暴れ竜、退治へ
街の酒場に、勇者アカサタたち、いつものメンバーが集合しています。
勇者アカサタ、女勇者ハマヤラ、賢者アベスデの他に、ゲイル3兄弟、炎の魔法の使い手スカーレット・バーニング・ルビー、女海賊マリン・アクアブルー。それに、今回は、ハープ奏者パールホワイト・オイスターの姿もあります。
「ま~た、前みたいに敵がどこに隠れてるのか、わかんないわけじゃないだろうな?また面倒な探索から始めるなんて嫌だぜ」と、勇者アカサタがワガママを言っています。
「大丈夫じゃ。今回は、敵の姿はハッキリしておる」と、答える賢者アベスデ。
どうやら、次の敵地に攻め入る算段をしているようです。
「次の目的地は、東方の街イル・ミリオーネよりも、さらに東に位置するヌーメア平原じゃ。そこに住み着く暴れ竜リベロ・ラベロを退治に行く」
賢者アベスデの言葉を聞いて、ちょっと嬉しそうに答える勇者アカサタ。
「お?ドラゴン討伐か。本格的なファンタジーっぽくなってきたじゃないか~」
「暴れ竜リベロ・ラベロっていうと、最近、噂になってますよね?周辺各国を荒らして回ってるって…」と、女勇者ハマヤラ。
「あたしも聞いたコトあるわ。元々、そんなに凶暴でもなかったのに、最近になって急に性格が荒くなったって」
スカーレット・バーニング・ルビーも言います。
暴れ竜リベロ・ラベロ…
それは、全長数十メートルにもなる巨大なドラゴン。その昔、世界を破壊して回ったとも伝えられていますが、ここ数百年はおとなしく暮らしておりました。それが、最近になって再び暴れ始めたらしいのです。
さて、一体、何があったんでしょうね?
「今回は、周辺各国と共同戦線を張るコトになった。それほど、ヌーメア平原の周りの国々は困り果てとるわけじゃな」と、賢者アベスデ。
「そんなの別に必要ないだろう?オレたちさえいれば、ドラゴンだろうが、宇宙の支配者だろうが余裕のヨッちゃんユー君よ!」と、なめてかかる勇者アカサタ。
「まあまあ、そう言わずに兄貴」
「そうそう。味方は多いに越したコトはないですからね」
「イザという時に、何の役に立つかわからないっすよ」
そう、ゲイル3兄弟もなだめにかかります。
「ケッ!烏合の衆が、足手まといにならなきゃいいけどな」と、アカサタは、まだ言います。
「あまり油断せん方がよいぞ、アカサタよ。今回は、これまでの敵とはケタが違うからのう。どうしても無理そうなら、私も手を貸すが。まあ、とりあえずは、お前さんらだけでやってみるがよい」
そう、賢者アベスデに言われ、一行は旅の準備を始めました。
*
暴れ竜リベロ・ラベロが住むヌーメア平原近くまでは、船で向います。その後、陸路に切り換え、ヌーメア平原の手前にある“オベベ”という村に宿泊することになっていました。
その途中の船の中で、スカーレット・バーニング・ルビーは考えます。
「果して、このような戦いに意味があるのだろうか?今回は、ドラゴン退治。その後は、また魔王の手下たちを倒して回る。最後には、魔王そのものの討伐。それが終わったら?」
それが終わっても、また別の敵が現われるかも知れない。もしかしたら、人間同士で争うようになるかも。どうして、こんなコトになってるんだろう。もっと平和に、安全に、幸せに生きていけないものなのかしら?
かといって、力ある者や攻めてくる者に対して、無力でもいけない。何の抵抗もせず、ただ黙ってそれに従うだけ。あるいは、指をくわえて見ているだけ。それは、もっと意味がない。
攻撃してくる者がいるならば、それに対抗できるだけの能力を自分でも身につける。そうして、必要に応じて戦う。それは、大切なコト。とてもとても大切な…
そんな風に考えるのでした。
そうして、海を眺めながら、こう呟きます。
「こんな時代に生まれたコトを、“運が悪かった”と受け入れるしかないのかも知れないわね…」
願わくば、次の時代は平和であらんことを。
あたしの子供や孫の世代には、このような戦いを残さないようにしなければ!そのためにも、あたしは、あたしにできるコトを精一杯やり遂げる!そうして、生き残ってみせる!生き残って、結婚して、幸せな家庭を築くのよ!
そう、1人で決心するスカーレット・バーニング・ルビーでありました。




