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氷の竜

 降りしきる雪の中、灰色の空へと向って飛び出していく巨大な影。

 それは、暴れ竜リベロ・ラベロに負けずとも劣らぬ大きな体をした1匹の竜でありました。それも、全身が鮮やかな薄い水色。氷の竜。アイスドラゴン。


 遥か上空まで飛び上がると、一転して、今度は地面へと向って滑空かっくうするアイスドラゴン。

 そうして、そのまま、吹雪ふぶきの息を吐き出します。


 地上では、暴れ竜リベロ・ラベロが、それを迎え撃つ形で灼熱しゃくねつの炎を吐き出します。

 空中でぶつかる炎の息ファイアブレス氷の息アイスブレス。どちらの威力いりょくまさるわけでもなく、空中で爆発!


「この不利な土地に加えて、あんな奴まで出てきやがって!大丈夫なのかよ!?この戦い」

 文句を垂れている勇者アカサタに向って、女勇者ハマヤラのかつが飛んできます。

「ウダウダ言ってる暇はないわ!とにかく、戦うしかないでしょ!」


 さいわい、暴れ竜リベロ・ラベロの炎によって、正面の扉は破壊されています。

 次から次へと城の敷地内へと飛び込んでいく、勇者アカサタひきいる兵士たち。


         *


 氷の城の中からは、雪地に対応した魔物たちが群れをなして現われます。

 口から吹雪を吐き出す“雪山トロール”や、雪だるま、シロクマ、雪男などなど。それに、手足の指が長く発達したスノーゴブリンも、無数に湧いてきます。


 この程度の敵、勇者アカサタはもちろんのこと、引き連れてきた兵士や魔術師たちにとっても、それほどの強敵というわけではありません。

 けれども、あまりにも数が違い過ぎるのです。その上、雪地を行軍してきた疲れても溜まっています。

 さらには、頼みのつなのリベロ・ラベロも同格のアイスドラゴンと交戦中。


「とにかく、数をこなしていくしかないようだな!」

 そう叫ぶと、先頭に踊り出し、目の前に立っていたスノーゴブリンから始めて、片っ端から叩き斬る勇者アカサタ。


 そこへ、1人の男が立ちはだかります。

「お前の相手は、そやつらではない!そのようなザコを相手にしていて、どうする?」

 現われた途端、そうあおってきたのは、四天王の1人である氷雪のノーザンクロスでした。

「何者!?」と、尋ねる勇者アカサタ。

「我が名はノーザンクロス。氷雪のノーザンクロス。この地を預かる、四天王の1人。魔王様の4本の腕の1本である!!」

 そう名乗りを上げると、氷雪のノーザンクロスは、勇者アカサタの前に飛び降りると、こうささやきました。

「勇者アカサタよ。お前のコトは、よく聞いている。ここは正々堂々1対1で決着をつけようぞ」

 アカサタは、それを聞くと、2つ返事で答えます。

「よっしゃ!望むところよ!オレは、そういう方が得意なんだよ!」


 氷雪のノーザンクロスは、サッと勇者アカサタの手を取ると、ガッチリとその手を握り、そのまま仲良く2人で飛び上がり、どこか遠くへと飛び去ってしまいました。

「駄目よ!アカサタ!相手の作戦に乗っては!」という女勇者ハマヤラの叫ぶ声も聞かずに…


         *


 賢者アベスデは、その様子を眺めながら、言いました。

「さすがはイワン。元、私の弟子よ。昔から、あやつは、ああいう男じゃった。“誇り”とか“正々堂々”とか、そういうのが好きな男じゃったよ」

「そんなコトを言ってる場合ですか!」と、女勇者ハマヤラに反論されます。

 けれども、アベスデは、それに対してもこう返します。

「しかし、これは、かえって好都合。この城で最強であろうあやつがおらぬ今、他の魔物を一掃するのはわけはない。いずれにせよ、あやつ程度を倒せぬようでは、魔王を倒すことなどかなわぬ夢。アカサタも、そこまでの男だったと諦めるしかない…」

 それを聞いて、女勇者ハマヤラは一言。

「バカ!!」と叫ぶと、勇者アカサタと氷雪のノーザンクロスの後を追っていったのでした。

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