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18 家の中の事や、家の外の事は女の仕事

12人姉弟全員がAランクに成れたのは、姉弟全員が父さんと一緒に魔獣討伐に行くのが好きだった事と、母さん達が討伐好きなので交代で魔獣狩りに付き合ってくれたお陰。

防御魔法を叩きこまれているとは云え、小さな子供が上位魔獣と戦うのは厳しい。

家ではちょっとあれな父さんだが、森に入るとめっちゃカッコイイ。

探知も的確だし攻撃もめちゃくちゃ凄い。

子供達がそこそこ戦えるようになると、父さんは殆ど子供達の後ろからボーッと眺めているだけ。

でも、俺達の魔法が通らない強い魔獣が現れた時にはすっと前に出て一撃で首を落とす。

父さんの倒した魔獣は最低限の傷しか無いので見た目からして全然違う。

魔法も剣術も体術も俺達とはレベルが全く違うのは一目瞭然。

お陰で皆が自信過剰にならずに済んだ。

父さんは姉弟皆の憧れ、森の中限定だけど。

ギルドに納めた素材の代金は自分のお小遣いになるので姉さん達も冒険者活動を始めてからは魔獣を爆散させずにきちんと倒すようになった。

母さん達はお金よりもストレス発散が目的なので爆散専門。

ちなみに我が家はポーション販売が収入源なので母さん達が魔獣を爆散させても問題無いらしい、知らんけど。

父さんは魔獣が爆散する度に勿体ないって言う顔をしている。



いよいよ4年ぶりの黒い森。

以前魔獣狩りをした外縁部では無く浅層、他の森よりも魔獣が強いと聞いていたので緊張する。

浅層とはいえ、俺達が使う転移ポイントは黒い森の端から50㎞以上入った所。

転移ポイントを出ると鬱蒼とした森だった。

「このへんは細い獣道が有るだけらしいから足元に気を付けなさい。」

「ここなら人目を気にせず魔法を使っても良いって母さんが言っていたわ。」

テン姉達は母さん達や上や中の姉さん達に浅層の事を聞いたらしい。

「学院の学生は来ない?」

「学生はDランクだから王都の南側の草原が多いんだって。北側の草原もCランク以上に制限されているから北門近くに来る事も無いらしいわ。」

「黒い森はCランク以上しか入れないし、Aランクでも外縁部が殆どで、偶に浅層との境近くまで来るだけって姉さんが言ってた。」

「そうなんだ。」

「ここは高ランク冒険者が急いでも3日は掛かる森の奥だから誰も来ないの。」

「浅層なのに森の奥なの?」

「普通の冒険者が言っている黒い森って私達が小さい時に魔獣退治をした外縁部の事なんだって。浅層は高ランク冒険者にとっても森の奥らしいわ。」

学院の学生は勿論、冒険者すら来ないらしい。

学生で混雑するのではないかと心配したけど大丈夫だった。

夕方まで討伐をして、屋敷の転移部屋へ姉さん達と一緒に戻る事になっている。

俺達には黒い森での野営許可が下りていないので日帰り。

ルナ姉の領地の森では野営させて貰えたけど、魔獣のレベルが高い黒い森だと俺達4人だけではまだまだ危険らしい。

中の姉さん達は俺達よりも遥かにレベルが高いので黒い森の中層で野営。

姉さん達の話では、浅層で1年位討伐すれば野営の許可が下り、2年目は徐々に中層近くへと討伐場所を移して中位魔獣に慣れるようにするらしい。

時々母さんの誰かが一緒に来て討伐レベルのチェックをすると言っていた。

子供達には決して無理をさせないのがキラ家の方針。

3年目になったら森の端から150㎞地点にある中層の転移ポイントを使わせて貰える。

俺達はまだお子様なので安全第一の浅層で訓練だ。



いよいよ黒の森での魔獣討伐が始まった。

フォーメーションはルナ姉の領地で冒険者活動をした時と一緒。

3人の姉が交代しながら前に2人、最後尾に1人。

俺は3番目を歩きながら周囲に目を配る。

「戦うのは女の仕事だからハリーは手を出しちゃダメよ。」

黒の森の魔獣は強いから、俺は戦ってはいけないと事前に言われている。

姉さん達は戦うのが得意だから戦いは姉さん達に任せれば安心。

「ハリーは探知と獲物の収納が仕事だからね。」

「食材採取もお願いね。」

「特に果物と鳥さん。」

黒い森でも俺のお仕事はキラ領の時と同じで、素材の回収と食材の採取。

屋敷の料理長謹製の昼食がアイテムボックスに入っているのもキラ領の時と同じ。

心を込めて昼食を作ってくれる料理長へのお土産になる食材採取は俺の役割。

果物や木の実、食材となる野草やキノコを探知で探す。

食材も微量ながら魔力を含んでいるので精度の高い探知を使える俺なら見つけられる。

鳥の唐揚げが大好きな姉さん達用の鳥さん肉を確保するのも俺の役目。

高速で飛ぶ小さな鳥さんを姉さん達の魔法で落とすのは難しい。

倒す事は出来るけど、大抵は爆散してしまう。

俺はカウンターバリアが得意だし、父さんに教わった“引き寄せ”のおかげで離れた所に落ちる鳥さんでも一瞬でアイテムボックスに収納出来る。

何でも出来る必要は無い。

それぞれが得意な事を頑張るのがパーティーの基本。

時々探知の範囲を大きく広げて強い魔獣の居る方角を確認する。

姉さん達も探知を使えるが、広範囲の探知は俺の仕事。

強力な魔獣は接近速度が速いから注意しておかなくてはいけない。

強力な魔獣が居ない事を確認したら高精度探知で食材を探す。

多少離れた所でも“引き寄せ“で採取出来る。

食材の採取をしながら時々鳥さん肉の確保。

姉さん達は大型魔獣の討伐。

姉さん達も魔法の精度が上がったおかげで爆散させる事無く魔獣を倒せるようになったから、素材を良い状態で確保出来るようになった。

姉さん達が倒した魔獣は俺がアイテムボックスに収納する。

姉さん達もアイテムボックスが使えるけど、“引き寄せ”が使えないので収納するのに手間が掛かって時間が勿体ない。

4年間一緒に冒険者活動したので、黒い森の強い魔獣相手でも4人の連携はバッチリだった。



転移で屋敷に戻ると討伐した魔獣素材と食材を使用人に渡す。

王都屋敷の使用人達は魔獣の解体に慣れているし、販売ルートもある。

俺達は皆Aランクなのでこれ以上ランクが上がる事は無いし、Aランクは冒険者資格取り消しの期限が無いから、冒険者ギルドに素材を持ち込まなければ資格を取り消されると言う事は無い。

魔獣学の加点用に年に2回程ギルドに素材を渡せば良い。

2日目の夕方には一旦姉さん達と王都屋敷に戻って使用人達に素材や食材を渡してから、中層にいる中の姉さん達のお迎え。

中層の転移ポイントに行けば、姉さん達の魔力波動は探知魔法ですぐに判る。

短距離転移で中の姉さん達の所へ跳んで王都屋敷まで転移。

森の中を歩く事は無いし、強力な魔獣は離れていても探知出来るので安全。

姉さん達を王都屋敷に届けたら、領地でお仕事をしている上の姉さん4人のお迎え。

父さんから引き継いだ“ヘイ、タクシー”のお仕事は結構忙しいけど楽しくもある。

家の中の事や、家の外の事は女の仕事だから男が手を出してはいけないと小さい時から言われている。

男の仕事は下着作りと洗濯と“ヘイ、タクシー”。

下着作りと洗濯が出来て“ヘイ、タクシー”が出来ればキラ家の男としては1人前。

家族の役に立っている実感があるのでめっちゃ充実感があった。


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