を唱え終わっている風のイースティン。

 巨大な竜巻が巻き起こり、勇者アカサタへと向って進んでいきます。


「フワリン!」


 そう唱えると、アカサタの体は天高く昇っていきます。

 軽々と竜巻を避け、イースティンに向って魔法を放ちます。

 何本もの稲妻が、剣先から放たれ、敵へと向っていきます。今度は、避けきれずに防御態勢を取り、それを受けるイースティン。全身にビリリッと電流が走ります。


 間髪入れずに、接近してくる勇者アカサタ。

 連続で叩き込まれる槍での攻撃に、風のイースティンは防戦一方!

 どうやら、接近戦では完全にアカサタの方に分があるようです。


「これだけの力を持ちながら…」

 攻撃を受けながら、そう呟くイースティン。

「ン?」

「これだけの力を持ちながら、なぜ、理想のために戦おうとしない?人々の幸せのために生きようとしない?」

「してるさ!理想のため!人のため!世界のため!こうして戦っているじゃないか!」

 アカサタの叫びに、イースティンは即座に返します。

「違うね!こんなもの人のためじゃない!理想とは、ほど遠い!!君がやっているのは、単に周りの人間たちに流されているだけ!思想も理想もない!目の前の感情に揺られているだけに過ぎない!」

 そう言いながら、急にイースティンの剣技が鋭さを増します。スピードは増し、威力も上がっていきます。明らかに、そこには“熱き思い”が込められているのでした。


 そうして、戦っているアカサタ自身も、それを感じ取りつつありました。

「なんだかわかんねえが…やるじゃねえか!嫌いじゃねえぜ!そういうの!」

 そう言うと、アカサタの方もさらに集中力を高めます。手にした槍を剣に持ち替えると、魂を込め、敵に向っていくのでした。


         *


 勇者アカサタと風のイースティンが一騎討ちをしている間、戦場の他の場所でも、激しい戦闘が続いています。


 暴れ竜リベロ・ラベロは、何人もの魔術師により、その動きを封じられていましたが、それ以外はおおむね人間軍の方が優勢に戦いが進められていました。


 突然、戦場に爆音が響きます。

 賢者アベスデの放った爆発魔法が、魔物たちの群れの中心で発動した音でした。圧縮された可燃物質と酸素が混じり合い、小規模でも大きな威力を発揮するのです。

 ダイナマイトや爆弾に近い効果を発する魔法と言えるでしょう。


 傷を負った魔物たちに回復のすきを与えないように、人間の兵士の群れが雪崩なだれれ込んでいきます。

 手にした剣や斧で敵を切り裂いていく人間の兵士たち。

 最近では、武器の性能も上がり、人間界にも高度な戦闘技術が広まって、以前相手にしていたような魔物であれば、雑作もなく倒せるようになってきていました。


 時代は変わりつつあったのです。

 もはや、魔王が裏から世界を支配する時代ではなくなりつつありました。

 人間たちは人間たちで、独自に進歩を続け、新しい技術や能力を身につけられるようになってきていたのでした。

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