ニート化するリベロ・ラベロ
暴れ竜リベロ・ラベロは、以前と比べてもニート化しつつありました。
勇者アカサタにつれられて戦場に行ったとしても、全く働こうとしないので、ついに冒険につれていってもらうことさえなくなっていたのです。
そうやって、アルファベの街の外に寝転がって、羊や牛など与えられる食料をつまんでは、無意味な日々を過ごしていました。
そんなある日のコトです。
冒険者たちの間で、「ついに、魔物の生産工場が見つかったらしいぞ!」という声が上がり始めたのは。
そうして、リベロ・ラベロのもとにも、勇者アカサタがやって来て言いました。
「次は、これまでになかったくらい大がかりな作戦になるらしい。さすがに、今回は、お前にも協力してもらうぜ」と。
リベロ・ラベロは、「めんどくさいなぁ」と思いつつ、こうも考えました。
“ま、これまで、随分とウマイものも食わせてもらったし、この辺が働きどころかな?1度くらい、恩を売っておくのも悪くはないだろう”
そうして、こう答えました。
「いいだろう。で、何をすればいい?」
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暴れ竜リベロ・ラベロの周りに、冒険者一同が集まっています。
「難しいコトは何もありゃせんよ。お前さんには、徹底的に暴れてもらえれば、それでよい」
賢者アベスデが、リベロ・ラベロに向って、そう言います。
「今度の敵の拠点は、これまででも最大級のものじゃ。規模だけではない。事前に敵地に潜入した者からの報告によると、無数の魔物が生み出されておるらしい。そこから、世界中へと魔物を運んでおるようじゃな」
アベスデの言葉を聞いて、勇者アカサタも言います。
「そこで、ジャンジャカジャンジャカ、新しい魔物が作られてるってわけだな!じゃあ、そこを破壊してやれば、これ以上、魔物は増えなくなるってわけだ」
「まあ、そこだけではないじゃろうがな。他にも何ヶ所か、似たような施設はあるじゃろうが、それらを全て潰せば、とりあえず世界は平和になるじゃろう」
「それが終われば、残るは魔王とその配下の者だけってわけね?いよいよ、ゴールが見えてきたじゃないの」と、スカーレット・バーニング・ルビー。
こうして、巨大な竜リベロ・ラベロを引き連れて、勇者アカサタたち冒険者の一行は、“魔物の生産工場”を目指して出発したのでした。
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美しきハープ奏者パールホワイト・オイスターは、迷っていました。
「今回の戦いは、これまででも、最も激しいものになるだろう!」そう聞かされていたからです。
“私の目的は、あくまで史上最高の演奏家になること。そのために、戦場での空気に触れておきたかっただけ。命を落とすような戦いに、これ以上参加する意味があるだろうか?”
そんな風に考えていました。
けれども、散々迷った末、戦いに参加することに決めました。
“いいえ、命なんて惜しんでいては、先へは進めないわ!芸術も戦闘も、共通するモノがある。ギリギリの世界で、極限まで自分を高める。そうしてこそ始めて見えてくるモノがある!”
そう決心し、危険な戦場へと身を投じる決心をしたのです。
*
同じ頃、女勇者ハマヤラも考えていました。
“なんだか、今回の戦いには、嫌な予感がする。もちろん、敵が強いとか、規模が大きいとか、そういうのもあるでしょう。でも、それとは別の何か。ハッキリと言葉にはできないけれども、虫の知らせとでもいうべきものが…”
けれども、その正体はわかりません。
ボンヤリとした嫌な感覚に過ぎないのです。単なる気のせいかも知れません。大きな戦いを前にして怖じ気づいているだけなのかも。
結局、最後には、こんな風に自分に言い聞かせ、奮い立たせました。
“迷ったり悩んだりしていても仕方がない!私は私にできるコトをやるだけ!役割を果たすだけ!最後の最後の瞬間まで!”
こうして、それぞれの胸に思いを馳せて、決戦の時は迫ります。




