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第四話 水無月先生のザイン講座 2

 一日の授業が終わった昼過ぎ、始業式から二日目ということもあってすぐに学業から開放された。

 多くの学生がこれからどこに行こうかと話し合っている中、縁はさっさと校門へ向かう。

 途中、水無月が混ざり、校門前で雄吾と修介も合流した。

 四人で他愛ない会話をしながら帰路へつき、時機に縁の家へと着く。

 縁はポケットから家の鍵を取り出すと、鍵を開けて玄関に入る。そこで続くように他の三人も入って行く。


「ただいま」

「「「おじゃましま~す」」」


 各々が挨拶をして玄関に上がる。そこでリビングの方から一人の女性が現れる。


「あら、縁君お帰り。それにお友達も遊びに――――」


 そう言って現れた女性が――千種が彼らの姿を見て笑顔で固まる。


「……おんなのこ?」


 いや、正確には水無月の顔を見て固まっていた。


「ああ、紹介するよ。彼女は同じクラスの――」

「あ、あなたぁぁぁ! 縁君が彼女をぉぉぉ!」


 突如振り向きリビングに向かって叫ぶ千種。すると、リビングからこの時間帯には仕事で居ないはずの豊久が現れる。


「ぬわんだってぇぇぇぇぇ!? ぬお! 本当じゃぁぁぁぁ!」


 真っ白な仕事着姿の豊久がなんとも言えない表情と言葉を出し、ドタドタと縁達の前に走ってくる。


「おお! なんとも可愛らしそうな子だ。うむ、こんな子がおい達の娘になるのか! でかしたぞ縁!」

「そうよ! あんまり女の子の話しないから叔母さんずっと心配だったのよ? それをこんな可愛い子連れてくるなんて!」


 二人は縁達の前で大喜びする。その様子を見ていた縁と雄吾と修介は呆気に取られた。

 ところが、もう一人の水無月だけは何故か顔を赤らめ恥ずかしそうにうつむいている。 


「あ、いや、別に彼女じゃなくて友達を連れてきたんだけど……」

「む? そうなのか?」

「あら、友達? そうだったの?」


 縁の言葉を聞いて二人は急にテンションが低くなる。それと同時に横に居る水無月も若干ながら頬をむくれさせていた。


「今日は三人と一緒に今後の学校生活について話し合うことになっていてさ。家に上がってもらおうと思ったんだけど都合悪かったかな?」


 それとなく自然な形で縁は話を切り出す。それに対し二人はもちろん、


「どうぞどうぞ。上がっていって」

「そそ、ゆっくりしていきなさい」


 顔をしかめることなく二人は笑顔で水無月達を招く。確かに縁の言うとおり御影家の人間は簡単に家に人を入れさせてくれた。

 縁に連れられ三人は室内に入って行く。その横ではやけにニコニコした二人が見送っていた。

 縁は自室である二階の角部屋に三人を招き入れる。そのうち二人は通いなれているのか、荷物をその辺に置きすぐにどさっと座り込む。

 最後に入った水無月は忙しそうに室内をきょろきょろと見回す。気分的には分かりはするが、それはもう挙動不審の類だ。


「……ここが、縁君の部屋――なんて乙女チックなことは言っちゃだめだよ水無月さん?」

「ひゃ!?」


 修介がやんわりと注意するかの様に水無月に言う。まさかの先読み発言に水無月は変な声を上げた。


「はは、図星でやんの」


 その様子を見た雄吾が水無月に指差しケラケラ笑う。


「ボクをからかわないでよ!」


 二人に対してプンスカと怒る水無月。正直、誰が見てもあまり怖くはなかった。


「冗談はそこまでにしてやれよ」


 やや軽いため息を吐きつつ縁はそう言う。それに対して三人が軽く謝り床に座った。


「俺だけ椅子に座るのも悪いな」


 縁も三人の近くに腰を下ろす。


「別にこの部屋の住人だからいいんじゃないの?」

「そーだぜ? いつもならお前椅子に座っているじゃん」


 修介と雄吾が気にしないと縁に言う。しかし縁は首を横に振った。


「遊びに来てくれたならそれで良いが、今日は事情が違う」


 今日は遊びではなく、これからの人生に関わる重要な話し合いだから自分は床に座るのだと縁は三人に説明する。

 それを聞いた三人は彼の言葉に納得をする反面、真面目だなぁという感想も抱いていた。


「それじゃあ、説明の方を頼む」


 縁は三人に言う。誰が話を切り出すのかと目で追うと、水無月が手を上げた。


「じゃあ、ボクが説明しようかな」


 水無月はコホンと軽く咳払いしたあと口を開く。


「それではザイン――」

「水無月先生のザイン講座始まりま~す」

「ま~す」


 突如横槍を入れた修介と雄吾に対し、水無月はありったけの力を込めたであろう拳でポコポコと二人の体を叩いていた。


                 ×            ×


 ――――ザイン。特定の力を扱いし者、能力者のことを指す言葉。

 ある者は火を操り、ある者は武器を生成し、ある者は現象を起こした。その力は能力者の数だけ多様ではあるが、根幹部分は三タイプに分かれる。

 一つ目は融合型のザイン。

 融合と言う名前の通り能力者と能力が融合することで力を発揮するタイプ。このタイプに属した能力者は能力の特性ゆえ近距離を得意とする場合が多い。

 二つ目は放出型のザイン。

 能力者が自身の内部から能力を放出することによって力を発現させるタイプ。中距離から遠距離にかけての攻撃を得意とする。水無月の能力はこれに当たる。

 三つ目は独立型のザイン。

 能力者から離れて能力が顕現するタイプ。最初の二つに比べコントロールは難しい代わりに攻撃の自由度が高い。主に戦術を組んで使用するのに適したタイプ。


 よって同じ属性同士の能力であってもこの三タイプがあるために更に根分けされることになる。また、それ以外にも特殊なタイプが数例だけ報告されている。

 一人だけでも十分すぎる力を持つ能力者。そんな彼らの存在は今日まで主立って世間には注目されていない。

 しかし、常識的に考えてもそれはおかしい。ちょっとした話題でもニュースになる世の中。程度が低いことですら情報が蔓延する社会。そんな特ダネとも言える存在が社会に漏れていないのは不可思議なことだ。

 まあ勝手に推測するのであればそれは情報が出ていなかったために、周りに認知されなかったのだろう。


 けれど実際はこうだ。国家が情報隠蔽に徹したから――――いや、正確には世界が能力者の存在をもみ消したから。

 能力者の持ちえた能力は簡単に言えば自分の望みを叶えうる力。ありとあらゆる原則を無視したモノ。どんな凡人でも手に入れれば瞬く間に超人へとチェンジできる。

 欲のある人間なら誰しもがその力を求め手にするだろう。結果、能力者によって争いが起こり秩序が乱される。その様な結果を危惧された。

 そのため、世界に認識させるわけには行かなかった。故に世界は能力者のことを一切合財無かったことにする。それは始めから〝存在していなかった〟かの様に。


 そんな能力者達のことをザインと言う名称で呼ばれているの何故か?  

 ザインとは本来ドイツ語で《存在》を表す言葉。どう読み解こうとザイン=能力者にはならない。

 そうなると複雑な理由がちらつきそうなものだが、実際の理由は酷くシンプルなものだ。

 それは彼らがこの世界に『存在』していたから。

 ザインと言う名は能力者達が自ら名乗った訳ではない。便宜上に呼称をつけられただけ。

 能力者と言う言葉は当てようとすればいくらでもあった。しかし、ありふれた名称をつけるのは映画やマンガなどフィクションチックであったため敬遠されたのだ。


 そこで選ばれた名称がSeinザイン。ドイツに居た能力研究機関のチームがその名を授けた。

 以来能力者を含め、その名称で呼ばれることになったのだ。

 そんな能力者達の力は強大であり、害を及ぼす危険があった。そのために国家は国民が動揺せぬように能力者のことを基本無いモノとして扱った。

 されどどうやっても、どう足掻いても彼らのことを完全に消し去ることが出来ない。

 なぜなら彼らは世界中に――確かに『存在』していたのだから。


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