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31 お股が腫れるよ 

最初の子達が3歳、二番目の子達が1歳になった。

3歳の子達の下腹部に見える靄の色が少し薄くなって来たので魔力吸い出しは5日置きにした。

後から生まれた子供達の靄の色は生後半年くらいから徐々に濃くなり、1歳を迎える頃から少し黒っぽくなったので魔力吸出しを始めた。

奥様達4人が“魔力吸い出し”を覚えてくれたし、リーナが“スキャン“を覚えてある程度靄の状況を掴めるようになったので俺の負担は随分軽くなっている。

魔力過多症の解明に少しでも役立てばと考えて、これまでの状況を詳しく記した書類を王宮に提出した。

王家が魔術師の塔と教会に書類を見せた所、どこからか漏れたのであろう、貴族達から子供の診察依頼が王宮に殺到したらしい。

ミュール王国は日本の25倍程の広さがあるので領地持ちの高位・中位貴族だけで2000家以上、官僚などの法衣子爵や貴族領で代官を務める男爵を加えると数え切れないほどの貴族がいる。

本当に魔力過多症を心配して診察依頼を出した貴族達が殆どらしいが、社交の場には一切出ない俺に近づこうと思っている貴族も多いらしく、家臣の子を自分の子と偽って診察依頼を出した貴族もいたらしい。

困り果てた王家が実家の4家に相談、既に痣が出ている場合はともかく、子供が元気であれば日時を指定して登城して貰い、騎士団の治癒所で纏めて診察する事になった。

いちいち屋敷に行くのは時間の無駄だし、何よりも俺は貴族が嫌いなので有難い。

まずはリーナが“スキャン”で診察。

ある程度病状が進行していれば”スキャン“で判る。

リーナが問題ありと判断した子供を魔力の見える俺が詳しく診る。

病状によって魔力吸い出しの量を指示し、3人の妻達が魔力吸い出しを行う。

俺の子供達の診察と魔力吸い出しが最優先なので、妻達の魔力量と疲労を考えて週に2日、1日50人の診察を行うことになった。

魔力過多症と診断されるのは1日に1~2名。

だが魔力過多症の治療には短くて1~2年、長い場合は3~4年に渡って4~5日置きに“魔力吸い出し”をしなければならない。

1ヶ月過ぎると継続的に治療が必要な子供が10人を超えた。

このまま増え続けると奥様達の負担が大きくなりすぎる。

診断の傍ら魔術師の塔の魔法使いや神官達にも診察が出来るように術式を簡素化した”簡易スキャン“を教える。

さらに、“魔力吸い出し”の術式を公開し、魔力水作りなどの対処法を教えた。

患者の数が増えないうちに治癒師を増やさなければ治療出来ない患者が出て来る。

時間との争い。

奥様達が“魔力吸い出し”を覚えてくれていて良かった。

俺達や魔術師の塔の魔法使いはともかく、神官達には報酬を用意しなければならない。

診察料や治癒料などを設定して国の事業として定期健診と治療が行われる事になった。

魔力量の多い者は将来国に大きく貢献する事が出来る。

魔力過多症で失われていた命を救う事は国力を高める事でもあるし、王家への忠誠を高める事でもあったらしい。



2ヶ月後には定期健診と治療システムが確立し、3か月後にはよほどの患者以外は魔法使いと神官達で対応出来るようになった。

俺は念願のスローライフを楽しんでいる。

娘達と遊んだり、素材採取に出掛けたり、毎日をのんびり自由に過ごす。

これも皆奥様達のお陰。

奥様達も幸せそうに膨らみかけているお腹を擦っている。

そう、4人全員が3人目を身籠ったのだ。

今度こそはとちょっぴり期待している。

前世の同僚が4人連続女の子だったからと男女産み分け法を研究していた事を思い出す。食事や飲み物はもとより入浴法や体位迄入念に研究して挑んだ5人目、女の子だった。

科学の進んだ前世でも難しい事を俺に出来る筈が無い。

困った時の神頼み。

一人でも良いので男の子を授けて下さいと毎日創造神様に願った。



上の子達は4歳になり俺達が魔力吸い出しをしなくとも自分一人で魔力放出が出来るようになった。

靄の色もほぼ平常になったので一安心。

繊細な魔力操作が必要な魔力放出を1人で出来るようになったので魔力暴走の恐れも無い。

ただ、まだ4歳なのに魔術師長以上の魔力量を持つ母親達よりも魔力量が多いのは嬉しいような不安なような複雑な心境。

今は上の娘達に魔法を教えるのが俺の楽しみ。

まずはバリアと探知魔法。

大事なのは娘達の命。

5歳になったら護身術や剣術も教えたい。

杖術をしたい子は奥様達が教えた方が良さそう。

何人かが冒険者になって一緒に素材採取に行ければいいな。

色々と夢が膨らむ。

昼間はみんな一緒に広間で遊び、夜は俺と添い寝の順番に当たっていない母親と同室。

同じ部屋にいつも妹達がいるせいか、どの子もお姉さんぽくなって時々俺が叱られる。

「お父さんなんだからしっかりしなくちゃダメなんだよ。」

しっかりしなければいけないらしい。

魔法を考えるよりも難しい。



アシュリーお義父さんが来た。

「王城の結界を再構築する事になった。」

「もう古いからね。」

基盤に描かれた魔法陣は魔力を流せば徐々にではあるが劣化する。

結界の耐用年数は2~30年。

通常は必要な時だけ魔力を流し、不要な時は結界を切って魔法陣を休ませる。

時々結界を休ませれば連続使用よりも数倍長く持つ。

ギルドの訓練場などが朝9時から夕方5時迄と使用時間を決めているのはそのせい。

王城の結界は万が1に備えて、24時間休みなく稼働させている。

一度王城の結界装置を見学させて貰ったが、お祖母さんが作ったのはおよそ30年前。

休み無しに稼働させて30年持ったのはお祖母さんの腕のせいだろう。

大規模結界の構築に関しては、まだまだお祖母さんには敵わない。

経験不足の俺では25年経ったらあちこちに綻びが出そうな気がする。

「魔術師達が各国の結界師にも問い合わせて試算した所、白金貨30万枚とおよそ5年の期間が必要との結論が出た。」

白金貨30万枚、比較はし難いが白金貨1枚が前世の100万円とすれば3千億円。

それでも結界塔自体は強化魔法を掛ければ問題無いから新規に作るよりははるかに安い。

殆どは結界師と補助をする魔術師の人件費と魔石の代金なのだろう。

でも、長い間平和が続いている今は結界師の依頼料が安くなっている筈なのにその見積額?

「そんなに掛かるんだ。」

「うむ、思っていた以上の大金だ。この国の貴族は腐っているから税を誤魔化している者が多い。税を誤魔化されれば国の収入が減り、今は王家の財政が厳しい。さてどうする?」

「う~ん、・・・世間知らずの馬鹿を騙して安く結界を張らせる?」

「ところが世間知らずの馬鹿にはやり手の義父達が付いていた。」

「あはははは、お任せします。」

「良し、任された。」



対価は白金貨10万枚と2つの子爵領に2家の子爵叙任権。

これで子爵の叙爵権は3家分。

伯爵になったルナを含めて4家が子爵以上の貴族になれる。

ちなみに、伯爵家には6家、子爵家には2家の男爵叙任権が叙任と同時にセットで付いて来る。領地の代官として男爵が必要だからなのだろう。

不足分の代官は騎士爵で埋めるが、騎士爵の数は領地の広さによって違うらしい。

という事は、単純に考えても男爵の数は子爵以上の貴族の3倍を超える。

王家が官吏を直轄領の代官にする場合も男爵に任じるので王国には男爵が山ほどいる。

平民が男爵になれば大騒ぎされるほどの大出世だが、高位貴族の間での男爵は貴族の端くれでしか無いのでお義父さん達は孫を何としても子爵にしたいらしい。

貴族の事はまるで判らないので、難しい事はお義父さん達任せ。

俺は出来る事を頑張るだけ。

結界構築の期限は5年、ってそんなに掛かるの?

数か国の結界師に打診した結果が結界師3人に補助60人でおよそ5年という事らしい。

結界師さん、前世ならカルテル防止法違反で捕まるよ。

ある程度の力量があれば、結界師1人補助20人でおよそ1年か2年で術式を組める筈。

俺? 言わぬが華。



結界の構築が始まった。

補助の魔術師10人に魔法陣を描く基盤を作って貰う。

結界構築自体は俺1人で出来るが、お義父さん達が報酬を吹っ掛けているのでそれなりに大変な作業っぽくしなければならない。

宰相は補助の魔術師を40人つけると言ったが、大勢だと仕事の割り振りだけでも頭が痛くなる。40人にさせる程の仕事は無いので魔法陣を描く基盤作りの10人だけにした。

要するに古い基盤に描かれている魔法陣を消して、表面を均してツルツルの板にして貰う作業。

4本ある結界塔の地下に作る第1回路、5階に作る第2回路、そして最上階の第3回路を描く床をツルツルにして貰う。

主回路である第1回路は結界塔地下1階の床全体に描くので結構広いし、動力となる魔石を設置する場所には少し手間が掛かる。

正直に言って王国魔術師のレベルは大したことがないからあまり期待はしていない。

最終調整は俺がするので古い魔法陣が完全に消えてほぼ平らになっていれば後の作業が楽になるので問題ない。

朝、王国魔術師に作業の指示を出して夕方確認する。

翌朝に手直し箇所や新しい作業の指示を出して夕方確認する。

要するに基盤作りが終わって結界の魔法陣を描ける状態になるまでは、俺のする仕事は毎朝魔術師達に1日の作業を指示して夕方確認するだけ。

指示に掛かる時間はおよそ10分、確認に10分。

昼間の暇な時間は禁書庫で読書。

俺が手伝えば魔術師の作業が早く進むが、あまり早く出来てしまうと結界の値打ちが下がるので手伝わない。

のんびり本を読めるので楽しい。

今研究しているのは奥様達が欲しがっている柔らかい繊維で出来た下着の開発。

今履いているカボチャパンツは紐を結ぶのが面倒だしゴワゴワして履き心地が悪いらしい。

禁書庫の役人に聞きながら、繊維に関する記述の有る古書を片端から調べている。

意外な事に王都のすぐ北にある黒い森には繊維を出す糸袋を持つ色々な種類の蜘蛛や繊維を吐き出す芋虫系の魔獣が沢山いるらしい。

王都では黒い森産の繊維を使った製糸産業と織物産業が盛えていて、周辺諸国にも輸出していると判った。貴族のドレスを作る縫製業も盛ん。

全く知らなかったが、繊維産業は王都の主力産業らしい。

それだけに禁書庫には一般に知られていない繊維関係の秘伝書が数多く所蔵されている。

結界構築は、週に5日の作業で2日の休み。

体力は有り余っているので休みの日には黒い森で糸袋を持っている魔獣狩り。

魔獣狩りは遊びだから仕事では無い。

働き過ぎはダメ、絶対。



2ヶ月程で1つ目の塔の基盤づくりが終わると魔術師達には次の塔での指示を出して俺は基盤造りを終えた塔に籠る。

ここからは魔術師の秘伝なので作業中は誰も塔に入らせない。

中で本を読んでいるのがバレたら拙いから。

朝1時間程回路を組み、あとはお昼にお弁当を食べる以外は好きな本を取り出して読書。

作業期間中は立ち入り厳禁にしているが、誰もいなくなった夜中には暗部の連中や高位貴族の諜報員がこっそりと忍び込んで進捗状況や魔法陣の調査をしている筈なので毎日少しだけ作業を進める。

この世界では王家も貴族も信用したら痛い目に合わされる。

結界の術式は複雑なので、魔法陣を複写されたところでどうという事は無い。

魔法陣を繋ぐ回路の術式隠蔽技術が結界師の生命線。

お祖母さんの技術を完全にマスターしているので俺の術式は技術の有る結界師が見ても解析出来ない。

ましてや暗部や諜報員などが理解出来る筈も無い。

夕方になると、バリアの術式を弄り回して作った特製全身鏡に全身を映し、体力を使い果たして肩が落ちた見た目と疲れた表情を作る。

大規模結界の構築は高度で難しい作業なので結界師の負担が大きい。

だからこそ高額な報酬が支払われる、と宰相に聞いていた。

結界構築作業中は塔の中には俺しかいないのだから、作業が終わった時に疲れていないと作業内容を疑われて報酬の再検討を言い出されかねない。

報酬が前払いの現金だけでは無く領地もあるので隙を見せてはダメ。

国の中枢を担う人間は国の利益が最優先。

信用したら足元を掬われるとお義父さん達に言われている。

とはいえ、作業時間の殆どが読書や昼寝、作業終了の頃には元気一杯の俺が魔力を使い切って疲れた雰囲気を出すのは結構難しい。

全身鏡を見ながら疲れた顔と雰囲気を作り終えたら結構な時間がかかっていた。

準備万端で塔を出る。

「お疲れ様でした。」

「ご苦労様です。」

入り口の封鎖をしていた衛兵達に声を掛けられた。

衛兵には俺が疲れたように見えていると安心して気を抜いたらどっと疲れが出た。

あれ、本当に疲れてるじゃん。

結界作りより疲れた表情作りの方が難しかった。

屋敷に帰ると奥様達のお腹を撫ぜる。

奥様達のお腹にはそれぞれ3人目の子供が宿っている。

“一人でも良いので男の子を授けて下さい”

いつものお願いをしながらお腹を撫ぜた。



暇つぶしの仕事が出来た。

魔術師に指示を出し、一時間程結界作成作業をしたら黒い森で採って来た紅蜘蛛の糸袋を10個出し、10個の糸袋から同時に糸を取り出しながら回転させて撚りを入れ糸巻に巻き付ける。

禁書庫の書物を参考にして試行錯誤の末に編み出した極細の糸を取り出しながら撚って織物用の糸にする製糸魔法。

綿や魔獣の毛とは違って繊維が長いので肌触りの良い光沢のある糸が出来る。

糸を取り出すと、次は糸を織って布にする。

織物業は王国の1大産業なのでノウハウも直ぐに調べられた。

小さな布を縫い合わせると縫い目が硬くなって肌触りが悪くなる。

参考にしたのは前世の立体成型。

製法の知識は無かったが、前世では縫い目の無い下着を使っていたのでイメージはある。

女性用の下着をイメージして重力魔法で宙に浮かせながら下着の形に織って行く。

王国の女性が履いているのは所謂カボチャパンツ。

メリヤス編みの技術が失われたらしく、伸縮性の無い硬い平織。

ゴムが無いので腰の所と腿の所を紐で縛るタイプ。

俺が作っているのは立体成型のショーツ。

試作品を手にとって撫ぜたり引っ張ったり色々と試してみる。

肌触りがツルツルした柔らかい感じで触り心地が良さそう。

奥様が履いたら絶対撫ぜたくなる。

うん、楽しみ。

縦横に引っ張ってみる。

古書には弾力のある布が出来ると書いてあったが、予想以上に伸縮性がある。

体に合わせた大きさで作って見たが、これでは緩々になってずり落ちそう。

伸縮性があるので小さくしたら紐も要らなくね。

前世の女性用下着を思い浮かべる。

といってもネットで見ただけ、ほんとだよ。

奥様達の体形を思い浮かべる。

これは実物を見ているのでイメージしやすい。

奥様達の体型に合わせた前世風ショーツを1人2枚、4人分なので8枚の試作品を作った。

試しに履いてみようかと思ったが、変な趣味に目覚めそうなので止めた。ホントダヨ。

染色までは手が回らなかったので生なり、ほんの少し黄色がかった白だが、手触りがツルツルで気持ち良い。

早速奥様達に試して貰った。

「・・・随分小さいのね。」

「これでお尻が入るのかしら。」

「かなり伸びるから大丈夫だと思うよ、・・たぶん。」

渡してから気が付いた。

もしもお尻が入らなかったら明日のお弁当は冒険者用の携帯食が確定だ。

ヤバい。

「とにかく履いて見ましょう。」

レイナの一言で試着となった、ってここで履き替えるの?

居間のソファーから立ち上がった奥様方がドレスの裾に手を入れて下着を脱ぎだす。

毎晩一緒にお風呂に入っているから裸は見慣れているが、居間で下着を降ろす姿には思わず目を背ける。

「凄い。」

「ほんと、肌触りが良いわ。」

「紐が無いのに全然ずり落ちないし、お尻が包み込まれて気持ち良いわ。」

「こんなに小さいのに全然締め付けられている感じが無いわね。」

奥様達が跳んだり体を捻ったりしながら感触を確かめてくれた。

良かった、明日も料理長のお弁当が食べられる。  

奥様達がめっちゃ喜んだという事は注文が殺到するという事。

漂白と染色についてはレイナが調べてくれる事となり、俺は蜘蛛糸の採取と製糸、成形作業に追われる事になった。

王城の結界作成作業は朝の1時間程だけなので時間は充分にある。

毎日様々なデザインのショーツを作り続ける20歳のSSランク冒険者。

何となくファンタジー小説に書かれていたSランク冒険者とは違う気がするけど、多分SSランク冒険者になったからだろう。

SランクとSSランクの違いが少し分かった気がした。

奥様達が喜んでいるから素直に嬉しい、うん問題は無い。

一応素材の紅蜘蛛を討伐しているから冒険者活動も少しはしているぞ。



夏が来て21歳になった。

糸の段階で漂白染色して織り上げるという製法が確立し、俺は毎日ショーツの制作。

1つ問題が生じたのは洗濯が難しい事。

糸が繊細なので、普通に洗うと生地が傷み易い。

この世界の洗濯は足踏みか硬い洗濯板なので仕方がない。

優しく丁寧に手洗いすれば問題無いらしいが侍女達の負担になる。

体や衣服の洗浄にも使える浄化魔法を柔らかなショーツにも使えるように改良した。

名付けて、洗濯魔法。

うん、判り易くて良いネーミング。

ただ術式が複雑なのが欠点。

複雑な術式の攻撃魔法でもすぐに使いこなす奥様達だから問題無い筈なのに、何故かめんどくさいの大合唱。

結局奥様達の下着は俺が洗濯する事になった。

昼はショーツを作り、夜はショーツを洗う21歳のSSランク冒険者が誕生した。

なんのこっちゃ。



作業開始から半年、結界構築作業は順調に進んでいる。

最短でも1年以上は掛けろとお義父さん達に言われているので、ショーツ作りが捗っている。

ショーツを誰が何時、何処で作っているかは最重要機密なので今使っているのは奥様達だけだが、貴族夫人達を攻略するには最強の武器になると奥様達に言われて絶賛増産中。

結界完成後にショーツの発表会をする準備が進んでいるらしい。

俺の役割は注文殺到に備えたストック作り。

素材の紅蜘蛛さんは沢山いるし、黒い森の奥なのでAランクパーティーでもきつい場所。

乱獲の恐れが無いのは安心事項。



俺の願い方が悪かったのだろうか。

一人でも良いのでと願ったら本当に最後の一人だけ男の子が生まれた。

母親は第4夫人のリューラ。

11人の姉がいる男の子。

・・・大丈夫かな、ちょっと心配になる。

ともあれ男の子が生まれたと言う事で奥様達の話し合いで子作りは打ち止めになった。

4人の奥様達は平等なので、4の倍数で生まれる。

既に12人いるのでサッカーチームより多い。

これ以上増えたら育てるのが大変過ぎる。

この世界には妊娠させる魔法は無いが避妊の魔法はあるので問題無いらしい。

唯一の男の子なので屋敷中は大騒ぎ。

侍女やメイド達もお世話の順番を巡って壮絶な争いをしているらしい。

結局ローテーションで4人が張り付いて世話をする事になった。

当然ながら俺は抱かせて貰えない。

1日に朝と晩の2回、小さな手を指でツンツンさせて貰えるだけ。

それ以上は危険が危ないらしい。

何でだよ。



1年4ヶ月を掛けて王城の結界が完成した。

当然乍らショーツが山盛りで来た。

染色技術の練度が上がったので模様も入れられる。

レース編みの技術も導入出来たし、薄々のショーツやスケスケのショーツも出来た。

暇だったので、ついでにベビードールも作ったよ。

違う、完成したのは結界だ。

魔術師団や騎士団が結界を攻撃するがビクともしない。

「大陸1の結界に間違いありません。」

魔術師長のお墨付きを貰えた。



奥様達がお母さん達と王妃殿下に発表前の試供品としてショーツを贈った。

洗濯が難しいのが難点だが、優しく手洗いすれば何とかなる。

奥様達の話によると、履いてみたお母さん達は嬉しさの余り踊り出したとの事。

王妃殿下からは贈った当日の夜更けに緊急の使者が来て追加注文の書状が届けられた。

夜中にショーツの注文書を持って馬を走らせる近衛騎士ってどうなんだ?

それはともかく作れるのは俺だけ、しかも素材は黒い森の奥に生息するAランクの魔獣。

希少品だからと奥様達が相談して販売価格を白金貨10枚に設定した。

前世ならショーツ1枚1000万円?

お股が腫れるよ。

値段に驚いた俺は、少しでも長く使えるように洗濯魔法の術式を公開した。

洗濯魔法は浄化魔法の改良版なので光魔法。

術式が複雑なので使えるのは高位神官の極一部とエルフだけ。

そこで術式を改良した劣化版である洗濯魔法(劣)を作って術式を公開した。

まあ手洗いと元祖洗濯魔法の中間程度の洗濯力を持つ魔法。

それでも手洗いしか方法の無かったドレスの洗濯には便利らしく、洗濯魔法を習得しようとする魔術師が増えたらしい。

洗濯魔法が大陸に広がり、洗濯屋が仕事として認知されるのはまだ先の話。

余談だが、洗濯魔法の功績で大陸魔術師評議会から大賢者の称号が贈られた。

奥様方のショーツを洗う21歳の大賢者が誕生した。

なんのこっちゃ。



子供達には早い段階から色々な魔法を教えている。

両親共魔力が多いせいか、子供達の魔力は既に王宮魔術師級。

魔力過多症の対策と言う事もあって魔力循環や魔力操作は勿論だが、魔力を体外に出す為に放出系の魔法も積極的に教えている。

今は奥様達が上の娘達にそれぞれの属性に応じた攻撃魔法を教えて訓練場で攻撃魔法を撃ち捲らせている。

結界を強化したのでどれだけ撃っても大丈夫だが、楽しそうに笑いながら攻撃魔法を撃ち捲る奥様達と娘達がちょっと不安になる。

身を守る為や、素材を得る為には攻撃魔法が必要だが、あまりにも楽しそうなのは如何なものかと思ってしまう。

真ん中の娘達には俺がバリアや探知魔法、アイテムボックスや飛行魔法、隠蔽など複雑な魔法を教えている。

下の子達は魔力の吸出しと魔法水の作成で魔力循環や魔力操作といった基礎的な力をつけさせている。

何度も暗殺者の襲われた俺としては子供達に身を守る為の手段を沢山持たせたいので思いつく限りの魔法を教えている。

子供達も色々と出来るようになるのが楽しいらしくて遊び感覚で魔法を学んでいる。

子供達が楽しそうなので俺も嬉しい。



お義父さん達が屋敷に来た。

ちょくちょくと来てはいるが、4人揃ってというのは珍しい。

侍女達を追い出して部屋には俺とお義父さん達だけ。

重要な話らしい。

「キラ、女性ばかりを優遇するのはどうかと思うぞ。」

一番爵位の高いアシュリーお義父さんが口火を切った。

「その通り、この際男同士で手を取り合って世の中を正道に戻すべきだ。」

「・・・・。」

何の話なのかまるで意味が判らない。

正道って何かが間違っているのか?

「キラは気付いておらぬようだが、世の中が間違った方向に進み始めている。」

エスパーか?

いつもは領地にいる辺境伯迄が来たという事はよほどの事なのだろう。

「陛下も前に膨らみを持たせた男性用のショーツを作るべきだと仰っている。」

「はぁあ?」

びっくりして頭にてっぺんから声が出た。

正道に戻すって男用のショーツを作る事?

陛下も仰っているって何だよ。

「男性用ショーツが出来るまでキラの屋敷に留まれとの陛下のお言葉である。」

「納得のいくショーツが出来上がるまではここを動かぬ覚悟だ。」

「身命を賭して重責を果たすと陛下に誓った。」

「出来上がるまでは孫の子守りをする。」

約1名本音が駄々洩れ。孫と遊びたいだけじゃん。

返答は“はい”か”よろこんで“の2者1択らしい。

「はぁ。とりあえず試作品の製作に取り掛かります。」

「流石はSSランクだ。」

それってランクが関係あるの?



今迄大量に作ったので練度が上がって製作速度が速い。

試作品なので漂白前の生なり糸で織り上げて行く。

「成程、こうして作るのか。」

「キラ以外には無理だな。」

「男なら強い者には憧れるもの。SSランク手製のショーツと言うだけで誰もが履いてみたくなる筈だ。」

前世で大勢が着ていた代表チームのユニホームか?

出来上がった試作品を渡すとアシュリーお義父さんがその場でズボンを下げ、下半身を露にして試着した。

この場には男しかいないのでまあいいけど・・・。

「おう、苦しく無いぞ。妻のショーツでは押しつぶされる感じであったが、これなら快適だ。ただ、もう少し股上が欲しいな。息子がコンニチワしそうだからな、がはははは。」

お義母さんに贈ったショーツを履いたんだ・・・。

「流石は公爵閣下。立派な物をお持ちですな。」

ステルンお義父さんが変な褒め方をしている。

「儂にも履かせてくれ。」

細身の公爵用に作ったから巨漢の辺境伯には小さいと思うぞ。

辺境伯がズボンを降ろして下半身を露にする。

「入らぬことは無いが少々苦しいな。もう少し大きなサイズで作ってくれ。」

4人のお父さんが下半身を露にしたまま試着を繰り返し、改善点を指摘してくれる。

広い部屋とはいえ、4人の高位貴族が下半身スッポンポンでわいわい騒いでいるのはシュールとしか言いようがない。

体格によって小、中、大の3サイズ、股上は深いか浅いかの2種類で充分となった。

ナニの大きさ? 自分で判断してくれ。

作る度におっさんのナニを採寸する趣味は無い。

奥様達の胸のサイズなら測っても良い?

ブラジャーも作ってみようか。

今でも忙しいのに、ブラジャー迄作ったらドツボに嵌りそうだから止めた。

4人のお義父さんと陛下用に5枚ずつの注文を受けた。

もっと欲しいらしいが、今はショーツの生産で手一杯。

働き過ぎはダメ、絶対。



子供達が遊び疲れて寝室に行くと、いつも通りに洗濯魔法の時間。

洗濯魔法は公開してそれ程立っていないので、使えるようになったのは高位神官だけ。

洗濯魔法(劣)では不満な王妃殿下は下着を屋敷に送って来る。

近衛騎士が毎日王妃殿下の使用済み下着を持って馬を走らせる。

近衛騎士も大変だ。

お義母さん達も送って来るので纏めて洗濯魔法を掛ける。

そこにお義父さん達のパンツ洗いが増えた。

まあ世話になっているので仕方が無いとは思うが、おっさんのパンツを洗うのはちょっと微妙。

毎日がショーツの生産と洗濯で忙しいSSランク冒険者って何だ?


何とか間に合いました。

継続して読んで下さっている皆様のお陰です。

感謝、感謝。

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