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新生勇者アカサタ

 戦場は、魔王軍に不利な戦況が続いていました。

 暴れ竜リベロ・ラベロとアイスドラゴンの戦いは、互角でありました。が、それ以外の戦いは圧倒的に勇者軍の方が優勢でした。


 いかんせん、賢者アベスデの能力が高すぎて、普通の魔物たちでは相手にならないのです。数は多くとも、賢者アベスデやスカーレット・バーニング・ルビーなど、強力な魔法を扱う人間たちの前に、次々に倒されていくのでした。


 そこへ、勇者アカサタとの戦いを終えて、氷雪のノーザンクロスが戻ってきました。

 これにより、一気に情勢は変わります。

 さすがは、“魔王の4本の腕”としょうされた者だけあります。並の兵士では、全く歯が立ちません。逆に、今度は人間たちの方が次から次へと討ち倒されていくのでした。


         *


 ノーザンクロスの相手をし始める賢者アベスデ。

「イワンよ!勇者イワンよ!」

「その名はとうの昔に捨てましたぞ、アベスデ殿」と、斧をるう手を止めずに答えるノーザンクロス。

「ならば、現在の名で呼ぶとしよう。氷雪のノーザンクロスよ!」

「なんですかな?」

「お前の理想とやらは、実現されたのか?」と、杖を振り、天から稲妻を呼び落としながら尋ねる賢者アベスデ。

道半みちなかば…といった所でしょうか?けれども、着実に理想に向っておりまする」

「果して、本当にそうかな?この世界のありさまを見ても、そう言えるのか?」

「もちろん!むしろ、あなたのやり方の方が世界を駄目にする。役立たずを大量に生み出してしまう。そうでしょう?」

 会話をしながらも、2人の間では魔法や物理攻撃の応酬が続いています。

 お互いに持論を展開し、相手の攻撃をうまく防ぎ、戦いの方も会話の方も決着はつきそうにありません。


 そこへ、1人の人物が現われました。


         *


 現われたのは、勇者アカサタ。もちろん、女勇者ハマヤラの姿はありません。

 けれども、他のみんなは、誰もその理由を知らないのです。


「ノーザンクロスとか言ったな…」

 勇者アカサタは、ポツリとつぶきます。

「ほう。戻ってきたか。けれど、何度やろうが同じコトよ。今の貴様の実力では…」

 と、氷雪のノーザンクロスが言いかけたところに光の矢が飛んできます。勇者アカサタが放ったものです。

 それを余裕の表情で、大きな盾をかざし受け止めるノーザンクロス。

 ところが、光の矢はその強靭きょうじんな盾を貫き、矢の先端が盾の裏側まで突き抜けています。完全に貫通こそしなかったものの、明らかに盾の防御力を上回る攻撃力を秘めています。

「なっ…」

 驚きの表情を隠せない氷雪のノーザンクロス。


 光の矢は、次々と飛んできて、盾へと突き刺さっていきます。

「こんな…」

 “先ほどまでとは、明らかに攻撃力が違う。しかも、さっきまでは、弓矢での攻撃などなかった。能力を隠していたというわけか?まだ、本気ではなかったということか?なめられたものだな、この氷雪のノーザンクロスも…”


 ギリリ…と歯ぎしりをすると、ノーザンクロスは、魔法で吹雪を起こします。

 周囲には、雪が降りしきっていますが、それに加えてさらに冷気での攻撃。これには、勇者アカサタもたまりません…となるはずなのですが、身の周りを暖かい空気の壁で守り、全く効果を成していません。

 そのまま、静かに歩いて近づいてくる勇者アカサタ。


 賢者アベスデは、黙って2人の戦いを見守り、手を出そうとはしません

“明らかに何かが違う。まるで別人のようじゃ。何が起こったのじゃ?この勇者アカサタに?”

 言葉にはせず、心の中でそう考える賢者アベスデ。


 トンッ…と、軽く跳ね上がると、アカサタは敵との距離を一気に詰めます。

「終わりだよ…」

 ノーザンクロスの耳元で静かにつぶやくアカサタ。

「何が、終わりなもの…」

 そう言いかけるノーザンクロスの視界から、アカサタの姿が消えます。

 次の瞬間には、背後に回り込んだアカサタの“稲妻の槍”によるキツイ一発を背中にびてしまいました。


「グエエエエエ!!」

 叫びながらも、とっさに冷気で身を守るノーザンクロス。


 けれども、勇者アカサタの攻撃は止まりません。

 中距離から放たれる“光の矢”の連射。大きな盾をかざしてその攻撃を防ぐノーザンクロスですが、矢は次々と盾に突き刺さっていきます。

 そうして、ついに手にした盾はボゴッという音を立てて、くだけ散ってしまいました。

「な…に…!?」

 明らかに驚愕きょうがくした表情を見せる四天王の1人ノーザンクロス。


 今や、アカサタはハマヤラの能力を受け継ぎ、さっきまでとは別人のようになっているのです。

 いわば、アカサタ=ハマヤラ!


 近距離・中距離・遠距離と、弱点もありません。

 もはや、ノーザンクロスごときでは、相手にならないのでした。

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