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証言者は、あなたです  作者: やはぎ・エリンギ


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31/33

「七日目の予告」

13日目 午前3時〜午前11時 

画面を閉じて、また開いた。

「私」は暗い部屋の中で、もう一度キーボードに向かった。眠れなかった。眠るつもりもなかった。次の動画の準備は、すでに終わっていた。後は投稿するだけだった。

午前三時三十分、投稿した。

動画の尺は二分四十秒。最短だった。内容も最もシンプルだった。

「明日、本当の計画を実行します」

それだけだった。説明もなく、ヒントもなく、ただその一文を、前の動画と同じ抑揚のない声で告げた。背景は同じ暗闇。顔は映っていない。

投稿してから、「私」は画面から離れた。

台所に行き、水を飲んだ。窓の外は深夜の住宅街だった。街灯が白く、道路が光を反射していた。静かだった。この静けさが、あと何時間かで終わる。

午前六時、最初のコメントがついた。

「また釣りか」という書き込みだった。しかし今回は、それに同調する声が少なかった。柏木真司が死んでから五日が経っていた。「釣り」と笑えない空気が、すでにネットに広がっていた。

午前八時、再生数が五万を超えた。

スレッドが立った。「【緊急】投稿者が『明日、本当の計画を実行する』と宣言」というタイトルだった。書き込みは一時間で千件を超えた。

反応は第一の動画の時とは明らかに違った。

嘲笑が少なかった。代わりに、緊張と恐怖が混ざった書き込みが並んだ。「本当にやるつもりなのか」「柏木の件で一人死んでる。今度は誰が死ぬ」「警察は動いてるのか」。

午前九時、早瀬の携帯が鳴った。

桑田からだった。「新しい動画が上がっています。見てください」という短いメッセージだった。早瀬はすでに把握していた。朝五時に起きた時、アラートで気づいていた。

署に着いた早瀬は、会議室に上司と桑田を集めた。

「明日、実行すると言っている」と早瀬は言った。「前回は柏木さんが死んだ。今回は投稿者が直接動く可能性がある」

「標的の見当はつくか」と上司が聞いた。

「まだない」と早瀬は答えた。「しかし動画のパターンから、標的はすでに決まっている。投稿者は計画的な人間です。即興では動かない」

会議室に沈黙が落ちた。

窓の外では東京の朝が動いていた。通勤の人波、走る車、開店準備をする店。誰も知らない。この街のどこかで、明日、何かが起きようとしているかもしれないことを。

午前十一時、動画の再生数は二十万を超えた。

ネット上では「次の標的は誰か」という推理が始まっていた。しかし今回は、推理の熱の中に別の感情が混ざっていた。

怖い、という感情だった。

祭りではなかった。もう誰も、これをゲームとして楽しめなかった。柏木真司の死が、画面の向こうの出来事をリアルに変えていた。

「私」はその変化を、自室の画面で確認した。

恐怖が広がっている。それでいい。恐怖の中でこそ、人間は本当のことを考える。明日、すべてが動き出す。

カーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいた。


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