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26 戦っても勝てる気がしない

何とか間に合いました。

結末の構想をあらすじに付け加えました。

ぼんやりとした構想だけで中身はこれから考える状態ですけど頑張ります。

馬車に中で何とか聞き出せたのは、酔って眠ってしまった俺を奥様方が交代で膝枕してくれた事と、俺が大きな声で何度も寝言を言っていたという事。

寝言の内容?

「うふふふふ。」

で誤魔化された。

いつもの“うふふ“では無く”うふふふふ“って何なんだ?

奥様達が笑顔なので悪い事を言った訳では無さそうだけど、多分素面ではとても言えない様な事を言ったのではないかと不安になる。

今後何か拙い事をした時に”あの時は・・“って言われそうな気がするけど、とりあえず奥様達の機嫌が悪いわけでは無いので今はきっぱりと忘れる事にした。

悩んでも仕方ない事は忘れるに限る。

過去を忘れて前を向く事が大切。

下手な考え休むに似たり。

立ち止まらずに前進あるのみ。

・・・でも、俺は何を言ったんだろう?



王都に着いた。

馬車に乗っている間もずっと魔法を使い続けたせいか、奥様達の魔力量が増えている。

魔力操作の練度は上がっているのだが、創造神様の祝福で増えた魔力量が大きすぎるのでもっと練度を上げないと魔力暴走を起こす可能性がある。

今の俺にとって何よりも優先されるのは奥様達の安全。

複数の魔法を同時に使うと魔力操作の練度が上がり易いので、毎日探知魔法を発動しながら魔力水作りやバリアの練習をして貰った。

光属性の魔力を使うならポーションを作れば実家の辺境伯家が喜ぶと言うリーナの意見で、皆で光属性の練度上げにポーションを作る事になった。

俺とリーナは薬師の資格を持っているが、資格を持った薬師が多い程工房の信用度が高くなって、ポーションの買い取り価格が上がるとリーナが教えてくれたのでレイナ・シャリー・リューラも初級薬師の資格を取った。

光属性魔力によるポーション作りは光属性の練度上げなので、聖属性を持っているリーナもポーション作りには光属性の魔力を使っている。

ポーション作りと並行して光属性の基本であるバリアも毎日練習している。

魔力量が飛躍的に上がったお陰で思う存分魔法を使えるようになった奥様方は上機嫌で練習に励んでくれている。

というより魔力切れの心配なく思う存分魔法を使えるのが楽しくて仕方ないらしい。

魔法科の優等生だけあってみんな上達速度が速い。

「まだアイテムボックスは無理でしょうか?」

随分熱心に練度上げに取り組んでいると思ったら、奥様達の目的は光属性を使った空間魔法でアイテムボックスを作る事だった。

「う~ん、もう少しかな。眠っている間も空間を維持出来る所まで練度を上げないと無理だから来年くらいかもしれないね。」

「早く作れるように頑張ります。」

良く判らないけど、奥さんたちはアイテムボックスが欲しいらしい。

まあ、めっちゃ便利だけどね。



長期休みは結婚式に始まって、奥様達の訓練とストンへの挨拶で終わった。

今日から新学期が始まる。

「「「「行ってらっしゃい。」」」」

奥様達にお見送りされると、それだけで心が温かくなる。

「うん、行って来る。」

気合を入れて学院に向かう。

王立学院最後の1年が始まった。

「キラが負けたという噂が広がっているぞ、どういうことだ?」

5年生になって初めての登校日、教室に入るなりイエローに聞かれた。

それでなくとも訓練不足を実感していた俺に追い打ち?

「はあ?」

なんのこっちゃ。

最近は奥様達の訓練が忙しくて戦った覚えは無いぞ。

「噂では丸二日に及ぶ激戦だったが、最後にはキラが敗北を認めたと言う事だ。」

「戦った覚えは無い・と思うんだけど・・。」

酒を飲んで記憶を無くした失敗の直後だけに絶対無いとは断言出来なかった。

幾ら奥様達の優しさに呆けていたとはいえ丸二日も戦ったなら覚えている筈、たぶん。

訳が判らなくて首を捻る。

「Sランク冒険者と言えども人間だ。たまには負ける事がある。まあ、気にするな。」

アルトが慰めてくれるけど、負けた覚えが無いので答えようが無い。

「気になったから伝手を辿って調べたんだが、噂の出どころが高位貴族の夫人達が集まるお茶会らしいと言う所迄は判った。だがそれ以上の手掛かりは無かった。」

イエローはわざわざ調べてくれたらしい。

「迷惑を掛けてすまん。ただ本当に心当たりが無いんだよな。長期休みはストンに行った以外は殆ど家から出なかったし誰かと戦った事もない、と思う。」

「記憶を消す魔法とかじゃないのか?」

「キラを倒せる程の奴ならそれくらいの事は出来るかも知れないぞ。」

「とりあえず家に帰ったら奥様達に聞いてみる。」

気にしても仕方が無いので家に帰るまでは保留にした。



「お帰りなさい。」

奥様達との話し合いで、帰りの出迎えは手の空いている奥様一人だけになった。

俺が帰る度に仕事の手を止めて出迎えして貰うのは心苦しいと出迎えを断ったら奥様達に怒られ、話し合いの結果交代で1人が玄関で迎える事になった。

堅苦しい事は嫌いなので冒険者言葉での挨拶。

今日は初日だからか第1夫人のレイナが出迎えてくれた。

「ただいま。」

ごく普通の挨拶だけど、俺の帰るべき場所を再認識させてくれているようで嬉しい。

「「「お帰りなさい。」」」

リビングに行くと奥様達が全員で迎えてくれた。

「学院の方は如何でしたか?」

結婚後初めての登校なので奥様達も気になったらしい。

イエローから言われた戦いの事を話した。

「という噂が貴族夫人のお茶会で流れているらしいんだけど、知らない?」

「「「「あっ。」」」」

心当たりがあるらしい。

「知っているの?」

「噂の出どころは、多分王妃殿下。」

「王妃殿下ぁ?」

何で王妃殿下の名前が出るんだ?

「同衾の儀についての資料を探してくれたのが王妃殿下でしょ?」

「そうだったね。」

テリアが王妃殿下に頼んで探して貰ったと聞いている。

独身のテリアが探すのは拙かったらしい。

「資料を渡して下さる時に、何事も最初が肝心だと私達を焚きつけたの。」

「どゆこと?」

「王妃殿下の下さった手引きには、“高位貴族の夫人たるもの夫の尻に敷かれるようでは家内の掌握など出来ぬ。同衾の儀こそが女の初陣、夫が白旗を上げるまで夫の上で腰を振るのが貴族夫人の心得である“って書いてあったの。」

「同衾の儀が終わった後で、あれは王妃殿下が面白がって付け加えた文章だとテリア殿下から教えられたけどね。」

「・・・。」

理解が追いつかなくて首を傾げる。

「下賤な話だけど、王妃殿下がキラ様は46回頑張ったと陛下に伝えたら俺を殺す気かと怒られたらしいわ。」

「はあ。」

何で陛下が出て来るんだ?

益々訳が判らない。

「つまり、王国最強のSランク冒険者が丸二日戦っても勝てない位女性は強いって言う事。」

俺が首を傾げていたらレイナが説明してくれた。

女性が強いのは前世も今世も一緒なので判るけど、言っている意味が良く判らない。

「テリア殿下には、猿ではないのだから46回もするなと怒られたというか呆れられたわ。」

「その話が変に伝わったのだと思う。」

「・・・その辺は良く判らないけど、俺が負けた相手は奥様達という事なのかな?」

「多分。」

「だったらいいや、どうせ戦っても勝てる気がしないから。」

「Sランク冒険者のプライドは良いの?」

「俺はみんなとのんびり楽しく暮らしたいだけ。Sランク冒険者のプライドなんて一度も考えた事は無いから勝った負けたなんてどうでもいい。いや、俺に勝ったという噂が広まれば奥様達を襲う者が減るかもしれないから有難いのかな。」

「流石はキラ様ですわ。」

「本当、実力も無いのにプライドだけは高い貴族達に聞かせたいですわ。」

「あはははは。」

負けた相手が奥様達と判ったけど、イエローにどう説明すれば良いんだ?

調べたけど判らなかったことにした。



最終学年の授業が始まった。

4年生まで目一杯授業を取っていたために残っている単位は僅かで週に3日登校すれば卒業出来る。

最高学年になると就職活動などで地方に行く生徒も多く、寮を拠点にしていれば泊まらなければならない日数の制限は緩い。

俺は週末とその前後を休みにして週に4日禁書庫に通う事にした。

禁書庫に入れるのはあと1年。

奥様達は属性魔法を使えるので、奥様達に役立つ魔法が見つかるかもしれない。

禁書庫では属性魔法に関する書物を調べた事が無かったので司書の役人に聞きながら役立ちそうな魔法を探す事にした。

とはいえ、奥様達を屋敷に残して禁書庫に通うのは辛い。

禁書庫に通う日は朝食前に奥様達の訓練を見て、訓練メニューをアドバイスしてから朝食。

朝食後は”行って来ます”と言いながら奥様達とハグ、その後奥様達に“はいはい、行ってらっしゃい”と押し出される。

毎日”行って来ます”から“はいはい、行ってらっしゃい”まで30分以上掛るのは奥様達が可愛いから仕方がない。

奥様達に見送られて屋敷を出ると、真っ直ぐ王宮の禁書庫へ。

昼食は禁書庫のサロン。

夕食前に屋敷に戻って奥様達と1日の出来事を話しながら夕食。

まあ俺は殆ど聞いているだけだが、奥様達の顔を見ているだけで幸せ。

夕食後は奥様達と一緒にお風呂に入ってのんびり。

奥様達とのお風呂はグフフ、ウヒヒで楽しい。

お風呂を済ませるとリビングで奥様に膝枕して貰ってイチャイチャ。

膝枕で耳掃除をして貰うのは至福のひと時。

寝る時は順番に当たった奥様2人とする事を済ませてから胸に手を置いて熟睡。

好きな事をしながらのんびり過ごす、楽しくて充実した生活だった。



のんびり生活が一変したのは学院が始まって1ヶ月も経っていないある日。

「赤子を授かりました。」

レイナが口火を切った。

「私も授かりました。」

「私も授かりました。」

「私も授かりました。」

「・・・・。」

奥様達の言葉を聞いて俺の時間が止まった。

「キラ様、まずはお口を閉じて下さい。」

シバスチャンに注意された。

余りの驚きに口をポカンと開けたままだったらしい。

「えっと、えっと、えっと、どうしたら良い?」

「それぞれの実家は既に知っておりますが、明日正式に連絡します。侍女の数が増えますが宜しいでしょうか。」

何で俺よりも早く実家が知っているんだ?

いや、今はそれどころでは無い。

「えっと、えっと、勿論だ。くれぐれも無理はしないように・・・。えっと、えっと、体に注意して欲しい。」

「「「「はい。」」」」

「えっと・・名前、名前はどうしたらいい?」

「名前は生れてから考えれば宜しいかと思います。」

奥様達に笑われた。

周りを見るとシバスチャンもマドレーヌも笑いを堪えているようで肩が震えている。

背筋を伸ばす。

「コホン。何かする事があれば遠慮なく言ってくれ。」

Sランク冒険者の威厳を持って奥様達に言った。

俺はもう16歳。

動揺はしていない、たぶん。

カ~ラ~ス~、何故啼くの~♬

頭の中にメロディーが浮かぶ。

って、それは童謡。

奥様達だけでなく、使用人達も笑っていたのは見なかった事にした。



今日は禁書庫に行く気が起こらず屋敷の中をあっちにウロウロこっちにウロウロと歩き回っている。

「落ち着いて下さい。生まれるのはまだまだず~っと先の事です。Sランク冒険者ともあろうお方が慌てふためくとは何事ですか。」

シバスチャンに怒られた。

「でも、何かあったら。」

「心配はいりません。当家には王国1の治癒師がおります。」

「いつの間に雇ったんだ?」

「お忘れかも知れませんが、キラ様は陛下もお認めになった王国1の治癒師です。」

そう言えば火事事件の時にそんなことを言われたような気もする。

でも妊娠したばかりのお腹に魔力を当てても大丈夫なのか?

そもそも魔力量の多い俺が近寄っても良いのか?

「産婆は魔力で赤子の成長具合を確かめます。魔力の扱いならば我が国でキラ様の右に出る者はおりませぬ。」

シバスチャンはエスパーなのか?

ちょっと安心した。

結局の所、増員される侍女が奥様達の世話をするので俺は今まで通りにしていれば問題無いらしい。

奥様達の魔力訓練も続ける方が精神的にも体調的にも良いと言う事で今まで通りに継続される事になった。



陛下に頼んで禁書庫にある出産や育児関係の書物も読めるようにして貰い、禁書庫で胎児や乳児と魔力の関係について調べ始めた。

今は新しい魔法や面白そうな事を調べている場合ではない。

俺にとっては奥様達や生れて来る子供達が何よりも最優先、最重要。

司書の役人にも手伝って貰いながら、胎児や乳児と魔力に関する本を調べる。

この世界は魔力量が少ないと軽んじられるので国王や王妃は魔力量が多い。魔力量の多い両親から生まれる王子や王女は生まれつき魔力量が多く、幼児期に魔力過多症で亡くなることも多いので王宮の禁書庫には結構な数の妊娠と魔力についての資料があった。

俺も奥様達もめちゃめちゃ魔力量が多いので心配になって禁書庫の資料を読みまくった。

結局の所、妊娠中は母体の魔力量が過多にならないよう適度に魔法を使う方が良いらしい。

王都の外に出られない奥様達の為に魔法を撃てる訓練場を作る事にした。

奥様達は攻撃魔法を撃つのが大好きだから。

妊娠中は精神的に不安定になるから好きな事をさせてあげるのが良いというシバスチャンのアドバイスもあった。

レイナに土魔法で屋敷の壁沿いに幅10m、高さ8m、長さ100mの訓練場を作って貰い、俺が結界魔法で4重5重の結界を張った。術式はドランで見たお祖母さんの結界魔法。

万が一の魔力暴走に備え、安全の為に訓練場は交代で使うように伝えた。

訓練場の完成を1番喜んだのは勿論シャリー。

火事の恐れがあるので外では撃てない高温の火槍を撃ち捲っている。

他の奥様方も順番に訓練場に行っては嬉しそうに攻撃魔法を撃っている。

奥様達は母体の魔力量が増えない様にポーション作成にも積極的に取り組んでいる。

レイナ、シャリー、リューラが初級薬師の資格を取ったので中級薬師の資格を持つリーナ、上級薬師の資格を持つ俺を加えると我が家は薬師5人の大工房。

奥様達が今まで以上にポーション製作に取り組んだので、生産量が大幅に増えた。

素材となる薬草増産の為に屋敷裏側の庭園を薬草園に作り替えて薬草の栽培量も増やした。

薬草園には頻繁に撒かれる奥様達謹製の魔力水のお陰で瑞々しい立派な薬草が育って、ポーションの品質向上に貢献している。

高品質のポーションが大量に供給され始めるとあちこちから納品要請が来た。

王国でも格段に消費量が多いキュラナー辺境伯家には以前から納入していたが、リーナの実家という事で改めて格安に提供する長期契約を結び、残りの多くは王国軍を管轄する軍務殿に、そして今まで納入していた関係から薬師ギルドにも継続納入する事になった。

薬草が自前なので安くすることも出来るが、高品質のポーションが安く提供されると薬師ギルドや冒険者から高い値段で薬草を仕入れている一般の薬師工房は経営が成り立たなくなる。

儲けるつもりはさらさら無いが、辺境伯家以外へは市場価格より品質分だけ高い価格で販売する事になった、とシバスチャンが言ってた。

品質が高い分販売価格を上げたので、低品質の物でも数が欲しい冒険者ギルドとは緊急時の供給を約束する事で平常時は他の工房から仕入れて貰う事に決まった。

シバスチャンによるとポーションの売り上げだけでキラ家の通常経費を余裕で賄え、さらに大幅な利益が出るらしい。

余剰金は生まれて来る子供達の為に貯めておくらしい。

お金のことは全部奥様達やシバスチャンに丸投げなので俺は報告を聞いただけ。

俺は禁書庫に通って魔力過多症について調べたり、中級・上級ポーションの素材集めに北の森に入ったりと忙しいが、屋敷に戻るとお腹の膨らんで来た奥様達に笑顔で迎えられるのが嬉しくて頑張っている。

一番の楽しみは日に日に大きくなる奥様達のお腹を撫ぜる事。

優しくお腹を撫ぜると疲れも吹き飛び穏やかな気持ちになれる、俺の幸せな時間。

もう寂しさを感じる事は無くなった。

この世界に転生させてくれた原初の神様と俺と奥様達を見守ってくれている創造神様に感謝の祈りを奉げた。



「そろそろ名前を考えなくてはいけませんね。」

「うん、女の子なら可愛い名前、男の子なら優しい名前がいいかな。」

「キラ様は名前を覚えるのが苦手ですから、短い名前の方が良いですわ。」

「いくら何でも子供の名前くらい覚えるぞ。」

「私達は皆、3人か4人子供が欲しいと思っていますの。3人ずつだと12人、4人ずつなら16人の子供が生まれますわ。」

「へッ!」

思わず変な声が出た。

16人? 

屋敷の中をちびっこ達が走り回っている姿が頭をよぎる。

全員の名前を覚える? 

無理、無理、無理。

前世で人気だったアイドルグループも16人だったけど、3人位しか覚えられなかった。

魔法陣や魔法の術式なら一目で覚えられるのに何故か人間の名前が覚えられない。

貴族の名前なんて長いから殆ど覚えていない。

国王は陛下だし、宰相は宰相。名前も家名も知らない。

奥様達でさえ愛称で呼び始めてからは元の名前が出難くなっている。

番号じゃダメだよな。

「うん、短い名前が良いね。」

アホでも覚えられるような短い名前にしよう。



「奥方様達は順調か?」

週に3日しか登校しないし、授業もバラバラなのでアルト達と顔を合わせるのは昼休みの食堂くらいしか無い。

「おう、お腹もかなり大きくなった。春から初夏位に生まれるらしいからそろそろ名前を考え始めた所だ。」

「名前は生れてからつけるものだろ?」

「4人がほとんど同時に出産だろ。生まれてから4人の名前を考えるのは無理だからな。」

「男か女かも解っていないのに名前を考えるのか?」

「4人もいれば両方生れるだろ?」

「いや、女系とか男系とかあって、女の子ばかりの家とか男の子ばかりの家も結構あるぞ。」

貴族の事情に詳しいイエローが言うのだからそうなのかもしれない。 

いや、待て。

「しかし同じ母親ならともかく、4人が4人共同じは無いだろ?」

「それはそうか。4人の母親が同時に出産なんて前代未聞だからな。」

「今は奥様達とあれやこれや言いながら名前を考えるのが楽しいからいいのさ。」

「はいはい、ご馳走様。」

「卒業単位の方は大丈夫か?」

「前期試験が良かったし、実技科目は殆ど単位を貰えているから問題無いと思う。ジュリアの進路は決まったのか?」

「一応2属性持ちだから魔術師団には入れそうな感じだな。」

アルトは冒険者、イエローは伯爵家の領地経営補佐と進路が決まっている。

「キラは薬師か?」

「リーナが上級薬師の資格を取ったし、他の3人も中級薬師の資格を取ったからね。」

薬師ギルドに頼まれて奥様達は一つ上の資格を取った。

品質の違いで買取り値段が違うのだが、納得しない薬師もいるので買取り値段が違う事の理由付けに中級以上の薬師の数を増やしたかったらしい。

「上級薬師2人に中級薬師3人の薬師工房なんて聞いた事も無いぞ。」

「そうなの?」

「大きな工房でも上級か中級1人に弟子の初級薬師2~3人だな。」

「リーナの実家がポーションを大量に必要としてるし、軍にも納めているからね。」

「キラ家のポーションは品質が良いし長期間保存出来るから、通常のポーションの倍から3倍で取引されているらしいぞ。」

イエローが教えてくれた。

「うちのポーションだって判るの?」

「鑑定人が見れば一目瞭然らしい。偶にオークションにも出るらしいが、5~6倍の値が付くそうだ。」

「市場に出るのは商業ギルドに納めた分だけだから希少価値なんだろうね。」

「キラの目指していたのんびり生活は万全だな。」

「これからも無理のない程度にぼちぼちとポーションを作りながら暮らすよ。」

「田舎生活は諦めたのか?」

「子供が生れるから王都を離れるのは子供達が成人してからだな。」

「子供が成人してもまだ30代前半か、隠居するには早くないか?」

「元々は学院を卒業したらすぐに田舎に引き籠る予定だったから、随分先に延びた感じだな。でも奥様達は皆優しいし、子供達と一緒にワイワイ言いながら暮らすのは楽しみだから良かったと思う。」

「はいはい、ご馳走様。」


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