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番外編「王の悔恨と冷めたスープ」

 王都の宮廷。

 豪華絢爛な食堂で、若い王は一人、夕食をとっていた。


 テーブルに並ぶのは、見た目は美しいが、冷たく冷やされた野菜のテリーヌや、澄まし切ったコンソメスープ。

 上品で、健康的で、そして――退屈な食事。


 カチャン、と王はスプーンを置いた。


「……味気ない」


 最近、王の体調は優れなかった。

 何を食べても力が湧かず、心が満たされない。

 脳裏によぎるのは、かつてあの無骨な料理人が焼いてくれた、皿からはみ出るようなステーキだ。

 ナイフを入れるとあふれ出る肉汁。口いっぱいに広がる脂の甘み。


 あの時は野蛮だと切り捨てた。

 だが、皮肉なことに、今の王が一番欲しているのは、その野蛮なエネルギーだった。


「報告します。ガンツへの勧誘ですが……」


 使者が蒼白な顔で戻ってきた。

 その報告を聞いた王は、力なく椅子に沈み込んだ。

 断られた。

 当然だろう。自ら追い出したのだから。


「北の辺境は、さぞ活気づいているのだろうな」


「はい……。街全体が豊かで、誰もが笑顔で、何より……強そうです」


 王は冷め切ったスープを見つめた。

 自分の選択が間違っていたことを、胃袋が教えてくれていた。


 失った料理人の大きさは、王国の傾きとなって、これからじわじわと効いてくることだろう。

 王は深く後悔のため息をついたが、その腹の虫は、空しげに鳴くことしかできなかった。

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