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灰の国の異世界戦記  作者: とりさん
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第二話 国家方針:枢密院会議

 


『アズマ王国』の首都【桜都】。

 ハルマゲドン(最終戦争)の後、核攻撃によって完全な更地となった此処には再び首都機能を復活させる為に王宮が最優先で建てられることになる。

 そしてその王宮と一体化させる様に住居や商業施設、そして港湾施設が建つことによって無事(?)に再建されたのがこの都市である。


 この都市を一言で表すなら───要塞、これに尽きる。

 アスファルトで覆われた地面、くすんだ色のコンクリートでできた建造物群。

 道に沿うようにして規則正しい間隔で並べられた街灯には国旗が吊るされ、またその両脇に聳え立つ建造物にも屋上から国旗が描かれた垂れ幕が吊るされている。


 国旗に使われる紅と黄金色、そして灰によって構成される都市、それが桜都だった。

 この街を散歩するだけでも息が詰まりそうだが、この都市はその見た目通り、要塞としても機能する。

 爆弾、ミサイル、砲撃、爆撃。

 これらはその分厚いコンクリートに阻まれ、まともに内部へのダメージを与えることができない。それは前述した攻撃手段の前に「核」が付いても同じことである。

 更に言えば、地下通路で殆どの建造物が繋がっているので緊急時にはシェルターとしても機能するのだ。


 さて、今ボクがいる場所【サクラ宮殿】、通称【王宮】について話そう。

 外見上にはスターリン様式が反映されながらも建材(コンクリート)のせいで威圧感と圧迫感しか感じないこの宮殿は、言うなれば【都市型要塞】だろうか。

【王宮】の内部にはボクの生活空間は勿論のこと、各省庁の本部、王国軍の総司令部、地下シェルター、会議室、謁見の間、玉座の間、巨大倉庫、裁判所、刑務所、果てには地図に書いてない部屋(裏仕事)まで。


 こんなものじゃ終わらない。外部に露出しているが、『王宮』と融合するようにして王国議会が設置され、その側には近衛騎士団の管理する訓練施設がある。

 それに加えて【王宮】の最上階はガラス張り(核兵器程度ではびくともしない)の半球ドームで覆われて内部に人工的な手法で再現した自然環境が存在する。(王宮)の中でピクニックができるよやったね。


 そしてこれらの施設を運営・管理・維持するのに必要なスタッフはどうしているのか、それが【王宮】の周囲に拡がる建造物群の正体だ。全て同じ灰色(もしかしたら違いがあるのかも知れないがボクには見つけられなかった)の建造物は公営住宅と呼ばれる……国から提供される無料の住居だ。

 更にその周りには病院、研究所、レジャー施設、雑貨店、図書館etc…。

 海の方へと目を向ければ王国海軍が駐留する軍港。

 内陸へと目を向ければ王国空軍が管理する軍民共用の空港。


 物資の供給───それを外部に完全に依存する代わりに軍事と政治を司る【王宮】を支援する。それがこの【桜都】の存在意義であり、同時にこの【桜都】が成立する条件でもあるのだ。

 人口は約十万人。王国臣民の()()()()が生活する国内()()()()()を持つ都市。


 そんな【王宮】の玉座の間でボクは───



「そ、それでは只今より、……だっ、第七回時空災害対応会議を開始しま…す」



 ───会議に参加していた。とは言っても何も話すことはないけど。



「宰相殿下」



 早速何処かから声が上がる。因みに『殿下』というのは皇族や王族など、天皇・皇帝に次ぐ地位にある人物への敬称らしい。

 国王であるボクの敬称は『陛下』、つまり『殿下』というのはボクの後継者───つまりボクの子供であるということだ。

『宰相殿下』、これが言い間違えや勘違いでないとするならばコレ(宰相)は───



「この会議に果たして意味はあるのですか?何度も同じ議題で話し合って……我々にも仕事があるのですよ」

「ワタクシもその意見に賛成ですわ。なんの進展もないのにこれ以上議論の余地はありませんことよ」

「自分も同意ッスよ。昨晩連絡の途絶した近隣の国家に艦隊を派遣しましたッス!明日には報告ができるので待っててくださいッス!それに──」



 ───ボクの後継者、つまりボクの子供であるということ。

 ……え?記憶にないよ。ホントに。いつ産まれたのか分からないし、誰との子供かも分からない。

 ボク(アバター)ボク(プレイヤー)になる前にはいなかった。つまり産んだのはプレイヤーの方のボク。

 因みに記憶の方は全くアテにならない。ところどころ夢でも見てたみたいにゴッソリと抜け落ちてるからね。


 穴まみれの記憶の中でも()が抜かれた記憶はない。

 ならば養子?その線は薄い。なぜなら明らかに生後数カ月のちっちゃい赤ん坊を寝かし付けてる記憶がサルベージできたから。

 そんなに小さいなら養子だったとしても孤児院に預けてるし、そもそもなんで養子を受けたのか理由がない。きっと周りも止めるし。それに───



「──国王陛下も連日の会議に参加なされているッス。お疲れのようですし体調を崩されたらどう責任を取るつもりッスか?」

「……分かりました。では会議はこれで終わりとします。兵部卿、明日調査結果が届き次第再度枢密院の召集を行います。よろしいですね?」

「それがいいと思うッス」

「了解した」

「分かりましたわ」



 ───これ、数十年前からずっと同じことを考えてるからね。毎回毎回会う度にこんなこと考えてもしょうがない。

 何度考えても分からないものは分からないんだ。時にはサラッと流すことも大切。

 別に子供がいようが父親が不明だろうが()()()()()()。それで何か困ったこともないしね。

 ……って考えてたらもう終わりそう?速いね。いつもは短くても1時間ぐらいしてるのに。



「私もその意見に同意します」

「……はい。賛成多数。これより第七回時空災害対応会議を閉会します。お疲れ様でした。陛下もよろしいですね?」



 あっ、やべ。何の話ししてるか聞いてなかった。けどまあ、こういう時には……



「……ん、任せる」



 こう言っとけば解決だね。何も分かってないのにボクが指示を出すよりも優秀な彼らがやった方が絶対上手くいくし。



「それでは解散ということで」



 宰相がそう言うと他のメンバーは次々と玉座の間から出ていく。なんかみんなめっちゃ宰相を睨んでるような気がするけど。

 なんかしたの君?今に隙を見せたら刺されそうだったよ。

 一応ボクの子供らしいからね。あまり殺意を向けないであげて。




 §

 †イベント†

【第七回時空災害対応会議、そして疑念】


 幾重にも厳重な警備が張り巡らされた【王宮】にて、今日もまた会議が開催された。枢密院のメンバーと国王陛下が参加するこの会議では、最初の日を除いて何ら会話の内容に変化がない。

 その為、多忙の中集まった枢密院のメンバーは何ら役に立たないこの会議に苛立ち、玉座の間には重苦しい雰囲気が立ち込めている。この雰囲気の中でもいつも通り、平常心を保って会議に出席しているのは国王陛下ぐらいだろう。


 枢密院───国王陛下の重臣のみが所属するこの組織は、国王陛下に次ぐ、2番目に重要な存在だ。

 各省の大臣と宰相、近衛騎士団長官、王国情報局長官、そして必要性に基づいて一時的に召集される()()()によって構成される。

「この国には二種類の人間が存在する。国王陛下か臣民かだ。」の言葉通り、国王陛下を除けば臣民は平等な存在であり、国王陛下に傅く事こそが臣民の務めなのだ。だから───


「──会します。お疲れ様でした。陛下もよろしいですね?」

 ───だからこうやって()()()()()()()()()()()

(なんで貴様は勝手に会議を終えている?わざわざ連日連日御足労なさった国王陛下がおられるのだぞ。どうして()()()()()()()一方的に打ち切り、あまつさえ事後承認を迫ろうとしている?)


 服部(はっとり)刑部卿は最近の宰相の振る舞いについて不審感を隠せなかった。

 宰相は国王陛下の御意志を蔑ろにしているのではないか、そんな気がしてならなかった。

 横を見ると兵部卿も同じ事を考えていたのだろう。宰相への苛立ちを顕にしている。近衛騎士団長官に至っては今にも掴みかからんばかりだ。国王陛下()の御前でそんな真似を(狂信者)がするとは思えないが。


 ともあれ、会議は終わりのようだ。仕事無限にある、時間は有限だ。

 疲れた体に鞭を打って立ち上がりながら服部刑部卿は思考をめぐらす。



 (一つ、()()を追加するべきだ。)

 (今は忙しいのだ。一刻も早く仕事を消化せねば。)


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 →(一つ、()()を追加するべきだ。)



ゲームの設定資料

●枢密院

国王直属の諮問機関。

固定メンバーは宰相、大臣、近衛騎士団長官、王国情報局長官。

メンバーからも分かる通り、『アズマ王国』における最高幹部の集まり。

ただの諮問機関ではなく、国王の介入がない時は国王から大きな権限を委任されており、最高意思決定機関として機能する。

つまり、枢密院とは内閣と家臣団を兼ねた組織である。

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