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最終話 炎を穿つ者 5

「ま、今言ったことはちょっと上のランクに関しての話だな。ルーキーの場合殆どが防具無しで戦う気があるからよ」


 葛木はヘラヘラと小馬鹿にした態度をとりつつ説明を続ける。


「大抵のザインは能力に頼りきった戦い方をする。特にルーキーから中位クラスで防具を着込んでいる奴はかなりの確立で能力任せだ。

 だがさすがに上位クラスに当たる奴は己の体を鍛えていたり弱点を克服してきているから勝つにはそれなりの実力と経験が要るんだけどな」


 能力があると言えど彼らも武器を持った人間と同じ。どれだけ強い武器を持っていようとそれが無くなったときに適切な対処ができなければ徒手空拳相手に負ける。


「……ところがだ、ザイン同士なら最悪力は拮抗してしまうが無能力者は違う。一方的にやられるか勝つかの二択。どう言うことか分かるか遊馬?」


 葛木の問いに対し、縁は今まで聞いた情報を頼りに答えをまとめる。


「前者の敗北に関してはザインと無能力者の間には能力と言う絶対的な隔たりがあります。けれどそれは壊せない訳ではない。ザインを同じ土俵にまで引きずり込めば無能力者であっても勝つことが出来るんですよね?」

「そ、基本ザインは無能力者に能力が付加しただけの存在。能力が無ければただの人間だ。それに体の侵食と言う能力の使いすぎによる枷もある。

 ところが無能力者にはそれが無いし、相手より優れた運動能力を有していれば簡単に勝つことが出来る。何せ基本のザインは一般人に毛が生えた様な物。純粋な肉体のみの力比べをしたらそんなもの瞬殺だ」


 どれだけ素晴らしい力があろうとそれを行使するのはただの人間。その人間としての質が高ければ高いほどザインはあらゆる面で秀でていると言える。けれど現実にその様な者達が溢れている訳ではない。

 能力=最強と勘違いした者達の方が圧倒的に多いのだ。そのため力が無い無能力者であっても彼らに対抗出来得る訳で。


「だからこそザインにとっての天敵は同じザインではなく、武術や体術を極めた存在になる。ここまで話せば俺がお前を防人に入れた理由は理解できるよな?」

「俺がザインの天敵に成り得ると?」

「そうなればいいんだが、今のところそうなったのは数えるだけの奴しか存在しない。――ちなみに誠十郎も数少ない天敵の一人だった」


 父親の名前を聞いた縁は僅かにだが眉を動かす。


「遊馬、父を……師を越えたいと願うならザインに勝てる存在となれ。その先にお前の望む物があるかもしれない」

 いつものだらけきった態度ではなく、真剣な眼差しで彼は言った。それは縁の願望に気付いていたからであろう。

「ま、俺が言いたいことはこうだ。どのタイプであれ必ず本体がある。そこさえ攻撃すれば絶対勝てるってことだ」

 葛木は空気を変えるように話をまとめる。途端いやらしい笑みを浮かべ始めた。

「ちなみに水無月はキレさせるなよ? こいつはレベル低くても数少ない当てはまらないタイプだからな」


 最後に余計なことを言ってそこでの能力説明は終わった。ちなみに水無月は頬をむくれさせて怒っていた。


               ×              ×


「俺の拳に燃やされろ!」


 スピットファイアは力強く地面を踏んだあと、強烈な炎の拳を縁に放つ。迫り来る拳を縁は短槍でいなす。


「まだぁまだぁ!」


 右左と拳は突き出され縁に襲い掛かる。それを縁は堅実に防ぎいなす。

 一方的に見える状況。その様子を見て気を良くしたのか、スピットファイアは顔を緩ませる。


「どうした三下! 所詮は俺達ザインに勝てないか! ああ″!」


 更に調子に乗るスピットファイア。それでも縁は攻撃を防ぎいなす。


「大したことないな! 遊馬!」


 連続で叩きつけられる拳を対応しつつ縁は口を開く。


「あんた、風林火山と言う言葉の意味を知っているか?」

「は? それがどうした?」

「俺は今風林火山の山を実行しているのさ」

「それだどうしたって言うんだよ!」


 更にスピードを上げて拳を繰り出すスピットファイア。


「そろそろ終わろうぜ! チェストォ!」


 更にはダンッと左足を地面に叩きつけ、彼は右足を振り上げる


「それを待っていた!」


 縁は放たれた蹴りよりも早く横にずれ回避し、一気にスピットファイアの懐にもぐりこむ。

 すかさず両手の得物を構え、突き出す動作に入る。

 完全なるカウンター。縁が防ぎ続けたのはこれを狙ってのことだった。しかし、


「甘いんだよぉ!」


 ガシッと両の手で小太刀と短槍は掴まれる。


「俺はな、得物を使った奴の動きは分かるんだ! だからお前の攻撃も見え見えなんだよ!」


 縁は武器を自由にさせるべく引いたり押したりするがビクともしない。


「無駄無駄。このままお前の武器を溶かしてやるよ!」


 スピットファイアはそう宣言すると両手の炎を爆発的に燃焼させる。


「遊馬君!」


 縁の窮地に気付いた水無月が少年達の相手をしながら縁の元へ駆け寄ろうとする。そこで縁は彼女の方に顔だけ向け目で合図をする。――俺は問題ないと。

 一瞬躊躇う様子を見せるが水無月はすぐに下がり。再び少年達の相手をした。


「は、バカが! 格好つけている場合かよ!」


 縁の態度にスピットファイアは笑い罵る。縁は気にせず彼の目を見据えた。


「なああんた、体の下に何か仕込んでいるだろ?」


 縁がスピットファイアに尋ねる。


「なぜそう思う?」

「初撃、俺はお前の腕に全体重を乗せた一撃を当てた。通常なら骨折ではすまない。しかしお前は無傷だった。それだけじゃない。何度防いでもいなしても何かがぶつかっているんだ。 ……例えば硬質の金属とか」


 その言葉を聞いてスピットファイアは目を細めた。


「ほう、良く気付いたな。まあ、冥土の土産に教えてやるよ。俺の体にはチタン製のアーマーを着ている。少し動き辛いがこれが中々便利でな。ほとんどの攻撃を防げるんだ」


 チタン。軽くて硬い金属。更には耐食性や耐熱性も高い金属。

 それは飛行機や潜水艦などに使われ、身近なところでは自転車やデンタルインプラントなどに利用されている。また強度は折り紙つきのため様々な場面で使用されている。

 そのためスピットファイアの利用方法は理に叶っていた。何せ自身の能力が炎だ。鉄では強度も弱ければ耐熱性も低い。結果最大出力で力を使ってしまうと溶けてしまう。


「さて、そろそろお別れの時間だ! 燃え尽きろ!」


 スピットファイアは叫び火力を強める。当初武器だけ覆っていた炎は徐々に縁の両手を蝕んでいく。

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