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未来の可能性

 賢者アベスデを、タクシー代わりに使う勇者アカサタ。

 瞬間移動の魔法で、芸術の街ラ・ムーとミルキーレースの街を往復します。

 おかげで、ビュ~ンッと飛んで行って、ビュ~ンッと飛んで帰ってくるコトができました。

「まったく、私をこんなコトに使いおるとは…」

 ブツブツ文句を言いながらも協力してくれる賢者アベスデ。


 さっそく、イロハ・ラ・ムーさんのお屋敷へと向う3人。もちろん、勇者アカサタと賢者アベスデ、それに少女ラズリー・ラピス・ラビアの3人です。

 少女の手には、山ほどの絵が抱えられています。


「フ~ム。なるほどな…」

 丹念たんねんに、渡された絵を精査せいさしていくイロハ・ラ・ムーさん。

 ドキドキしながら、ジッと黙って待ち続けるラズリー・ラピス・ラビア。

「で、どうなんだよ?」と、しびれを切らして尋ねる勇者アカサタ。

「まあまあ、こういうものは時間がかかるものじゃよ。しばらく待ちたまえ」と、余裕の表情のアベスデ。


 しばらくの時が過ぎ、ついに、イロハ・ラ・ムーさんが口を開きました。

「結論から言うと…」

「結論から言うと?」と、勇者アカサタが繰り返します。

「結論から言うと、天才だな」

 おお~!と声を上げる、他の3人。

「いや、そう断定するには早計か。けれども、その可能性はある。充分にあると思うね」

 伝説の画商とうたわれたイロハ・ラ・ムーさんは、そう言います。そうして、さらに言葉をぎます。

「技術の方も、なかなかだ。この年齢にしては、断トツだよ。けれども、それは重要ではない。このくらいの技術ならば、誰でも訓練で到達できる領域。それよりも、突出しているのは“感性”の方。これは…たぐまれなる逸材いつざいかも知れない」

 それを聞いて、ラズリー・ラピス・ラビアは、涙を流しそうになるくらい嬉しそうにしています。泣いているのか笑っているのか、よくわからない表情です。


「どうだい?よければ、私の元で暮らしてみないかい?」と提案してくるイロハ・ラ・ムーさん。

「えっ?」と、驚いた表情に変わるラズリー・ラピス・ラビア。

「この街ならば、あらゆる画材がそろっている。それらを自由自在に使うこともできる。そうして、新しい絵に挑戦してみるといい。芸術家も大勢住んでいる。君の師や先輩やライバルとなる者も見つかるだろう。そうやって、刺激を受けて、もっともっといい絵を描いてくれないか?」

「ボ、ボク…」と、アワアワする少女。

「駄目かな?」

「いや、駄目だなんて、そんな。ただ、おうちの人がなんて言うか…」

「それは、そうだな。では、1度、お家の人に尋ねてきてもらおうか。無論、私もうかがわせてもらうよ。これだけの逸材、みすみす失わせるわけにはいかないからね」

「わ、わかりました…」

 こうして、イロハ・ラ・ムーさんは、ミルキーレースにあるラビア家のお屋敷を訪ね、ラズリーの家族を説得をしたのです。


         *


 説得は意外と簡単に成功しました。

 元々、家族からは、あまり必要とされていなかったラズリー・ラピス・ラビアです。ラズリーの母親も、「偉大な芸術家になれる可能性がある」と聞いて、喜んで応援してくれました。


 イロハ・ラ・ムーさんのお屋敷に預けられ、芸術の街で心ゆくまで絵の勉強をするコトができるようになったラズリー・ラピス・ラビア。

「ほんとに!ほんとにありがとうございました!それもこれも、みんなアカサタさんのおかげです!ボク、立派な画家になるので!」

 イロハ・ラ・ムーさんのお屋敷の前で、勇者アカサタは、そう言われました。

「なんのなんの、オレは大したコトは何もやってないって」と、珍しく謙遜けんそんして答えるアカサタ。実際、そんなに大したコトはやっていないんですけどね。

「この子には、未来の可能性がある。正しい環境に置いて、自由に筆をふるわせてやれば、きっとこれまでになかったようなとんでもない作品を世に生み出すコトだろう」と、イロハ・ラ・ムーさんも太鼓判たいこばんを押してくれます。

「よかったな!じゃあ、がんばれよ!」

 そう言って、風のように去っていく勇者アカサタ。

 そうして、心の中で「フフフ…かっこよく決まったな!」などと自画自賛じがじさんするアカサタでありました。

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