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証言者は、あなたです  作者: やはぎ・エリンギ


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「二日目のヒント」

1日目 動画の公開時刻は「2:17」と表示されている。午後2時17分

動画を投稿してから、ちょうど三十六時間が経っていた。

「私」はその時刻を選んだ。意図的に。

2.5ちゃんねるのスレッドは、0日目の夜のうちに三つ目へ移行していた。書き込みの総数は昨夜の段階で二千件を超え、今朝にはさらに膨らんでいた。推理ごっこは続いている。しかし熱が少し落ち着きかけていた。飽きが生じ始めていた。人間の集中力は長くは続かない。特に、何も新しい情報が出てこない状況では。

だから「私」は、午後二時十八分に書き込んだ。

動画のコメント欄ではなく、スレッドに直接。証拠が残らない形で、確実に読まれる場所へ。

書き込みの内容は短かった。

「五年前のある事件を調べてみてください」

それだけだった。

送信ボタンを押した直後、「私」は画面から少し離れた。台所に立ち、水道水をコップに注いで飲んだ。冷たい水が食道を通り、胃に落ちた。手は震えていなかった。昨夜ほどの緊張はない。これはすでに計画の一部だった。

部屋に戻った時、スレッドにはすでに十数件の返信がついていた。

「五年前って何年?」

「事件って何の事件? ヒント少なすぎる」

「投稿者本人か? 証明できないだろ」

懐疑的な反応が並ぶ中、数件が早くも動き始めていた。

「五年前の未解決事件一覧、誰か持ってる?」

「殺人予告と関係ありそうな事件……教師絡みとか?」

「いや待って、投稿時間が深夜2時17分で、今の書き込みが午後2時18分。一分差。これ偶然じゃないよな?」

「私」は最後の書き込みを読んで、かすかに口角が上がるのを感じた。気づいた者がいた。投稿時刻との一分差は偶然ではない。暗号ではないが、注意深い人間なら引っかかる細部として仕込んでおいた。それに気づける程度の観察眼を持つ人間が、このスレッドにはいる。

午後三時になると、スレッドは再び勢いを取り戻した。

五年前の事件を列挙するまとめが誰かによって作られ、貼り付けられた。未解決の傷害事件、学校内での不審死、教師による不祥事の報道。ネット上に残っている記事の断片が、次々と引用されていく。大半は関係のない情報だった。しかし誰もそれを確認する術を持っていない。

「これじゃないか?」という書き込みが複数の別々の事件を指して乱立した。

「私」は画面を眺めながら、この混乱が必要だと理解していた。正解に辿り着く必要はない。迷わせることに意味がある。無数の方向へ散らばった推理は、やがて一点に収束する。その収束を「私」が設計していた。

午後四時過ぎ、流れが変わった。

一人の書き込みが、特定の報道記事のアーカイブリンクを貼った。五年前、ある高校で起きた生徒のいじめ自殺事件の記事だった。担任教師の対応が問題視され、一時期ニュースになったが、うやむやのまま幕引きされた案件だった。

「これだ」という書き込みが続いた。

「担任が黙認してたって話だよな、これ」

「教師の名前、記事に出てなかったっけ」

「当時の報道、全部漁ってみる」

スレッドの空気が変わった。暇つぶしから、目的を持った捜索へ。五年前の記事を探す人間、当時の匿名掲示板の過去ログを掘り起こす人間、地元の地方紙のデータベースを当たる人間。それぞれが別の場所を掘り始めた。

「私」はその光景を、静かに見ていた。

自分が何を動かしているのか、理解していた。人間の好奇心は、火に似ている。点火さえすれば、燃料を自ら集めて燃え広がる。「私」がしたことは、マッチを擦っただけだった。

午後五時。窓の外が橙色に染まり始めた頃、スレッドの書き込みはその日だけで千件を超えた。

教師という言葉が、繰り返し書き込まれていた。


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