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3  油断はダメ、絶対

お星様を戴き感謝感激です。

拙い作品ですが、精一杯読みやすいように書いていきたいと思っています。

当分の間は隔日投稿出来るように頑張ります。

7歳になった。

今月から顔馴染の使用人達が本館勤務となり、見た事の無い人ばかりになった。

今迄の使用人達は笑顔で楽しそうに働いていたが、入れ替わりに来た使用人達はいつも刺々しい目つきで俺や母さんを見るし、物言いが粗野で雰囲気が悪い。

母さんが何か頼んでも、”そんな事は私の仕事ではありません“と断られる事が多く、母さんも使用人に何かを頼むと事は無くなった。

“私の仕事”って何だ?

掃除や片付けをしている姿なんて見た事は無い。

殆どの時間がおしゃべりやお昼寝。

何故か下働きのお姉さん達は交代で料理人のおっちゃんとお昼寝。

時々3人で仲良くお昼寝。

今迄ピカピカだった部屋や廊下にも埃が目立つようになっている。

メイドのお姉さん達は商人の兄ちゃんが来ると部屋でお昼寝。

情報収集の為に仕方なく遠聴で聞くけど、・・・。

言葉にするとR18になるような拙い事ばかり。

商人の兄ちゃんがくるのは週に3回なので仕方なく週に3回遠聴で情報収集してる。

時々商人の兄ちゃんがいつもとは違う日に友達を連れて来る事もある。

そんな時も仕方なく情報収集する。

情報は大事。異世界に少しでも慣れる為に仕方なく情報収集をする。仕方なくだよ。

食事も正直に言って不味い。

良い食材が手に入ると使用人達で食べて、俺と母さんの食事は余りもので作っている。

働かずに住まわせて貰っているので文句は言えないが、今までの使用人達との違いが大きすぎて戸惑う事ばかりだった。



“毒耐性を獲得しました”

朝食の時、頭の中にメッセージが流れた。

転生時に聞いたガチャの説明と同じように頭の中に直接言葉が刻まれる感じ。

これは創造神様の祝福のお陰と思って間違いないだろう。

食中毒の菌が入っているのかもしれないと思って母さんを見るが特に気にしている様子はない。

万が一という場合もあるから解毒薬を作る事にした。



“毒耐性を獲得しました”

朝食を摂る度にメッセージが流れる。

調理人やメイドがわったから料理の作り方が雑になったのかも知れないが、夕食の時にはメッセージが流れない。

判らん。

「なんとなく、朝食に毒?」

二人だけの時、こっそりと母さんに伝えた。

「どうしてそう思うの?」

「朝食の時だけ毒草の感じ・する。」

「・・・、キラの体調は変わりない?」

「うん、大丈夫。」

「・・・、この事は2人だけの秘密よ。」

「うん。」

念の為、母さんには俺が作った解毒薬をこっそりと飲んで貰う事になった。

“毒無効を獲得しました“

”毒検知を獲得しました“

”毒を検知しました“

”毒を検知しました“

”毒を検知しました“

”毒を検知しました“

頭の中にメッセージが響く。

朝食の時だけ毒検知のメッセージが流れる。

俺と母さんの朝食に毒が盛られている事が確定した。

「朝食に毒が入ってる、間違い無い・みたい。」

「・・・、でも食事を摂らないと他の手段に出るかもしれないわ。」

お母さんの意見で朝食後は必ず解毒剤を飲む事にして食事は今まで通りに摂る事になった。

”毒を検知しました“

そんなメッセージが流れる日が10日ほど続いた。

“即死毒を検知しました”

えっと思った時、目の前のお母さんが口から血を吐きながらテーブルに突っ伏した。



母さんが亡くなってから、使用人達は益々働かなくなった。

食事が出来たと言う連絡もない。

食事は朝と晩に食堂のテーブルにポツンと置いてある煮物と黒パン。

もうすぐ冬という季節だが、暖かい物が出された事は無い。

早めに食堂に行って、出してくれたものをすぐに食べようと待ったこともあるが、出て来たのは冷たくなった煮物と黒パン。

遠聴で探って見ると、昨日使用人達が食べた夕食の残り物。

風呂も閉鎖され、給湯の魔道具は魔石を抜かれていた。

遠聴で聞いた話では、使用人達は風呂掃除が面倒なので本館の風呂を使っているらしい。

浄化魔法が使えるので問題は無いが、ちょっと悔しい。

灯りの魔道具も魔石の魔力が切れた。

魔導具の交換用魔石を使用人がネコババしたから。

魔石を売ればそこそこのお金になるらしい。

遠聴で聞いた話では伯爵に知られた時には、魔力切れに気付かなかったと言うらしい。

どうやら父さんの伯爵は俺の待遇を知らないらしい。

俺の日常が変わった。

夜明けと共に起きて午前中はお祖母さんが遺した本を読む。

午後は騎士団長の訓練。

訓練が終わるとすぐに読書。

食事は暗くなってからでも食べられるから。

真っ暗な中で食事を済ませると手探りで階段を上る。

灯りの魔道具が使えないので階段も廊下も真っ暗。

使用人達が部屋から出る時は警備用の手燭を使っている。

真っ暗な部屋に戻ると一人ぼっちの寂しさに涙が零れる。

母さんの分も生きなくちゃ、自分に鞭打って魔力循環と魔糸の訓練をする。

暗殺者が何時襲って来るか判らないので訓練は欠かせない。

寂しい。



今迄7回襲われた。

最初の3回は単純に毒のナイフを持った暗殺者だった。

離れに向かう通路横の植え込みと離れの玄関ドアの裏、そして深夜の寝室。

お祖母さんの本で学んだ探知魔法に映っていたし、頬やおでこがチリチリと痛んだので魔糸で拘束したり、新しく覚えた睡眠魔法を使ったりで簡単に捕らえる事が出来た。

暗殺者のお陰で殺気を感じると殺気を持った者のいる方向の頭部がチリチリ痛むという事が判った。

これも創造神様の祝福なのだろう。

創造神様に感謝の祈りを奉げた。

暗殺者を警備の兵士に引き渡すと、3回とも取り調べ中に自害したという報告があった。



今日は側頭部にチリチリとした痛みを感じた。

顔を向けると攻撃を中止するので、顔は動かさずに目の端で殺気の元を見る。

殺気を放っていたのは2人の魔法使い。

少し離れた二人が同時に風刃を撃って来た。

普通の人には見難い風刃だが、魔力の見える俺にははっきりと見える。

躓いた振りをして顔からばったりと倒れる。

風刃が頭の上を通り過ぎた。

顔がめっちゃ痛かったけど、風刃には気付かなかった振りをして起き上がり訓練を続けた。



今日はあっさり躱せたが、3日前は危なかった。

訓練場から離れに戻ろうと馬場の横を通った時に、いきなり出入り口の柵が倒れて5~6頭の馬が馬場から俺に向かって突っ込んで来たのだ。

馬の足音は聞こえていたが、訓練の音だと思っていたし、殺気を発していた男は離れた所からロープを引いて柵を倒したので俺の注意が馬から逸れていた。

とっさに縮地を使って倒れていない柵の横に跳び、柵を乗り越えて難を逃れたものの紙一重だった。騎士団長に教えて貰った縮地を何度も練習していた事が役立った。

殺気を教えてくれるチリチリとした痛みを過信し過ぎた。

油断はダメ、絶対。



弟は3歳年下なので今4歳、来年行われる国王陛下への拝謁の儀が済めば嫡男として公式に認められるし、2歳の弟もいるのでソランダ家の後継ぎは万全。

ソランダ家における俺の価値は無いも同然なのに“偶然”暴走した馬が俺に突っ込んで来たり、“逸れた”魔法や矢が俺に向かって飛んで来るといった事が続いている。

しかも魔法や矢を撃った人間はいつも“間違った”でそれ以上追及される事は無かった。

本館での会話を遠聴で聞いたので命じた人物は判っているし、実行犯も判っているが、遠聴を使える事は秘密なので滅多な事は言えないし言っても無駄。

貴族は嫌いだ。

暗殺者に襲われる事が多いので、騎士団長に教わっている体術や剣術の稽古には一層力を入れた。

冒険者になった時の練習にもなると思って常に探知魔法で索敵しながら生活出来るように練習を重ねている。





伯爵家の庭園にあるガゼボ


「どうした。」

ベンチに腰を下ろして声を掛けると、伯爵家の情報部隊を率いるボンドが姿を現した。

今朝、直々の報告が有る時に使われる秘密の合図が寝室に置いてあった。

「ヒルナキラ様が暗殺者に狙われております。」

「・・・確かか。」

「古くから伯爵家に仕える使用人がヒルナキラ様に向かって魔法が撃たれたのを目撃したと配下の者から連絡がありました。調べた所、ヒルナキラ様は何度も襲われており、暗殺者を捕縛して警備隊に渡した事もあったと判明しました。」

「警備隊からの報告は受けておらぬぞ。」

「警備隊長は夫人の元護衛騎士で御座います。」

「・・・、握り潰されたか。」

「確証は御座いませんが、エクセール様の病死にも不審な点が御座います。」

「どういうことだ?」

「エクセール様は前日までお元気だったことが庭師らに目撃されております。にも拘らず病気で亡くなられたという使用人の報告だけで治癒師が呼ばれた記録は有りませんし、亡くなられた状況の報告書も有りません。当時、離れの使用人は全て元侯爵家の者でした。」

「・・・侯爵は上司、問い質す事は出来ぬ。キラを逃がす、早急に手配せよ。」

「承知。」





探知魔法に何かが掛かった。

すぐに目を覚ました俺はナイフを握りしめ、寝たふりをしたまま侵入者を待つ。

窓が開いて覆面をした男が顔を出した。

チリチリ感は無い。

殺気が無い?

「夜分恐れ入ります。」

男が小声で囁いた。

「誰だ?」

俺も小声で答える。

相手に囁かれると答えるのも自然と囁き声になる。

何でだろう。

「御父上の命で動いている者です。何度も襲われたにも拘わらず気付くのが遅れて申し訳ありませんでした。」

どうやら敵では無いらしいが油断は出来ない。

「・・・・。」

「御父上の指示で、エクセール様の御実家と相談した結果、1ヶ月後に病気療養の名目で領地の片隅にあるストンという小さな町に移って頂く事となりました。」

「・・・・。」

いきなり言われてもどう答えれば良いのか判らない。

「ストンは信頼出来る分家の男爵が代官を務める田舎街で、よそ者が少ないので安心して暮らせます。宿も母上の実家であるストラブ商会が懇意にしている商人の甥が引き受けてくれます。」

ピリピリ感も背筋がゾクッとする嫌な感じもしないので信用出来そうに感じた。

「判った。」

「離れの警備を厳重にして暗殺者は近寄らせません。1ヶ月の間離れを出ずに病気の振りをして下さい。」

「うん。」



旅立つまでの1ヶ月は病人として部屋に籠る事になった。

外での運動が出来ないだけで、魔石を交換して貰えたので灯りが点いて夜も明るい。

こっそり部屋に持ち込んだお祖母さんの本を毎日夜遅くまで読んで魔法の研究をする。

屋敷を出てしまえば本を読むことが出来なくなるので寸暇を惜しんで本を読む。

おかげで空間魔法や付与魔法の勉強が捗って魔法袋を作れる目途が立ったし、何よりも属性魔法でない攻撃魔法も何となく出来そうな気がしてきた。

覆面の男は何度か顔を出し、計画が順調に進んでいる事を伝えてくれた。

ストンでは目立たぬように平民として暮らし、8歳になったら冒険者ギルドに登録して安全な依頼を受け乍ら冒険者としての実力を付けるという段取りも教えたくれた。

危険な依頼を受けなくても良い様に成人する15歳まではストラブ商会が生活費を払ってくれると言われたので少し安心。



1ヶ月後、ストラブ商会傘下の商人ベッツさんの馬車が朝早く迎えに来た。

覆面の男によると、長年ソランダ領で商売をしている信頼出来る商人らしい。

名目は病気療養なので幌で覆われた荷台に積んだ荷物がベッド代わり。

離れや本館の使用人達が見ているのでベッツさんの手を借りてヨタヨタとよじ登る。

馬車の幌が降ろされると周りは何も見えない。

予定では伯爵邸を出ると真っ直ぐに大門に向かい、護衛の冒険者と合流する事になっている。人目の多い王都の通りで襲われる事は無いから安全だと覆面の男が言っていた。

生れてはじめての外出なのに王都の街を見る事が出来ないのはちょっと残念。

大門を出るまでは病人の振りと決まっていたので仕方が無い。

かなり走って、漸く馬車が泊まった。

大門まで随分遠いらしい。

声が聞こえて来た。

「ベッツ殿か?」

「はい。“白い彗星“さんですね。」

「Bランクパーティー“白い彗星“だ。俺はリーダーで剣士のチャー。」

「槍のハムロだ」

「盾のカヤテ。」

「魔法使いのツラウです。」

“白い彗星“でいいの? 色が違うくね?

チャーなの? マスク被ってる?

ハムロは敵じゃないの?

どこかで聞いた事のあるような名前の4人パーティーが護衛らしい。

「早速ですが、すぐに出発したいと思います。宜しいですか?」

「判った。」

馬車が動き始めた。

馬車は門らしき所で止まり、すぐに走り始めた。



「荷物の上を超えて御者台に来い、眺めが良いぞ。」

御者台と荷台を隔てていた布がずらされ、明るくなったと同時にベッツさんから声が掛かった。

平民という設定なのでベッツさんも敬語は使わない。

荷物を乗り越えて荷台から御者席に移った。

「ぅわぁ~!」

御者台に移ると、目の前には雄大なパノラマが広がっていた。

王都は小高い丘の上にあるらしく、遥か彼方の地平線まで見渡せる。

地平線が微かに湾曲しているのでこの世界も地球と同じように球体らしい。

真っ直ぐに伸びた道の両脇には刈り取りの終わった茶色い畑と芋類のような青い草の生えた畑が市松模様に広がっている。その先には畑と森、荒地が入り混じった光景が続いている。遥か先の畑の付近には丸太を組んだ小さな砦のような物が見える。遠いので小さく見えるが、森の木と比べるとかなりの高さがありそうだ。

「石壁があるのが街、土壁や木の柵で囲まれているのが町や村だ。向こうに見えるのはアマセ村だな。そのずっと向こうにちょろっとだけ石壁が見えているのがチョイの街だ。」

ベッツさんが教えてくれた。

大平原ではあるが、うねる様ななだらかな丘や岩だらけの高い崖や荒地もある。

視界の範囲内だと人の手が入っている感じの土地は1割も無く、殆どが自然のまま。

前世とは人口密度が極端に違うらしい事が判った。



王都から伯爵領までは馬車で5日、目的地のストンまでは更に2日。

馬車の前後には馬に乗った4人の冒険者が護衛に付いている。

目立たない様に途中の街には入らず全て野営と聞いてはいたが、そもそも街なんて殆ど無い。

王都どころか屋敷を出るのも初めてだし、野営も初めて。

見るもの聞くもの何もかもが新鮮で楽しい旅。

少なくとも使用人の顔を見なくて済むだけで嬉しかった。

王都を出て2日目、街道脇の草地に馬車を止めて野営の準備をしている時だった。

「魔獣だ。坊は馬車に乗れ、出るんじゃないぞ。」

護衛リーダーのチャーさんが大きな声で叫んだ。

「うん。」

野営中に魔獣が出た時の対処の仕方は聞かされていたのですぐに馬車に乗る。

幌の隙間から見ると、馬並みの大きさがある猪みたいな魔獣が2頭いた。

護衛の冒険者達を警戒しているのかゆっくりと近寄って来る。

どうやら焚火で煮込んでいたスープの臭いに釣られたらしい。

ドン!

ツラウさんの石弾が1頭の猪を吹き飛ばした。

凄い。

俺のポトリと落ちる石弾とは大違い。

「来るぞ。」

「おう。」

もう1頭が猛然と突っ込んで来る。

ゴン!

盾を構えたカヤテさんが猪を受け止める。

すかさずハムロさんが横腹に槍を突き刺し、チャーさんが猪の首に剣を振るう。

ダン、バサッ。

大きな音を立てて魔獣が倒れた。

初めて見た魔獣の大きさと勢いにびっくりした。

チャーさん達がすぐに倒れた魔獣に止めを刺し、武器を構えたまま周りを見回す。

周囲に魔獣が居ないのを確認したらしい。

「もう大丈夫だ。」

チャーさんが声を掛けてくれたのでベッツさんと一緒に馬車を降りる。

近くで見ようと倒れた魔獣に近寄った。

「時々死んだ振りをして襲って来る奴もいるが、こいつらはきちんと止めを刺したから大丈夫。触っても良いぞ。」

おっちゃんに言われて魔獣の頭に触ってみる。

毛が硬くて手に刺さって痛い。

頭も骨もめっちゃ硬そう。

「堅いだろ。」

「うん。」

「駆け出しの冒険者だと剣も槍も通らない。解体するにも苦労する程硬い。腹を触ってみろ。」

お腹を触って見ると結構柔らかいし毛も痛くない。

「腹は柔らかいだろ。」

「うん。」

「こいつと戦う時には動きを止めて槍で柔らかい腹を狙う。完全に動きが止まった時に真横から刃筋を立てて首を討てば首の関節に剣が通る。」

良く見ると猪の首に微かだが段々がある。首の骨の継ぎ目らしい。

剣で切り裂いた所には両側に白っぽい軟骨が見えている。

首に剣を振り下ろすだけではダメと知ってびっくり。

「そうなんだ。」

「これから血抜きだ。」

おっちゃん達が3人がかりで魔獣の足にロープを結んで木に吊るす。

切られた首から血が流れだした。

すぐに腹を裂いて一気に内臓を掻き出し、最後に掌を使って残った血を丁寧に掻き出した。

「後は食事をしてからだ。」



食事をしながらおっちゃん達は明日の行程を確認していた。

「解体する。見るか?」

食事を終えたおっちゃん達が魔獣を解体するらしい。

「うん。」

「最初は首の所から腹側の皮を切る。こうして皮を引っ張りながら皮と肉の間にナイフの刃を入れて丁寧に皮だけを切り裂いていく。ここが一番肝心な所だから本当はゆっくりと丁寧にやるんだ。内臓を傷付けると肉が臭くなって売り値が下がるからな。今回は槍で腹を突いたしツラウの石弾も腹迄通ったから臭くならない様にすぐに腹を裂いて内臓を掻き出した。」

「・・・・。」

俺はじっとナイフの動きを目で追う。

「次に腹を裂く。本当はここからは時間の勝負で血がドバっと出るから、腹を裂いたらすぐに内臓を手で掻き出す。余分な水があればすぐに水洗い。冒険者が水場で解体するのはすぐに洗えるからだ。内臓の頭側に魔石が有るから取るのを忘れるな。今回はもう済んでいるがな。」

「魔石?」

魔道具に使われていた魔石はファンタジーの定番通り魔獣から取れるらしい。

「これがさっき取った魔石だ。一番金になるから取り忘れるじゃないぞ。」

腰の袋から2~3㎝の魔石を出して見せてくれた。

「うん。」

「後は肉を切り分けて、葉っぱでくるむ。この葉は大きくて肉を腐り難くする効果がある。この国ならそこら中に生えているから旅の前や休憩中に採って置くと良い。」

皮を剥ぐのは実際にやらせて貰えた。



「8歳になったら、冒険者・なる。」

翌日の夕食後、護衛のおっちゃんに話した。

「そうか、頑張るんだぞ。」

「うん。」

「冒険者で一番ダメな事は何か知っているか?」

「ダメな事? ・・・死ぬこと?」

「おっ、判ってるじゃねえか。臆病な冒険者はAランクやBランクになれる。長い間生き延びているからだ。勇気のある冒険者は大体Cランクで死ぬ。」

「そうなの?」

「Cランクだと危険な魔獣討伐が多くなる。見慣れた魔獣でも、相手が手負いだったり変異種だといつもの調子で戦えば死ぬ。臆病な冒険者は見慣れた魔獣でも本当にいつも通りの魔獣かを慎重に観察する。ちょっとでも嫌な雰囲気を感じたら即座に逃げる。」

「狩らず、逃げる?」

「生きて帰ればまた討伐に行ける。冒険者が命懸けで戦うのは逃げ場のない時と、命を懸けても守りたい者が傍に居る時だけだ。」

「うん。逃げ足、自信ある。」

常に“命を大切に“。

“ガンガン行こうぜ”はダメ、絶対。

「そうか、それならAランクになれるかもしれないぞ。」

おっちゃんが笑いながら背中を叩く。

マジで痛かった。



「お姉さん、どやって・魔法を覚えた?」

魔法使いのツラウさんに聞いてみた。

「魔法は覚えるものでは無いの。教会でお祈りしている時に突然頭の中に降りて来るのよ。」

「降りて来る?」

「私の場合はお祈り中に“土属性を獲得しました”という声が聞こえたわ。」

俺が頭の中に“毒耐性を獲得しました”というメッセージが流れたのと同じらしい。

「そうなんだ。」

「属性を授かると、魔法を使う時の自分の姿が頭の中思い浮かぶの。私の場合は石弾だったわ。1mくらいしか飛ばなかったけどね。上達するには学校に行って魔法理論を勉強したり、威力を増す呪文を覚えたりするのが普通ね。私は家が貧しかったから属性を授かってからは練習、練習、ひたすら練習だった。」

「教会でしか・貰えない?」

「教会以外は聞いた事が無いわね。そうだ、エルフ族だけは精霊と契約すれば魔法を使えるようになるらしいわ。エルフの魔法は精霊魔法と言って属性魔法とは違うらしいのよ。」

「何歳で貰える?」

「大体4歳から10歳位までって言われているけど、神官さんの話ではお祈りを続けていると2つ目の属性や職業スキルを授かる事もあるらしいわ。40歳を超えて授かった人もいるって言ってたけど、教会に信者を呼ぶための出まかせだってみんな言ってる。」

母さんは俺が屋敷から出して貰えないのを知っていたので教会の事を言わなかったのだろう。

ともあれ何度も教会にお祈りに行っていると、10人に一人くらいの割合で属性かスキルのどちらか1つが貰えるらしい。

1番人気は治癒魔法が使える聖属性で、剣や鍛冶のスキルも人気らしい。

神官の話では、どれも生命神や剣神、鍛冶神など神様の加護なので加護を戴いた神様に祈る事で練度が上がり易くなるらしい。

俺はもう創造神様の祝福を貰っているから他の神様の加護は貰えそうも無い気がした。

それからは野営の度に冒険者ギルドの事や薬草採取の注意点、ストン周辺にいる魔獣の事などを丁寧に教えてくれた。

野営中の食事は携帯食と水だけらしいが、護衛のおっちゃん達は索敵が出来る強いパーティーなので街道付近の魔獣討伐の為にスープを作っていたそうだ。

初心者やソロの冒険者が野外で料理を作るのは魔獣が寄って来るからダメだと言われた。

途中でおっちゃん達が何頭か魔獣を倒し、教えて貰いながら魔獣の解体を体験出来た。


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