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30 俺は経験から学べるもうすぐ13歳

今は学年末試験に向かって勉強中。

姉さん達が真面目に勉強しているので首席の維持は無理、4位確保を目指している。

お勉強は嫌いな姉さん達だけど、ここ1番の集中力はあるし、何よりも要領が良い。

俺は教授の機嫌を取るのが苦手だし、礼儀作法がめっちゃ苦手なので足を引っ張るのは間違いない。

下手に勝ってしまうと後が怖いけど、めっちゃ頑張っても全然勝てる気がしないので程々に頑張った。

結果は学年総合4位、貴族科2位。

まあそうなるな。



上の姉さん達4人の卒業が決まった。

領地の仕事が溜まっているらしく、すぐに領地に行きたいと言ったので卒業の翌日に俺が転移で運んだ。

領主というのは仕事が多くて忙しいらしい。

人には向き不向きがある。

古文書にも“もちゃは、もちゃ”とか“テッキン材ってキショー“とかいう諺があった。 

書類仕事が苦手な俺に領地経営は無理。

代官に任せて手を出さない方が良さそうだ。

婚約関係の準備がある日は俺が領地まで姉さんを迎えに行く事になっている。

転移魔法をもっと練習した方が良い、という父さんの意見で、最近の送迎は全て俺の役目。

父さんが下着作りと洗濯で忙しいからという理由だけど、ちょっと疑わしい。

父さんが時間を作ってこっそりと新しい魔法に取り組んでいるのを俺は知っている。

面白い魔法が出来たら教えて貰えるから俺に異存は無い。

姉さん達も300㎞程度の中距離転移は出来るが、1000㎞を超える長距離転移には魔力量が足りない。

中距離転移でもごっそりと魔力が減るからと、余程急ぐ時以外は俺に頼む。



子供達の中では飛びぬけて魔力量が多いので今では俺がキラ家の運送係。

下着作りと“ヘイ、タクシー”は男の仕事なので誇りを持っている。

下着を作ること自体は魔法成形なので好きだけど、姉さん達のサイズを計るのはちょっと怖い。

空間魔法を使って計るから正確なのに、何故か”もっと細い筈“などと文句を言われる。

勿論、“そうですね、姉さんの言う通りです”と言って計測通りのサイズで作る。

伸縮性があるので、小さなショーツの正確なサイズは姉さんには判らない。

古代語で”知らぬがほっとけ“というスキル。

姉さん達の事は大好きだけど、近くにいると危険も多い。

頼まれた事には全力を尽くすけど、余計な事をして墓穴を掘ってはならない。

古代王国では“藪をつついて、ヘ~を出す”と言うらしい。

藪をつつくとめっちゃ臭い“ヘ~”という魔虫が出て来て危険らしい。

余計な事を言って睨まれるような愚かな真似はしない。

父さんも“クンシ危うきに近寄らず“って言ってた。

良く判らないけど“クンシさんという人は生涯女性には近づかなかった“という故事から生まれた古代王国の言い回しらしい。



女性は古代王国の時代から力を持った存在だったらしい。

イーソロクという偉い将軍も、“男は天下を動かし、女はその男を動かす”と言っている。

“三銃士の教え“も読んだぞ。

“幼時は母に従い、結婚したら妻に従い、老いては娘に従う”という人生訓の物語。

女性は胸と膝という男が絶対に逆らえない最終兵器を持っているので、勇者ダルタ~ニアンでさえも勝てなかったらしい。

どうだ!

この1年間、魔術書以外の古文書も沢山読んだから俺はめっちゃ賢くなったのだ。

えっへん!

父さんも“三銃士の教えは俺の人生そのものだ“と言っている。

俺も尊敬する父さんの様に生きたいと思っている。

俺は経験から学べるもうすぐ13歳、俺ならきっと出来る筈だ。




夏の長期休みに入るとすぐ、ルナ姉の領都キラで俺達の叙爵披露が行われた。

俺は今立派な服を着せられて大広間に立っている。

年越し休みのあいさつ回りの時よりも2段階位グレードアップした服。

挨拶回りの時は普通の貴族服で、今回は正式な礼服らしい。

子爵叙任が決まると直ぐに母さん達の指揮の下、姉さん達は勿論侍女達も総出で俺の服を決めてくれた。

作るのは公爵家御用達の仕立て屋さんなのに、サイズ測定や仮縫いなどのたびに30人以上が集まって俺を着せ替え人形にしてワイワイ騒いでいたのは遠い昔。

遠い昔なのは、ただ思い出したくないだけ。

俺の服なのに、何故か俺の意見は一度も聞かれなかった。

解せぬ。

それはともかくとして、貴族の礼服は体にぴったりしているけど布地が硬いし、刺繍や飾りが一杯付いて重いから肩が凝る。

部屋の中で立っているだけなのに既に疲れている。

「ジャージに着替えちゃダメ?」

パコン!

隣に立っているレブン姉にこっそり聞いたら、無言で頭を張られた。



今回はアウトマンとベッツも子爵に叙任されたので一緒に立っている。

ルナ姉は寄り親として、お爺さん達4人は後見人として俺達の斜め後ろ横に立っている。

リヌ姉達3人の伯爵も領地から駆け付けてくれた。

運んだのは俺だけど。

広間には西部貴族連合と南部貴族連合に所属する伯爵以上の高位貴族達が勢揃いしている。

入室の際に大音声で名前と爵位を読み上げられ、一人一人が俺達の所に来て挨拶してくれたので、名前や爵位を覚えるのが苦手な俺でもさすがに今は覚えている。

明日まで覚えている自信は全然無いけど。

父さんほどでは無いけど、俺も名前を覚えるのは苦手。

古代王国の金言や格言は結構覚えられるのに、何故か人の名前が覚えられない。

うん、小さいことは気にしない。



いよいよ叙爵披露が始まった。

「この度SSランク冒険者キラ閣下の子供達8人、そしてかの有名な公正化特務部隊を率いて東部貴族の不正を摘発したアウトマン男爵、ベッツ男爵の10人がキラ伯爵を寄り親とする子爵となった。」

最上位の公爵であるアシュリーお祖父さんが俺達を紹介すると、会場から盛大な拍手が起こった。

壇上に並んだ10人の新子爵全員が一斉に胸に掌を当て、来賓の高位貴族位向かって軽く体を傾ける上位貴族への挨拶をする。

礼儀作法の実習でも習ったけど、事前に王都屋敷の執事長からもう一度教え込まれたので綺麗に挨拶が出来た、かな?

判らん。

来賓として来てくれたのはミュール川の西に領地を持つ伯爵以上の高位貴族達。

子爵である俺達よりも身分が上なので、俺達は何も話さなくて良いから楽。

身分が下の者は自分から話してはいけないそうだ。



アシュリー公爵に代わってルナ姉が前に出る。

「先日ここに並ぶ10人の叙爵届けを王家に提出し、無事に承認されました。これからはキラ家寄り子の子爵として西部地域発展の為に力を振ってくれると確信しております。皆様には新子爵達への御指導ご鞭撻、何卒宜しくお願い致します。」

ルナ姉が寄り親として挨拶すると再び盛大な拍手が巻き起こる。

ルナ姉に代わって、辺境伯で西部貴族連合の盟主でもあるキュラナーお祖父さんが舞台の中央に立った。

「キラ侯爵家は子爵家10家の寄り子を持つ西部地域最大且つ最強の貴族家となった。さらにリヌ伯爵、ドナ伯爵、リラ伯爵はキラ侯爵の妹で4姉妹は極めて仲が良い。」

辺境伯が一旦声を止め、一同を見回した。

「ここにお集まりになられた諸侯は既にご存じと思うが、王国財政の行き詰まりから西部地域に配備されていた国軍がここ数年で大幅に削減された。周辺諸国はこれを侵攻の機会と捉えて兵力を増強している。我々西部貴族一同は周辺諸国から領地を守る為の兵力増強に励んでいるが、必要な資金の調達に頭を悩ませているのが現状である。ところが、この国難と言える状況にもかかわらず、東部貴族達は西部地域の国租率引き上げを王宮に要求した。」

キュラナーお祖父さんが話を切り、もう一度一同を見回した。



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