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白黒リバーシブル  作者: 猫塚ルイ


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第7話

それから数日後───


図書室の暗がりに眠っていた「削られた名前」と、忌まわしい「九月十五日」の符合。


隠された血塗られた真実を知ってからというもの


ジェルの淹れてくれる紅茶の芳醇な香りでさえ、私の喉を焼く猛毒のように感じられた。


けれど、私は鏡の前で震える指先を必死に抑え込み


完璧な「王女」の仮面を被り直す。


彼を出し抜き、この美しい牢獄の鍵を奪うためには


私自身もまた、嘘という名の衣装を纏わなければならない。


「ジェル。……一つだけ、わがままを言ってもいいかしら?」


「なんだい?なんでも言ってごらん」


「なら、一度でいいの、ほんの少しの時間でいい。お城の外にある街を見てみたいわ」


豪奢な銀の燭台が揺らめく夕食の席、私は精一杯の勇気を振り絞って切り出した。


ジェルの持つ銀のナイフが、皿の上で心臓に突き刺さるような鋭い音を立てて止まる。


彼はゆっくりと顔を上げ


深い夜の底を映したような暗緑色の瞳で、私の魂を見透かすように射抜いた。


「外の世界?……それはだめだよ、シェリー。何度も言ったはずだ。君を執拗に狙う不逞の輩は、今この瞬間も街の影に潜み、君の隙を伺っている」


「君のその清らかな白銀の髪一筋さえ、外の塵に汚されるわけにはいかないんだ。すべては──君の安全のためなんだよ」


慈しむような、あまりに甘美な響き。


けれど一歩も譲らぬその拒絶。


呪文のように繰り返される「安全」という言葉が


今の私には「一生、僕の檻の中で朽ちろ」という宣告に等しく聞こえた。


やはり、正面からぶつかっても無駄なのだ。


私はテーブルの下、あらかじめ用意していた小さな琥珀色の小瓶を隠し持った手に、ぐっと力を込める。


後日


私は「いつも守ってくれる彼のために、感謝を込めてハーブティーを淹れたい」と申し出た。


ジェルは驚いたように、けれど愛おしい子供の成長を見守るような目を細めて、それを受け入れた。


私は彼のために用意された白磁のカップに、旧図書室の隠し棚の奥で見つけた


意識を朦朧とさせ、心の奥底にある本音を引き出すという秘薬『真実の雫』を数滴、密かに忍ばせた。


「どうぞ、ジェル。いつも私を支えてくれるあなたへ、私からのささやかな感謝よ」


心臓の鼓動が耳の奥で、鐘のようにうるさく鳴り響く。


ジェルは私の手からカップを受け取り、その温かな湯気を深く吸い込んだ。


「……いい香りだ。君の優しさが、僕の五臓六腑にまで染み渡るようだ」


彼は迷いなく、その琥珀色の液体を口に含んだ


……はずだった。

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