ガラクタ山での邂逅
脱線しかけたので、ちょっと修正しました。
「……あ?」「……ん?」
字名は不機嫌そうに、名弦は不思議そうに――目が覚めてからの第一声を上げる。
二人は、起き上がったあとで、自分たちが倒れていたことに気付いた。
同じタイミングで起き上がったことが不快そうだったが、寝起きだったために争いにはならなかった。
「っていうか、ここどこよ?」
「廃材置き場、ですか……?」
廃材置き場。
ゴミの埋立地にも見えるが、瓦礫や壊れた家電製品が、積みあげられている場所だということは確認できる。人の気配は微塵もなく、虫ですら寄り付きそうにない、退廃的な雰囲気が漂っていた。
薄汚れたタイヤの黒と、壊れた洗濯機の白が溶け合う、灰色の場所。
周りを見渡しているときに、二人の間に落ちている開照も発見した。
字名は、それを拾い上げて、疑いのまなざしを向ける。
「おい、こんなところに人なんかいんのかよ」
名弦が、呆れたようにため息をついた。
「ここに捨てていきますか? そのホウキ」
最初から不安のあった旅だったが(色んな意味で)、まさか名継の持たせた『者』が不良品だったとは、二人は予想していなかった。
そして、やけになった字名は、
「あー、もう面倒くせえ!」
と、近くにあったタイヤを力任せに投げつけた。
別にどこを狙ったというわけではなかったが、それは勢いよく名弦の後頭部に命中する。
名弦は、恐ろしい笑顔を貼り付けたまま、ゆっくりと振り返った。
「……字名くん」
「あ、やっべ」
引きつった笑みを浮かべつつも、悪びれた様子はない字名。
しかし、後悔先に立たずと気付いても後の祭りである。
名弦は、文字の塊を手のひらから出し、近くにあった白い洗濯機に注ぎ込んだ。
そして、字名を指さして、冷酷に命じた。
「あの男、十分の九殺しにしなさい」
「いやもうそれ、生きてるって言わねえよ!」
「大丈夫ですよ――――」
にこりと名弦が笑うのと同時に、洗濯機は襲い掛かってくる。
字名を狙って、もっと言えば字名の命を狙って。
「生きることも死ぬこともできずに、一生苦しんでください」
「もっとひでえわ!」
何だその後味悪い台詞は、いっそ殺せや――――字名は全力でつっこんだ。
しばらく逃げ回っていた字名も、しつこい洗濯機には勝てない。
ついに、字名が洗濯機から名前を抜き出し、そばに落ちていた黒いオーブンに注ぎなおす。
そして、名弦をつっけんどんに指さして怒鳴った。
「十分の十殺しにしてこい!」
「いや、もう死んでますからね、それ」
「ああそうだ! 俺が夕空に広がるてめえの顔を見上げる、感動のラストに書き変えてやらあ!」
僕死んでるじゃないですか、と名弦は突っ込まなかった。
すでに二人は戦闘モードで、びんびんに殺気を放っている。
名弦が名前を宿し、字名が抜いて注ぎなおし、のバトルを繰り広げまくっている。
それは、ライトノベルにありがちな白の魔道師と黒の魔道師の対決にも見えた。
しかし、その戦いは――――高く上ずったような声にあっさりと遮られてしまったのだった。
「あ……貴方たち、は」
「ん?」「あ?」
二人は同時に振り返った。
その先には、制服姿の少女が立っている。
ショートカットの、色黒の少女だった。
凛々しい顔をした少女だが、驚いたように目を見開いている。
当たり前だ。こんなガラクタ山で、知らない男たちが、超能力を使っているとしか思えない戦いを繰り広げているのだから。
なんと言おうか、二人は言葉を探す。
異常事態には、異常な物が、あるいは者が引き寄せられる。
それをすっかり忘れて。
少女は、興奮した様子で、震えながら叫んだ。
「貴方たちもその力が使えるのか!?」」
「……え?」
少女の口にした疑問が予想と違い、二人は困惑した声を上げた。
そんなことには構わないという風に、少女は二人が今ぶつけ合っていた廃材を、睨むように、強い眼差しで見つめ始めた。
字名と名弦は、その行動の意味を理解できずに、立ち尽くす。
三人が見守る中――――その廃材は、不安定に揺れながらも重力に逆らった。
これが、魔法少女と二人の名術師の出会いとなったのである。
正規のランキングではもうアレですけど、勝手にランキングの方ではだいぶ上位になって喜んでます(^^)
まあ、ジャンル別だったらですけど……。
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