魔王の使いログレア
冒険者たちを跳ね飛ばし、洞窟から現われた者。
それは、蛇!それも、背中にコウモリのような羽を生やした1匹の大蛇!鎌首をもたげた高さは、人の背丈ほどもあります。
さらに、大蛇はムクムクと巨大化していきます。そうして、その高さはトロールの倍以上!10メートル近くにも達しました。
大蛇の目の前には、ボ~ッとしたままの勇者アカサタが。
「我が名は、ログレア。魔王様に使えし、8つの魔物が1つ」
大蛇は、そんな風に自己紹介すると、勇者アカサタへと向ってきます。
ヒラリとその攻撃をかわす勇者アカサタ。どうやら、ボ~ッとしているようでも、いつもの回避力を発揮しつつあるようです。
巨大蛇ログレアは、物凄い速さで首を伸ばし攻撃してきますが、すんでのところで、それらの攻撃をかわしつづける勇者アカサタ。
さらに、ログレアがその巨体を揺らしながら突進してきますが、それも軽々とよけます。
そうこうしている内に、洞窟内から、スカーレット・バーニング・ルビーや女勇者ハマヤラたちが戻ってきました。そうして、援護攻撃を始めようとします。
ところが、賢者アベスデが飛んできて、それを制しました。
「待つんじゃ。ここは、アカサタ1人にまかせてみよ」
驚いて尋ねる女勇者ハマヤラ。
「なぜですか?いくら、アレだけ巨大な敵とはいえ、全員で一斉にかかれば倒せるでしょ?」
「だからじゃよ。アレだけの敵を相手に1人でどこまでやれるか、試しておきたいのじゃ。どうしても危なくなれば、加勢すればよい。それからでも、遅くはない」
女勇者ハマヤラは、カチンときました。
けれども、アベスデの言うコトにも一理あります。これから戦わねばならぬ敵は、もっともっと強大な力を持っているのです。この程度の敵を1人で相手にできなければ、魔王討伐など夢のまた夢。
たとえ、今すぐにではなくとも、このくらいの敵を雑作もなく1人で倒せるようになる日が訪れなければ!
巨大蛇ログレアは深く低い声で、こう言い放ちます。
「ちょこざいな!では、これではどうかな?」
その瞬間、ログレアの胴体からムクムクと2本の腕が生えてきました。そうして、今度は、その両の腕で勇者アカサタを捕らえようと、つかみかかってきます。
その攻撃も、ヒラリヒラリとかわしてみせる勇者アカサタ。攻撃を避けながら、呟きます。
「違うな。こんなもんじゃない…」
「なんだと!?」と、ログレア。
「アベスデのじいさんは、こんなもんじゃなかった。全然違う。見た目の迫力ではない。心の底に秘めている能力が違い過ぎる…」
煽られたと思ったログレアは、怒り心頭で、さらに新たな技を見せます。1つだった頭がいくつにも分裂し、その複数の頭で同時にアカサタに襲いかかっていくのでした。
さすがに、この攻撃には、アカサタも避けるだけでは終わりません。剣を取り出すと、ログレアの攻撃をかわしながら、その頭の1つ1つを順番に斬りつけていきます。
パシュッ!という音と共に、切り裂かれる爬虫類の皮膚。
辺りに鮮血が飛び散ります。
「グエエエエエ」と、叫び声を上げるログレア。
「おのれ!おのれ!おのれ!魔王様にいただいた軍団だけでなく、このオレ様の体まで傷つけるとは!もう、許さん!」
そう叫ぶと、ログレアはいくつもある頭を飛ばしてきます。
ログレアの体から発射された頭は、そのまま蛇の形となり、勇者アカサタへと向ってきました。
この攻撃も、ヒラヒラとかわす勇者アカサタ。
ところが、かわしたはずの蛇たちは、地面に着地すると反転、アカサタに再度向ってきます。
予想外のこの攻撃は避けきれず、何体もの蛇に巻きつかれてしまう勇者アカサタ。
それを見た賢者アベスデ。
「ここまでじゃな…」そう呟くと、皆に攻撃の指示を出します。
待ってました!とばかりに、一斉に攻撃を開始する魔術師やアーチャーたち。
ところが、ログレアがその背中の羽をひと羽ばたきさせると、巨大な突風が巻き起こり、それらの攻撃は跳ね返されてしまいました。
その間に、勇者アカサタの元を訪れる1人の女性がいました。女海賊マリン・アクアブルーです。
マリン・アクアブルーは、手にした剣でアカサタに巻きついた蛇を切り落としていきます。
次の瞬間、意外なコトが起こりました。
バチ~~~~~~~~~ン!!!!
辺りに響き渡るような大きな音がしました。
なんと、女海賊マリン・アクアブルーは、味方であるはずの勇者アカサタを攻撃したのでした。




