7 大きな鳥さんを拾った
読んで下さっている方が少しずつではありますが増えている事を嬉しく思っております。
気楽に読み続けて頂けるようにこれからも頑張ります。
応援宜しくお願いします。
翌日の昼前、ペーストさんを案内に警備隊5人が馬でやって来た。
死体や捕虜を運ぶ部隊はもう少し後で、先に盗賊のアジトを攻撃するそうだ。
盗賊の尋問をしたジャムさんを案内に警備隊5人と一緒に俺もアジトに向かう事になった。
盗賊の自供ではアジトにいるのは盗賊8人と捕虜の女性7人。
馬をアジトに急がせる。
俺は警備隊のおっさんの前に抱きかかえられるようにして馬に乗っている。
馬に乗った事は無いし、そもそも鐙に足が届かないので一人での乗馬は無理だった。
俯瞰魔法で観ると洞窟の前で男達が馬車に荷物を積み込んでいる。
「500m先に盗賊のアジト発見。馬車3台に荷物を積み込んでいます。」
伝声魔法でジャムさんと隊長さんに報告。
伝声魔法は指向性を持たせた拡声魔法、ジャムさんと隊長さんにしか聞こえない。
「急ぐぞ。」
ジャムさんの声で速度を上げる。
俺達がアジトに到着した時、盗賊達はまだ荷物の積み込み中だった。
剣を抜いた5人の盗賊は俺の気弾で殲滅。
一人が降参して捕虜となった。
洞窟の中には盗賊が2人、捕虜の女性7人は全員が無事?
状況は判らないが、探知魔法で女性7人が生きているのは確認出来た。
ジャムさんと警備隊3人がアジトの洞窟に入った。
すぐに隊長が戻って来た。
「盗賊は片付けた、中は捕虜の女性だけだ。カルムはキラを連れて戻れ。後続が来たらここに案内しろ。」
後続部隊と連絡する為に隊員1人が俺を乗せて商隊に戻った。
苦い顔をしていたので捕虜の女性達に何かがあったらしい。
ジャムさんは護衛リーダーとしてアジト探索の立ち合いをして、押収した品物と書きとめたリストに間違いが無いかを確認する為に残った。
押収した品物は基本的に討伐した冒険者に所有権があるらしい。
商隊に戻って暫くすると後続の馬車部隊が到着した。
後続部隊の馬車3台がアジトに向かい、盗賊の首領と副長、裏切り冒険者2人を乗せた警備隊の馬車と共に商隊は出発、俺達は次の街でジャムさんを待つ事となった。
次の街では警備隊への説明と冒険者ギルドへの報告。
盗賊達の自供と照らし合わせて正式な書類を作るらしい。
難しい事は判らないので報告は“神速の翼”の皆さんに丸投げ、俺の魔法についてはギルマスに言われた通り冒険者の秘匿で押し通した。
夜遅くに宿に入ったが皆疲れ果ててバタンキュウだった。
ジャムさんは夜遅くに帰って来たらしい。
俺は寝ていたので知らん。
朝食で会ったジャムさんは酷く疲れた顔をしていた。
ペーストさんとコソコソ話をしていたが、どうやら人質になっていた女性達の事で何かあったらしい。
朝食後にまたギルドからの呼び出しがあった。
「盗賊達の自供とも一致はしているのだが、どうにも納得出来ないんだ。本当に戦ったのはキラ君一人なのか?」
「間違いありません。」
ペーストさんが断言する。
ジャムさんが疲れているのでペーストさんがリーダー代理。
「しかし、盗賊25名にCランク冒険者2人だぞ。しかも盗賊のうち2名は随分と離れた所にいたそうではないか。」
「3~400m程離れていました。」
「そんなに遠くの敵をどうやって倒したのだ。そもそも隠れて見張っていたのだからどうやって見つけたのかだ。」
「そこは冒険者の秘匿として我々にも教えてくれませんでした。気が付いたら敵が全滅していたと言うしかないです。」
昨日と同じやり取り。
「盗賊のボスも同じ供述だからそうなんだろうな。いやすまん、君らがいるうちに少しでもキラ君の情報が欲しかったんだ。今回の活躍でAランク昇格の話も出ているが、冒険者登録をして漸く1年経つかどうかの新人。しかもわずか8歳だからな。」
「ともかく誰よりも早く盗賊を見つけたのはキラで、人数も正確に伝えてくれていた。冒険者の裏切りに気付いて剣を防いだのもキラ。キラが居なければリーダーとバターは死んでいました。当然我々3人も殺されていたでしょう。」
「・・確かにそうだな。」
「恐らく彼の魔法は敵の不意を衝くものなのでしょう。だから広まってしまったら威力が半減する。そう思ってストンのギルマスは”冒険者の秘匿“を指示したのだと思います。」
「確かにそういう種類の魔法がある事は知っている。だけど8歳だよ、8歳。うちの息子と同い年なのに違いすぎるんだよ。うちの息子だってキラ君の秘密が判ればAランクになれるかもしれないのだぞ。」
「「「・・・・」」」
しつこく問い詰めていた理由が判って“神速の翼”の人達もお茶を持って来た職員のお姉さんも固まっていた。
このままでは拙い。
仕方が無いので最も大事な事をギルマスに教える事にした。
「もうすぐ9歳です。」
きっぱりと言い切った。
これははっきりさせておかないといけない。子供の1歳違いは大きいのだ。
職員のお姉さんがお茶をひっくり返し、“神速の翼”も我に返ってくれた。
うん、やったね。
話すのが苦手な俺だが、言うべき時は言うのだ。
ギルドを出た後、“神速の翼”のみんなに頭を撫ぜられた。
ちょっと子供っぽいけど、頭を撫ぜられると自分が認められたようで嬉しかった。
商隊はすぐに出発する予定なので大門前の広場に行くともう5台の馬車が待っていた。
「ご苦労様でした。女性達が大変だったそうですね。」
「まあそうなる気持ちも判りますので、・・まあそうですね。」
俺には聞かせたくない話のようなので知らぬふりをした。
開門と同時に商隊が出発。
5台の馬車の御者席には商人さんと冒険者が一人ずつ。
俺は例によって真ん中の馬車の屋根の上。
色々あったが予定より5日遅れの12日後、目的地の領都に到着して商隊は解散となった。
“神速の翼“と一緒にギルドに行き、依頼完了の手続きをして宿に戻る。
今夜は食堂の一画を借りて打ち上げパーティー。
初めての打ち上げパーティーにワクワク感が高まる。
「「「「かんぱ~い!」」」」
グイッとエールを飲み干す“神速の翼“。
俺一人だけジュース。
いくら異世界でももうすぐ9歳に酒は出してくれなかった。
ぐぬぬ。
「ねえ、ポーションを作れるなら治癒魔法が使えるのよね。」
マーマレードさんは俺が気に入ったらしく、横に座って甲斐甲斐しく世話をしてくれる。
もっとも20歳過ぎのお姉さんともうすぐ9歳の俺なので子供の世話をしているつもりなのだろう。
「うん。」
「薬師の資格は持っているの?」
「中級薬師の資格ある。」
「凄いじゃない。将来は特級薬師ね。」
「特級薬師って何?」
「薬師の一番上の人よ。欠損再生の特級ポーションが作れるたり、流行病の特効薬を作った人の中から国が最高の薬師として認定するの。貴族扱いなので年金が貰えるし希少な素材が手に入った時は優先的に購入出来るのよ。」
年金は紐付きみたいだからいらないけど希少素材は欲しいかな。
でも目立つと自由に動けなくなるからパス。
目立つのはダメ、絶対。
「そうなんだ。」
「興味無さそうね。」
「旅しながら素材を集めた方が楽しそう。」
「キラ君なら自分で希少素材を集めちゃいそうね。」
「希少素材は運、判んない。ポーション作るより剣や魔法の練習が楽しい。」
「剣も使えるの?」
「小剣をちょっと。毎日素振りしてる。」
「剣で魔獣を倒した事はあるの?」
「・・・無い。」
そう言えば剣で戦ったのは騎士団長との模擬戦だけ。
ストンに帰る途中で魔獣と実戦するのもありだな。
また一つやりたいことが出来た。
「自分の実力を知っておくのも大切よ。私達は明日から4日間は暇だから、ジャムとペーストに剣を教えて貰うといいわ。」
「おう、ギルドの訓練場なら冒険者も多いから見学だけでも勉強になる。この街は護衛依頼専門のパーティーが多いから、魔法使い達の練習も見られるぞ。」
護衛中は魔力を温存し、依頼完了後に練度を落とさないための魔法練習をするらしい。
他の人の魔法が見られるのは嬉しい。
「お願いします。」
ギルド裏にある訓練場は体育館程の広さで、2組の冒険者が模擬戦を繰り広げていた。
空いているスペースでジャムさんと向かい合う。
得物はギルドに用意されている刃を潰した剣、沢山ある中から適当な重さの小剣を選んだ。
「思い切り打ち込んで来い。」
ジャムさんの言葉にちょっとだけ身体強化を掛けて上段の構えから振り下ろす。
ジャムさんに流される剣を素早く返して切り上げる。
「良い反応だ。次は俺からも行くぞ。」
俺の剣を受け流したジャムさんの剣が俺を薙ぎ払う。
剣を立てて何とか受けたもののめっちゃ重い。
ジャムさんはまだ身体強化を使っていないし、剣士では無く斥候なのにこの重さ。
素の筋力が強いのだろう。
身体強化は素の筋力×強化率。素の筋力が低ければ強化率を上げても強さは知れている。
自分の筋力の無さを実感できる模擬戦だ。
ただ、筋力が低ければ速度を上げれば良い。
ジャムさんの剣筋をしっかりと見ながら瞬時に必要な所に魔力を集めて急速拡大する。
初めてポーションを作った時にコップを内側から破壊した感じ。
今までに何度も練習しているが、実戦形式で使うのは初めて。
足の裏なら地面を蹴る力が強くなるし、剣を握っている拳の上なら剣速が急に上がる。
速さが急に上がるので受けるタイミングがずれる筈。
「おっと、なんだと。おい、おい、これは何だ?」
「冒険者の秘匿です。」
圧され捲っていた俺が急にジャムさんを圧倒し始める。
「と、とと。おっと、おい。」
それでも俺の剣を受けたり躱したり。
剣士では無いCランクでこれ程剣を遣えると言う事は、Aランクだと手も足も出ない。
再度自分の現状確認が出来た。
もっと素の筋力を鍛えよう。
「終わり、終わりだ。」
どちらの剣も決め手に欠けたままジャムさんの言葉で模擬戦が終わった。
「これだけ打ち合ってキラは疲れないのか?」
大きく息をしながらジャムさんが呆れている。
「持久力は有る? ペーストさんお願い出来ます?」
「おいおい休憩はいらないのか?」
今は魔力拡大の感触が掴め始めた所なので、休憩よりも打ち合いの回数を熟したかった。
魔力を集めた場所によって効果がどう変わるか、魔力の拡大方向はどうか。
確認したいことは沢山ある。
「うん。模擬戦でやりたい事、沢山ある。」
「疲れたら無理せずに言えよ。」
「うん。」
ペーストさんに模擬戦の相手をして貰う。
剣士だけあって一振り一振りが鋭いし重い。
剣が当たる瞬間に剣の下側で魔力拡大を使うとペーストさんの重い剣でも受ける事が出来た。魔力量を増やしたらペーストさんの剣を跳ね上げる事も出来た。
受け流すときに剣の背で魔力拡大を使うと返しの剣速が上がる。
「休憩だ。」
ペーストさんの息が上がった。
「ありがと、ございました。」
「昼食にしよう。」
ギルドの食堂で昼食となった。
「魔法だけかと思ったら剣も凄いな。」
「とてもじゃ無いが8歳とは思えん。」
「もうすぐ9歳・です。」
「そうだった、もうすぐ9歳だがもうすぐ20歳と言っても良い位力強い剣だったぞ。」
「特に足運びの変化や剣速の変化はベテランの剣士並みだ。地道に筋力を付ければ王国でも有数の剣士になれるぞ。」
褒められた。
素直に嬉しい。
「ありがと、ございます。」
「ただ、模擬戦と実戦とでは違う。特に人間相手だと言葉による揺さぶりや、思ってもいないような汚い手を使って来る。出来るだけ実戦経験を積んでおくのも必要だぞ。」
「うん。」
もうすぐ9歳なのに実戦経験が少ないのは拙い。
今度盗賊に出会ったら剣も使ってみよう、俺は心にメモをした。
午後は魔法の見学。
魔法の訓練場も体育館程の広さで、隅に魔法使いが立って反対側の壁に描かれている的を狙って魔法を撃つ。
「結界魔法で守られているので的が壊れないの。いちいち的を立てていたら時間が勿体ないし何よりも的代が高くなるからね。」
マーマレードさんが教えてくれた。
建物自体にも薄い結界が掛けられているが、的のある壁には強い結界が張られている。
詳しく視てみると建物の4隅に結界の魔道具があって建物の内側全体に結界を張っている。出入り口だけを綺麗に切り取ってあるので相当な技量の魔法使いが作ったらしい。
色は俺と同じ白。聖属性の白ではなく透明感のある白、光属性?
奥の壁を視る。壁の4隅と中央に魔道具が設置されている。王城など広範囲の結界や強力な結界に使う5角形の配置。壁のすぐ前に張られている結界の色はやはり透明感のある白。
結界の後ろに的が描いてあるので結界に向かって魔法を撃つ感じになる。
使われている魔法陣はお祖母さんの本で見た魔法陣と同じ。
たぶん作ったのはお祖母さんなのだろう。
3人の魔法使いが手前の壁際に立ち、的に向かって魔法を撃っている。
3人共風魔法のようで、中級魔法の風槍が1人、初級魔法の風刃が2人。
良く見ると同じ風魔法なのに魔力の色が違う。
風刃の一人は濃い青、他の2人は少し薄い青。
風槍の人は少し緑っぽい?
杖の先に集まった時の魔力の大きさも3者3様。
大きいから色が濃いと言う訳でもない。
練度なら風槍の人なのだろうが、色は3人の中で1番薄い。
魔力量の関係なのか、次々と魔法使いが交代して練習をする。
風魔法が多いが、土魔法や水魔法の人もいる。少ないが火魔法の魔法使いもいた。
それぞれの個人によって魔力の色が微妙に違う。
同じ魔法使いでも使った魔法によって色が微妙に変わっていた。
魔力の色と魔力量や練度の関係については多くの人に依頼して実験しないと正確には判りそうもない。とりあえずは色々な人の魔法を見て自分で考える事にした。
「今日はありがと、ございました。凄く勉強になった。何を学ぶか、見えて来た。」
「役に立ったなら良かった。これからも俺達に出来る事があればいつでも声を掛けてくれ。出来る限りの協力はするからな。」
「ありがと、ございます。」
「頑張ってSランクに上がるのよ。私達はSランク冒険者と知り合いだってみんなに自慢するんだから。」
「ちょっと難しい。こっそりのんびり生きるつもり。」
「こっそりのんびりドラゴンを拾って来ればSランクだ、問題無い。」
みんなで大笑いした。
模擬戦の翌朝、“神速の翼“に見送られて領都を出た。
ストン迄はおよそ500㎞。
盗賊討伐に成功したら帰りは自由にしていいという許可をギルマスから勝ち取っている。
今の俺は自由の身。
ストンに帰るまでにやって見たかったことを色々試すことにした。
とりあえず走る。
魔力拡大を色々と試しながら走る。
慣れて来た所で森に入る。
探知魔法を目一杯に広げながら剣で次々と邪魔な枝を払い、森の木は魔力拡大を使ってフェイント風に躱して走る。
今の目標は剣と魔力拡大に慣れる事。ついでに筋力の増大。
もうすぐ9歳。
9歳としての実力を付けなければならない。
時々立ち止まり探知魔法で見つけた魔獣を剣で倒す。
魔法なら簡単な相手でも剣だと結構苦労する。
魔獣を倒すと休憩がてらに解体。そしてまた森を走る。
二日目に剣が折れた、ぐぬぬ。
剣が無ければ拳がある。
身体強化を最大にし、結界を張った拳に魔力拡大を併用して魔獣を殴り飛ばす。
カウンターバリアの拳版。
足に結界を張って森猪を蹴り飛ばしたら森猪の頭が1撃で爆散した。
これなら9歳児に相応しい?
前世の9歳児よりは遥かに強いがここは剣と魔法の世界。
慢心はダメ、絶対。
魔獣を殴り飛ばし蹴り飛ばし、ひたすら森を進む。
5日目の夕方、森を抜けて今回の目的地である岩山地帯に着いた。
6日目からは光魔法の練習。
まずは何とか完成した光弾。
原理は気弾と同じだが、光属性の魔力で弾を作るのがミソ。
気弾には様々な属性魔力が混じるので空気抵抗と重力の影響を受ける。
結果として初速に依存した大砲程度の速さしか出ないし射程も短い。
光弾は純粋なエネルギー体なので光と同様に直進する。
距離や威力を試したかったが、高温なので火事を起こし易いし、射程が長いので結果の確認が難しい。
ストン付近の森を荒らす訳にはいかなかったので光弾の実験は最小限度しか出来なかったが、相手が岩山なら思う存分実験が出来ると思って途中で見つけたこの岩山まで来た。
普通に撃つ。大きさを変えて撃つ。凝縮度を変えて撃つ。射程を限定して撃つ。
数を撃っているうちに命中精度も上がって来たし、発動までの時間も短くなった。
5日間毎日光弾を撃ちまくった。
結果として判ったのは、光弾は基本的に直進し、直径より少し大きめの穴を穿つ。
距離が遠くなるほど穴の大きさが大きくなり威力が拡散する。
岩に直径30㎝深さ1m程度の穴を穿つ有効射程は約2㎞でその時の射出直径は15㎝。
2㎞で光弾の直径が倍近くに拡散し、威力がおよそ8分の1に減衰することが判った。
同時に10発発射が出来た所で一区切りとした。
遠距離で攻撃可能かつ岩をも穿つ威力。
格段に攻撃力が上がった。
強すぎる攻撃力は過度な警戒感を生むと“神速の翼“の皆さんが教えてくれた。
ファンタジー小説の英雄が魔王討伐の後に味方の裏切りで殺されるのは定番。
お祖母さんも味方の貴族に裏切られて死んだ。
それを考えると光弾の公表は避けた方が良さそう。
いざという時の奥の手として秘密にすることにした。
いつかは母さんのような優しい人と結婚して、薬屋をしながらストンでこっそりのんびり暮らすのだ。
目立つのはダメ、絶対。
侯爵領を出て10日、そろそろ戻らないと怒られそうな気がするので明日からは他の練習をしながらストンに向かう事にした。
朝食を済ませると、岩山を飛び立った。
3年掛かりで習得した飛行魔法。
鳥さんのような細かい動きは出来ないが、長距離の移動になら使える程度になった。
目立たないよう高度は1㎞、地上からは豆粒にしか見えない筈。
天気が良いお陰で遠くまで見渡せる。これなら迷子にならなくて済みそう。
結界を張っているので風の抵抗も無くてめっちゃ快適。
なんて思っていたらめっちゃ大きな鳥さんに襲われた。
“カウンターバリア”
大きかったから思い切り魔力を込めたら綺麗にカウンターが決まって鳥さんが落ちた。
この高さから落ちたらお肉がミンチになってしまう。
鳥さんのお肉は美味しいので勿体無い。
急降下して空中で鳥さんを掴みアイテムボックスに入れた。
大きな鳥さん1羽だから良かったけど、小さな鳥さんの群れに襲われると戦うのは無理?
飛行魔法はもっともっと練習が必要だと実感した。
慢心はダメ、絶対。
ストンが見えて来た。
目立たないように離れた所で高度を下げ、森すれすれを飛んでストンの近くで地上に降りる。後はひたすら走る、飛んでばかりだと筋力が付かない。
先日9歳になったので、9歳に相応しい筋力を付けるのは大事な事。
「戻りました。」
「お帰りなさい。」
カウンターのお姉さんが笑顔で迎えてくれた。
”お帰りなさい“の言葉で何となく心がほっこりする。
「依頼達成の書類。」
ドランのギルドで受け取った書類を渡す。
「確認しました。報酬を用意するからギルマス室で待っていてね。」
何でギルマス室なんだ?
何となく嫌な予感がした。
「無事に帰って来たな。」
「うん、“神速の翼“のお陰。」
「“神速の翼“は実力もあるし判断力も優れた良いパーティーだ。時々だがこの街にも来る、仲良くしておけ。」
「はい。」
「それで、Aランクの件だが今回は見送りとなった。」
「ありがと、ございます。」
「何で有難うなんだ?」
「ジャムさん達と模擬戦した。まだまだ9歳に相応しい力が無いと判った。」
「お、おう。9歳に相応しい力な・・・。」
「うん。3日前9歳になった。9歳に恥じぬよう頑張る。」
「お、おう。それで帰り道で事件は起こして無いよな。」
「うん。何も無かった。」
「魔獣の討伐はしたか?」
「少しだけで。解体出来る?」
「どんな魔獣を倒したか見たいから一緒に解体場に行こう。」
「出してみろ。」
魔獣を出そうとアイテムボックスを見て思い出した。
「途中で鳥さんを拾った。鳥さんも解体して貰える?」
「鳥さん? 拾った? まさかワイバーンでは無いだろうな。」
ギルマスが笑うながら言った。
「もうちょっと大きな鳥さん。」
「ワイバーンよりでかい?」
ギルマスの表情が一変する。
「それは解体場に入る大きさか?」
解体場を眺めて考える。
「う~ん、机を隅に寄せてギリギリ?」
「その辺にある物は全部隅に寄せろ。解体場の真ん中を空けるんだ。」
ギルマスが怒鳴り声を上げ、おっちゃん達が真ん中を空けてくれた。
アイテムボックスから鳥さんを出した。
ギリギリの大きさだけど、頭と尻尾を丸めたら何とか出せた。
「「「「・・・・」」」」
ギルマスも解体場のおっちゃん達も固まっている。
最初に戻って来たのはギルマス。
「仕舞え! 元通りに仕舞っておけ!」
大声で怒鳴った。
慌てていたのにアイテムボックスに仕舞えと言わなかったのはアイテムボックスが秘密だということは覚えていたらしい。
とりあえずアイテムボックスに入れた。
「見なかった。何も見なかった。今の事は絶対にしゃべるな、いいな!」
ギルマスの怒鳴り声に解体場のおっちゃん達がコクコクと頷いている。
「他の魔獣を出せ。」
森で倒した魔獣を出す。
「そこまでだ。これ以上はこれを解体してからだ。」
4分の1も出していないのに止められた。
「ギルマス室に戻るぞ。」
ギルマス室に連行された。
「鳥さんはどこで拾った?」
「お空の上。」
「・・・状況を最初から詳しく話してみろ。」
鳥さんとの遭遇を詳しく話したのに何度も聞き直された。
「要するに、キラが空を飛んでいたら、鳥さんが襲い掛かって来たから、バリアを張ったら、バリアにぶつかった鳥さんが落ちて、ミンチになったらお肉が勿体ないから追いかけて拾った。そう言う事か?」
「はい。」
お返事は“はい”、俺はもう9歳だ。
ジャムさんから9歳になったら“はい”の方が恰好良いと教わった。
ギルマスが頭を抱えて何かを悩んでいる。
「とりあえず鳥さんについては絶対にしゃべるな。ギルド本部と相談して今後の事を決めるからそれまでは秘密だ、いいな。」
「はい。」