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2 目立つのはダメ、絶対

今の所1日置きに投稿予定?

予定は未定にして決定にあらずなので一応です。

出来るだけ頑張ります。

2歳になりトテトテと歩けるようになった頃、屋敷の本館から敷地内の離れに移った。

父さんが結婚するので母さんが本館にいてはいけないらしい。

離れと言っても2階建ての大きなお屋敷、さすがは伯爵家。

侍女さん一人、メイドさん2人に下働きのお姉さん達、料理人のおっちゃんが一緒。

離れは亡くなったお祖母さんが錬金場として使っていたそうで、1階は殆どが錬金場。

錬金道具も亡くなった当時のまま置いてあるので俺達の住居は2階。

離れの横には薬草園がある。

お祖母さんが亡くなってからも誰かが手入れをしているらしく種類ごとにきちんと区分けされた薬草が青々と茂っている。

自由に生きるなら冒険者か薬師がファンタジー小説の定番。

創造神様の祝福が何なのか判らないので、将来を考えると薬師は魅力的に感じた。

「な~?」

小さな指を薬草に伸ばして母さんの顔を見る。

「キラは薬草が好きなのね。これは色々な薬の元になるナルニ草よ。」

「な~?」

「これは傷を治すモリナ草。ナルニ草と混ぜると効果が上がるのよ。」

言葉はまだまだだが知識はしっかりと吸収出来る。

俺が聞く度に、母さんは一つ一つを優しく丁寧に教えてくれた。

母さんは亡くなったお祖母さん付きのメイドだったそうで、製薬や錬金、薬草園の管理を手伝っていたので薬草の名前や効能に詳しかった。

薬草だけでなく錬金場の機材の名前や使い道なども教えてくれた。

俺が理解出来ているとは思っていないようだが、”な~?“と聞くだけで俺の疑問に一つ一つ丁寧に答えてくれる。

お陰で薬草や錬金の基本的な知識を得る事が出来た。

錬金場の1画にはお祖母さんが集めた錬金関係の本が沢山あった。

薬草図鑑には丁寧な絵が載っているし、採取の仕方や保存法、使い方も載っている。

母さんが絵本代わりに読んでくれたので字も沢山覚えられたし、俺が気に入った本は部屋に持ち込む事も許してくれた。



そうこうしている内に父さんの結婚相手が本館にやって来たらしい。

見るからに悪役っぽい、感じの悪いおばさんが離れに来た。

前世のアニメや時代劇で見た悪役そのもの。

おばさんが近づいただけで背筋がゾクゾクするような嫌な気配を感じる。

お巡りさん、こいつです。

思わず叫びたくなった。

「侍女長を仰せつかったカレドーヤです。」

「エクセールで御座います。こちらが長男のヒルナキラです。」

おばさんがジロリと俺を睨む。

「本日よりお屋敷内の差配は私が致します。何か御用があれば私に連絡しなさい。また本館への立ち入りと外出は私の許可を得てからという事になりました。ご当主様に直接連絡する事は以後お控え下さい。」

背筋を反らせ、上から目線で母さんに言う。

「承知致しました。」

母さんの言葉に頷いておばさんが離れを出て行った。

めっちゃ感じ悪かったけど、母さんは気にしていないようなのでまあいいか。



今のお気に入りは調薬。

母さんはお祖母さんの助手として魔道具造りや調薬を手伝っていたそうで、俺に簡単な調薬を教えてくれた。

基本は元になる数種類の薬草を磨り潰して混ぜ、魔力を注いだ水を少しずつ加えて練るだけ。

この魔力を注いだ水というのが曲者だった。

母さんが小さなカップに入った水に指先を向けて魔力を流す。

母さんの指先から出た靄が水全体に同じ濃度で均等に広がると水が一瞬光って出来上がり。

「今度はキラの番よ。」

真似をして魔力を水に垂らす。

パリン!

カップが割れた。

「あら、カップにひびが入っていたのかしら。」

母さんは首を傾げるが、俺には見えていた。

俺の垂らした魔力が一気に広がってカップを内側から破裂させたのだ。

母さんが違うカップに水を入れてくれた。

今度は魔力量を少なくして魔力を水に垂らす。

パリン!

さっきと同様に魔力が一気に広がってカップを破裂させた。

今度は母さんもしっかりと見ていたから判った筈。

「まりょく、ひろがた。」

「えっ、何?」

母さんが首を傾げる。

「うん、こう。」

掌を合わせて割れたカップの上に出し、下に向かってさっと両手を広げながら離す。

俺的にはカップの内側で起こった魔力の流れを再現したつもり。

何度か繰り返したら漸く判って貰えた。

「キラは魔力が見えるの?」

母さんが驚いているが、もっと驚いたのは俺。

「かあさん、みえない?」

ひょっとしてやらかした?

「普通は見えないわ。魔力が見えるって凄い事だから絶対に人に言ってはダメよ。」

目立たないように楽しく生きるには人と違う能力がある事を知られるのは拙い。

人と違うだけで目立ってしまうし妬まれる。

一緒に居たのが母さんだけで良かった。

「うん。かあさんこれみえる?」

ふと思いついて魔糸を出してみた。

「これって、どれ?」

母さんがキョロキョロしている。

「まりょく、いと。」

「魔力、糸?」

魔糸でお母さんの手をツンツンした。

「えっ、これが魔力の糸?」

「うん。れんしゅう・した。」

「凄いわ。普通の人には見えないからこの事も話しちゃダメよ。魔法使いの中には魔力が見える人がいるかも知れないから、人前で使うのもダメ。使うのはどうしようもない時だけにしなさい。」

「うん。」

魔力が見える事と魔糸が使える事はお母さんと俺だけの秘密になった。



「キラは魔力が凄く多いみたいだから、魔力を少なくして魔力を注ぐ練習をしましょ。今度は魔力をうんと細くして長く出す感じでやって見るのよ。」

魔力が多いのは創造神様の祝福?

判らないけど、剣と魔法の世界なので魔力が多いのは良い事の筈。

「うん、もっかい。」

もう一回再挑戦。

今度は近くにあった鍋に水を入れてくれた。

水の量もめっちゃ多いし、鉄の鍋なら破裂しない筈、たぶん。

一気に流さないよう、慎重に魔力を流す。

鍋の中で魔力が一気に広がり、水が盛り上がり始める。

ヤバい、慌てて魔力を止めるとゆっくりと水が元の量に戻った。

うん、ヤバかった。

「もっかい。」

「はいはい、一度失敗した水は魔力が広がり難いので新しい水に代えるわね。」

魔力を途中で止めるのはダメらしい。

母さんは失敗した水を裏の薬草園に撒いて、新しい水を用意してくれた。

深呼吸をして気を静める。

慎重に、慎重に。もっと細く、もっとゆっくり。

魔力の流れをしっかりと見つめながら魔力が指先から水の中に広がって行くのを確認する。

魔力を流すよりも魔力の流れる速度と太さを抑える方に気力を削がれる。

光った!

「やたぁ!」

「凄いわ、奥様でもこんなに沢山は作れなかったわよ。」

お祖母様よりも沢山作れたと言ってくれた母さんの笑顔がめっちゃ嬉しかった。

母さんと一緒に出来上がった魔力水を磨り潰した薬草に混ぜて練り上げる。

力が足りない俺の手を母さんが暖かい手で包んで一緒に混ぜてくれる。

母さんと一緒に作業出来ることが素直に嬉しかった。

あとは少し大きな木の葉に塗って患部に当てれば傷や発熱が治り易いらしい。

今は怪我人も熱を出している人もいないので実際の効果は判らないけど、母さんはちゃんと出来ているって言ってくれた。

それからは毎日魔力水を作る練習。

魔力操作の練習には魔力水造りが効果的だとお祖母さんが言っていたそうで、母さんも練習したそうだ。

魔力が多いと魔力を暴走させてしまう危険性があるので、魔力操作の練度が高くなるまでは攻撃魔法を撃ってはいけないと言われ、俺は毎日魔力水造りに励んだ。

作った魔力水は勿体ないからと母さんが薬草園の水撒きに使った。



この世界にはファンタジー小説定番のポーションがあった。

ポーションを作るのは特殊な才能で、お祖母さんは作っていたが母さんには難しくて作れなかったと教えてくれた。

作るのが難しいという事はお金になる。

将来の生活に役立つ筈と考えて作り方を調べる事にした。

「ポーション・つくる。」

「あらあら、キラは凄いのね。」

母さんは笑いながらも手伝ってくれる。

お祖母さんが遺してくれた本を2人で一生懸命調べた。

目指せ、異世界の薬屋さん。

お祖母さんの遺した本には前世には無い素材などの難しい単語が多いので母さんに聞きながら本を読み込む。

母さんはたどたどしい俺の言葉を何度も聞き直しながら優しく説明してくれた。

単語が判っても文章の意味が判らない所が沢山ある。

判らない所は何度も何度も読み返し、前世知識も動員して自分で考える。

幸いにして初級ポーションと中級ポーションに使う薬草は薬草園にあったし、注ぎ込む魔力の魔法陣もお祖母さんのメモにあった。

問題はどうやって魔法陣を発動させるのか。

「はつどう、どやって?」

「お母さんは魔法を使えないから判らないけど、この本には“魔法の結果を思い浮かべながら頭の中の魔法陣に魔力を流す”って書いてあるわ。」

「けっか?」

「お祖母さんが溶液の入った瓶に少しの間魔法を当て続けたら、ピカッと光ってポーションになったわ。ピカッと光るのが結果じゃないかしら。」

魔法陣を一生懸命覚えて頭の中に叩き込む。

脳裏に浮かぶ魔法陣に魔力を流してみる。

魔法陣は発動しない。

瓶に魔法を流すなら目標があった方が良い。

母さんにポーションの瓶を用意して貰った。

目の前に水の入った瓶を置き、魔法が当たって光る事をイメージしながら魔法陣に魔力を流す。

瓶に変化は無いけど、頭の中にイメージしていた魔法陣が宙に浮かんでいるのが見えた。

魔法陣に流れた魔力が魔法となって瓶に向かった事も感じられた。

「はつどう。」

「魔法が発動したの?」

「うん。」

母さんに出来ない魔法を発動出来たのはお祖母さんの血を引いているせいかもしれない。

魔法が安定して発動出来るように何度も何度も繰り返し練習をする。

母さんは魔法を発動出来なかったのでポーションを作れなかったと言っていた。

治癒魔法が使える神官でさえポーションを作れる人と作れない人がいるという難しい魔法らしいが、母さんは幼い俺の我儘に根気よく付き合ってくれた。

何度も練習した成果か、魔法の発動失敗が殆ど無くなった。

準備は万端。

「ぽしょん、つくる。いい?」

「いよいよポーションを作るのね。」

「うん。」

「大人でも難しい魔法だけどキラなら作れるかもしれないね。」

俺には甘い母さんはあっさりと許可してくれた。

薬草園の薬草と母さんに用意して貰ったポーション瓶と蓋。

薬草を摺り潰して混ぜ合わせる。

魔力水を加えて混ぜ合わせ、丁寧に漉す。

溶液をポーション瓶に分け入れ、蓋をしてから溶液が光るまでゆっくりと魔力を注ぐ。

「・・・・。」

治癒魔法の魔法陣が発動しているのに、お祖母さんの本にあったようには光らない。

何度もやり直すが光らない。

訳が判らなかった。

「誰でも1回で成功するのは無理よ。どこが悪かったのか二人で考えましょう。」

「ぅん。」

悔しくて声も小さくなった。

「大丈夫、キラならきっと作れるようになるわ。

母さんに励まされてチャレンジ再開。

お祖母さんの本を見ながら二人で考える。

「ここまでは間違っていないわね。とすると最後の治癒魔法の掛け方ね。魔法陣はちゃんと発動していた?」

「うん。」

「とすると最初から最後まで同じ量を流し続けられなかったか、流す魔力量が多すぎるか少なすぎるかかなぁ。色々と試してみましょう。」

色々と条件を変えながら、発動した魔法から発せられる魔力をじっと観察する。

じっと見つめるうちに魔力の波形が見えるようになり、発動中に波形が途切れたり振幅が大きく変化しているのが判った。

幼児の体なのですぐに疲れて魔力の波動が安定していなかったらしい。

だが俺は普通の幼児では無い。

見た目は子ども、頭脳は大人。その名は転生者ヒルナキラ。

ばっちゃんの名に懸けて頑張るのだ。

安定した魔力波形をイメージして何度も何度も練習する。

「大切なのは集中力って書いてあったわ。魔法を発動している間は力を抜いて魔法だけに集中しなさい。」

母さんが肩を揉んでくれた。

魔法を成功させようと全身に力が入っていたらしい。

「うん。」

母さんと試行錯誤を繰り返し、魔力波動を安定させることが出来るようになった。

最初の発動から3か月も掛かったが、母さんに励まされて粘り強く頑張ったおかげで初級ポーションが完成した。

ポーション必勝法は粘りと頑張り。

諦めずに頑張れば上手く事を学んだ。

何度も失敗したのに延々と付き合ってくれた母さんには感謝しか無い。

その1ヶ月後には中級ポーションも作れるようになった。

やった~、これで家を出てものんびり暮らしが出来る。

めっちゃテンションが上がった。



お祖母さんは薬師だっただけでなく優秀な魔法使いだったそうで魔法や魔道具に関する本も沢山あった。

「役に立つかどうかは判らないけど、魔法の見学をしてみる?」

俺が魔法の本に夢中になっていたら母さんが声を掛けてくれた。

「まほう、みれる?」

「この屋敷には2人の魔法使いがいるから大抵どちらか1人が騎士と一緒に訓練しているわ。」

領地には5人、王都屋敷には2人の魔法使いがいるらしい。

「けんも。」

「そうね、もう剣術を初めても良い頃ね。」

4歳になったので運動能力もそこそこ上がっている。

剣と魔法の世界なのだから剣も必須だ。



「坊ちゃんには木刀を用意した。いきなり剣を振ったら自分の足を切ってしまうからな。」

伯爵家の騎士団長が剣の握り方と振り方を教えてくれた。

上から下に真っ直ぐに振るだけだがこれが結構難しい。

軽い木刀なのに振り下ろした力を止められずに地面を叩いてしまう。

真剣なら自分の足を切ってしまうと言われたが実際に振ってみると良く判った。

正しい握り方で真っ直ぐに振り下ろし、地面の直前でピタリと止められるまで毎日何度も素振りするように指導された。



素振りで疲れたら魔法の見学。

魔法使いのおじさんが騎士さん達に向かって火魔法を撃つ。

呪文によって体の魔力を杖に集め、魔力の溜を作ると魔法陣が浮き上がる?

魔法陣が魔力を吸い込んで一気に吐き出す事で魔法を発動している?

やって見たいけど、魔法水の様に過剰な魔力が出たらヤバイ。

今は見学だけにして魔法の練習は人目の無い所でこっそりする事にした。

騎士さんは魔法を盾で受け流したり剣で切り飛ばす。

魔法攻撃を剣で切れるって初めて知った。

じっくり見ると剣に魔力を纏わせて魔力同士を反発させている。

剣に魔力を纏わせるって何だ?

良く見ると騎士さん達は体にも魔力を纏わせている。

お祖母さんの本に書いてあった身体強化。

全身に魔力を纏わせてはいるが、騎士さんによって足に厚く纏わせている人、腕に厚く纏わせている人、手首から剣に纏わせている人、体格や得意技によって違うらしい。

お祖母さんの本によるとまずは均等に纏わせるのが基本。

体全体から薄く魔力を出して体に沿わせてみる。

全身を確認する事は出来なくて、均等になったかどうかが自分では判らなかった。

部屋に帰ってから鏡の前で練習しよう。



「あのひと、なにしてる?」

訓練場の隅にいる変わった服の人を指さした。

「あれは神官様よ。怪我をした人を治癒魔法で治療して頂けるのよ。教会に寄付をしている家だと訓練に付き添ってくれるの、ソランダ伯爵家には週に二回来てくれるわ。」

寄付の額によって来る回数や神官の格が変わるらしい。

教会もお金次第らしい。

治癒魔法を見たくて見学させて貰った。

近くで見ると、使っているのはお祖母さんの本にも描かれていた浄化の魔法陣。

本を読んでも何に使うのかが良く判らなかった魔法陣だ。

治療をするのに治癒じゃなくて浄化の魔法陣を使っていたのでちょっと驚いた。

神官のおじさんは浄化の魔法陣を発動させた後に傷を確認して、それから治癒の魔法陣を発動させた。

これはポーション作成の最後に魔力を流す時に使う魔法陣と同じ。

ポーション作成で何度も使った事がある。

ポーション同様に手を翳して掌全体から患部を包むように広げている。

これなら俺にも出来そう。

ただ浄化魔法の意味が判らない。

離れに戻った後もう一度お祖母さんの遺した資料を調べて見ると、傷の中に入っている土やゴミの除去と傷口が化膿するのを防ぐ効果があると書いてあった。

難しい単語が多かったので読み飛ばしてしまったようだ。

要するに洗浄と除菌効果があるらしい。

神官が使っていた時をイメージして自分の手に浄化魔法を掛けてみる。

ちょっと手が綺麗になった、気がする。

指先で床を触る。

指先が黒くなった。

浄化魔法を掛けると汚れが落ちた。

洗うのが面倒な時に良いかも。

ふと思いついて全身に浄化魔法を掛けてみる。

何となくさっぱりした気分?

色々と試してみた。

朝の洗顔と歯磨きが要らなくなった。

ずぼら・、いやのんびり生活にまた1歩近づいた?



剣と魔法の練習に製薬と読書。

結構忙しい日々だが自分の好きな事ばかりなので楽しい。

母さんの許可が出たのでお祖母さんの遺した本を見ながら色々な攻撃魔法を試してみた。

結論だけ言えば俺の攻撃魔法は火魔法も水魔法もしょぼかった。

火魔法は枯葉に火が付く程度、水魔法は水がチョロチョロ流れるだけ。

練度が足りないのかと思って一生懸命練習したけど無理だった。

最高神である創造神様の祝福だが、攻撃魔法には恩恵が無いらしい。

俺TUEEEで異世界無双は無理だけど、目標はのんびり生活だから問題は無い。

頭ではわかっているが、ちょっとテンションが下がった。

でも火種と飲み水が確保出来たのは有り難い。

前世の様にマッチやライターがあるとは考え難い。

火起こしの大変さは前世で行ったキャンプで体験させて貰ったので良く知っている。

水の貴重さも重さも体験済み。

歩き易い稜線から水の有る谷川までは遠い。

川の近くは草木が繁茂して歩き難い。

火種と水があれば野営する時にはめっちゃ便利、と言うか無ければ悲惨だ。



一番適性がありそうだった魔法は土魔法。

1m位の土壁が出せるようになった。

叩けばすぐに壊れるレベルだけど、練度が上がれば防御に使えるかもしれない。

石弾も飛ばせた。

えいやっ、と気合を入れると指先から石弾が出て40㎝位飛ぶ、というか落ちる。

伸ばした俺の手が40㎝位先にあったからそのまま落ちただけ。

風魔法は微妙。風刃はすぐ近くの小枝が漸く切れる程度で攻撃には使えない。

ただ、地面に沿って薄く広げれば探知魔法っぽい感じにはなったし、遠くの音も拾い易くなった。

風魔法の練度を上げる為に、暇な時は本館の会話を盗み聞き。

風魔法の練習を始めてからは手前や奥の声が小さくなり聞きたい場所の話が今迄よりもはっきりと聞こえるようになった

“昨日の護衛騎士はどうだった?”

“ご主人達が時間の掛かる用事だったからたっぷりと楽しめたわ”

“3人同時って聞いたわよ”

“御者も入れて4人よ。こっちはチージョと私の2人だから・・・。・・・とにかく体は小さいのに御者の・・・”

メイドさん達の会話は際どいものが多く、下手なアダルトサイトよりもエロい。

とてもじゃ無いが4歳児が聞いていられる内容では無い。

とはいえ、この世界の実情を知る為の情報収集なので最後まで聞いた。

情報収集の為に仕方なくだよ、仕方なく。ほんとだよ。

時には政治的な話も混じっている。

どうやらお祖母さんは凄い魔法使いで国の英雄だったが、それを僻んだ東部貴族達が結託して戦場で裏切った為に亡くなったらしい。

やっぱり目立つのはダメ、絶対。

大きくなったら母さんと一緒にこの屋敷を出て、田舎でひっそりこっそり暮らそうと心に決めた。



今嵌っているのは魔法の鍵を解除する遊び。

お祖母さんの錬金場には魔法の鍵が掛けられた箱が幾つもあった。

「これは亡くなった奥様にしか開けられないの。」

母さんが悲しそうに言うので何とか開けて見ようとチャレンジした。

見た目は子ども、頭脳は大人。その名は転生者ヒルナキラ。

ばっちゃんの名に懸けて開けて見せる。

自分に気合を入れた。

魔法の鍵とは要するに魔法で出来たパズル。

魔力の性質を読み取る魔法陣らしき物がお祖母さん以外の魔力を弾いているらしい。

だが、回路は2本あった。

恐らくはお祖母さんに万が一のことがあった場合用にお祖母さん以外の人間も使えるようにバイパスを作ったのだろう。

バイパスに魔力を流してみたが、魔力を弾かれた。

まあ誰でもバイパスを使えたら鍵を掛ける意味は無い。

色々と試行錯誤した結果、ポーション作成で使う魔力量ならば回路に魔力が通ると判った。

バイパスの入り口をクリアすると次にあったのは極々小さな8枚の板が嵌っている9マスの箱が4つ。前世で見た15枚の数字の板を並べるパズルと同じ。だが、小さな板には何も書かれていない。魔力を流して見たら、枠の右端の板に魔力が流れ、最初の板の中心で左に折れ、左の板の中心で下に曲がって枠にぶつかって止まった。

それぞれに板には魔力が通る回路が描かれているらしい。

この感じだと恐らく出口は左の奥。

板を動かそうと指先に力を籠めるが板は動かない。

色々と試したが動かない。

ひょっとしてと思い、魔糸を使って板を動かすと簡単に板が動いた。

それぞれの板を右端に持って来て魔力を流す。真上に流れたのは8枚のうちの1枚だけ。

これが左奥。後はそこまでの回路を繋げばいい。

回路に流れる魔力が視えるからこそ出来る遊び。

何重にも鍵が掛かっているので結構難しいが、パズル好きの俺としては面白い。

夢中になって魔力の鍵を解除してはまた元のようにぐちゃぐちゃに組み直す。

細く尖らせた魔糸で回路を動かすのは集中力もいるし、忍耐力もいる。

解錠に疲れた時や時間の有る時は元に戻す前に箱の中の本や資料を読んだ。

何度か鍵の解除をした結果、バイパスのパズル全体に極極弱い魔力を薄く流すとパズルの板全体に魔力が流れ、魔力の見える俺ならば板に描かれた回路が見えると判った。

回路を見ながらつなげるのだから解除も簡単。5分で箱を開けられるようになった。



鍵の掛かった箱に納められていた本と資料で見つけたのが色々な空間魔法。

お祖母さんは魔法袋を作っていたらしく、魔法陣付与の資料と素材も残されていた。

今はお祖母さんの遺した資料を参考にしながら小さな空間を生み出して自在にサイズを変える練習。圧縮した空間を固定出来れば魔法袋に組み込める。

ファンタジー小説定番の魔法袋が作れるかもしれないと思うとテンションが上がる。

とは言っても、お祖母さんの遺した資料だけでは難しくて試行錯誤が続いている。

他に見つけたのが難しいポーションの作り方。

初級と中級のポーションは棚にあった本に書かれていたが、箱の中には上級ポーションや各種の解毒ポーション、欠損部位を再生する神級ポーション、死んだ直後なら命まで救えるエリクサーもどきまで色々なレシピが遺されていた。

お祖母さんの薬草園で栽培されている薬草で初級・中級ポーションは作れたが、数種類の解毒ポーション、初級の魔力ポーションも作れることが判った。

毎日余った魔力水を撒いているせいか、薬草園の薬草は以前の倍程の大きさに育っている。

毎日練習に使っても全く減る気配は無いので本館の使用人達に気付かれる事は無い。

上級以上は素材が足りなかったが、レシピはしっかりと覚えたのでいつか作ってみようと思っている。

田舎の町でポーションを作りながらのんびりと生活するのは最近のファンタジー小説のジャンルにもなっているスローライフ物の定番。

のんびり楽しく異世界で暮らすには薬師が最適なので頑張って練習している。



魔法の鍵を開けては難しい所を母さんに教えて貰いながら本や資料を読み耽った。

俺が知らない色々な魔法の事が詳しく書かれていて、出来そうなものは次々に試した。

攻撃魔法は相変わらずダメダメだけど、使える魔法が増えるのは楽しいし、使えるかも知れない魔法の研究も楽しい。

沢山の魔法が描かれているので一朝一夕には覚えられない。

魔法袋の他に研究中なのは属性魔法以外の攻撃魔法やめっちゃ難しそうな数々の魔法。

1つの魔法に行き詰ると違う魔法の研究をして気分転換。

時々簡単そうな魔法を見つけるとすぐに試してみる。

役に立つかどうかは別問題として、お祖母さんの本に乗っている魔法は術式が複雑なもの以外は殆どが発動出来た。

という事は術式が複雑な魔法も発動できる筈。

新しい魔法が使えるようになるとめっちゃ嬉しくなるし、母さんも喜んでくれるので難しい魔法の研究に取り組む意欲が衰える事は無かった。

好きな魔法を思う存分研究出来るので毎日が楽しかった。



剣と体術は騎士団長の熱心な指導のお陰でかなり上達した。

訓練は厳しくて毎日痣だらけだが、創造神様の祝福のお陰なのか怪我や痣の治りがめっちゃ早い。どれだけ打たれても、一晩寝たら翌朝には傷も痛みも消えている。

身体強化だけでなく縮地の使い方や欠点も教えて貰えたし、何度も投げ飛ばされて受け身も自然に出来るようになった。

毎日地道に鍛錬した成果。

前世でも仕事が忙しくなるまでは毎日筋トレやジョギングをしていたし、トライアスロンの大会に出た事もあるくらいの運動好き。

成果がなかなか顕れない前世でも運動を続けていた俺としては、毎日の成果がすぐに出る訓練は楽しくて仕方が無い。

この世界は訓練の成果がすぐに顕われる世界なのだろう。

騎士や魔法使いが毎日訓練する理由が判ったような気がした。

身体強化も使いこなせるようになったし、小剣なら自在に振り回せるようになった。

田舎の町でのんびりと生活するには自衛出来るだけの力も必要。

人間相手は無理だけど、小型の魔獣位なら今でも倒せるかもしれないと自惚れる。

俺の未来が段々と明るくなった気がした。


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