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灰の国の異世界戦記  作者: とりさん
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第三話 イベント:授業の一幕

主人公は国ごと異世界に転移したことをまだ知りません。

普通は周辺国との連絡が一気に途絶して人工衛星もロストすれば気づくはずですが。

この国は異世界転移などという荒唐無稽なお話よりも別の心当たり(最終戦争)があるので、事態の把握には暫くの時間がかかります。

 


「……ええ〜このようにして我が国は東側諸国の中でも大きな影響力を持つ国家となり……」



 ボクがいるのは【桜都】にある学校です。正確にはまだ校舎の外です。今さっき聞こえてきたのは窓の外に漏れた教師の声ですね。これから校舎内に入ってテキトーに選んだ教室で授業参観でもしてみようかな。

 なんでそんなとこにいるのかって?さっきまで会議があったんだけど、今は暇だからね。ぶらぶら〜ってしてたら此処に着いたってわけ。

 特にやることないな〜って、自室で過ごそうにも時空災害?ってやつのせいでネットも国外に繋がらないし。

 ボクの仕事はそんなにない。ただ毎日執務室に置かれた書類にサインを押すだけ。部下が優秀すぎて問題は直ぐに解決するし、ぶっちゃけボクがいなくてもこの国は回る。


 他の仕事は……そうだ視察とか。

 研究所とか軍事施設とかテキトーに気になった場所に行くことがある。

 別に視察の対象は国に関わる場所だけじゃない。ボクが個人的に出資したり、命令したプロジェクトとかもそうだ。

 必要ならボクは幾らでも国庫から引き出せるんだけど、それは別としてもちょこちょことやってた投資とか、ボク名義で個人所有の施設から入ってくるお金も結構ある。

 海外にも同盟国の東側諸国に投資したり、会社を立ち上げて経営したり。

 そうやって真っ当な方法で稼いだボクは、それなりに有名な資産家なのだ。どこかのロシア帝国皇帝みたいな大富豪だね。

 王国情報局の情報網を少し借りたり、侍従長にコワイお兄さんの相手(暗殺、その他諸々)を頼んだりすることはあるけど。世の中金の力だけでは成り上がれないのだよ。


 ボク名義(偽名)で登録されている会社ペーパーカンパニーが何処かで見たようなガタイのいいお兄さん(王国特殊部隊)をいつの間にか雇用してたり、その会社の私有地が後日、西側諸国で大問題になっているコカインの密輸拠点として摘発されたりしてるけど。

 まあボクの国民が被害を被ったわけじゃないし別にいいや。


 関係ないけど、最近妙に別の海外で設立した会社の収益が増えたり、兵部省とか近衛騎士団の凍結してたプロジェクトが再開されたらしい。……あれ莫大な費用がいるから凍結したんじゃなかったっけ?どっからそんな大金持ってきたんだろう?あのコワ〜イ民部卿(守銭奴)が支出を許すとは思えないんだけど。

 因みにコワ〜イって言った民部卿は時々パーティーに招いてくれるからボクは好きだよ。みんなが怖がってるから「コワ〜イ」って言っただけ。この国で作ってない……っていうか東側諸国では手に入らない珍しい食べ物とかもある。……密輸品((ボソッ


 ……この国は特権階級には優しいからいいけど周りの目には気を付けなよ?前任者もそれが原因で粛清されたんだから。

「王国臣民の努力を踏み躙った反逆者」って言われて、最後には大砲の的になってたよ。た〜まや〜(血肉が飛び散る(お目々グルグル))


 ……って思考もグルグル回してたけど校舎内に入ったみたいだね。別に何処でもいいんだけど折角ならさっき外から声が聞こえた教室にしよう。

 え〜とぉ……よし、この教室だね。おっじゃましまあ~す☆



 ガラガラッ!!



「……して、なので……ッ!誰で…す……か」



 あれ、教室が静かになっちゃった。いいよいいよボクに遠慮せず続けて。みんなもこっち見ないでよ、恥ずかしいから。

 ……それともなんだ?ボクを狙ってるのか?殺そうとしてるのか?お前らは敵か?

 目線を動かして窓の外を見る。場所は……多分ここから見えるビルの屋上……()()。彩度・明度共に低い緑色っぽい軍服を着た人。手に持ってるのはスナイパーライフルかな?こっちに銃口を向けている。

 ()()()()、ちゃんと護衛はついてる。ボクに攻撃したらする前に相手を撃ってくれるはずだ。ふぅ〜〜(安心)


 ……というかそうだ。ボクまだ何も喋ってないや。そりゃあいきなり見ず知らずの人間が教室に入ってきたらビックリするよね。しかも無言で。



「(いきなり入ってきてごめんね。ボクに気にせず授業を)続けて。(学校で教えられる授業がどんなものか)気になった(だけだから。)」



 これでよし。ボクも久しぶりに学校に来るからね。テキトーに空いてる席は……後ろのほうが空いてるね。


『アズマ王国』の学校は小学校から大学まで単位制が採用されている。小学生ぐらいの時期はまだ基礎教育が中心なので自分で講義を選択することはない。それから年齢が上がって来るにつれて、知識の習得率や学問の分野に差ができるので段々と各自に講義を選択させて、自分だけの時間割で行動することになる。

 その教育体制から教室も大人数が入ってくることを前提に講堂の様な形をとっている。ボクの入った教室もその例に漏れず、教卓や黒板から離れるにつれて階段状に席と机が置かれている。

 今回ボクが座ったのはその一番後ろ、この教室の中で一番高いところだ。本来なら後ろの席が埋まって前の席は誰も座らないと思うんだけど、みんな真面目なのか前半分に殆どの人が座ってる。偉いね。



「……コホンッ!!でっ、では授業を再開します。さ、最初から復習がてら説明しましょう」



「──灰天歴801年に設立された『国家連合』の成立とそれによる国際交流の活発化は、我々を含めた殆ど全ての国の経済・技術・文化・外交・生活といったあらゆる場面に大きな変化をもたらしました。

『国家連合』による資源の分配、『国家連合』による外交問題の調停、『国家連合』による技術革新。

 我が国の急速な発展は偉大なる国王陛下の御導きの他にも『国家連合』から無尽蔵に資源・物資が供給されたことが大きいでしょう。

 当時の『国家連合』は加盟国間の重要会議には各国の国家元首──我が国だと国王陛下ですね──のみが直接参加していた為、どのような議論が行われていたのかは不明ですが、その後の変化を見れば国王陛下の外交手腕は疑うべくもないでしょう」



 あー、あの頃か。あの頃は技術的にもまだリソースが限られていたからね。地球でいうところの19世紀前半?ぐらいの時代だからね。技術が進んでるボクの『アズマ王国』みたいな国もようやく石油の商用利用が始まったばかりだし。

 テクノロジーツリーの解禁に注力していたボクの国さえここまでの技術しか持ってないのに、他のプレイヤー国家は遅いとようやく石炭採掘を始めた国もあった。

 だから『国家連合』が設立された時、ボク達プレイヤーは一つの契約を結んだ。他のプレイヤーもそれぞれ別々の内容だけど基本的に内容は同じだ。


「必要なものは全て提供する。だからそっちも提供できるものを全て提供しろ」

 ある国は資源を、ある国はそれを整備する資金を、ある国はそれを輸送する手段を、ある国はそれから生産できる物資を、ある国はそれを守る軍隊を、ある国はそれらを成立させる裏工作を、ある国はそれら全てに使う技術を、ある国はそれらのための土地を。


 ボクと『アズマ王国』が提供したのは技術だった。今まで以上に研究開発に注力した。実験のための資源も場所も情報も、その全てが提供された。

 国内の第一次産業は無尽蔵に提供される資源を前に壊滅状態に陥り、第二次産業も国際市場での競争による技術革新を目的とした最低限のものになった。

 酷い時なんて国防すら他国に委託してたからね。【六大企業(ヘックス)】が独自の軍事部門を保有するようになったのもこの時期からだ。



「そして国王陛下によって立案された『五か年計画』による産業構造の転換とそれに伴う人口比率の変化によって我が国は技術立国の地位を確立していくことになります」



 そう。こうやってボクの『アズマ王国』は変わっていた。否、変わらざるを得なかったのだ。

「自国で最低限の自給能力を保持する」

 それが許されたのは土地・人口・経済・資源・技術が全て自己完結できる国家だけだった。そんな国家でさえ、身銭を切って『国家連合』へと協力した。

 北海道くらいの面積と二百万人程度の人口と必要量には到底足りない僅かな資源しかなかった『アズマ王国』は我儘を言える立場ではなかった。

 ただでさえプレイヤー達の一存で世界中が動いているのだ。ここでヘタな手を打てば待っているのは滅亡なのは火を見るより明らかだ。



「灰天歴820年には我が国の科学者が主任を務めた国際プロジェクト【フォエボス計画】によってロケットを用いた世界初の大気圏突破に成功するなど、栄華を恣にした『国家連合』はしかし、灰天歴820年代後半にはその栄華に影を落とすことになります」



プレイヤー()プレイヤー()によるプレイヤー()のための世界統治。」

 ───神はいつか人の手でこの世から去っていく。

 そんな単純な事実に気付かなかった自称神様(プレイヤー)がいたらしい。



ゲームの設定資料

●種族

ゲームの初期設定を行う時、自分の国家に属する最初の種族を選べる。

ヒューマン、エルフ、ドワーフ、コボルト、オーク、ゴブリン、ワーウルフ、ハーピー、妖精、トロル、オーガ、ノーム、ハーフリング、ハーフエルフ、ビーストマン各種など、無数に存在する。

種族ごとの特徴を活かして国家の繁栄に役立てよう。


●ハイヒューマン

『アズマ王国』の支配人種。

「アズマ人」や「アズマ民族」と呼べばこの種族のことを指す。

「ハイ」と付いている通りヒューマン……つまり人間の上位種、或いは上位互換。

個人としての能力が人間よりも高く、様々な作業で高い効率を叩き出す。平均寿命も150歳ほど。


しかし弱点もあり、その能力の高さが原因で集団での生活は苦手とされる。

また、人間と比べて出生率が低く、人的資源の観点から見て価値が高い。


人口を数字として見てジャブジャブ消費する戦略シュミレーションゲームとは相性が悪い種族。

もしこの種族でやるなら内政特化プレイをしよう。


イメージは某機動戦士アニメ「ガ◯ダムse◯d」のコーディネーターみたいな存在。遺伝子調整とかの改造処置はしていない素の状態でコレ。


技術が進歩すれば、当然その手の技術も使えるようになるので更に各種能力値が向上する。

その頃には出生率の問題も解決する……はずだった。

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