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4 30分以内無料には裏があった

ブックマークを戴きました。

ありがとうございます。

これからも隔日更新を目指して頑張ります。

ストンに着くと依頼達成報告に向かう冒険者のおっちゃん達と別れ、これからの拠点になる宿に向かった。

宿は大通りから少し離れた路地にあった。

見た目も小さな宿で部屋数は5つだけ。

偶に商人や護衛で来た冒険者が泊まるが、主な客は夕食を食べに来る冒険者。

パーティーで家を借り、食事だけこの宿で摂るとベッツさんが教えてくれた。

宿に入ると太った、違う体格の良いおばさん、違う元お姉さんが出て来た。

チリチリ感に襲われる度に慌てて思い直す。

ヤバかった。

創造神様有難う御座います。

「いらっしゃい、話は聞いてるわ。あんた~、ベッツさんが来たわよ。」

元お姉さんが奥に向かって大きな声で叫んだ。

「おう。」

隣の部屋から髭面の厳めしいおっさんが血だらけの包丁を持ってヌッと出て来た。

思わず後退る。

バコン!

元お姉さんがおっさんの頭を張り倒す。

結構良い音がしたって言う事はおっさんの頭には空洞が多い?

「包丁を持ったまま出て来るんじゃないよ、まったく。」

「すまん、丁度肉を捌いていたから・・。」

「こちらが手紙で知らせたキラ坊ちゃんだ。ストラブ商会の縁に当たるが、息子のつもりで面倒を見てやってくれとのことだ。無茶をしたら張り倒しても良いそうだが、小さいのに結構強いらしいから本気でやらないと返り討ちに会うかも知れないぞ。」

ベッツさんが笑いながら紹介してくれた。

「キラです。宜しく・お願い・します。」

「ヤハギだ。こいつは嫁のハルナ。困ったことが有ったら何でも相談してくれ。」

前世のゲームに出ていた軍艦と同じ名前、おじさんが軽巡で元お姉さんが戦艦。

元お姉さんの方が圧倒的に強いと思う。

「手紙で伝えた通り訳有りなので目立たない様に頼むぞ。」

「ああ、判ってる。」

「くれぐれも、頼むぞ。」

それだけ言うとベッツさんは宿を出て行った。

「丁度夕食が出来た所よ。食事をしてから部屋に行きなさい。キラの部屋は2階の奥、客は殆どいないけどあまり騒がないようにね。」

「うん。」

食事を済ませてから王都の屋敷から持って来た大きな袋二つを持って2階に上がる。

部屋は前世の4畳位? 奥行きが長い長方形、家具が少ないせいか結構広く感じる。

ベッドが1つと窓際に小さな机と椅子。

机の前の壁には小物を置ける棚がある。

ベッドの下の箱が収納らしい。

収納らしい箱を引きずり出して持って来た袋の中身を入れた。

着替えの服とポーションや薬を作る薬研などの錬金道具。

薬草取りに使う布袋やスコップや鉈などの採集道具。

魔法袋を作る為の色々な道具や嵩張る素材。

貴重品を入れた背負い袋はベッドの枕元に置く。

背負い袋には金袋とポーションや携帯食、ナイフなど身に着けておくべきものや魔法袋に使う希少素材などの貴重品を入れている。

枕もとの壁際に背負い袋を置いてベッドにもぐりこんだ。

寝ている間も魔法探知を使えるようになったが、油断はダメ、絶対。



翌日は朝食を済ますとすぐに街の探検に出掛けた。

冒険者ギルドに登録出来る8歳の誕生日迄は近くの草原で薬草取りをしながら暮らす予定。

宿泊費や食費、若干の小遣いはストラブ商会が出してくれるが、出来れば自活しているように見せた方が目立たない。

目立つのはダメ、絶対。

まずはこれからの生活場所となるストンの街についてどこに何があるかを知って置きたいと思った。

ストン周辺には魔獣が多いらしく街は立派な街壁に囲まれている。

小さな街でよそ者が少ないので安全と聞いていたが、街中を剣や槍を持ったおっさん達が普通にウロウロしている町が安全なの?

あくまでもこの世界基準での安全で、日本の安全とでは天地の開きがある事が明らか。

何度も襲われた事で探知魔法を常時発動するのにも慣れたが、念の為に小剣を佩いて宿を出た。

路地にある宿から100m程先に大通りがある。

右に行けば200m程先に冒険者ギルド、その先50mが街門。

冒険者ギルドの向かい側には商業ギルド、その裏側は職人街になっているらしい。

大通りを左に行くと直ぐの所に薬師ギルドがあった。

いずれは薬師としてお世話になるつもりなので様子見に入ってみた。



初めて行く場所で大切なのは挨拶。

挨拶さえしっかりしておけば、あとは笑って誤魔化せる。

会話の苦手な俺が前世で磨いた処世術。

入り口を入ると直ぐの所で姿勢を正し、両手を脇にビシッと揃えて挨拶。

「おはようございまシュ。」

上体を45度に曲げた。

ちょっと噛んだけど礼はしっかり出来た。

ぷっ!

誰かが笑ったようだが気にせずに上体を起こした。

ギルドの中を見回すと、左側には薬草やポーション、薬品の買い取りや販売をしているらしい長いカウンターがあって4人の職員が来客の対応をしたようだが皆が俺を見ている。

右側には依頼ボードがあって薬草や素材の採取依頼や常時依頼となっている薬草の買い取り価格が書いてある。

奥は仕切りの付いたブースになっていて各種の商談や相談が行われるらしい。

「おい、さっきのはどこの国の挨拶だ? この国では右手は胸の前だぞ。」

職員らしいおっちゃんが出て来て声を掛けられた。

前世とこの国では挨拶の仕方が違うらしい。

屋敷から出た事が無いので知らなかった。

「えっと、お祖母さんの本・読んだ?」

「そうか、まあ元気があって良い挨拶だったぞ。」

「ありがとうございましゅ。」

緊張しているせいでまた噛んでしまった。

おっさんがプッと吹き出した。

「初めて見る顔だな。何か用か?」

「引っ越して来た。ポーションの買い取り価格、知りたい。」

「ポーションは効能によって買い取り価格が変わるし、ギルド員以外からの買い取りは出来ないぞ。」

「来年8歳。ギルド員になって・ポーション売る。」

「坊主はポーションを作れるのか?」

「うん。」

「今持っているか?」

「うん。」

背負い袋から屋敷で作った初級ポーションを出した。

「鑑定してもいいか?」

「うん。」

「おい、これを鑑定してくれ。」

おっちゃんがカウンターにいた職員にポーションを渡す。

職員がポーションをじっと見つめている。

魔力の靄が顔の付近に集まって魔法陣となり手に持ったポーションに吸い込まれた。

鑑定魔法らしいが遠くて魔法陣の細かい所は視えなかった。

「初級ポーションの特上です。」

劣、並み、上というのは聞いた事があるが特上というのもあるらしい、知らなかった。

「何だと?」

おっちゃんが急に大声を出したのでビックリした。

「初めて見ましたが、初級ポーションの特上に間違いは無いです。」

「坊主、これは本当にお前が作ったのか?」

思い切り顔を近づけられて思わず引いてしまう。

おっちゃんと顔をくっつけ合う趣味は無い。

お姉さんなら喜んで顔を押し付けた?

想像したらちょっと嬉しくなった、って今はお返事が先。

「うん。」

「特上だぞ、特上。」

何となく拙い雰囲気になる。

「えっと・・素材の品質が良い?」

魔力水を毎日撒いた薬草園の素材だから品質が良くなったのだろう。

「いやいや、素材が良くても相当の腕が無いと特上にはならん。初級薬師の試験を受けて見ないか? 合格すれば薬師ギルド員になれるぞ。」

「試験?」

薬師の試験はもっと大人にならないと受けられないと思っていた。

「なに、こちらで用意した薬草で初級ポーションを作るだけだ。」

作るだけなら出来る。

「うん。」

2階の小さな部屋に案内された。

「直ぐに準備するから少しだけ待ってくれ。」

「うん。」

暫く待つと少し大きな部屋に案内された。

壁際におっさんが3人座っている。

テーブルの上には何種類かの薬草といくつかの錬金用具。

初級ポーションなら錬金用具無しでも作れるけど、これを使えって言う事なのだろうか。

とりあえず必要な薬草3種類の中から状態の良いものを擂り鉢に入れてすりこぎで磨り潰す。用意されていた水に浄化魔法を掛け、精製水にしてから魔力を流し込んで魔力水にする。

磨り潰した薬草に魔力水を加えて丁寧に混ぜて濾し、ポーション瓶に移して蓋をした。

治癒魔法をゆっくり澱みなくポーション瓶に送り込むと瓶が輝いた。

「出来た。」

出来上がったポーションをおっさんに渡すとさっき鑑定したおっさんに渡された。

「初級ポーション上です。」

「「なんだと?」」

壁際のおっさん達が声を上げながら一斉に立ち上がった。

「初級ポーションの上です、間違いは有りません。先程鑑定した特上と同じ魔力ですので特上もこの少年が作った物です。」

「素材の品質ということか。」

「恐らくはそうでしょうね。この街には初級ポーションの上を作れる薬師はおりません。薬師としての腕は間違いなく街1番という事です。」

「ともかく合格だ。登録の手続きをしよう。」

「まだ7歳。」

「資格試験の合格者は何歳であってもギルド員になれる。30分以内に登録してくれたら金貨1枚の年会費を無料にしてやる。」

前世の通販番組?

何となく怪しいが、金貨1枚が無料は嬉しい。

すぐに手続きをして貰ったら登録料として金貨2枚を取られた。

どうせなら登録料を無料にしてほしかった。

やっぱり30分以内無料には裏があった。

ぐぬぬ。

ちょっと騙された感はあるけど、7歳で正規のギルド員になれたのは嬉しかった。



薬師ギルドを出て冒険者ギルドに行った。

薬師ギルドで挨拶の仕方を教えて貰ったから今度は大丈夫。

入り口を入って胸に掌を当てる。

「こんにちゅは。」

やっぱり初めての場所は緊張してしまう。

転生してもコミュ症は治っていないらしい。

「プファ、アハ、アハハハ。」

カウンターのお姉さんが大爆笑。

顔が熱くなっているのを感じる。

きっと真っ赤になっている筈だ。

「ぅもぉ~っ、可愛いっ!」

お姉さんが胸の前で両手を組んで体を揺すっている。

「おいおい、頑張って挨拶してくれたんだ。笑ったら失礼だぞ、プッ。」

そういうおっちゃんも笑ってるじゃん。

「坊主、冒険者の挨拶は拳で胸をドン。こうだ。」

おっちゃんが握った拳を胸に当てた。

薬師と冒険者は挨拶が違うらしい。

そんな事聞いてねえし。

ギルドによって違うなら違うって言ってくれよ。

「えっと、キラ・です。7歳・です。来年冒険者・なります。」

拳を胸に当てて挨拶した。

「丁寧な挨拶ありがとね。受付のシーツよ、宜しく。」

「登録前でも素材・売れる?」

「ギルド員で無いと少し安くなるけど素材や薬草の買い取りは出来るわよ。」

「うん、明日から・頑張る。」

「危ない事はダメよ。安全第一でお願いね。」

「うん。」



「今日も薬草採りかい?」

「うん。」

「気を付けて行くんだぞ。」

「うん。」

門番のおっちゃんに見送られて町を出る。

いつも挨拶してくれる優しいおっちゃんだ。

行き先は町の北にある草原。

革鎧に小剣と背負い袋、初級冒険者らしい服装。

薬師ギルドでは最年少薬師だと騒がれけど初級なのでたいしたことは無い筈。

中級ポーションも上級ポーションも作れるけど今は秘密。

目立つのはダメ、絶対。

初級薬師になったので毎日薬草採取に出掛けている。

俺が薬草の採取場としている草原の奥にはあまり人が来ない。

草原の奥は森に近いので大鼠や角兎が出る。

中級冒険者だとあまり稼ぎにならない弱い魔獣、薬草取りの初級冒険者にとってはちょっと危険な魔獣。

お陰で来る者が殆どいない閑散とした採取場になっている。

俺にしてみれば魔法の練習相手に丁度良い弱い魔獣がいる上に人目の少ない絶好の練習場。

探知魔法で周囲の気配を探りながら身体強化で草原を走る。

見つけた魔獣を“気弾”で倒す。

火でも石でも風でもない純粋な魔力の塊を凝縮して打ち出す俺のオリジナル魔法。

今の俺にとってはまともに使える唯一の攻撃魔法。

色々な属性魔法にチャレンジしたものの使える魔法が無くて途方に暮れた時、お祖母さんの遺した魔法書に“魔法は気合だ“という1文を見つけたのがきっかけ。

魔法は魔法陣を意識しながら結果をイメージして発動するというのが基本だが、結果を強くイメージすれば魔法陣は勝手に作られると判ってからは気合を入れてイメージを固める練習をした。

“気合だ、気合だ、気合だ、気合だ~!”

前世記憶にあるレスラーお父さんを真似して、毎日気合を入れながらイメージを固めた。

魔法の発動に必要なイメージは前世のアニメに出て来た甲羅を背負った仙人の技。

気弾は純粋な魔力の塊なので爆発しても火事にはならない。

草原や森にはもってこいの魔法が撃てるようになった。

今は“気弾”の練度上げが喫緊の課題。

発動速度と弾速の向上、威力や大きさを色々と変える事、やるべきことは沢山ある。

幸いにも魔力量は豊富なので毎日何千発も練習出来る。

冒険者の稼ぎは魔獣素材の売却金。

素材をなるべく傷付けないように倒すには相手によって威力を変えなければならない。

今は2㎝から1mまで様々な大きさの気弾を練習しているが、森に入るにはもっと速くて威力のある魔法を身に付ける必要がある。

今の気弾では動きの速い鳥には全く当たらないし、有効射程も100m程度。

威力も低いので、強い魔獣には手も足も出ない。

剣の練習も続けているが、あまり期待はしていない。

ストンに来るまでの道中で見たチャーさんの剣技の域に達するには時間が掛かり過ぎる。

魔法なら撃ち直しや逃げるという次の手段を採れるが、剣でしくじれば即死んでしまう。

行動方針は”命を大切に“。

“ガンガン行こうぜ”はダメ、絶対。



気弾の練習と同時に新しい魔法の開発にも取り組んでいる。

前世イメージを元にした気弾が創れた事で、属性魔法とは全く違う魔法を創れる可能性が開けた。

徹甲弾、誘導ミサイル、電子砲、重力弾、レーザービーム、波動砲と夢は際限無い。

色々と考えて試してはいるが残念ながら未だに発動には程遠い状態。

でも、夢は大きい方が楽しい。

大きな夢に向かって目の前の目標を一つ一つクリアして行く事が大事。

時間は有るので焦る事は無い。

大切なのは人生を楽しむ事。

安全第一に楽しく過ごせればそれでいい。

倒した魔獣はお祖母さんの本にあった血抜き魔法で血を抜いて自分で解体する。

解体はこの街まで護衛してくれたチャーさん達が野営の時に教えてくれた。

チャーさん達は血だらけになって解体していたが、血抜き魔法を掛ければ解体している時に血が出ないので服が汚れない。お祖母さんに感謝。

冒険者ギルドでも解体はして貰えるが、ギルド員で無いと解体料が高くてこの辺に出る弱い魔獣では殆ど稼ぎにならない。

ギルドに頼むのは冒険者登録が出来る8歳になってから。

ストラブ商会からの援助は秘密なので自活出来るだけの稼ぎを示すのは大事。

解体した肉は肉屋や宿に、角や爪などの素材は冒険者ギルドに買い取って貰う。

薬草は5本分をポーションにして余った薬草と一緒に薬師ギルドに納める。

ポーションを作るには多くの魔力が必要で、1日に5本作れれば薬師工房を開いても十分に余裕ある生活が出来るらしい。

俺ならもっともっと作れるが、5本に抑えている。

目立つのはダメ、絶対。

一応この街では自活している勤労少年という態にはなった筈、たぶん。



ストンに移り住んで半年。

元気でいるし、町にも慣れた。友達は出来てない。

案山子か!

「キラ、ちょっといいか?」

いつものように納品に行ったら薬師ギルドのギルマスに声を掛けられた。

「うん。」

「実は中級ポーションが不足している。キラなら中級ポーションも作れるだろ?」

「・・多分。でも資格無い。」

資格が無い事を口実に断ろうとした。

目立つのはダメ、絶対。

「資格があれば作れるという事か。」

「今、忙しい。」

7歳の少年が中級ポーションを作るのは目立ちすぎだ。

「そうかそうか、まずは中級薬師の資格試験だよな。素材と機材を用意しておくから明日の朝ギルドに来てくれ。」

ダメだ、このおっさん俺の話を全然聞いていない。

「だから・・」

「大丈夫、試験官の手配もしておくから安心しろ。じゃあ明日の朝な。」

ギルマスが俺の話をぶった切って勝手に話を纏めてしまった。

全然ダイジョバナイ。

押しに弱いのは転生しても変わっていないらしい。

資格自体はいずれ必要になりそうだからまあいいか。



中級薬師の資格試験は試験官3人の前で中級回復ポーションと初級魔力ポーションを作る事。二日以内に5本ずつ作製してどちらも2本以上が基準を満たしていれば合格となる。

問題なのは精密な魔力操作を長時間連続出来るかだが、初めての魔力水で失敗して以来毎日魔力操作の練習をしているので全く問題無い。

ギルドの用意した沢山の素材の中から必要な素材を選ぶ。

試験官がじっと見ている。

不要な素材が沢山あるのはきちんと素材を理解しているかを試しているのだろう。

選んだ素材から成分を抽出、浄化魔力水を加えてから丁寧に漉す。

溶液をポーション瓶に分け入れ、蓋をしてから溶液が光るまでゆっくりと治癒魔法を掛ける。

中級回復ポーションと初級魔力ポーションは素材が違うだけで製法は同じ。

注ぎ込む魔力量は格段に増えるが俺にとっては全く問題無い。

合計10本のポーションを半日で作り、試験官が全て合格と認めて試験は終了。

「凄いな。半分出来れば一流の領域なのに10本全部とは驚いたぞ。しかもたった半日だ。」

「師匠に教わった。」

「お師匠さんの名前を聞いても良いか?」

「師匠に迷惑。」

「そう言えば初級の時もそう言っていたな。ともかく素晴らしい師匠に巡り合えて良かったな。」

「うん。」

「それで今後の事だが、中級ポーションの素材は森の奥なのでキラには危険だ。素材は薬師ギルドで用意するので週明けに受け取って週に10本納品してくれ。1本につき金貨2枚、合計で金貨20枚だ。体調によって失敗する事もあるだろうから10本納品出来なくても気にするな。素材は毎週15本分渡すから10本以上出来た分については3割増しでギルドが買い取る。必要な機材は申し出てくれればギルドが格安で手配する。」

金貨1枚は前世の感覚だとおよそ1万円。

試験では10本作るのに5時間程しか掛からなかった。

朝素材を受け取ってポーションを作り、翌朝納品で15本なら金貨30枚を超える。

目立つのはダメ、絶対。

「買取、高すぎ?」

「隣の辺境伯領で魔獣の動きが活発になって怪我人が続出しているらしい。薬草の採取にも支障をきたしているようで薬草が豊富なソランダ領に割り増し価格での依頼が来た。」

怪我人が多いのなら仕方がないか。

「・・・心配。」

「ああ、ソランダ領にも被害が広がらないよう辺境伯には頑張って貰わないとな。冒険者達には既に素材の依頼を出しているから3日後には素材が揃う筈だ、頼むぞ。」

「うん。」

きっかけはどうであれ、どさくさ紛れに中級薬師の資格が取れたし、格安で機材が買えるのは有り難かった。



中級薬師になったが俺の生活は殆ど変わっていない。

週に1日中級ポーションを作る日が出来ただけ。

今迄通りに薬草採取と魔法の練習。

薬草と初級ポーションを薬師ギルドに納め、魔獣素材は冒険者ギルドに納める。

気弾の練度が上がり、鳥さんを落とせるようになったので冒険者ギルドのお姉さんが喜んでいる。

鳥さんが好物らしい。

毎日冒険者ギルドに行っているので冒険者のおっちゃん達も挨拶してくれるようになった。

時々果実水を奢ってくれる。



8歳になった。

「キラちゃん、お誕生日おめでとう。今日は登録よね。」

受付のお姉さんが満面の笑顔で迎えてくれた。

「うん、登録。」

「キラちゃんは冒険者ギルド期待の大型新人だからギルドのみんなが君の登録を待っていたのよ。」

大型新人って、俺は8歳の子供だから小さいぞ。

「そうなの?」

首を傾げ乍ら聞いた。

「当り前よ。会員登録したら冒険者ギルドにもポーションを卸せるじゃない。」

「あはははは。」

ポーションは品質管理上の理由でどのギルドでも会員以外からの買い取りが禁止されているのという事を忘れていた。

「薬師ギルドとの兼ね合いもあるけど、冒険者ギルドにも時々は卸してね。」

「うん。」

「登録はソロで良いのね。」

「うん。」

「職種は斥候?」

「職種って何?」

「剣士・槍士・盾・斥候・弓・魔法使い・治癒師とかね。」

「えっと、・・一応剣士?」

剣で戦った事は無いけどまあいいか。

「はい、職種は剣士。で、ポジションは? 剣士なら中衛かな?」

「ポジション?」

「前衛とか中衛とか後衛とかのポジション。他の冒険者やパーティーと一緒に依頼を受ける場合のポジションよ。一応聞いておかないと緊急の強制依頼の時に困るからね。」

良く判らないがお姉さんの言葉だと剣士は中衛らしい。

「えっと、中衛?」

「人に知られても良い得意な技とかスキルはある?」

「・・ない?」

知られては拙い物なら沢山ある。

「共同依頼などで本当に必要な時以外は技とかスキルは隠しておきなさい。国王陛下に聞かれても“冒険者の秘匿です“と言えば不敬罪にはならないからね。」

めっちゃ良い事を聞いた。

拙い事は何でもかんでも“冒険者の秘匿”で押し通す事にした。

「うん。」

「ランクだけど、キラちゃんはEランクよ。」

「E?」

「普通はGランクだけど、1年近くずっと魔獣素材を納品していたのはみんな知っているからEランク。草原の魔獣を毎日何頭も狩っているのに怪我1つした事が無いからね。」

「うん。」

冒険者ランクについてはまるで知らないので素直に受けた。

「中級ポーションが作れるという事は治癒魔法も使えるのよね。」

「うん。」

「納品時に魔力が余っていたらポーションを買えない冒険者や軽傷の冒険者の治療をしてくれないかな。ギルドの支援事業だから一人銀貨1枚。治療代としては安くて稼ぎにならないけどギルドポイントが一杯付くからランクアップには凄く有利よ。」

魔法を使いすぎて魔力切れになると気持ちが悪くなったり気絶すると母さんから教わったが、今まで一度も気持ち悪くなった事は無い。

「いつも余ってる。」

「キラちゃんて結構魔力があるのね。じゃあ怪我人が居る時は声を掛けるからよろしくね。それから、ポーションを定期的に納品してくれたらポイントが沢山貰えるから早くDランクになれるわよ。」

お姉さんがにっこりとほほ笑む。

笑顔の向こうに”もっとポーションを持ってこい“という圧力を感じる。

目立ちたく無いので少しだけ納入する事にした。

目立つのはダメ、絶対。



正式に冒険者となったが、いつもの日常は変わらない。

ポーションの納品先に冒険者ギルドが増えた事と週に2、3人怪我人を治療する事が増えただけ。怪我人の治療は浄化魔法と治癒魔法の練習にもなるので俺にとっては有り難い。

魔法は使えば使うほど練度が上がる。

中級ポーションを作る日以外はいつもの草原で魔法の練習と時々見つける魔獣の討伐。

帰りに薬草を採取してその場で初級ポーションを作成、薬師ギルドと冒険者ギルドに納品。怪我人が居れば治療という1日。

草原への往復は身体強化を掛けて走るので片道30分。

適度な運動と宿の美味しい食事のお陰で体も大きくなったし力も付いて来た。

言葉もちゃんと話せるようになった?

気弾の速度も上がったし、風魔法との合わせ技でコースを変える事が出来るようになってからは鳥型魔獣への命中率が上がった。

上達しているのが実感出来るので今は練習が楽しくて仕方が無い。

毎日森を走り回り、魔法を撃ち捲ったので今では同時に10発の気弾が撃てる。

コースを変えられるのはその中の1発だけだがそれなりに練度が上がっている。

新しい魔法も色々と取り組んではいるものの、未だにこれと言った魔法は開発出来ていない。

もう少しで何とかなりそうなのは結界魔法と光弾に飛行魔法。

治癒魔法は聖魔法と言われているが、俺には生命神の加護が無い。

ひょっとしたら聖魔法同様に治癒魔法が使える光魔法なのかもしれないと思って、屋敷にいた時に色々と調べてみたらエルフ族の一部が光魔法を使えるらしいと判った。

亡くなったお祖母さんはエルフ族。

治癒魔法が使えるのはお祖母さんの血かもしれないと考えて光属性の魔法に挑戦した。

光魔法が使えるならと思いついたのはレーザービーム。

訓練に訓練を重ねた結果、今ではⅬEDの懐中電灯程の威力。

なんと200m程先で直径50㎝程の範囲が明るくなる。

攻撃魔法への道は遠いが、光魔法を実用化出来たという事で俺が光属性だと確信した。

それから後も色々と調べた結果、光属性が聖属性の上位互換であることが判った。

気合を入れて光属性の研究をしたせいか、光属性の結界魔法が使えるようになった。

最初は板状のバリアだけだったが、何度も練習しているうちにドーム状にする事が出来た。

まだまだ強度が足りないので魔獣相手には頼りなさ過ぎるが、魔獣に襲われた時の安全度が少しだけ上がった、かな?

板状のバリアはかなり離れた所にも張れるようになったし発動速度も速くなった。

今はバリアの強度上げと発動速度をもっと早くする練習に重点を置いている。

いずれはドーム型のバリアで魔獣を生け捕りに出来たら良いな、なんて思った。


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