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25 男の中の男にしか出来ない仕事

お星様を頂け、感謝感謝です。

これからも読み続けて頂けるように頑張ります。

                   頼運

授業が終わると早速図書館に行った。

ルナ姉に教えられた通り、学院の図書館には水属性魔法に関する魔術書が沢山あった。

魔術書の多くは水属性魔法の呪文や魔法陣についての考察が多いが、発動した時の様子や威力などが詳しく書かれている本も沢山ある。

降雨は勿論、霧や霰、雷や治癒など、本当にこれも水属性魔法なのかと驚く様な魔法も沢山あった。

本に載っていた魔法陣をこっそり発動させてみると確かに小さな雷が発生した。

光属性の治癒に比べると効果はめっちゃしょぼいけど確かに治癒らしい水属性魔法が発動したのも確認出来た。

”雷“や“治癒“が水属性でも発動出来る事を知って驚いた。

ひょっとしたら火魔法も水属性で発動出来るかもと思ったか、火と水、風と土のような反発する属性の魔法は発動出来ないらしい。

それでも工夫次第、組み合わせ次第で色々な魔法に変化させる事が出来ると判ったのは大きな成果、何となく新しい魔法が作れるような予感がして俄然やる気が出た。



水属性魔法によって生み出された沢山の現象に関する記述を調べているうちに、単に水を出すとか水を敵に当てるでは無く違った使い方が出来るのではないかと考えるようになった。

幼い時から魔力水作りの為に毎日大量の水を出していたので水を集めるのは得意。

今迄はどこから水を集めているのかを気にした事は無かった。

父さんは”水とは目に見えない程小さなもので、空気の中にも土の中にも人間の体の中にもある“と言っていた。

空気の中にある水の量を計るのが父さんの作った湿度計で、”湿度が高い所では水魔法の威力が上がる“と言っていた。

図書館の魔術書にも乾燥した地域では壺1杯の水を出すのに使われる魔力量が大きくなると書いてあった。

現在の王国では呪文に使われる言葉や呪文の長さにこだわる学者が多いが、父さんは出来るだけ明確かつ具体的なイメージこそが大切だと言っていた。

色々と実験を重ねると、今迄の様に宙に浮いている水の玉や指先から流れ出る水をイメージするよりも、空気中に漂う小さな水の粒を集めるイメージで水球を発動するといつもよりも水の量が多くなることに気が付いた。

土の中にも草の中にも木の中にも水の粒が有ると父さんが言っていた。

魔獣を倒した時に使う“血抜き”に似ている?

“血抜き“の魔術理論は判らないけど、小さい時に父さんが俺の魔力を使って”血抜き“を教えてくれたので今では1瞬で”血抜き”を発動出来る。

ならば、”血抜き“のイメージで草や木から水の粒を抜き取る事も出来るのではないか。

毎日夕食後に寮の周りの雑草をむしって、部屋で雑草の水抜き実験をする日々が続いた。

最初は少し萎れる程度だった雑草も練度が上がるにつれて茶色に変わり、水抜きの発動速度も上がって行った。



授業開始から1ヵ月、お祖父さん達との会議が開かれた。

月に1回、お祖父さん達は週5日目の夕方から王都屋敷に集まって会議をしている。

王都の情勢に加えて西部地区や周辺国の情報を共有する為という名目。

実質は孫バカのお祖父さん達が孫達と一緒に夕食を摂りたいだけ?

姉さん達は王都屋敷の食事を楽しむ為と新しいパンツを貰う為だと言っている。

確かに帰りにはお祖父さん達の履き替え用パンツを渡してはいるけど、お祖父さん達はパンツが欲しくて来ているのか?

以前は父さんが転移で運んでいたが、俺が学院に入学してから転移は俺の役割になった。

父さんは他にもっと重要な役割があると言って、俺に丸投げしたから。

たぶん重要な役割って母さんの膝枕で耳掃除をして貰う事。

“俺は王都に居るのが仕事だ”、と父さんは言っている。

父さんは大陸唯一のSSランク冒険者だから、王都で母さん達に耳掃除をして貰うのが仕事らしい。

お祖父さん達は俺にも政治の事を知って貰いたいらしく、送り迎えの時に色々と話し掛けて来るけど、政治には興味が無いのでいつも”馬の耳にネンネンコロリ“を発動してスルーしている。

政治の話を聞くよりも、今頑張っている”水抜き”をもっと効率的に出来ないか、とか“製糸“の練度を上げる方法など魔法の事を考える方が楽しい。



会議と言っても夕食後に王都屋敷のリビングで母さん達とワイワイ話しているだけ。

「ルコール商会への圧力が強まっているらしいな。」

「ラコール工房の品は手に入らないから、せめてルコール製を手に入れようと奥様方が必死になっているらしいわね。」

シャリー母さんが笑っている。

「商業ギルドにも圧力を掛けていると聞いたぞ。」

「ルコール商会はドラン侯爵家直営だから、商業ギルドも手を出せないのにね。」

“ルコール“って聞いた事がある。

父さんが作る注文生産の超高級下着が“ラコール”で、王族や懇意の高位貴族用。

父さんは今、“ラコール”の新製品開発をしているらしい。

母さん達が懇意の貴族夫人や令嬢への贈答品に使うのが、俺が作るS・M・Ⅼのサイズ別既成下着。

これが“ルコール“。

冒険者生活でキラ領にいた間、俺は魔力操作の練度上げの為に毎晩ショーツを作っていた。

沢山の糸袋から同時に糸を引き出し撚り合わせる製糸は勿論、糸を複雑に編み込みながらイメージ通りのショーツに作り上げるのは魔力操作の練習として効率が良い。

頑張って練度を上げたおかげでショーツの品質が上がり、父さんに一人前のショーツ職人と認められた。

以前は“ルコール“も父さんが作っていたが、俺が王都に来てからは、既成下着の制作は全部俺の役割。

黒い森の浅層や中層で獲れる蜘蛛や芋虫の糸袋から採れる繊細な糸を使った薄くて肌触りの良い下着は高位貴族夫人達の憧れらしい。

まだまだ父さんの足元にも及ばないが、一人前の男として父さんに認められた事が嬉しくて、寮でも魔力操作の練習がてら毎晩作っている。



その他に従来の糸や黒い森外縁部で採取できる魔獣素材を使った普及品を作っているのが辺境伯家の経営する“ロコール商会“。

父さんの開発した製糸技術や染色技術・織物技術を使っているので“ロコール商会“以外には勝手に類似品を作る事は出来ない。

普及品と言っても、ショーツ1枚が平民家族1ヶ月分の生活費よりも高い。

貴族や大金持ち向けの商品。

それでも肌触りが良く、伸縮性があるのでぴったりフィットする“ロコール“は生産が追い付かないほどの大人気らしい。

貴族の間では下着と言えば“ラコール”・“ルコール“・“ロコール“が3大ブランド。

“ルコール“は母さん達の贈答品としてだけでなく、ドラン侯爵家直営のルコール商会から販売もされているが、生産量が少ないので母さん達の許可が出た相手のみの販売で一般販売はしていない。

“ルコール商会”がドラン侯爵家直営、 “ロコール商会“が辺境伯家の経営なのは東部貴族の圧力を撥ね退ける為。

貴族家の女性達は、何とか“ルコール“や“ロコール“を手に入れようとドラン侯爵の娘でルコール商会長のシャリー母さんや、辺境伯の娘でロコール商会の実質的な経営者であるリーナ母さんに擦り寄って来るらしい。

母さん達は下着を餌に東部貴族の夫人達から色々な情報を集めていると教えてくれた。

“ハリーの仕事は凄くキラ家の役に立っているのよ”と母さん達みんなが俺の頭を撫ぜ撫ぜしてくれた。

効率的に練度上げ出来るから作っていたけど、家族の為に役立っていると聞いて俺もショーツ作りに一層励むようになっている。

何といってもショーツ作りは父さんに認められた男の中の男にしか出来ない仕事なので誇りを持っている。

家の経営と家臣や使用人達の取りまとめは女の仕事。

貴族の付き合いや情報収集も女の仕事。

下着作りと洗濯、”ヘイ、タクシー“が男の仕事。

俺も1人前の男として家族の為に頑張ろうと思った。


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