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5 ケモミミ、ケモシッポ

「キラちゃん、治癒魔法行ける?」

カウンターのお姉さんから治癒魔法の依頼があった。

例によって銀貨1枚の依頼、誰かが怪我をしたらしい。

「うん。」

「良かった。二人いるの、一人は二の腕を牙で刺された傷、もう一人は太腿を爪で抉られた傷、どちらも酷いけど骨は大丈夫だから銀貨1枚ずつで銀貨2枚ね。」

「うん。」

お姉さんに連れられてギルドの治療所に入ると数人の冒険者がいた。

驚きの光景に俺の足が止まる。

怪我をした冒険者のパーティーらしいが、問題は頭の上。

何とケモミミ!

お尻を見るとケモシッポ。

初めての獣人さん。

「獣人はダメ?」

思わず立ち止まって冒険者を凝視する俺にお姉さんが心配そうに聞いた。

「ケモミミ、ケモシッポ大好き!」

テンションが爆上がりして叫びながら飛び跳ねたら生温かい目で見られた。

「・・怪我人はこっちよ。」

あきれ顔のお姉さんに促され、スキップしながら奥の部屋に入る。

怪我をしたのは太腿の裏なのでうつ伏せになって貰うと目の前に真ん丸なクマシッポ。

「怪我をしたのは尻尾じゃなくて太腿だ。尻尾に触るんじゃねえぞ。」

尻尾に手を伸ばし掛けたら獣人さんに怒られた。

うつ伏せなのに何で判ったんだ?

獣人はエスパーなのか?

「お、おう。」

「時々触ろうとする奴が居るからなんとなく判るようになったんだ。それより早く治療してくれ。」

「お、おう。」

ゆっくりと治療しながらクマシッポを目で楽しむ。

「お前、傷を見てねえよな。」

「ソ、ソンナコトナイヨ。」

慌てて傷を見て治療したらすぐに治ってしまった。

残念。

もう一人は二の腕の傷。

椅子に座らせ治療用の台に腕を乗せて貰う。

イヌミミが目の前でピコピコ動いている。

「何で耳を見てるんだ?」

「えっと、・・耳を見てると傷の具合が判る?」

「そんな訳あるか!」

怒られた。

「ねえ、イヌミミ触っても良い?」

「イヌじゃねえ、狼だ。そこは大事な所だから絶対に間違えるな。」

「お、おう。」

そんな事を言われても違いが判んねえよ。

俺はまだ違いの分かる男じゃない。

「獣人のミミとシッポは絶対に触るな。特に女性の場合は勝手に触ったら殺されるぞ。」

「お、おう。」

めっちゃ怒られた。

治療が終わった。

「態度は変質者そのものだが腕はいいな。」

「でしょ。治癒魔法は高位神官並みだから銀貨1枚じゃ申し訳ない位よ。」

ギルドのお姉さんが胸を張る。

「これ程近くでガン見されたのは初めてだけどもな。」

獣人の兄ちゃんが笑っていた。



それから3日か4日に一度は誰かが怪我をして獣人パーティーが治療に来る。

「怪我し過ぎ。そのうち死ぬ。」

「大丈夫、俺は獣王の息子だからな。」

獣王の息子って死なないの?

それよりもこの兄ちゃん狼人族だよね。

「獣王って獅子人族や虎人族じゃないの?」

“娘が欲しければ俺の屍を超えて行け”って獣王が言うのはファンタジー小説の定番、獣王は一番強い獣人というのもお約束。

狼人族が一番強いの?

「獣王は部族長会議で決める。獅子人族と虎人族の族長は獣王の執務机に乗っていた書類の山を見たとたんに逃げた。」

「逃げた?」

「獅子人族は揃いも揃って脳筋、虎人族は1日中寝てばかり。書類仕事など出来る筈が無い。」

「それで狼人族になった?」

「皆が譲り合って、気が付いたら残っていたのは狼人族の族長だけだったそうだ。」

譲り合う心ひとつで事故だらけ、獣人国大丈夫か?

「ところで相談なのだが、草原で治療してくれないか?」

「草原?」

「キラが薬草採取している草原なら俺達が狩場にしている森に近い。」

「・・・・。」

「故郷では可愛い7人の子が腹を空かして俺の帰りを待っている。」

可愛い7つの子があるって、お前はカラスか!

「少しでも獲物を多く狩りたいから街まで戻る時間が惜しいんだ。もしも草原で治療してくれたらギルドポイントの代わりに俺達の耳や尻尾を触らせてやってもいいぞ。」

心がぐらっと来たが、ぎりぎりで踏ん張る。

「・・・無理な狩り、ダメ。」

命は大切。

「以前は部族間で戦争ばかりしていたが、狼人族が獣王になって平和になった。お陰で人口が増えたけど、土地が痩せているから食い物が足りないんだ。」

「でもストンは遠いよね。そんなに食糧、足りないの?」

ギルドのお姉さんに聞いた話では獣人国は王国の中央南側。

ストンまでは1000㎞以上ある筈。

「食糧を買う為の資金稼ぎが主な目的だが、獣人が安心して暮らせる所も探しているからこうして遠くまで来ている。」

「獣人国の北側はダメ?」

「獣人国の北側は王家の直轄地で代官は代々東部貴族の出身だ。」

「???」

判らん。だから何なんだ?

「東部貴族は家柄至上主義で西部の新興貴族や平民ですら酷く差別する連中だ。獣人など街へも入れてくれないし、下手をすれば捕まって奴隷にされる。」

「酷い。」

「俺達は夜に紛れて直轄領を抜けて、西部貴族の領地まで出稼ぎに行くんだ。ソランダ伯爵やステルン伯爵は獣人を差別しないからな。腕自慢の奴らは稼ぎが多い辺境伯領まで足を延ばすが、俺達の腕ではストンが精一杯だ。」

思わぬところで父さんの名前が出た。

獣人達にとっては良い領主らしい。

「そうなんだ。」

「獣人が安心して冒険者活動が出来る領地は少ないから少しでも狩りの時間を増やしたい。キラが薬草を採っている草原の近くの森で狩りをすれば怪我をしても直ぐに治療して貰えるから狩りに戻れる。キラが僅か銀貨1枚で治療してくれるお陰で凄く助かってはいるが、草原で治療して貰えたらもっと助かる。」

「・・・・。」」

「ギルドの貢献ポイントが付かないから我が儘だと言うのは判っている。その分、耳も尻尾も触らせてやる。獣人を差別しない人族は仲間だ。仲間同士で治療するのは当たり前だから闇バイトにはならない。」

どうやらホワイト案件らしいので引き受ける事にした。



獣人達は“デコアの星”というCランクパーティー。

リーダーは剣士のチビさん。

生れた時は一番小さかったからチビと名付けられたらしい。

前世にもいた。赤ちゃんの時にチビって名前を付けたらめっちゃ大きくなってどう見てもチビじゃなくなった犬。

随分安直な名前だと思ったら17人兄弟の15番目、まあそうなるか。

弟のポチが槍士で、狐人族のコンさんが魔法使い。

チビにポチ、子供の数が多いからって獣王さんいい加減すぎない?

熊人族のポーさんが盾。

どこかで聞いたような名前、熊のポーさんも蜂蜜が好きなのかな?

「パーティー名のデコアは狼族の英雄デコピィ様にあやかって付けたんだ。」

「デコピィ様?」

「デコピィ様は長剣と小剣を同時に使う2剣流の達人で、狼人族で初めて騎士爵に任じられた部族の英雄だ。今では王国最強と謳われる辺境伯軍の軍団長を務めておられる。」

2刀流? 野球選手?

いや愛犬?

「狼人族ではデコピィ様にあやかってデコアやデコイ、デコウ、デコエという名が多い。最近はデコなんとかが多くなりすぎたから、ボコアやボコイ、ボコウといったボコ何とかも増えているな。とにかく子供の数が多いから名付けも大変なんだ。」

デコの次がボコ。デコ、ボコ、デコボコ、狼人族大丈夫か?



“デコアの星”は殆ど1日置きに怪我の治療に来る。

治療はすぐに終わるが、出血が多い場合は少し休憩させる。

休憩中は俺のモフモフタイム。

その間に獣人族の事を色々と教えてくれた。

「獣人族の女性には気を付けろ。口よりも足の方が速い。耳や尻尾を触ろうとした途端に踵落としで頭をかち割られるからな。」

口で言うより手の方が早いというのは聞いた事があるが、足の方が速いってどうなんだ。

「ミュール川から東には行くな。平民の命など紙屑同然と思っている貴族ばかりだからな。」

東部貴族の悪評は色々と聞いた事がある。

俺の命を狙った某夫人の実家も東部の名門侯爵家。

ストンが西部地区で良かった。

「獣人の殆どは魔法を使えないが、狐人族と狸人族には20人に一人くらい魔法を使える。」

狐と狸は化かし合いが得意なのか?

「犬人族は鼻が利くから料理が上手い。猫人族は音に敏感だから斥候に向いている。」

「種族によって特徴があるんだ。」

「昔は同じ種族でパーティーを組んだが、今ではそれぞれの特技が生かせるようなパーティー編成をするようになった。」

確かにポーさんが盾役なら万全だしコンさんの魔法も生きるよな。

俺はボッチだけど。

うん、寂しくないぞ、お金もあるし。王都にはもう帰らないけど。

無理に自分を納得させたが、何となく空しくなった。



空間魔法の訓練を続けたお陰で、長年の懸案だった魔法袋が漸く完成した。

お祖母さんの遺してくれた素材で作った袋に凝縮した空間を固定したのだが、固定途中で思ったのは“これって袋はいらなくね?”という疑問。

試しに空中に空間を固定したら袋無しの魔法袋が出来ちゃった。

空間を一度消滅させ、ファンタジー小説やゲームで知ったアイテムボックスのイメージで再構築したらソート機能とインデックス付きのアイテムボックスになった。

魔法袋は容量に制限があるし時間経過もあるが、アイテムボックスの容量は魔力量次第なので魔力量の多い俺なら殆ど制限無し。その上時間経過も無い。

これってバレたら拙いよな。

アイテムボックスは王族や貴族に狙われる危険装備というのがファンタジー小説のお約束。

当面はアイテムボックスのダミーとして魔法袋を使う事にした。

魔法袋ならダンジョンの宝箱とかで手に入るから問題無い。

そう言えばファンタジー小説の定番であるダンジョンの話を聞いた事が無い。

剣と魔法の世界ならどこかにきっとある筈、たぶん。

まあいいか。

今の俺にはやりたいことが沢山ある。

ダンジョンはもっと力をつけてからだ。



練習に夢中になっていたら、森と草原の境界線あたりに少し大きな魔獣が探知に掛った。

どうやら4人の人間を追っているらしい。

森に向かって走ると胸の大きなお姉さんが飛び出して来た。

杖を持っているので胸が揺れている、じゃなくて魔法使いなのだろう。

胸が大きいと魔力を溜め易いとかあるのかな。

「逃げて! 森猪よ。」

叫びながら立ち止まって魔力を練り始める。

お姉さんに続いて剣を持った若い男二人が飛び出してくる。

「ぐはっ!」

その後ろから盾を持った男が宙を飛んで森から飛び出し、地面に落ちて倒れた。

魔獣に弾き飛ばされたらしい。

すぐに森猪が姿を現した。

「ファイアーボール!」

お姉さんが魔法を発動したが、森猪に避けられて草原が燃え上がる。

あちゃ~、森や草原で火魔法はダメでしょ。

とりあえず燃え上がった所を結界で囲いながら10㎝の気弾を撃つ。

気付いた森猪が気弾を躱そうと動いた方向に気弾を誘導して腹を貫くと森猪はあっさりと倒れた。

「大丈夫?」

大きな胸のお姉さんに声を掛けた。

別に大きな胸が気になった訳では無い、偶々胸に視線が行っただけ。ほんとだよ。

「ありがとう、助かったわ。みんな怪我をしているの。ポーションを持っていたら売ってくれないかしら、街に戻ったら代金は必ず払うから。」

「一人銀貨1枚で治す。」

初級ポーションは卸値が銀貨5枚、ギルドの売値は金貨1枚。

ランクが高そうもないこの人達にとっては大金な筈。

「治癒魔法が使えるの?」

「ギルドで治してる。」

「お願い、治してあげて。」

3人の状態を確認しながら治癒魔法を掛ける。

森猪にやられた怪我は出血が多いものの重傷までは行っていない。

森の枝で擦った傷が多いけど問題無い。

盾役の人も捻挫と打撲だけで骨折は無かった。

「すまん、助かった。俺達はDランクの“赤い稲妻”、俺はリーダーのダン。」

「俺は斥候のドリカ。」

「俺は盾役のムジル。」

「私は魔法使いのタリナ、火魔法を使って済みませんでした。」

「どうやって火事を消したんだ?」

「・・・冒険者の秘匿?」

「お、おう。森猪を倒した魔法も冒険者の秘匿か?」

「うん。俺はキラ、登録したて。」

「「「「・・・・」」」」

何となく雰囲気がおかしい。

「えっと、一応Eランク?」

首から下げたギルドカードを服から出して見せた。

「「「「・・・・」」」」

「猪を解体する。」

気まずい雰囲気になったので話題を変えた。

森猪なら何度か解体した事があるので問題は無い。

手早く解体して使える素材を取り、肉は近くに生えていた大きな薬草の葉で包んだ。

「先に戦闘したのは赤い稲妻さんなのでどうぞ。」

森猪の素材と肉を差し出す。

後から戦闘に加わって獲物を横取りするのはマナー違反だとストンに来る時に護衛のチャーさんに教わった。

「・・何で血が出ないんだ?」

「解体したら普通は血まみれになるわ。」

そうか、解体すれば血まみれになるんだった。

すっかり忘れていつも通りに血抜き魔法を使ってしまった。

「えっと、・・冒険者の秘匿?」

「お、おう。ともかくそれはキラ君の物だ。俺達は助けて貰った相手の獲物を横取りするような下衆では無い。」

「そうよ。解体もキラ君がしたんだからそれはキラ君の物よ。」

「うん、頂く。」

遠慮なく森猪の肉と素材を腰に付けた魔法袋に入れた。

「ええっ、魔法袋まで持っているの?」

大きな肉の塊と素材を小さな袋に入れたら魔法袋だと判るか、失敗した。

「登録したての冒険者が?」

「王族でも持っていないわよ。」

えっ、そうなの?

「えっと、・・」

「「「「冒険者の秘匿。」」」」

みんな仲良しらしい。

「師匠が遺した魔法袋、魔力登録されてる。」

あまりにも冒険者の秘匿を使いすぎたのでちょっとだけ説明した。

「魔力登録って、登録した人以外は使えないって言うやつよね。」

「うん。」

「それって賢者にしか出来ないって聞いたわ。」

「はあ?」

そんな事お祖母さんの本には書いてなかったぞ。

母さんも教えてくれなかったぞ、それならそうと言ってくれや。

お祖母さんの錬金場にあった本や機材などに魔力登録したものが沢山あった。

パズルみたいで面白くて、解除したり登録したりして遊んでいたので魔力登録は極普通に使われているものだと思っていた。

お祖母さんって賢者だったの?

やっぱりこれも冒険者の秘匿にしておけば良かった?

「師匠は賢者では無い、と思う、たぶん。判んないけど。」

魔法使いなのは知っていたけど、賢者かどうかは知らない。

「・・ともかく礼を言う、助けてくれてありがとう。俺達は町に戻るが、キラ君はどうする?」

「もう少し薬草を採る。」

「キラ君なら、問題は無いと思うが気を付けて下さい。」

「うん。」

赤い稲妻が街に向かった。

俺の常識と冒険者の常識に少しだけずれがある事が判った。

“冒険者の秘匿”は便利だけど使い方が難しいと実感した。



「おい、魔法袋をよこせ。」

宿に戻ろうと歩いていたら、大通りから外れた所で3人組のおっさんに声を掛けられた。

探知魔法を常時発動しているのでギルドからつけて来たのは判っていた。

何か用があるのかと思ったら魔法袋に目を付けたらしい。

「嫌。」

「うるせえ、おとなしく渡せば良いんだよ。」

おっさんが魔法袋に手を伸ばす。

体を開いて手を躱しながら手首を掴んで捻る。

ドォォ~ン!

おっさんの体が宙に飛んで、小物屋の壁にぶつかって倒れた。

身体強化が強すぎた?

倒れたおっさんがピクリとも動かない。

死んでいないか確認しようと思ったら後ろから声がした。

「ふざけた真似をしやがって。」

振り向くと、2人のおっさんが剣を抜いて切り掛かって来ている。

1人をバリアで防ぎ、もう一人の剣を躱して足払いを掛ける。

振り向きざまにバリアで防いだおっさんの足を気弾で撃ち抜いた。

「ぃてぇぇ~!」

直ぐに振り向いて足払いを掛けたおっさんの足も気弾で撃ち抜く。

「うがぁ~」

1㎝の小さな気弾だが、足を抱えて転げ回っているのでかなり痛いのだろう。

大きな音と大声を聞きつけたらしお店屋さんの人や通行人が集まって来た。

「3人組に襲われました。キラと言います。誰か冒険者ギルドに連絡して下さい。」

大声で叫びながら最初に手を出して来た男を縛り上げる。

息をしているので問題無い。単に気絶しただけらしい。

気弾を食らった二人はかなり出血しているが命に係わる程では無いので逃げないように見張っていた。

「キラ、怪我は無いか?」

解体場のおっちゃんが走って来てくれた。

その後ろからは受付のお姉さんも走って来る。

「問題ありません。魔法袋を奪われそうになったので投げ飛ばしたら、残りの2人が剣を抜いたので魔法で倒しました。」

「こいつらは護衛依頼で来たDランクパーティー“光の翼”だ。とりあえずギルドに運んで取り調べする。」

解体場のおっちゃんが駆け付けて来たギルド職員達に手伝わせて3人を引き立てて行った。

「本当に怪我は無い?」

受付のお姉さんがあちこちと体を触りながら心配そうに聞いてきた。

「大丈夫、心配かけてごめん。」

「キラちゃんが動けなくなったらポーションが不足するし、治療所も開けないんだから危ない事をしちゃダメよ。」

「はあ。」

俺の体というよりもポーションと治癒魔法が心配だったらしい。

とりあえずお姉さんと一緒にギルドに戻った。



ギルマス室で事情を聞かれた。

「えっと、宿に向かって歩いてたら、魔法袋をよこせって手を伸ばして来た。投げ飛ばしたら壁に当たって気絶した? 二人が剣で切り掛かって来たから魔法で足を撃った?」

「キラは剣を抜かなかったのか?」

「魔法の方が早い?」

「・・まあ無事で良かった。魔法袋は高価だからこれからも狙う奴が出て来るかも知れん。使用者制限が掛かっている事は周知させているが、今日の様に他所から来た冒険者が襲って来ることがある。後始末はギルドでしてやるから、襲われた時は躊躇なく反撃しろ。一瞬の迷いで命を落とす事もあるからな。」

「うん。」



ギルマス室を出て1階に降りると顔見知りの冒険者達が集まって来た。

「本当に怪我は無かったのか?」

「うん、大丈夫。」

「魔獣と違って人間は恐ろしいから気を付けるんだぞ。」

「そうそう。嘘を言って騙したり、不意打ちして来る奴もいるからな。」

「この街には無いが、大きな街には裏ギルドという暗殺専門のギルドもあるぞ。」

「毒を盛ったり、毒矢を撃って来る奴もいるらしいから油断はするな。」

「暗い所で真っ黒に塗った毒針を投げる奴もいるって聞いたぞ。」

なにそれ、殺し屋がいるの? 

異世界って怖い。

あれ?

ひょっとして屋敷にいる時に襲って来たのは殺し屋?

毒を盛られたり、毒矢を撃たれた経験はある。

生きていられたのは創造神様のお陰。

創造神様に感謝した。

「女の殺し屋はナニしている最中に毒針を使うらしいぞ。」

「ナニ?」

「おいおい、キラはまだ8歳だ。子供に変な事を教えるんじゃねえ。」

「すまんすまん、まあ注意しろって事だ。ストンの冒険者は使用者制限を知っているが、魔法袋を見ただけでは判らないからな。」

「そうそう、俺達はキラの強さを知っているが見た目は只の子供だ。森猪を一撃で倒せると知ったら泡吹いて引っ繰り返るぞ。」

「そもそも飛んでいる鳥の首を一撃で吹き飛ばせる冒険者なんて聞いた事も無いからな。」

「そうなの?」

「魔法は上に向かって撃つと威力が落ちるし、矢も速度が落ちる。基本的に冒険者も兵隊も空を飛ぶ魔獣には弱い。」

「鳥は罠で獲るのが常識、飛んでいる鳥を毎日狩っているのはキラくらいのものだ。鶏肉は旨いから俺達は喜んでいるがな。」

「焼き鳥にエール、これが最高だな。」

「ちげえねえ。」

気の良いおっちゃん達の為にもっと鳥さんを狩ろうと心に決めた。


読んで下さる皆様に感謝です。

これからも頑張って書きますので宜しくお願いします。

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