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灰の国の異世界戦記  作者: とりさん
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第七話 イベント:成功者達の牙城

 


『まもなく光鎧府、光鎧府です。今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました』



「ついた」

「着きましたね。中々楽しかったです。こんなものまで作った我が国の技術者は凄いですね」

「ほんと?よかった」



 列車に揺られて1時間ほど。やっぱり速いねリニア新幹線。侍従長も楽しそうだったし。

 車で行ってたら7時間くらいかかってた。列車と違って、車は護衛の車両とかで車列を作って移動しないと行けないからね。どうしてもノロノロ走ることになる。



「しかし……」

「?」

「いえ、相変わらずギラギラした都市だな、と」



 あぁ〜、確かに桜都とは随分と雰囲気が違うからね。

 企業に牛耳れた都市【光鎧府】。

 都市はネオンとホログラム、ビルに貼り付いた液晶モニターの広告に彩られ、ライトアップされた高層ビルの間には高架道路が縦横無尽に架けられている。

 空は工場から排出されたスモッグで覆われ、常にどんよりと曇っている。【国家再建法】で環境規制法が効力を失っているから誰も取り締まれないのだ。


 何処までも混沌(カオス)な資本主義の都市【光鎧府】。

 この都市の住人は目が死んでいるヨレヨレの服を着た者か、目をギラギラとさせたピカピカのスーツを着た者しかいない。前者は絶対的な格差社会の現実と過酷な労働に精神をすり潰された者、後者はこれからすり潰される者である。

 労働者の保護や権利の保障なんてやってないからね。搾取される者達も諦めて欲しい。助けは来ないよ。

 もっとまともなメンツは居ないのかって?いるよ、すり潰される側じゃなくてすり潰す側だけど。今から会いに行く人たちだね。

 それと実は桜都からも結構な人口流入が起こってる。人工知能を使ったりして省人化が進めば、わざわざ沢山の公務員を雇う必要がないからね。職場からそのうち人が消えることに気付いた人たちは生活に余裕があるうちにと、光鎧府に移住してくる。

 元公務員という肩書は転職にも有利に働く。他の労働者と比べて、スタートが遅れていても十分に巻き返せるばかりか追い越すことも可能だ。


 そう言ってる間に列車は駅に入っていく。



「いこ」

「ええ行きましょう。定例会が始まるのは今からおよそ1時間後です。迎えの者を寄越すように連絡しましょうか?」



 直接行くかどうかボクが決めれるように気遣ってくれたらしい。ふ〜む、せっかく来たならぶらぶらと散策しながら目的地まで行こうか。



「歩いていく。どこ?」

「今回の開催場所は【六大企業】共同で建設された実験用アーコロジーですね。あそこにあるビルとビルの間に見えるピラミッド型の建築物になります」



 あれかな?黒い建材でできたピラミッドは、表面に幾何学的な青白いライトの線が走っている。にしてもすごい大きいね。あんなの都市のど真ん中に建てて大丈夫かな?交通の邪魔では?まああのアーコロジー、建設プロジェクトが公表された時にボクも結構な額を出資したんだけど。当時から建設予定地もあそこだったし。

 因みにその敷地面積のせいなのか都市に張り巡らされてる高架道路の一本が見事にピラミッドを貫通している。やっぱり欠陥施設なのでは?



「行こ。かんこうもついでにしよ」

「出来ればその……治安があまり宜しくないので……」



 なるほど、何か事件に巻き込まれるかも知れないと。それなら大丈夫そうだけどね。



「あそこ。かいさつの横の売店。くろいの」

「?」

「ごえい」

「……ッ!確かにあれは……いったいいつの間に……!?」



 いつからなんだろうね?街ゆくサラリーマンと同じスーツ姿の人。一見溶け込んでるように見えるけど……チラリとボクを確認した。それだけなら単に視界に入っただけなんだけど、その後の目線を見ていると分かる。

 ……改札、駅のホーム、エレベーター、エスカレーター、吹き向けのホール、その2階の手摺。ボクのいる駅構内の広場の出入り口、或いは観測可能な地点。そのポイントをさっきから定期的に確認してる。まるで誰かを待ってるようにリングギアをいじりながら立っている。



「ボクのまわり、見てる」

「なるほど、ということは【六大企業】の手の者でしょうか。我々が来るタイミングを見計らって──」

「ちがう。あれはこっち(政府)側のひと」



 違うんだよなぁ侍従長。あの人が着てるスーツは()()()()()()()()

 この都市にはヨレヨレの服か()()()()のスーツしかないんだよ。あんな、なんて言えばいいんだろう……上品?シック?って感じのスーツではない。ああいうのはこの【光鎧府】には売ってない。

 ボクはどの組織から来たのか大体想像できたんだけど……侍従長はどうかな?



「と、すると光鎧府に駐屯している【武装警務隊】でしょうか?」

「ちがう。ボクが来るの、しらないでしょ」



【六大企業】とボクと侍従長しか、ボクがここに来ることは知らないのだ。【武装警務隊】に【六大企業】から情報を渡されたとも考えにくい。あの組織二つ、仲悪いからね。



「では【近衛騎士団】ですか?彼らは陛下の親衛隊ですから」

「ぶっぶー……たぶん」



 たぶんね、違う。近衛騎士団はボクに絶対的(或いは狂信的)な忠誠心を持つ者によって構成される親衛隊のこと。

 その行き過ぎた忠誠心から、設立されてから何回かクーデター未遂までやらかしてる。

「君側の奸を排除せよ〜!!」って。どこかの青年将校かなと突っ込みたくなる。その度に規模は縮小されて今は100人規模にまで制限されている。因みに青年将校がいる軍部に関しては兵部省の上層部以外は完全に政治にノータッチの姿勢を貫いている。

 近衛騎士団……昔は独自の研究施設(閉鎖都市)を運営したり、海外に秘密基地を建てて現地政府の政権転覆をやったりして元気だったのにね……。

 最近新しく就任した近衛騎士団長官に代替わりしてからは過激さも鳴りを潜め、純粋な護衛部隊となった……表向きは。


 ……ボクは知ってるんだぞ。キミら勝手に放棄されたミサイルサイロを占拠してせっせと復旧作業を進めてるだろう。まったく……、ミサイルサイロを稼働させても打ち出す核ミサイルがないでしょうに……ないよね?まさかハルマゲドン(最終戦争)で残った核ミサイルがあったりする?そんなバカな。


 まあ取り敢えず彼らは関係ない。どうせ今も本来の役目をほっぽらかして瓦礫をほじくり返してるに決まってる。



「【国家保衛庁(秘密警察)】。たぶん桜都からいそいできた」

「彼ら……ですか。なら納得です。恐らくリングギアをハッキングでもして情報を集めたんでしょう。急いできたとは?」

「この都市にいるしょくいんなら気付けない。あの人、なじめてない。……どうやって間に合わせたのかわからないけど」



 世の中、マニュアル片手に訓練しているだけじゃ上手くいかないんだよ。型通りの動きじゃ直ぐに違和感を感じられてしまう。その場の雰囲気やそれ相応の振る舞い方っていうのは経験を積んで現場に慣れないといけない。あの人はそうじゃない。明らかに新人さんだね。

 みんな過保護だからね。たぶん気付かないだけで他にもいるんでしょう。

 ……ところでさ。



「じかん。だいじょうぶ?」

「……あっ!申し訳ございません。そろそろ時間ですので車を手配します」

「ん」



 タクシー呼んでもいいけど無人のね。有人のはそのまま誘拐されるから。ここ(光鎧府)はそういうところだ。







 § § §






「ようこそいらっしゃいました。国王陛下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます。我々、実験用アーコロジー【オメガ】の職員一同、陛下のご来訪を心よりお待ちしておりました」

「ん、お迎えごくろう。かいぎは?」

「定例会でしたら陛下以外はすでに中央会議室に」

「あんないして」

「畏まりました」



 いやびっくりしたね。まさか施設の出入り口があんなところにあるとは。

 最初にこのピラミッドを見た時に話した、ピラミッドを貫いている高架道路。あれが出入り口だ。普通に分からなかった。地面を歩いて入るんじゃなくて上から入るのね。

 しばらく出迎えてくれた人に付いていくと両開きの扉の前で止まった。因みに侍従長は受付に置いてきた。招待されたのはボクだけだからね。このままノックするのかなと思ったけど直ぐ側にあるインターホンを押した。



「LMW-04です。国王陛下をお連れしました」



 えっ、それが名前なの?驚いて固まったボクの前でインターホン越しのやり取りは続いていく。



「──はい。畏まりました。それでは本機は追加の命令があるまで待機します」



 そう言って壁に背を合わせて立つとそのままピクリとも動かなくなる。……ナニコレ。



「ようこそ国王陛下。さあ入ってください」



 混乱していたボクを内側から扉を開けたおじさんが呼んでくる。この人は……確か本田(ほんだ)って名前だったはず。如月重工の現最高経営責任者(CEO)。つまり、この定例会にボクを招待した人。

 ……ってそうじゃなくて。



「なにコレ?」

「これ?……あぁコレはアンドロイドですよ陛下。我が如月重工と弥生精機、そしてクロノスシステムズの技術協力によって産まれた最新モデルです」

「………い」

「ん?どうかされましたか?」

「すごい!!」



 すごいよこれ!!表情は人間のと変わらなかったし、関節とかの動きも一切違和感がなかった。()()が向けてくる視線にはちゃんと感情が乗っていたし、話したり移動する時の息遣いもちゃんとあった。こんな物までできるようになったのか!!



「……!ふふ、そこまで喜ばれるのでしたら私としても披露した甲斐があったというものです」



 褒められたのが余程嬉しかったのか頬を綻ばせながらボクを部屋に招き入れる。

 中に入って目にしたのは、真ん中が抜かれた円卓とその円周上に一定間隔で置かれた席に座る人たち。席は八つ。【六大企業】の六人の最高経営責任者(CEO)の席、制度上の光鎧府の支配者【光鎧国司】、そしてボクの席。

 ここにいる全員をボクは知っている。……あれっ?ボクは国司とは会ったことないんだけど。なんでみんな知って───



「陛下、朝の会議ぶりですわね」



 なんで民部卿がここにいるの?


ゲームの資料設定

●本日はお休みさせていただきます。

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