オベベ村
さて、そうこうしている内に、勇者アカサタたち冒険者の一行は、ヌーメア平原の手前にある“オベベ村”に到着しました。
村の長は、両手を広げて歓迎してくれます。このオベベ村も、暴れ竜リベロ・ラベロの大きな被害を受けていたからです。
冒険者たちにリベロ・ラベロを退治してもらえれば、これほどありがたいコトはありません。
アカサタたちが、村長の家へと入っていくと…
「さあさあ、どうぞどうぞ。何もない村ではありますが、食べ物だけは豊富なもので」
そう言って、さっそく特製の鍋を振る舞ってくれます。
鍋には、地元で取れた牛や羊などのお肉や、様々な種類の野菜に加えて、お米を炊いた物が入っています。さらに、たっぷりと唐辛子が使われているのですが、ヨーグルトをかけて食べるので、思ったほど辛みを感じさせません。
「ウ~ム…うめえな、こりゃ!」と、勇者アカサタが相変わらずのボキャブラリーの少なさで感想を述べます。
ゲイル3兄弟や、賢者アベスデも、舌鼓を打っています。
対して、女性陣は苦手そう。味はともかくとして、見た目は、あまりよくないのです。
「これに、ヨーグルトをねぇ…」
そう言って、スカーレット・バーニング・ルビーなどは、最初は嫌そうにしていました。が、実際に食べてみると、それなりに気に入ったようです。
女性の中でも唯一の例外は、女海賊マリン・アクアブルーで。彼女は漁師たちの間で育ってきたこともあり、この手の料理には慣れてしました。それどところか、食べる物があるだけでも、ありがたいと思っていたのです。
「いいね!こういう郷土料理!アタイも結婚したら、ダンナやや子供にこういう料理を作ってあげたいわ!」などと言っています。
それを聞いて、村長の妻は、笑顔に変わります。
そうして、「じゃあ、後で作り方を教えてあげますね」などと嬉しそうに語るのでした。
*
一通り食事も済むと、いよいよ本題に入ります。
「リベロ・ラベロの奴も、長い間、静かに暮らしていたんですけどね…」と、村長は話し始めます。
「伝承によると、この数百年は、おとなしくしておったようじゃ。それ以前は、この近隣だけではなく、世界中を飛び回り、暴れまくっておったらしいが」と、村の年寄りも語ります。
ドラゴンというのは、長生きなもので。数百歳など若い方。数千年から、中には1万年以上も生き続けている者も存在するという話です。
「急に暴れ始めたってのも、おかしな話じゃないか?何か理由があるんじゃないか?」と、勇者アカサタは疑問を呈します。
「理由?たとえば、足にトゲが刺さったとか?あるいは、人間たちが悪さをしたとか?」
スカーレット・バーニング・ルビーのその言葉に、村長が答えます。
「わたくしどもも、そう思ったのですが。なにしろ、あの暴れっぷりです。原因を探ろうにも、それどころではないのです」
「フ~ム…では、その原因が判明すれば、戦わずに済む可能性もあるわけじゃな」と、賢者アベスデ。
「もちろん!けれども、それは至難の業かと…」と、村長。
しばらくの沈黙の後、勇者アカサタが元気に叫びました。
「とりあえず、1度、会いに行ってみようぜ!そのリベ…なんちゃらっていうドラゴンによう!『こんにちは~♪ご機嫌いかがですか~?』ってあいさつして、それで通じないようなら、殴り合いよ!男同士が殴り合えば、それはそれで仲良くなれるかも知れねえしよ!」
「そんなに上手くいくかしら?」と、女勇者ハマヤラ。
「ま、何もせずに指をくわえておるよりかは、マシかも知れんな。動いてみて、できる限りのコトを試してみるのは、悪くはないものじゃよ」と、賢者アベスデもアカサタの意見に賛同します。
こうして、本格的な戦闘をする前に、1度、暴れ竜リベロ・ラベロの住み家を訪れることに決まりました。




