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23 結婚するのは大変だ

授業はおおむね順調だけど、魔導具製作Ⅱで作っている通信魔道具の常時待ち受け機能は少し難航している。

冒険者ギルドで見た通信機に付属していた応答出来なかった場合の録音機能を再現するのが難しくて、教授やテリア殿下と一緒にあれやこれやと試行錯誤を繰り返した。

待ち受け機能の魔法陣や回線接続の術式はお祖母さんの本に載っていたのだが、音声の録音が難しくて、実際に作ってみると上手くいかない所が多い。

改良している間に待ち受け機能の魔道具だけで通信機並みの大きさになってしまった。

通信機を小さくしたかったのに現状では試作品の倍近い大きさ、ぐぬぬ。

教授は魔導具製作Ⅲに引き継いでも良いと言ってはくれたが少し悔しかった。



乗馬はお馬さんとコミュニケーションを取れるようになってからは順調。

もうすぐ学年末という頃になって、教授からお馬さんを買い取る話が出た。

俺がいつも乗せて貰っているお馬さんは気難しくて、上級者以外で乗りこなせるのは俺だけらしい。他の学生達は乗り難い馬を敬遠するので、俺が乗馬の単位を取ってしまうと俺になついてくれているお馬さんを選ぶ学生がいなくなり、お馬さんは厩舎にとってはお荷物状態になってしまうらしい。

上級者は自宅に自分専用の愛馬がいるので、馬を持っていない俺に購入の話が回って来たらしい。

俺としては唯一乗りこなせる馬が手に入るチャンスという事で即座に買取りを了承した。



「貴様がキラとかいう冒険者か?」

いつものようにアルト達と食堂で昼食を食べていたら小柄な生徒に声を掛けられた。

「誰?」

「俺は大賢者様の孫であるクランドール=ソランダだ。」

弟? そう言えば3つ違いだから今年入学したのだろう。

小柄に思ったが、1年生なら大きい方かもしれない。

「俺がキラだが、何か用か?」

「平民の分際で王女を誑かし、我が家から大賢者様の遺物を奪ったばかりか、今度は高位貴族の令嬢を次々と傷物にしたと聞いた。令嬢たちの生き血を啜る大悪人、このクランドール様が成敗してくれる。」

弟君が手袋を投げつけて来た。

何の事? 

意味が判らないんだけど。

飛んで来た手袋をヒョイと避ける。

「生憎と俺は平民の分際なので決闘する気は無い。」

「ふざけるな、平民ならなおさら貴族からの決闘申し込みを断る事は出来ん。表に出ろ。」

「まだ食事中だ。そこにいては迷惑だから、食べ終わるまで表で待っていろ。」

「決闘場所は第2校舎裏だ。食事が終わったら来い、逃げるなよ。」

俺をグガっと睨みつけてから弟君は食堂を出ると第2校舎の方向に歩いて行く。

素直に出て行った事にびっくり。

普通は無理やり食事を中断させるか、逃げない様に食堂の外から見張っているよな。

平民に食事が済む迄待っていろと言われて、本当に待つ貴族が居た事に驚いた。

ひょっとして素直すぎるバカ?

「どういうことだ?」

アルトに聞かれても俺には何のことかさっぱり判らない。

首を捻りながら可能性の有りそうな事を考える。

「う~ん、誰かに唆された?」

素直過ぎると言う事は騙されやすい?

「可能性はあるな。イエロー、何か掴んでないか?」

「あまりにも突拍子が無さ過ぎて俺にも判らないが、キラをおびき出している感じだな。校舎裏に行く途中の植え込みあたりに暗殺者でも仕込んでいるんじゃないか。とりあえずこの件は学院長に話しておく。」

「すまん。」

イエローが食堂を出て行った。

「暗殺者って、キラを暗殺するにはドラゴン10頭位潜ませていないと無理なんじゃね?」

アルトが呆れている。

「あの植え込みだとドラゴン10頭を隠すのは難しそうだな。」

ジュリアが外の植え込みを見ながら首を傾げている。

ジュリアはまじめに考えすぎ、ドラゴンがおとなしく隠れる筈なんて無い。

いや、それよりもドラゴン10頭なんてどこにいるんだよ。

暗殺者と聞いて10日ほど前に”蒼い梟“から伝えられた情報を思い出した。

裏ギルドで暗殺者を探している貴族関係者らしき者がいる。狙いは俺である可能性が高いというものだった。

恐らくは俺がソランダ家の生まれと知っている者がクランドールを使ったのだろう。

探知魔法の精度を上げて校舎裏までの道筋を精査した。

第1校舎の屋上に3人、第2校舎の屋上に2人、途中の植え込みに5人、4本の木に1人ずつの4人、食堂の出口が見える研究棟の屋上に一人、15人の不審者が見つかった。

不審者を気絶させるには魔法剣の雷撃が1番だが、あちこちに離れている敵相手に使える程の練度は無い。

広範囲にばらけている敵を相手に使える攻撃魔法は気弾か光弾しかない。

ここ数年、忙しさの余りに十分な訓練が出来なかった事が悔やまれる。

魔法袋からメモを出し、簡単な地図を描いて襲撃者の位置を書き込んだ。

「ジュリア、これが襲撃者の位置だ。先に出て警備員に知らせてくれ。俺は2~3分後に出る。アランは生徒が近づかないように俺の後方を頼む。」

ジュリアがメモをポケットに入れて食堂を出た。

「はぁ。」

溜息しか出ない。

「アルト、10m以上離れて付いて来てくれ。」

「判った。」

アルトに声を掛けて食堂を出た。

俯瞰魔法で敷地全体を眺めると不審者たちの動きは丸分かり。

研究棟の屋上にいる男がチラッと光った。

鏡のようなもので他の男達に合図を送ったらしい。

中庭を通ってゆっくりと第2校舎裏に向かう。

屋上の5人が弓を構えた。

“気弾30発“

俺の体から気弾が放たれる。

一人当たり2発、1発を避けてももう1発は避けられない。

今は同時に100発迄全てコントロール付きで撃てる。

俯瞰魔法で観ながら気弾を操って不審者の足を吹き飛ばした。

木の上から4人が落ちて来る。

植え込みの不審者も2人が通路に転げ出た。残りの3人は植え込みの中で喚いている。

念の為に立ち止まり、探知魔法の精度を上げて確認する。

撃ち漏らしは無い。

ジュリアが警備員を引き連れて走って来た。

「足を吹き飛ばしたので逃げられません。ポーションで止血しないと死にますので宜しくお願いします。」

警備兵は学生を守る為に常にポーションを持ち歩いているので何とかなる筈。

「判った。」

指揮官らしい男がジュリアから受け取った地図を見ながら屋上へも警備兵を送る。

「怪我は無いな。」

「ああ。潜んでいたのはドラゴンじゃ無かったからな。」

「しかし、15人を一瞬かよ。」

「しかもどう見ても相手は暗殺のプロだぞ。」

「一応俺はSランクだからな。」

「Sランク相手に戦うのはバカのする事だと良く判ったよ。」

アルト達と話をしていたらクランドールが警備員に引き摺られて来た。

「なんだ、何で警備員がこんなにいるんだ。俺は伯爵家の嫡男だぞ、手を離せ。」

「こいつが首謀者ですか?」

「誰かに唆されたのだろう。その辺の取り調べは任せる。」

「承知しました。」

「そいつは平民で俺は伯爵家だぞ。無礼にも程がある、貴様らは高位貴族令嬢を誑かす破廉恥平民の言う事を信じるのか。」

やっぱり只のお人好しバカのようだ。

クランドールは相変わらず喚いているが、2人の警備員に引き摺られて詰所の方に連れて行かれた。

「はぁ。」

それでなくても結婚準備で忙しいのに、溜息しか出ない。



警備員からの報告によると、クランドールは3年生を装った者に焚きつけられて俺に決闘を申し込んだらしい。

俺がSランク冒険者であり、4人の高位貴族令嬢の婚約者と聞いて取調室で失禁したそうだ。

只の大バカではあったが重大事案として3か月の停学処分。

3か月授業に出られなければよほど勉強しないと進級できず退学となる。

まあ頑張ってくれ。

暗殺者達も狙った相手がSランク冒険者とは知らなかったらしく、騙されたと怒りながら警備員に全てを話したらしいが、結局依頼主の名は出てこなかった。

暗殺者の所属していた裏ギルドは襲撃当日に学院からの急報で緊急出動した王都警備隊の急襲を受けて壊滅したが依頼主の手掛かりは無かったそうだ。



久しぶりに”蒼い梟“の本拠地に行った。

「キラだ。ボスはいるか?」

入り口付近に寝転んでいた浮浪者風の男に声を掛けると、男は慌てて土下座する。

「2階の執務室におられます。どうぞお入りください。」

男は近くに寝そべっている浮浪者風の男に目配せして俺の後について建物に入る。

「キラ様がお越しになりました。」

後ろを付いて来る男が奥に向かって大きな声で叫ぶと、部屋の中にいる男達がドアから離れるのが探知魔法に映った。

執務室に入るとボスが執務机の前で跪き胸に掌を当てて貴族に対する礼をしている。

「堅苦しいのは無しだ。ソファーを使わせて貰うぞ。」

「どうぞ。」

ソファーに腰を降ろして合図するとボスが向かい側に座った。

「遅くなったが、先日の情報、礼を言う。お陰で誰一人怪我無く撃退出来た。」

「15人の暗殺者を瞬殺されたとか、さすがはキラ閣下と皆で喜んでおりました。」

「送って来たのは古くからある闇ギルドなのか?」

「閣下が壊滅させた“深淵の闇”の縄張りに進出して来た帝国系の新興闇ギルドです。」

「帝国系?」

「諸外国は王都の情報を集める為に、外交ルートと闇ギルドルートを併用して使っております。”蒼い梟“も幾つかの国の依頼を受けて情報を集めています。大国である帝国は3つの闇ギルドに金を払って情報を買っております。今回閣下を襲ったのはそのうち最も新しく王都に進出して来た闇ギルド。帝国は閣下の事を良く承知していますから、依頼主は帝国では無い筈です。まだ王都の情報に疎いボスが目の前に積まれた現金に目が眩んで依頼人の素性を碌に確かめず引き受けたものと思われます。」

依頼人に辿り着けなかった理由が判った。

「そうか。ともあれ役に立った、これは少ないが情報料だ。」

酒樽とAランクの魔獣を出す。

「今は少々物入りで現金が無い。魔獣の素材を売って部下をねぎらってくれ。」

「恐れ入ります。解体は勿論、素材の販売ルートも持っておりますのでこちらの方が有難いです。結婚式が無事に済むまでは尚一層の情報収集に努めます。」

結婚の事も知っているらしい。

「頼りにするぞ。」

「有り難き幸せ。」



授業が終わってものんびりしている訳には行かない。

授業が終わるとすぐ屋敷に戻り、招待状を書いたりお嬢様方の書いた招待状にサインする。

高位貴族や領地の遠い貴族から順に出すらしいが、招待状の数が凄くてビックリ。

屋敷に帰る度に新しい招待状が俺の執務机に山と積まれている。

女性は男性の3倍忙しいとシバスチャンに言われたら文句も言えない。

毎日只管ペンを走らせる。

結婚するのは大変だ。

もしも結婚式場が急に予約をキャンセルしたり倒産したら、全部やり直し?

結婚式は王国大聖堂、第1回披露宴は王宮の大ホールで第2回からはアシュリー公爵邸。

民間のホールでは無いし王家の肝いりなので突然キャンセルされたり倒産する事はなさそう、ちょっと安心。

時には採寸や試着も入る。

下着も全て新しくするらしい。

この世界の下着は少し硬いので着古した物の方が着心地が良いのだが古い物はダメらしい。

学院の規則で特別に認められる場合以外は王族でも実家に泊まれるのは週末の前日と週末の2日だけ。

あとの4日は寮に泊まらなければならない。

ギリギリの時間まで執務室に積まれた書類を片付けて寮に帰ると言う生活が続いた。



シバスチャンが披露宴用に大量の肉を用意して欲しいと言ったので、ついでに結婚費用を稼ごうとアイテムボックス内の整理を兼ねて資金稼ぎをする事にした。

お金の事はまるで判らないが参列者の宿泊費や手伝ってくれた人への祝儀など、結婚式には思わぬ出費があって慌てたと前世の友人が言っていたのを思い出した。

予想外の請求書が突然舞い込む可能性もあるので準備しておくに越した事は無い。

ギルドに魔獣の解体を依頼して、肉は戻して貰って素材だけをギルドに売る。

アイテムボックスは時間経過が無いので肉が腐る事は無い。

結婚を前にお金に困っていると思われるのは嫌なので、目立たないように4か月かけて少しずつ解体依頼を出したが、数が多かったのでめちゃくちゃ目立っていたと後で解体場のおっちゃんに言われた。

アイテムボックスにはいつもの大きな葉っぱに包まれたお肉が1杯溜まった。

すぐに調理出来る状態なので後は料理人達に任せれば問題無い。

屋敷には毎日職人さんが大勢出入りしている。

お嬢様方の部屋と俺の寝室の工事をしているそうだが、出来上がるまでは見ないようにとお嬢様方に釘を刺されているので執務室より奥には行かない。

職人さん達の姿が見えなくなったので、俺が精魂込めて目を逸らしていたお嬢様方の部屋と俺の寝室の工事は結婚式の直前に終わったらしい。

どうなったのかは結婚式後のお楽しみだそうなのでまだ見てはいない。

俺はお嬢様方の言いつけに逆らって無断で部屋を見る程の勇者ではない。



結婚準備でバタバタしているうちに学年末試験が終わり、4人のお嬢様は無事に卒業が決まった。

ルアレイナ・シャリーヌ・ドリーナの3人は魔法科10位以内、学院全体でも100位以内に入ったが、官吏登用試験の推薦枠を辞退、トリューラは3人が辞退した事で推薦枠が回って来たが3人同様に辞退。

4人共、官吏になると俺と過ごす時間が減るから辞退したと言っていた。

一緒に過ごせる時間が多いのは嬉しいが、俺が働いて高位貴族のお姫様4人を養っていかなければならない事が確定した。

大丈夫かな、ちょっと心配になる。

結婚式の前日、第1回披露宴会場となる王宮の厨房に高ランク魔獣肉を届けて俺の仕事は終わり。

結婚式の当日を迎える事となった。



いよいよ結婚式の当日。

「胸を張ってゆっくり堂々と歩いて下さい。」

シバスチャンに念を押されて胸を張る。

段取りは何度も何度も説明されたし、儀礼の作法も練習した。

準備は万端、の筈。

大丈夫かな?

先導の女の子と男の子の後ろをゆっくりと歩いて礼拝堂の奥へと進んだ。

緊張からか、何となくフワフワして床を踏みしめている感覚がない。

礼拝室の正面には創造神様の像。その左右に生命神や豊穣神、鍛冶神、薬師神などの下級神の像が並び、神像の前にある説教台の向こう側に大神官様が立っている。

説教台机の前で立ち止まり、お嫁さん達を迎える為に後ろに向き直ると参列者たちの顔が見えた。

最前列には陛下夫妻や宰相、騎士団長、魔導士長の顔も見える。

花嫁達が先導の子供達と共に入り口に現れた。



「キラはルアレイナ=アシュリー、シャリーヌ=ドラン、ドリーナ=キュラナー、トリュー=ステルンを妻として生涯愛する事を誓うか。」

大神官様が時々説教台に目を落としながらゆっくりと言葉を紡ぐ。

お嫁さん達は高位貴族のお嬢様方、万が一にも名前を間違う訳には行かないので大神官様の顔にも緊張の色が見える。

「はい。」

俺は一言で簡単な筈なのに口の中が渇いて声を出し難かった。

「ルアレイナ=アシュリーはキラを夫として生涯愛する事を誓うか。」

「はい。」

「シャリーヌ=ドランはキラを夫として生涯愛する事を誓うか。」

「はい。」

「ドリーナ=キュラナーはキラを夫として生涯愛する事を誓うか。」

「はい。」

「トリューラ ステルンはキラを夫として生涯愛する事を誓うか。」

「はい。」

「大神官の名においてしかと夫婦の誓いを見届けた。」

大神官様が振り向き、後ろにある1段高い段に登ると神像に向かって祈りの姿勢を取る。

俺達も祈りの姿勢を取った。

「この者達に神の祝福があらん事を。」

大神官様の言葉と共に、正面の創造神像が光り輝き礼拝室一杯にキラキラした光の粒が舞い踊った。

「「「おおっ!」」」

参列者からどよめきが起こる。

礼拝室を満たした光の粒が俺達5人の体に集まって吸い込まれるようにして消えた。

参列者達から一斉に盛大な拍手が起こった。

ポカンと口を開けたまま固まっていた大神官様が拍手に気付いて復活した。

「なんと創造神様の祝福を頂けました。・・夫婦共々末永く幸せな人生となる事でしょう。」

大神官様の言葉に礼拝室は再び盛大な拍手に包まれた。





神殿の1室


神殿最上階の大神官室に王国の首脳が集まっている。

「このような現象は初めて見たが、大神官殿はご存じであったか?」

「私には何がどうなったのか全く判らず、すぐに神官達に確認致しました。皆が見た事も聞いた事も無い、神殿の書物にも全く記されておらぬと申しておりました。」

宰相の質問に大神官が答えた。

「創造神様が5人を祝福して下さったように見えたな。」

「はい。キラキラした光の粒は創造神様の神像から放たれました。間近で見ていたので間違いありません。光属性を感じましたが、加護や浄化の光とは違う全く見た事の無い光景でした。」

「「・・・・。」」

「大神官殿が“神の祝福”を願った時に起こった。以後“創造神様の祝福”と名付けるが良い。」

余の一言で結婚式の出来事は“創造神様の祝福”として大陸中に喧伝される事となった。




控室に戻った俺は侍女達を下がらせ、俺と奥様達だけにした。

「大丈夫?」

「はい。漸く落ち着きました。」

「体の奥がジュワっと熱くなって、力が漲ってくる感じでした。」

「お臍の下あたりがキュンとなって凄く気持ちが良かったです。」

「気持ち良すぎて膝がガクガクして座り込みそうになってしまいました。」

「多分創造神様が祝福してくれたのだと思う。」

「祝福ですか? 加護では無くて?」

「加護は臍下にある魔力器官の属性魔力だけが増加するけど、皆は全身に光属性の魔力が宿っているから加護では無く祝福だと思う。」

「キラ様には判るのですか?」

「これは俺と亡くなった母上だけの秘密で陛下にも伝えていないけど、俺には体の中にある魔力や発動された魔法陣や魔力の動きが見える。」

「そのような大切な事を私達に話しても宜しいのですか?」

「これからはみんな家族だから。でもみんなの実家には秘密にしてね、色々と都合の悪い事もあるから。」

「「「「はい。」」」」

奥様達は嬉しそう。

何故嬉しいのかは判らないけど喜んでいるなら問題無い。

「魔力には色があって、属性によって違うんだ。礼拝堂で見たキラキラ光る白っぽい色が光属性の色。俺の空間魔法や結界魔法も同じ色をしている。そのキラキラした白っぽい色が今はみんなの全身に見えるから創造神様の祝福を戴いたのだと思う。」

「私達も光魔法が使えると言う事ですか?」

「光魔法の発動は制御が難しいから大変だけど、俺にも出来たからきちんと訓練すれば使えると思う。」

「「「「頑張ります。」」」」

4人は仲良しだった。

「俺の経験では光属性を纏うと傷の治りが速くなったり、毒など状態異常への抵抗力が上がった覚えがある。暫くは軽い怪我は治り具合を確認する為にポーションは控えて様子を見て欲しい。」

「「「「はい。」」」」

「キラ様は何歳の時に祝福を受けたのですか?」

「祝福を受けたのが何時なのかは判らないけど、気付いたのは5歳の頃だったと思う。転んで怪我をしたのにキラキラした光が傷を包んでほんの数分で治ったから驚いた事を覚えている。」

転生ガチャで創造神様の祝福を戴けることは教えられたが、全く説明が無かったので創造神様の祝福らしきものに初めて気付いたのは5歳の頃。

「という事は創造神様の祝福を授かったキラ様と結婚したので私達も祝福を受けられたと言う事でしょうか。」

「はっきりとは判らないけどその可能性が高いと思う。創造神様が祝福して下さったと言う事は、俺達の結婚は神の御意向に沿うものだと思ってる。」

「そう考えると演習の時にキラ様に出会えたのも創造神様のお導きだったのでしょうね。」

「私もそう思いますわ。」

レイナとシャリーが言うと、リーナとリューラも頷いている。

「俺もそう思う。それと、4人共魔力量が格段に増えているみたいだから威力の確認が出来るまではむやみに魔法を使わないでね。」

ギルドの練習場で数多くの魔法使いを見ているうちに下腹部の靄の濃さで凡そだが魔力量を推し量れようになっていた。俺の目には結婚式の前に比べて明らかに4人の靄が濃くなっているのが見えている。

「そんなに増えているのですか?」

「正確な所は判らないけど、多分3倍程度にはなっていると思う。今までの調子で魔法を使ったら魔力暴走を起こしかねないからね。」

「「「「はい。」」」」



4日連続の披露宴が終わった。

奥様達の実家の使用人達が頑張ってくれたお陰で披露宴も滞りなく終える事が出来た。

屋敷にたどり着いた時には俺も奥様達も疲れ果ててぐったりしていた。

「お疲れ様。」

「流石に疲れたわ。」

「本当に。」

披露宴では新郎新婦席に座る俺達の前に挨拶の順番を待つ客の列が途切れることなく続いた。

時折メイドの差し出す果実水で喉を潤すだけで、昼前から夕方までずっと雛壇の椅子に腰を降ろしたまま笑顔で挨拶を受けるのは拷問以外の何物でもない。

奥様方は化粧直しで交代しながら席を外したが、俺はずっと座ったまま。

8時間以上にわたって続く披露宴の間に2~3回席を立てただけ。

お肉の評判が良かったらしく、料理長に言われたよりもかなり多めに渡していたのに何度も肉の緊急追加要請があった。

追加休憩の時は新郎席を離れられたので腰を伸ばす事が出来たしトイレにも行けたので俺としては嬉しかった。

10時間越えの記者会見でトイレ休憩1回の某TⅤ局のお偉方達よりはまし。

奥様達が会話を引き受けてくれたので俺は殆ど頷くだけ、めっちゃ助かった。

やっぱり年上のお嫁さんは優しいだけでなく頼りがいがある。

それでも、話すのが苦手な俺にとっては魔獣の森に籠るよりも疲労困憊した4日間だった。

お茶を飲みながら5人でまったりと過ごす時間は心が癒される。

もう一人じゃない。

5人が本当に家族になれたという幸せを噛みしめた。



「明日、キラ様がおっしゃった魔力量の増大についての確認を行なおうと思いますが宜しいでしょうか。」

「うん、いいよ。それと家族の間で敬語はいらないからね。」

「はい。マドレーヌ、明日の昼食は王都の外で食べるので料理長に伝えておいてね。」

「承知致しました。」

「魔法の威力が上がっているといいな。」

「旦那様が上がっているというのですから間違いありません。」

「そうよね、キラ様が言うのですから。」

「ドラゴンが出てきたら5人で倒しましょうね。」

「ドラゴンのお肉は美味しいですからね。」

待て待て、只の試し撃ちが何でドラゴン討伐になるんだ?

何となく不安になった。



翌日は朝食を終えるとすぐに屋敷を出発した。

奥様達4人は屋敷の馬車、俺はエドに乗っている。

王立学院から買い取った馬にはエドという名を付けた。

前世で有名だった昔のTⅤ番組に出て来るしゃべる馬の名前。

毎朝屋敷の馬場で乗っているが、遠くに出掛ける時は飛行魔法なのでエドに長い時間乗る機会がない。たまにはエドを思う存分に走らせてあげようと今日はエドに乗っている。

決して奥様達4人に囲まれて馬車に乗るのが恐ろしかったわけでは無い、と思う。ほんとだよ。

「いつも屋敷の中ばかりでごめんね。」

「ミナヤサシイ、モンダイナイ」

「なら良かった。何かして欲しい時には俺を呼んでね。」

「ワカッタ」

エドが機嫌良さそうに馬車の周りを走る。

馬車の窓から奥様達が手を振ってくれる。

天気も良くて格好の遠乗り日和だった。


何とか間に合いました。

この先登場人物が一気に増えるので不安ですが、出来るだけ隔日で投稿出来るよう頑張ります。

これからも応援宜しくお願いします。

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