第13話「肉の日は終わらない」
1年が経った。
「食堂ガンツ」は今や、大陸中にその名を知られる名店になっていた。
遠くの国からわざわざ食べに来る貴族や、高ランク冒険者が後を絶たない。
店も拡張し、数人の従業員を雇うまでになった。
だが、厨房の主は俺一人だ。
大事な火入れだけは、誰にも譲らない。
今日はまた、29日。
肉の日だ。
店は臨時休業にし、俺たちは裏庭でささやかなパーティーを開いていた。
メンバーは俺、ルル、セリア、そして店の常連たち数名。
網の上で、最高級の肉が焼けている。
煙までがご馳走だ。
「やっぱり、ガンツさんの焼くお肉は最高です!」
セリアが頬にタレをつけながら満面の笑みを浮かべる。
「うむ。1年食い続けても飽きないとは、恐ろしい男だ」
ルルは腹を出して寝転がりながら、骨付き肉をかじっている。
「飽きさせてたまるかよ。まだまだ新しいメニューを開発中だ」
俺は焼けた肉を裏返し、空を見上げた。
王都を出たあの日、雨の中で震えていた自分が嘘のようだ。
全てを失ったと思っていたが、俺はここで全てを手に入れた。
信頼できる仲間。
最高の食材。
そして、料理をする喜び。
「さあ、焼けたぞ。ジャンジャン食え」
俺が皿を差し出すと、みんなの手が一斉に伸びてくる。
その光景を見ながら、俺は心の中で思った。
俺の人生は、最高に脂が乗っている、と。
さあ、明日の仕込みは何にしようか。
この世界には、まだ見ぬ美味い肉がいくらでもあるのだから。




