40 社長にパンツのお下がりを貰うのは嫌
「「「「いってらっしゃい。」」」」
「無駄遣いしちゃダメよ。」
奥様達に見送られ、迎えに来たドラン義父さんの馬車で商業街の端、ミュール川に続く運河沿いにある倉庫街に向かった。
御者はドラン家の護衛隊長。
倉庫街の端でドラン義父さんが招待状を見せて馬車を預けると、案内人から目の周りだけを覆う仮面のような物を渡された。
ドラン義父さんが着けたので俺も着ける。
何となく秘密めいた感じがしてドキドキする。
案内人の後を付いて暫く歩き、大きな倉庫に入った。
「ここで持ち金の確認を受ける。白金貨10枚毎に木札1枚が貰えるから、白金貨10枚以上の取引では入札の時に入札金相当の木札を掲げなければ入札出来ない。支払いは後だが、落札した分だけの木札は先に渡すから、高額商品については金が無いのに値段を釣り上げるような不正が出来ない仕組みになっている。」
「うん。」
ドラン義父さんとは別の2人の男がいる小さな部屋に案内された。
「現金の確認をさせて頂きます。」
レイナに渡された金袋を渡すと、2人が中身をテーブルの上に並べて確認する。
「白金貨1000枚を確認しました。これが入札の木札となります。」
木札の束5つを目の前で布袋に入れて渡された。
白金貨1000枚って前世の10億円。
俺には判らないがレイナが渡してくれたって言う事は、貴族が参加するオークションだからそれ位持っていないと恥ずかしいのだろう。
小さな部屋を出るとドラン義父さんと護衛隊長が待っていた。
「これから内見だ。今日出品される品が展示されている。触る事は出来ないが、近くで見る事が出来るから気に入ったものがあればよく観察して置きなさい。」
「はい。」
隣の部屋に入ると衝立で仕切られた狭い通路に長いテーブルが沢山置かれ、その上に出品順に商品が並んで簡単な解説が書かれている。出品物の手前にロープが張られているので触る事は出来ないがかなり近くで見る事が出来る。奥に突き当たると隣の通路。何度も通路を曲がって出品商品を見て行く。やはり出品順が後ろになると高そうな商品が多い。
奥様達のような鑑定は使えないものの、殆どの素材はひと目見れば純度や硬度が判る。
目を引いたのは幾つかの古代文書と材質不明の魔道具っぽい物、20㎝程の硬い石。
要するにきちんと鑑定出来るものは正規のオークションに出品されているらしい。
驚いたのは使用痕のあるショーツが6枚もあった事。しかも2つは瓶に入れられ厳重に密閉されている。
ここはブルセラショップか?
ドラン義父さんも驚いていた。
「どうだ?」
「後半には面白そうなものが幾つかありました。」
「私もそうだ。暫くはここでゆっくりしていようか。」
「はい。」
控室のソファーに座るとすぐにメイドがお茶とクッキーを運んできてくれた。
うん、そこそこ美味しい。
控室に居てもオークション会場の声が聞こえる。
司会者は拡声魔法を使っているらしい。
「俺の作ったショーツがあったのには驚きました。」
「私もだ。特にあの瓶に入っていた物は、洗濯魔法を掛けていない匂い付きという奴だな。普通の下着なら以前も出品されていたが、ショーツでは恐らく初めてだろう。」
前世のネットオークションでジッパー付きビニール袋に入った下着を見た事がある。
奥様達の匂いは好きだけど、誰のものか判らない匂いなんてお金を貰っても嗅ぎたくない。
殆ど毎日汚れたショーツの洗濯をしているので興味があるのは幾らで落札されるかくらい。
ドラン義父さんと目に付いた商品について話しているうちにオークションはどんどん進んで行った。
「そろそろ会場に入ろうか。」
「はい。」
控室を出ると案内人がすぐに来てオークション会場へと案内してくれた。
会場は壁を見ると倉庫だが、正面に1段高い壇があって中央に商品を置く低いテーブルが置かれ、隅に拡声の魔道具を持った司会者がいる。商品を見下ろすように階段状になった入札者席があるので、大学の大講義室のような感じがした。
入札席は土魔法で作ったばかりのようでまだ残存魔力が見える。
魔法の有る異世界なので毎回こうした会場を簡単に違った場所に作れるのだろう。
毎回会場が変わる闇オークションならではの造り。
「71枚。71枚、71枚、宜しいですか。・・はい、71枚で落札されました。」
司会の声が響くと、係員が落札者の所に行って、何かの書類を渡している。
正面の壇上では商品が片付けられて次の商品が運び込まれている。
「入札金額が1000枚までは金貨、1000枚を超えると白金貨での取引になる。」
ドラン義父さんが教えてくれた。
次々と商品が運び込まれてオークションに掛けられる。
「古代遺跡から見つかった“魔力波動と回転運動“という表題の古文書です。傷みは激しいですが頁の脱落は無い完全本です。5枚からのスタートです。」
内見で目を付けていた本。
「5枚。」
「6枚。」
「7枚。」
学者っぽい2人が競っている。
「・・10枚。」
一瞬声が止まったので俺が声を上げると、一瞬の静寂。
「・・10枚。10枚、10枚、宜しいですか。・・はい、金貨10枚で落札されました。」
係員が書類を持って来る。
書類にサインして渡された落札カードを魔法袋に仕舞った。
前世感覚だと本1冊10万円は高いようだが、この世界の本としては格安。
傷みが激しいからだろう。
2冊の本が落札された後、俺が目を付けていた本が出品された。
「古代遺跡から見つかった“スケベー男爵の女性遍歴”という表題の古文書、薄いですが傷みの殆ど無い完全本です。5枚からのスタートです。」
「5枚。」
「・・6枚。」
貴族っぽい兄ちゃん達の争い。
「・・8枚。」
一瞬声が止まったので声を上げた。
ドラン義父さんが驚いて俺の顔を見る。
無視無視。
「・・8枚。8枚、8枚、宜しいですか。・・はい、金貨8枚で落札されました。」
狙っていた2冊とも落札出来て俺はニコニコ。
ドラン義父さんはあきれ顔。
同じ分野は続けて出品されるので次も本だったがもう興味のある本は無いのでボ~っと眺めるだけだった。
暫くしていよいよショーツの順番になった。
最初のショーツが商品台上のT字型の陳列台に広げられた。
「さて本日の目玉、ラコール工房純正品のショーツです。初期の作品ですが、御覧の通り傷みは殆どありません。白10枚からのスタートです。」
えっ、白10枚から? 白金貨10枚って新品の値段だぞ。
「15枚。」
「18枚。」
「20枚。」
ええっ!
「21枚。」
「・・・21枚。21枚、21枚、宜しいですか。・・はい、白金貨21枚で落札されました。」
落札額は驚きの白金貨21枚だった。
その後に出品された3枚も全て20枚前後の落札額でビックリ。
「何でこんなに高いの?」
小声でドラン義父さんに聞いた。
「新品は極少数の高位貴族にしか販売されていないから、市場に出回る事が少ないのかもしれんな。」
瓶に入ったショーツが商品台に置かれた。
「次もラコール工房純正品のショーツです。高位貴族令嬢から譲り受けた貴族令嬢が3日間着用した使用感抜群の商品です。傷みは殆どありませんが染みはたっぷりと付いています。白20枚からのスタートです。」
「25枚。」
「30枚。」
ええっ!
「35枚。」
「40枚。」
「・・・40枚。40枚、40枚、宜しいですか。・・はい、白金貨40枚で落札されました。」
もう1枚の瓶入りショーツも42枚で落札された。
どちらも立派な髭を生やした高位貴族っぽいおっさん。
“ヘンタ~イ止まれ”って掛け声を掛けたら止まりそう。
オークションも終盤に差し掛かり、鉱石や骨などの素材関係の商品となった。
俺が目を付けていた20㎝程の石がテーブルに置かれた。
「3年前商業ギルドのオークションにおいて白金貨86枚で落札された硬くて重い石です。エルフ国でこの石同様に硬い竜魔鋼が大量に見つかった為に捨て値での出品となりました。白金貨1枚からのスタートです。」
「1枚。」
「3枚。」
「・・4枚。」
「・5枚。」
「・・6枚。」
競っているおっさん2人が考えているようなので入る時に受け取った白金貨10枚を表す木札を掲げながら声を上げる。
「10枚。」
「・・・10枚。10枚、10枚、宜しいですか。・・はい、白金貨10枚で落札されました。」
訳の判らない石に白金貨10枚は高いようだが、そもそも俺が見て純度や硬度が全く判らない素材は殆ど無い。上手く使えるかどうかは別として、めっちゃ希少で2度と出会えるか判らない鉱物。白金貨10枚、1千万円と思うと高いけど、俺が作るショーツ1枚と考えれば値打ちはある。
係のおっさんに木札を1枚渡して落札カードを受け取った。
幾つかの商品の後で、俺が目を付けていた1m四方の大きな魔道具が運び込まれた。
「さて、次は本日最後の商品となるのは、音楽を奏でる魔道具です。ここに掌を置いて軽く魔力を流します。」
♬♪♬♪♬♬♩♩♫♬♪♩♪♩♩。
会場に不思議なメロディーが流れた。
「このように音楽の流れる魔道具というものは13年前に1度出品されて以来という希少品、白金貨100枚からのスタートです。」
「200枚。」「300枚。」「350枚。」「400枚。」「500枚。」「600枚。」「700枚。」「750枚。」
5人の貴族っぽいおっさん達の争いで、凄い勢いで値段が上がって行く。
「800枚。」「850枚。」「860枚。」「880枚。」「900枚。」「910枚。」「920枚。」「930枚。」
2人が降りたようで少し上乗せ幅が小さくなった。
「935枚。」「940枚。」「945枚。」「950枚。」「・955枚。」「・960枚。」「・・965枚。」
「・・970枚。」
間が空いたので俺も参戦する。
俺の残金は白金貨989枚
「・975枚。」
「980枚。」
おっさんが降りて相手は一人だけど俺の残金に余裕が無い。
「・・985枚。」
おっさんが考えながら値を釣り上げた。
「986枚。」
「・・987枚。」
「989枚。」
俺の残金は無くなった。これでダメならもう入札出来ない。
「・・990枚。」
やられた。
「・・・990枚。990枚、990枚、宜しいですか。」
「1000枚。」
会場がドッと湧く。
「・・・1000枚。1000枚、1000枚、宜しいですか。・・はい、白金貨1000枚で落札されました。」
会場が歓声で包まれた。
落札品を引き取って、今は馬車の中。
「ありがとう御座いました。」
「キラの目で材質がまるで判らないのだから希少品で有る事は間違いない。」
材質不明の魔道具っぽい物を落札したのは、ドラン義父さん。
「それに持ち金全部を掛けたと言うからにはそれなりの理由がある筈だからな。」
「はい。音楽の魔道具と言うのはお祖母さんの本に載っていました。魔力波動で音を出す円筒を回すと言う仕掛けです。」
「控室で言っていた“魔力波動と回転運動“の本を実現した魔道具と言う事か。」
「はい。理論だけでなく現物があれば研究がし易いと思いました。」
「キラが音楽を聴くために魔道具を買う筈は無いとは思っていたが、そういう理由だったか。」
「はい。」
「あのスケベー男爵の何とかという本も意味が有るのか?」
「表紙に書かれた古代語の感じでは古代帝国前期の本だと思います。それがあのように綺麗な形で残っていると言う事はこの時代では知られていない強力な保存魔法を使われていると考えました。」
「成程な。中身に引かれて買ったのではないと判って安心した。」
「あはははは。」
ちなみにお小遣いに貰った白金貨は全部お義父さんに渡して、足りない分は盗賊さんの洞窟で拾ったお金を足した。
たとえお義父さんにでも借りは作りたくない。
いつもニコニコ現金払い。
「ただ今。」
「お帰りなさい。」」」」
今日はお父さんと一緒なので全員でお出迎え。
リビングでティータイム。
「何か良い物を買えた?」
「うん。最後はお金が足りなくなったけど、お義父さんに助けて貰った。」
俺が嬉しそうにしているからか、奥様達も嬉しそう。
「そうそう、ショーツが出品されてたよ。」
「新品?」
レイナの目が急に厳しくなった。
「ううん、中古。洗濯前のも出品されてた。」
「なんだ、古くなったから下げ渡したのでしょ。」
「えっ、下着だよ?」
「侍女やメイド達は凄く喜んでくれるわよ。」
「ええっ、レイナも侍女達にあげてるの?」
「勿論よ。今はドレスよりも喜んでくれるわね。」
少なくとも俺は社長にパンツのお下がりを貰うのは嫌だ。
判らん。
「キラは人間だけでなく、商品を見る目もなかなか鋭い。私も随分と勉強になった。」
「いや、お金が足りなくてお義父さんに助けて貰ったので。」
「足りなかったんだ、ごめんなさいね。」
「いやいや、俺も初めてだったから。」
「まあ普通なら十分な額だったぞ。今回は特別高い魔道具が出品されていただけだ。レイナに落ち度は無い。」
「それで何を買ったの?」
「これ。」
音楽の魔道具を出した。
「何をする魔道具なの?」
「魔力を注ぐと音楽が流れるんだけど、どうやら魔力で中の円筒を回しているらしいんだ。魔法で石弾や風刃を回転させる事は出来るけど、どうしても回転させる魔導具が出来なかったから研究したくなったんだ。そうだ、この魔道具の外側に使われている素材が判らなかったんだけど、誰か鑑定して見て。」
奥様達が魔道具に掌を当てた。
奥様達は見るだけでも鑑定出来るが、触りながらの方が精度の高い鑑定が出来る。
「あれ?」
「弾かれてる。」
「私も。」
「私もダメ。私達では鑑定の練度が不足しているみたいね。魔術師長なら鑑定出来るかも知れないわ。」
魔術師長は献上品の鑑定をするので鑑定練度については王国1。
「焼肉パーティーする?」
「そうね、絶対に来るわね。」
週末になった。
キラで冒険者活動をしている下の子供達も呼んでワイバーンパーティーを開いた。
お義父さん達も夫婦揃って参加してくれた。
というより、呼ばなかったら後が怖い。
「やはりワイバーンは旨いな。」
辺境伯も笑顔。
地竜を倒してから死の森が少し落ち着いて来たらしくて最近は笑顔が増えた。
「うむ、黄身のソースは絶品である。」
陛下はマヨネーズ風ソースがお気に入り。
そろそろ卵が少なくなって来たので、探しに行った方が良いかもしれない。
奥様達が焼肉パーティーをしたら絶対に来るとは言っていたが、招待していないのに毎回参加しているのが凄い。
お仕事は大丈夫なのか?
食事会が終わってティータイム。
魔術師長に“硬くて重い石”を鑑定して貰うことにした。
「とあるところで手に入れた素材なのですが、これは何でしょうか?」
“硬くて重い石”を魔術師長の前に置いた。
魔術師長が“硬くて重い石”をじっと見る。
今度は両手で“硬くて重い石”を包むように触れながら目を閉じてじっと集中している。
「これはヘヘイロカネだな。王家の宝物庫で見たナイフと同じ物で間違いない。ナイフに添えられていた説明にはこの世界で最も硬い金属と書かれておった。儂も鉱石の形で見るのは初めてだ。どのようにして加工するのかは儂も知らぬが、希少な素材なので大事にしろ。」
「ありがとう御座います。もう一つ、こちらの“音楽の魔道具”の外側に使われている素材を教えて下さい。」
魔術師長の後ろの床に“音楽の魔道具”を出した。
「魔力を流すと音楽が流れる魔道具か、王宮の宝物庫にもいくつかあるが、この外側の素材を調べるのだな。」
「はい。奥様達にも鑑定出来なかったのです。」
「なるほどな。」
奥様達が鑑定の練習をさぼって攻撃魔法ばかり撃っているのを知っているので魔術師長が笑った。
魔術師長がじっと魔道具を見る。
すぐに外箱に両掌をあてて目を閉じた。
「これは導紫檀じゃな。」
「ドウシタンとは何ですか?」
「紫檀という高級家具などに使われる木材がある。紫檀が瘴気などの影響で魔獣化したのが導紫檀だ。硬い上に魔力伝導率が高いので、古代遺跡から出土した魔道具では薄くスライスして魔法陣を繋ぐ術式の基盤として使っている場合がある。今では全ての邪気を払う漆黒檀と共に幻の2大素材と言われる貴重品だ。」
えっ、漆黒檀も幻なの?
全ての邪気を払えるの?
拙い。
奥様達の杖は漆黒檀。
魔術師長に見られたらすぐにばれる。
先手必勝。
「えっと、レイナ杖を出して。」
「良いわよ、はい。」
「な、なんじゃと!」
魔術師長が大きな声を上げたので魔道具を見ていた陛下達も驚いてレイナの杖を見る。
「えっと、エルフ自治国からの指名依頼で倒した?」
「ちょっと、ちょっとだけで良いので触らせてくれ。」
「魔力登録しているから重いよ。」
「先っぽ、先っぽ3㎝だけなら大丈夫じゃ。」
なんじゃそれ。
「先っぽ3㎝だけよ、それ以上はダメだからね。」
レイナが笑いながら杖の先を魔術師長に向ける。
魔術師長が杖の先を両手でそっと包み込む。
「なんじゃこれは!」
魔導師長が大声を上げて目を見開いた。
杖に付与されている魔法に気が付いたらしい。
「魔術師の秘伝だから内緒にしてね。」
付与魔法については口外無用と念を押した。
「勿論じゃ。重力軽減だけでなく、武器強化、魔法防御、衝撃吸収、低反発、雷撃、自動洗浄、全て効果大の付与魔法が施されているなど、口が裂けても言えぬわ。王家の宝剣ですら武器強化小なのだぞ。」
「・・・・。」
内緒だと言ったのに、全部ばらしてるじゃん。
呆れて言葉を失った。
「キラは効果大の付与魔法を使えるのか?」
陛下が驚いている。
まあそうなるな。
「魔術師の秘伝ですので。」
「そうか、そうであったな。4人の娘も大きな武器を持っていると聞くが、そうか、そう言う事か。」
陛下が勝手に納得している。
「はぁ。」
ともあれ謎の物質がヘヘイロカネと導紫檀と判ったので古文書で調べる事が出来る。
魔術師長はちょっとあれだったけど、まあ良いか。
学院は夏の長期休みに入り、上の4人はそれぞれの領地に向かった。
代わりに冒険者活動をしていた下の4人が受験勉強の為に王都屋敷に引っ越して来た。
とんでもなく魔力量が増えたハリーは別格として、他の3人もキラにいた4年間で思った以上に魔力量が増えて、今では8人の姉達よりも魔力量が多くなっている。
魔力量の多いハリーと一緒に冒険者活動をしていたので刺激を受けたのだろう。
真ん中の4人は黒い森でお小遣い稼ぎ。
学院のお友達と一緒に買い物に行くお金が欲しいらしい。
俺は娘達の送迎担当。
娘達が嬉しそうにしてくれるから俺も嬉しい。
お小遣い稼ぎなので少しでも高く売れるように小さな傷で倒す工夫をしている。
上の姉達のような爆散娘ではないのでちょっとだけホッとしている。
俺はヘヘイロカネと導紫檀について禁書庫で色々と調査中。
疲れたら奥様達の膝枕でお昼寝。
時々錬金場に籠って黒竜化石の研究。
黒竜の化石は瘴気を浄化したら瘴気を無効化する性質になっていた。
旨く加工できれば瘴気を纏った漆黒檀でも1撃で切り倒せるのではないかと思って研究中。
偶々ハリーが俺の竜剣のようなスパッと切れる武器が欲しいと言ったので、どうせならと思って一緒に黒竜化石の加工実験を手伝わせた。
一度作った雷竜剣をもう一本作っても楽しくない。
同じものをもう一度作るよりも新しい物にチャレンジする方が楽しい。
2人で小さな黒竜化石の欠片で実験してみた所、とんでもなく魔力を吸われるが魔法成形での加工も可能と判った。
ハリーが1日寝込んだので奥様達に怒られたけど、練度が上がればハリーも黒竜化石で自分の武器を作れる事が判ったのは大きな成果。
魔力成形で作る武器は作った本人が使うと威力が数段上がる。
奥様達の杖でも俺が使う方が魔力の増幅率が高いし、娘達の大槌や大鎌、金棒も俺が使うと明らかに威力が上がる。
ハリーは小さな時から魔法成形で鍬や剣を作っているので黒竜化石の魔法成形に慣れれば大きな武器も作れる筈だ。
「頑張れよ。」
「心配しなくても大丈夫ですわ。」
「それでもお父さんは心配なのよね。」
「うん。」
素直に頷いた。
今日は王立学院の入学式。大丈夫とは思うがやっぱり心配。
ハリーが新入生代表で挨拶するのだ。
末の4人が王立学院に入学する事になったので、12人の子供達全員が屋敷を離れて寮で一人暮らしになる。
俺に出来る事は全てやった。
後は子供達が楽しく生きてくれればいい。
子供達が生まれてからの事を思い出しながら俺の役目は終わったな、と思った。
ハリー達が卒業する迄の5年間は王都住まいだが、これからは奥様達とのんびりした人生を楽しむつもり。
5年経ったらストンの街に帰って、ひっそりと薬屋生活。
それまでに禁書庫でヘヘイロカネと導紫檀について調べる。
ハリーと一緒に黒竜化石の武器を作る。
あとは魔法の研究。
保存の魔法に、回転運動の魔法陣、昔王都の露店で買った本に載っていた魔法陣の研究。
これも禁書庫に入れるうちにやっておきたい。
出来る時に出来る事をしておくのは大事。
やる事が一杯ある。
あれ、全然のんびり出来ないじゃん。
そうだ、下の4人は魔力が多いのだから、俺の仕事を分担して貰えば良い。
まずは下着製作と洗濯。
娘達には話を切り出す前に危険を察知されて逃げられた。
魔法好きで騙されやすいハリーだけは下着製作の練習してくれて相当な腕前になったが、姉達やお義父さん達のサイズを測るのは嫌だと市販品制作での練度上げだけになった。
洗濯魔法も直ぐに覚えたが、姉達やお義父さん達の下着は嫌だと逃げられた。
”ヘイタクシー“は転移魔法の良い練習になるし、姉達も喜んでくれるからと引き受けてくれている。
適当な理由を付けて旨く言いくるめれば、めんどくさい事はやってくれそうな気がする。
問題は俺が口下手で上手く言いくるめられない事。
ぐぬぬ。
今の俺は忙しすぎて時間が無い。
俺は1人、奥様達は4人。
1人1人の膝具合が違うので毎日全員の膝を楽しみたい。
4人の奥様全員に膝枕して貰うには結構時間が掛かる。
今は1日に1人か2人。
目指せ、毎日4人の膝枕。
何とか第1部完結です。
花粉症を切っ掛けに体調を崩し、最近5回の投稿は読み返しもしていないので誤字脱字も多いと思いますがお許しください。
毎回読んで下さる方がいた事で頑張れました。
第1部完結を機会に完結作品扱いにして暫く休養させて頂きます。
体調次第ですが、第2部は6月1日から投稿中作品に戻して再開させて頂くつもりです。
1話が長いのに下手な文章なのでご迷惑をお掛けしたかとは思いますが、第2部からはもう少し改善したいと思っています。
再開後も読んで頂けるように頑張りますので宜しくお願い致します。
長い間お付き合い頂き、本当に本当にありがとうございました。 免独斎頼運




