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王様と大臣

 さて、ここで場面が変わって、ある国の王様の話。

 勇者アカサタに冒険の品を渡してくれた王様です。


 お城の密室で、王様と大臣が、こんな会話をしているのが聞こえてきます。

「魔王の脅威が日に日に迫ってきておる。準備の方は大丈夫なのか?」と、王様。

 それに対して、大臣がこんな風に答えます。

「まだまだ万全とは言えません」

「悠長なコトを言っておる暇はないぞ。近隣諸国は、まだ平和だという話だが、遠くの国が1つ滅ぼされたという噂も聞く。ウカウカしておったら、この国も危ないのではないか?」

「はい。ですから、冒険者の育成に力を注いでおります。例の計画で、急速に戦力は増強されていっております」

 ここで、王様は目をつぶり、しばらく考えるような仕草をしてから、大きく頷くようにして答えました。

「ああ~、アレか。アレは、実に上手いコトを考えたな」

「で、ございましょう?」

「ウム。どこの馬の骨ともわからぬ若者たちに、片っ端から冒険の品を渡して回る。勇者だとかなんとか、おだてあげてな。中身は、わずかな金と棒きれに過ぎないのだが、それでも喜んで受け取ってモンスター討伐へと出かけてくれる」

「そのほとんどは、途中で諦めるか朽ち果ててしまうのですが…」

「中には、優秀な者もおるものだ。本当に戦果をあげて帰ってくる者もおって、そういう人間だけ拾い上げて、魔王討伐軍を結成すればよい」

 大臣は、ニヤリと微笑みながら、こう言います。

「なにしろ、絶対数が多いですからね。何百人でも何千人でも近隣諸国から集まってきて、勝手に討ち死にしたり、モンスターを倒してくれたりするのですから。そりゃあ、元の数が多いものだから、上手く成長して役に立ってくれるものだっているものですよ」

「そういう者にだけ、さらに高額な報酬を払って雇ってやればよい。国家直属の魔王討伐隊としてな。役立たずは、自然とふるいにかけられ消えていく。実に、よく考えられておるシステムじゃ」


 なんというコトでしょう。アカサタは、最初から期待などされていなかったのです。それどころか、どこかで死んでしまっても仕方がない。いわば、捨て駒のようなもの。

 それで、上手く成長してくれれば成長してくれたで、それはいい。最初から、王様もそのつもりだったのです。


 でも、ま、それはお互い様でしょう。アカサタの方も、よこしまな考えで行動していたりしますからね。それでも、少しでも勇者らしく成長しようと懸命に修業に励む姿なども見せてくれているのですから、立派なものだと思いますけどね。

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