第16話 槍豚討伐
三級ダンジョン第三層の奥の方に、槍豚の生息地がある。
槍豚は群れは作らないので、基本は1匹でいることが多い。
「あ、いましたよユイカさん」
第三層に来て、10分ほどで餌を食べる1匹の槍豚を発見した。
「ふぅ、緊張しますね」
「大丈夫、ユイカさんからやれます」
槍豚で怖いのは突進くらいであとは特に恐る事はない。
間合いを詰めて、10本突きの射程圏内に入れれば勝ちだし、この前の俺みたいに首を刺すでも倒せる。
今回は鎧布のローブも着けているし、万が一突進を受けたとしても重傷にはならないと思う。
それでも心配だ。
「ありがとうございます、私頑張ります」
「頑張ってください、とりあえず作戦は槍豚の近くまでハンタースキル=スニーキングで行き、10本突きを当てる、もしも外してしまったり、近づくときに気づかれてしまったら、今度は神威を使い瞬時に間合いを詰めてください」
「わかりました」
ユイカさんは剣士を目指しているが、盗賊の認定ももらっている。
そのため、盗賊のスキルであるハンタースキルが使える。
今回はそれも応用し戦う感じだ。
俺もいくつか使えるが、本職ではないのでスニーキングくらいしかまともに使えない、それに対してユイカさんはほぼ全てのハンタースキルが使えるらしい。
それはそれで凄いことではあるが、今はそんか事を考えている暇はないので、目の前のユイカさんと槍豚に集中する。
「ではいきます」
そう言ってユイカさんは槍豚へ向かった。
槍豚餌を食べて気づいていないが、ユイカさんは結構近くまで来ている。
ユイカさんのスニーキングは足音がまったくしない。
俺はほぼしないが、地形によって凸凹があったりすると、僅かに足音が出てしまう。
でもユイカさんはそれでも音がしない。
「ブヒっ?」
ユイカさんが10本突きの射程圏内に迫ろうとした時、たまたま槍豚がユイカさんの方に振り向いた。
「まずい!」
しまった!思わず声が出てしまった。
これで100%気づかれてしまった……すまないユイカさん。
と、思ったのも束の間。
ユイカさんは気づかれた瞬間に神威を使い間合いを詰めていたらしく、槍豚が突進の構えする間もなく、目の前まで来ていた。
「これで終わりです、霧の剣、四の型10本突き!!」
「ピギャァァァ」
ユイカさんの放った10本突きは見事に10本槍豚に命中し、串刺しになった。
凄いぞユイカさん、10本突きも見事だったけど、気づかれた瞬間に神威を使うのも上手かったな。
「……」
槍豚を仕留めたユイカさんだったが、倒れた槍豚の前で棒立ちしていた。
「どうしました、ユイカさん?」
「いえ、ただこの子も餌を食べていただけで、何も私たちに害を与えてないのに私に殺されてしまうなんて可哀想だと思って」
そう言ってユイカさんは、悲しいそうにしていた。
言いたい事はわかる、でもこれは狩りであり俺たち人間に必要な事でもある。
でも自分で殺めた命を、しっかりと重く受け止めるのも必要だと思うので、否定はしない。
「そうですね、でもねユイカさんこれが生きるという事なんです、この槍豚はこれから私たちの夕飯になり、非常食になっていく、そうして私たちは生きていける、何かの犠牲なしに人は生きてはいけない、これが現実です」
「わかっています、私もお肉は好きですが実際に自分で仕留めるのは初めてで……よくないですよね、自分で殺しておいて可哀想は」
「いいえ、それでいいんです、ユイカさんには命の重みを感じられる人でいてほしいので」
「ありがとうございます、タツベイさん」
俺がそう伝えると、ユイカさんは優しそうに微笑んだ。
どうにか暗い雰囲気を晴らす事はできたが、まだユイカさんの元気が戻っていないように感じる。
そういう時は美味しいものを食べるに限る。
さぁて、今日はこの槍豚を使ってご馳走を作りますか!!




