城塞都市跡での決戦!!
勇者アカサタの号令に従って、魔物の生産工場と化した城塞都市跡へと突入する兵士の群れ!
それに対抗するかのように、オークやゴブリンなど人型の魔物が、次から次へと湧いて出てきます。
さらに、その背後からは中型・大型の魔物たちが。トロールやワーム、ワイバーン、合成生物であるキマイラなどなど。いくらでも現われます。
けれども、勇者の軍勢には、体長数十メートルにも渡る巨大な竜リベロ・ラベロがついているのです。これまでの怠けっぷりを晴らすかのように、暴れ回り、破壊の限りを尽くしまくります。
巨体を揺るがし、その長く重い尾を振り回し、口から極炎の炎を吐き出すリベロ・ラベロ。敵は、アリンコのように吹っ飛んでいき、紙のように燃えていきます。
人間たちは、リベロ・ラベロの打ちもらした敵を、各個撃破にかかります。
勇者アカサタと女勇者ハマヤラの前にも、2人の敵が現われました。
「私は、ヌメリ」
「私は、ナメリ」
『2人合わせて、ヌメリナメリ!!』と、2人の敵が声をハモらせて宣言します。
若い女性の姿をした人型の魔物です。魔族の一種だと思われます。
見ると、2人は、見た目はそっくり!髪型などが少し違っている程度。おそらく双子なのでしょう
ヌメリとナメリは、遠距離から魔法での攻撃を放ってきます。
風の魔法と炎の魔法が、同時に勇者アカサタに迫ります。
「ハード・エア・ウォール!!」
女勇者ハマヤラがそう唱えると、勇者アカサタの周りを硬い空気の壁が覆います。
簡単に敵の攻撃を防いでしまう空気の壁。
「ならば!」と、ヌメリナメリは、武器を剣に持ち変えて、近接戦闘を挑んできます。
けれども、接近戦で勇者アカサタにかなうはずがありません。
瞬く間に、弾き飛ばされてしまうヌメリとナメリ。
「チッ…仕方がない。それならば!!」
そう言って、今度は、目標をハマヤラに変更する双子の姉妹。
ハマヤラは、“飛行の魔法”を使って、その場から遠のきます。
それを追いかけるヌメリナメリ。
さらに、それを追いかける勇者アカサタ。
一転!
女勇者ハマヤラは、きびすを返し、反対方向に飛び上がると、双子の姉妹の遥か上空を飛び越えて、勇者アカサタの背後まで移動し、地面に着地します。
「アッ!」と、ヌメリナメリが思った時には、時すでに遅し。
反転して、後ろを振り返った時には、勇者アカサタの顔が迫ってくる所でした。
一閃!
アカサタの見事な剣技が決まり、ヌメリとナメリの2人は、その場に討ち倒されてしまいました。
*
そのような戦いが、各地で行われています。
数では圧倒的に有利な魔物たちですが、暴れ竜リベロ・ラベロの活躍もあって、徐々にその勢力は衰えていきます。
そこへ、四天王の1人、愛のウエスタニアが姿を現します。
「私は、魔王ダックスワイズ様を支える4本の腕の内の1本!ウエスタニア!愛のウエスタニアよ!」
そう名乗りを上げると、得意の弓を使って、勇者軍の兵士を射抜いていきます。
ウエスタニアのその手には、矢は握られていません。
弓から、自動的に新しい矢が生み出されていくのです。
そうして、ズバ抜けた精度で、次々と人間の兵士を撃ち抜いていくのでした。
さらに、不思議なコトが起こります。
矢での傷を負った兵士たちは、1度意識を失うと、今度は味方に向って攻撃を始めたのでした。
「魅了の魔法じゃな」と、賢者アベスデが言います。
「魅了?」と、問い返す勇者アカサタ。
「そうじゃ。奴の名はジェーン。かつて私の弟子じゃった。その頃から天才的な魔術の才能を発揮しておったが、その中でも特に得意としておったのがアレじゃ。魅了系の魔法。その術にかかった者は、ジェーンの味方となり、攻撃を始める」
その姿を見つけたウエスタニアが、遠くから声をかけてきます。
「ア~ラ、アベスデ様。おひさしぶりね」
それに対して、こう答える賢者アベスデ。
「ジェーン!ジェーンよ!なんと、憐れな姿になりおって…」
即答する愛のウエスタニア。
「その名で呼ばないで!」
「なぜじゃ?かつて、お前は女勇者ジェーンとして、共に魔王を倒そうと戦った仲ではないか」
「その名で呼ばないでって!私は、その名前を捨てたのよ!今や、魔王様の4本の腕の1本として活躍している。もはや、必要のない名よ!」
「ジェーンか。えらく地味な名前だな」と、勇者アカサタが呟きます。
「名前のコトは言わないで!それよりも、アンタ、勇者アカサタでしょ?」と、ジェーン…いえ、愛のウエスタニア。
「そうだけど。それが、どうした?」
「アンタ、魔王様がいたく気に入ってたわよ。どう?私たちの仲間にならない?私たち魔王の4本の腕に加わって、5本目の腕になるっていうのは?」
「ケッ…何が5本目の腕だよ。股間の腕かっつーの!」
アカサタの、その返答を聞いて、顔を赤らめるウエスタニア。
「どうやら、やはり、説得は無理なようじゃな…」
賢者アベスデが、そう言った瞬間でした。愛のウエスタニアが、巨大な魔法を放ったのは。
ウエスタニアの放った魔法は、大きな光の玉となって、暴れ竜リベロ・ラベロへと向っていきます。そうして、巨大な竜の体を包み込むと、その意識を支配してしまったのです。
クルリと、その長い首を背後に向けるリベロ・ラベロ。そうして、兵士たちに向って、その口から極炎の炎を吐き出しました。
暴れ竜リベロ・ラベロが、敵となった瞬間でした。