3 全然だいじょばなかった
昨日は投稿再開早々に操作を間違えて、今日の分を原稿段階で投稿してしまいました。
今日2日は週明けと月初が重なって少しバタバタしているせいで文字数の調整が旨く行っておりません。これから頑張りますのでご容赦下さい。
再開初日からブクマを頂けた事、本当に感謝感謝です。
貴族科1組には外国からの留学生が多い。
自己紹介を聞いたら全員が周辺国の王族や高位貴族の子弟。
上の姉さんや中の姉さん達から留学生が多い事は聞いてはいたけど、1組だけで9人もいるとは思わなかった。
姉さん達との結婚を目的にそれぞれの国から送り込まれたらしい。
国内の貴族、特に東部貴族達からは成り上がり者として見下されているキラ家だけど、周辺国での評価は高いらしくて、何とかキラ家の縁者になろうと王族や高位貴族の子弟を姉さん達の結婚相手候補として王立学院に送り込んでいるらしい。
たぶん姉さん達の本性を知らないのだろう。
姉さん達はたぶん”姉さん族“という特殊種族。
ドラゴン同様の“触るな危険”という存在。
普通の人間と同じに考えたらあっという間に爆散するよ。
”ナムアミダブツ、チ~ン“
命知らずの留学生達に、父さんから教わった幸せに死ねる呪文を唱えてあげた。
「全員済んだな、今日はこれで終わりだ。明日から授業が始まるから気を引き締めろ。合格発表時に渡された選択届けをこの連絡箱に入れてから退出だ。選択授業は1ヶ月間変更可能だが変更する場合は必ず変更届を提出する事、以上。解散!」
入学式に参列した保護者達が待っているので皆すぐに席を立ち、選択届けを提出して足早に教室を後にする。
俺達も教室を出た。
一番後ろの席だったので教室を出たのは最後。
「父さん大丈夫かな。」
俺の代表挨拶に興奮していた父さんがおとなしく待っていられるかがちょっと心配。
だって父さんは“父さん”だから。
「母さん達がいるから大丈夫でしょ。」
テン姉は心配していないらしい。
ぞろぞろと退出する学生達の後ろに付いて校舎を出た。
保護者達が待っている正門前に行こうと歩き出したら、父さんが飛んで来た。
文字通り“飛んで”来た。
探知魔法で俺達を見つけたらしい。
周りにいた学生や保護者達がびっくりしてポカンと口を開けている。
「良かったぞ、本当に良い挨拶だった。」
俺達の前に着地すると両腕を広げてガシっと俺達を抱きしめる。
「グ、グルジイ。」
思い切り抱きしめられて息が出来ない。
全然だいじょばなかった。
やっぱり父さんは“父さん”だった。
バシッ! バシッ!
バシッ! バシッ!
めっちゃ大きな音が響き渡る。
「「いい加減にしなさい。」」
ブロン姉とチャー姉が“飛んで”来て父さんの頭をどついている。
姉さん達の手には、父さん特製の”ハリセン“が握られていた。
打撃力が無いのに音が大きいので体術の訓練が楽しくなるキラ家の秘密兵器、兵器じゃ無いし秘密でも無いけど。
「っててて。痛いじゃないか。」
父さんが俺達を離してブロン姉達に文句を言っている。
「飛んだ?」
「飛んでいたな。」
「しかも3人だ。」
「伝説の飛行魔法か?」
「多分そうだ、初めて見た。」
父さん達を見た学生や保護者達が驚きから醒めて騒めいている。
どうやら飛行魔法を見た事が無かったらしい。
王立学院なら飛行魔法位は当たり前だと思っていたので俺もビックリ。
「周りを見てよ。みんな父さんを見てるわ。」
ブロン姉が父さんを叱っている。
父さんがキョロキョロと周りを見る。
周りにいた人達の視線に気が付いた。
「どうも、どうも。」
父さんが周りの人に変な挨拶をしている。
「ブロン姉、チャー姉ありがとう。」
助けてくれた姉さん達にお礼を言った。
「本当に手間のかかる人なんだから。ブロン姉、チャー姉ごめんね。」
テン姉も笑いながら助けてくれたブロン姉達に礼を言っている。
「油断して目を離した私達にも責任があるからね。」
ブロン姉も笑い顔。
みんな父さんの事が大好きだから本気で怒っている訳ではない。
「父さん、行くわよ。」
ブロン姉とチャー姉が父さんの両側から腕を絡ませて引き摺って行く。
古代語で”ドナドナ“という連行法だと以前父さんが教えてくれた。
両手を上にすると”捕まった宇宙人“という連行法らしい。
馬車乗り場で待っていた母さん達も引き摺られて来る父さんを見て笑っている。
「ごめんね、止める間も無く飛んで行ってしまったの。」
「本当にお父さんは子供なんだから。」
父さんの事が大好きな母さん達は父さんが何をしても笑顔。
父さんと争っている母さんなんて見た事が無い。
父さんを叱るのは姉さん達の役目。
叱られてシュンとした父さんを慰めるのが母さん達の役目。
「ねえ、飛行魔法って珍しいの?」
あまりにも大勢が驚いていたから母さんに聞いてみた。
「この大陸では20人ね。」
「20人?」
大陸で20人と聞いて首を傾げる。
いくら何でも少なすぎだ。
「大陸南部に3人いるって聞いたわ。」
「残りの17人はうちよ。」
母さん達が教えてくれた。
聞いてびっくり、殆どがうちの家族だった。
「そうなの?」
「そうよ。」
王国にはキラ家以外に飛行魔法を使える者がいないらしい。
そんなに難しい魔法じゃ無いのでめっちゃ驚いた。
「父さんの様に相手の魔力を使って魔法を発動出来る人でないと、飛行魔法を教えるのは難しいの。」
「そんな教え方が出来るのは父さんだけだからね。」
「飛行魔法には光属性も必要だから、そもそも適性の有る人が少ないのよ。」
母さん達が説明してくれた。
そういえば飛行魔法の術式には光属性の文字が使われている。
光属性を持つ人間が少ないから飛行魔法を使える魔法使いも少ないらしい。
うちの家族は父さんと母さん達が創造神様の祝福を頂いたお陰で、子供達も全員光属性を持っている。
王立学院生ならみんな飛行魔法が使えると思っていたのは俺の思い込みだったらしい。
俺の知らない事がまだまだ沢山ありそうな気がする。
学院で過ごす5年間、一生懸命勉強しよう自分に気合を入れた。




