19 鳥だ。飛行機だ。いや、Sランク冒険者だ。
学院は夏の長期休み。
俺は以前光弾の練習をした岩山に向かった。
火事の時に体力の低下を実感したので、鈍った体をもう一度鍛え直そうと考えた。
王都から逃げ出したかったからという事もあるけど、訓練は大事。
今回の重点は転移魔法の練習。
元々の切っ掛けは伯爵家の騎士団長に教えて貰った縮地。
空間を折り曲げて一気に相手の懐に飛び込む業だが、魔法陣を少しいじったら物質を転移出来るようになった。
ストンのギルドでは怪我の治療中に偶々見つけた腫瘍の転移にも成功した。
その発展として学院の寮でもこっそりと自分自身を転移させる練習を重ねていた。
寮の部屋では2m位しか転移するスペースが無いので近距離転移の練習しか出来ない。
今回は広い岩山なので、転移出来る距離を延ばす訓練とどれくらいの荷物と一緒に転移出来るかの実験。
勿論筋トレと基礎練習は必須。
岩山の急坂を全力で登り全力で下る。
剣を振り抜いて木を倒しながら森を走る。
鳥さんを見つけるとカウンターバリアの練習。
勿論ここでしか練習出来ない光弾も撃ち捲るし、気弾も飛行魔法も練習する。
暫く使わないと練度が下がって発動速度や威力が落ちるので万遍無く使うのが大事。
久しぶりに思い切り体を動かせてちょっとテンションが上がった。
そろそろ休みも終わりという頃になったので王都に戻った。
寮に入ろうとしたら、寮母のおばちゃんに王宮からの手紙を渡された。
まあそうなるな。
めんどくさそうな事になりそうだったので火事の後直ぐに王都を発って山に籠ったのだ。
「逃げ足が速いな。」
いつもの部屋に入るなり宰相に文句を言われた。
奥には陛下が座っている。
「13歳に相応しい実力を付けなければなりませんので。」
そう、俺は13歳になったのだ。
「13歳に相応しい様、Sランクに昇格する事が決まった。今回の活躍は目覚ましかったぞ。」
「はあ。」
「嬉しくないのか?」
「正直に言うと、AランクとSランクの違いが判りません。」
「成程、両者の違いとなると普通の冒険者は知らぬな。一番大きいのはこの大陸であればどの国に行っても侯爵として扱われる事。Sランク冒険者は国の最大戦力なので、他国が爵位や領地を与えて取り込まない為の措置だ。これが無いとSランク冒険者は他国での依頼を受けられないからな。それと、相手が国であろうとギルドであろうと依頼の拒否が出来る。Sランク冒険者を戦争の兵器とされないためだ。」
「成程、それは嬉しいです。」
前世の平和ボケ世界の影響なのか、戦争にはどうしても抵抗があるので有難い。
「では1週間後に就任式を行う。心づもりをしておくように。それと以前約束した屋敷の準備が整った。係の者に案内させるから帰りに見に行くが良い。」
「はあ。」
そう言えばそんな事を言われたような気がする。
忘れているのかと思っていたが覚えていたようだ。
王都に住むつもりは無いし、寮に住んでいるから屋敷なんていらないんだけど、断るのは無理らしい。
「火事についてだが、ヒードイ子爵からキラが大魔法を撃って火事を引き起こしたという報告書と第2王子とその班員全員、さらに演習に参加していた学院生13人の署名入り証言書が提出された。」
「ハァアァ?」
思わず変な声が出た。
何でそうなるんだ?
あまりにも予想外過ぎる宰相の言葉に驚きを通り過ぎて混乱する。
「ヒードイ子爵は虚偽の告発罪で爵位剥奪の上財産没収、鉱山奴隷とした。第2王子は王族籍剥奪の上国外追放、班員と虚偽の証言を行った生徒は全員退学処分にした。全員がミット侯爵の派閥に属する貴族子弟なのでミット侯爵派がキラを恨んでいる可能性がある。くれぐれも警戒は怠らないように。それからこれはキラに救われた生徒達とその保護者からの感謝状と茶会や晩餐会の招待状だ。」
俺に罪を擦り付けようとした者が処分された事でホッとした俺に、大きな箱にぎっしりと詰め込まれた書状が差し出される。
将軍職に就いた時、宰相が俺の後見となったので王宮に届けられたらしい。
感謝状はともかく、茶会や晩餐会の招待状?
俺は冒険者。
茶会や晩餐会なんて行った事も無いし、貴族の屋敷に行く気なんてこれっぽっちも無い。
「えっと、・・これってどうすれば良いの?」
「屋敷の執事に渡せば整理してくれる。好きなようにせよ。」
屋敷だけではなく執事もいるんかい。
当然使用人もいるのだろうな。
お給料払えるかな。
「Sランク冒険者には国から年金が出る。屋敷の維持には十分な額だ。」
エスパー? 宰相はエスパーなの?
「有り難く頂戴します。」
「ところで、女子学生達の火傷や傷を小さな痕も残さず綺麗に治したと聞くが、それはキラの固有魔法か?」
「女性の傷は将来に係わると聞いて、出来る限り丁寧に治しただけで普通の治癒魔法です。時間が少なかったので見逃した傷があったのなら申し訳ない事をしました。」
「いや、女子学生達だけでなく大勢の保護者達からも感謝状が届いている。あのような緊迫した状況で良くやってくれた。陛下も感心しておられた。」
陛下を見ると頷いている。
「ここまでは美談で済むのだが、キラが命を救った女子学生や傷を治した女子学生の親達から婚姻の申込書が来て居る。」
分厚い書状がぎっしりと入った箱を渡された。
「・・・・。」
1瞬呆けてしまう。
前世を合わせると43年の人生で1番の驚き。
前世ではコミュ障気味だったので女性と付き合った事が無い。
まあコミュ障は今世でもあまり改善していないけど。
恋人が出来たら良いな、なんて思った事もあるけど数が多すぎる。
自慢じゃ無いが、前世ではバレンタインデーにチョコレートを貰った事も無い。
ラブレターは嬉しいけど、貴族からは欲しくないし数が多すぎる。
絶対面倒な事になる予感しかない。
「・・・えっと、これはどうすれば良いのでしょうか。」
「中を見たら返事をしなければならん。興味が無ければ私が返却しておく。」
「宜しくお願いします。」
この時ほど宰相の言葉が嬉しかった事は無い。
王宮を出ると正面に新しい屋敷へと案内してくれる馬車が待っていた。
馬車で行くと言う事は遠いのかな、って思う間もなく到着した。
デカすぎじゃね?
王宮のすぐ近く、周りには林に囲まれた大きな屋敷しかない貴族街の1等地にある大きな屋敷、とりあえず林で建物は見えないけど。
大きな門の前には槍を持った門番が2人いて門を開けてくれた。
門の内側には門番の待機場らしい1軒屋。
花壇に囲まれた道を馬車が進む。
暫くすると石造り3階建ての大きな屋敷が見えて来た。
お城か?
屋敷の正面で馬車を降りると大きく開いた扉の前におっさんとおばちゃん、兄ちゃんが背筋をピンと伸ばして立っている。
扉の向こうにはずらりと並んだ使用人達?
観光旅館のお出迎え?
「執事のシバスチャンで御座います。」
「侍女長のマドレーヌで御座います。」
「侍従長のトーマスで御座います。」
「キラです。宜しくお願いします。」
3人を引き連れて玄関ホールに入ると使用人達が一斉に頭を下げる。
「「「宜しくお願い致します。」」」
「こちらこそ宜しくお願いします。」
頭を下げた。
「閣下が使用人に頭を下げてはなりませぬ。」
小声で怒られた。
「もう将軍じゃないので閣下は止めて下さい。」
将軍は陛下の代理なので閣下と呼ばれても仕方が無かったが今は只の冒険者。
閣下と呼ばれるのは王国の格式的にも拙い。
「Sランク冒険者は侯爵待遇で御座います。侯爵以上の当主は閣下とお呼びする事になっております。」
知らなかった。
シバスチャンを何とか説得してキラ様と呼ぶ事で妥協が成立した。
将軍時代を思い出すので閣下はイヤ。
執務室に入ってシバスチャンから説明を受ける。
屋敷には従者4人、侍女4人、メイド6人、警備員8人、厨房6人、馬丁2人、庭師4人、下女12人、下男10人。シバスチャン達管理職3人を含めて59人の使用人がいるらしい。
人数を聞いて引っ繰り返りそうになったが侯爵家としてはかなり少ないらしい。
そう言えばジュリアが“貧乏子爵家だから家臣が100人しかいない”と言っていたのを思い出す。
俺が生れた伯爵家は王都屋敷だけでも使用人が100人程いた。
恐らく領地には1000人以上の家臣が居るのだろう。
俺の屋敷は59人、侯爵格としては少ないのだろうけど、・・・。
確かにとんでもなく広い庭を4人の庭師と10人の下男で手入れするのは無理な気がする。
めっちゃ大きな本館は寝室やリビングの付いた客室だけで23あるらしく本館の中で迷子になる自信がある。6人のメイドと12人の下女では掃除するだけでも大変そうだ。
本館の他に屋敷内には鍛冶場、錬金場、馬場、厩舎、離れが2つに倉庫が4つ。
59人でも少ないのは理解出来たけど・・・。
こんなに広い屋敷、13歳の子供にどうしろって言うんだ?
今度2年生なのであと4年間は寮生活、知らなかったことにすればいい?
とりあえずとアイテムボックスの肉を大量に渡してみんなで食べて貰う事にした。
屋敷を貰ったメリットはアイテムボックスにある肉の整理くらいしか思いつかなかった。
茶会などの招待状をシバスチャンに丸投げして寮に戻った。
「はぁ。」
溜息しか出ない。
なんでこうなった。
今日から新学年。
クラスは数人が入れ替わったものの殆どが同じメンバーなので違和感は、・・あった。
教室に入るなり視線が集中した。
「Sランク昇格おめでとうございます。」
「先日は助けて頂いてありがとうございました。」
「キラ閣下なら絶対にSランクに成れると思っていました。」
入学式の集合で俺の姿を見て“冒険者みたいな恰好してる”ってこっそり囁いていた子だ。
いや君、俺が冒険者だって事すら忘れていただろ。
もう13歳だから黙っていた。
少しだけ大人になった気分なのは夏の特訓のせいかもしれない。
顔は知っているものの、名前は知らない女の子達から次々と声を掛けられる。
「どうも。」
一応頭は下げるが居心地が悪い事この上ない。
自分の席に着くとアルト達がやって来た。
「大変だな。」
「どうせ暫くの間だけだ。」
「長期休みは寮にいなかったがどこに行っていたんだ?」
「演習で体力不足を実感したから13歳に相応しい力を付けようと訓練してた。」
「13歳に相応しいって、半日も飛んでいられる13歳はいないぞ。」
「そうなの?」
「大体が、この大陸で空を飛べるのはキラを含めて3人だけ。他の2人は1時間も飛べないらしいぞ。」
「魔法科の卒業生ならみんな飛べるんじゃないの?」
「そんな訳あるか!」
怒られた。
「そう言えば殿下が退学になったのは知っているか?」
「うん、昨日聞いた。」
「それに関連して16人の学生も退学処分となった。」
流石は伯爵家の嫡男、情報が正確だ。
「らしいね。」
「官吏科は2人で騎士科は5人だが、貴族科は殿下を含めて10人退学になったので女学生達が騒いでいる。」
「・・・何で騒いでるの?」
意味が判らん。
「退学になったのは10人だが高位貴族の子弟が多いし、退学になったのは全員男子。他学年に兄弟が居る学生も多い。その上、殆どの退学生の実家が降爵などの処分を受けた。」
「それで騒ぐの?」
だからどうだって言うのだ。
「嫁入り先が減ったと言う事だ。殿下の取り巻きに目を付けていた令嬢達が慌てて他の男を探し始めた。特に注目されているのが侯爵格の某Sランク冒険者。」
俺かい。
あの結婚申し込み書はそう言う事だったのか。
「昼休みとかも一人にはなるなよ。誰もいない部屋に引き込まれて”襲われた“と騒がれたら結婚せざるを得ないからな。」
「流石にそれは無いだろ。」
「王立学院では過去にそんな事件が何度も起っている。殿下に護衛が付いているのは女学生から殿下を守るためだ。俺がイエローの傍にいるのもイエローを女学生から守る為だ。」
真面目なジュリアが言うのだから本当なのだろう。
女学生、怖わ。
「王族や高位貴族の子弟が子供の頃徹底的に教え込まれるのは“女を見たら狼と思え”だ。俺も小さい頃から何度も爺やに言われた。絶対に気を抜くんじゃ無いぞ。」
女は狼って、前世とこの世界では常識が違うらしい。
ペッパー警部は男を守ってくれるのか?
「ありがとう、気を付ける。昼食には付き合ってくれ、一人はちょっと怖い。」
マジで怖くなって来た。
「「「おう。」」」
「拙い、もう待ち構えているぞ。」
昼休み、食堂に行こうとしたらイエローに止められた。
入り口の外を見ると数人の女学生が見える。
出待ちかよ。
「アルトと俺で道を切り開く、キラは俺達のすぐ後ろを付いて来い。ジュリアは殿で後ろのガードだ。走るのは校則違反だから速足で行くぞ。」
「「「おう。」」」
アルトとイエローが扉から飛び出し、俺、ジュリアの順で廊下を急ぐ。
女学生が何か言っていたが、聞こえない聞こえない。
競歩の様にしっかりと腕を振って速足で廊下を進む。
教室前で待っていた女学生は振り切れた。
アルト・イエロー・ジュリアの3人にガードされたまま食堂に向かう。
しかし、一難去ってまた一難。
食堂の前では数人の女学生が俺を見ている。
前門の狼、後門の狼。
学院は狼の巣か。
3人にいつも護衛して貰う訳には行かない。
禁書庫に行って以前見つけた隠蔽魔法関連の本を読み漁った。
”魔力を体内に抑え込んで気配を絶てば、見つかり難い“
扉の所からずっと俺を見てるから最初から見つかってる、ダメじゃん。
“変化により髪の色と目の色を変える”
女学生が見ている前で変えるのか?
ダメじゃん。
「まあ当分の間は俺達が護衛するから。」
「脈が無いと判ればすぐに次の獲物を探しに行くさ。」
「無駄な努力はしないのが女学生だからな。」
ジュリア達の女性観って大丈夫か?
イエローの言う通り1週間で出待ちは無くなった。
森の奥を歩くよりも怖い1週間だった。
錬金学Ⅱでは魔鉄の制作をしている。
魔鉄は魔鉄鉱山で採掘されるが、錬金学Ⅱでは教室で魔鉄を作る。
鉄鉱石から不純物を取り除き、純度の高い鋼を作って魔力を注ぐ。
魔鉄を作るには膨大な魔力が必要なので、教室で作るのは指先程の小さな魔鉄。
1定の魔力を長時間注がなければならないので小さくても難しいらしい。
錬金学Ⅱの研究室では鉄以外の金属に魔力を注いで新しい性質を持つ新素材の開発を目指している。魔鉄の作成はその前段階。
新しい素材という言葉だけでテンションが上がる。
実験中にふと思い出したのは王都の露店で買った“恐ろしい程重い謎の石”。
何となく魔鉄に似ているのだが、比重も硬さも全く違う。
教授に見て貰おうと思ったが、重すぎるので下手に出せばアイテムボックスがバレる。
放課後、人気のない学院の隅に行って謎の石を出した。
以前岩山に行った時、気弾で撃ってみたが割れるどころか傷すら付かなかった。
それ以来アイテムボックスに入れっぱなしで忘れていたが、今日はレーザービームを使ってみようと思った。
練習を重ねているのでレーザービームの威力も上がっている。
角の尖った所の根元を狙って30㎝程の距離から細く絞ったレーザービームを当てる。
バチバチバチ!
物凄い火花が飛び散って慌てて飛び退いた。
謎石を見るとちょっとだけ凹んでいる。
良く見るとレーザービームの高温で少しだけ溶けたらしい。
少し溶けたと言う事は長い間当てれば切れる?
火花が熱かったので今度は60㎝程離れてレーザービームを当てる。
離れたせいで威力が落ち、火花はさほどでも無いが溶ける速度がめっちゃ遅い。
3㎝程の小さな欠片を切り取るだけで2時間も掛かった。
錬金学Ⅱの時間に教授の所に行って謎石の欠片を見て貰った。
「王都の露店で手に入れた素材なのですが、凄く重いのです。これは何なのでしょうか?」
謎石を教授に手渡すと、その重さに教授も落としそうになる。
「ちょっと待て。」
教授が机から宝石鑑定師が使うような瞼に嵌めるルーペを持って来て謎石を調べてくれた。
「これは竜魔鋼だな。」
「竜魔鋼?」
「魔鉄鉱山で稀に見つかる素材だ。周囲を調べると大抵は竜の化石が見つかる。死んだ竜の魔力が長い年月を掛けて魔鉄に染み込んだ物と言われている。重くて堅い希少素材だ。」
「竜の魔力ですか。」
「そうだ。どこで手に入れた?」
「王都の露天商です。」
「そうか。希少な素材だ、大事にしろ。」
「加工法とかはあるのですか?」
「端が溶けているが、竜魔鋼は溶融温度が高くて錬金窯でも溶けない。鍛冶師でも加工は出来ないと言われている。そうだ、亡くなった大賢者様が王家の所蔵する竜魔石を魔法成形でナイフにしたと聞いたことがある。ただ、魔法成形の術式は公開されてないから難しいな。」
魔法成形で加工できるんだ。
良い事を教えて貰えた。
「そうですか。ありがとう御座いました。」
週末は禁書庫から寮では無く屋敷に帰る。
帰ると直ぐに執務室に入り、シバスチャンが整理した書類に目を通す。
俺のサインが必要な書類は殆ど無いのに目を通さないと怒られる。
お茶会や晩餐会には出ない。
俺は冒険者であって貴族では無い。
最近始めたのは錬金と魔法成形による鎌や鍬作り。
武器強化を付ければ切れ味も上がるし壊れ難い。
竜魔鋼を魔法成形で加工しようと切り取った欠片相手に頑張ったが、今の練度では全く形が変わらなかったので練度を上げるついでの農具作り。
魔法成形と付与魔法の練度上げには数をこなすのが一番なので厨房で使うナイフや包丁も俺が作って付与魔法を付ける。
材質が悪いと付与出来ないので錬金の段階から俺の手作り。
大抵は純度の高い鉄に魔力を帯びさせた魔鉄。
最初は王都の武器屋で貰った魔鉄を使っていたが、流石に足りなくなって今は錬金で自作している。
使用人が怪我をした時の備えも大切。
新鮮な薬草で作るとポーションの効果が上がるので錬金場の横に薬草園を作った。
週末の1日は屋敷で錬金や魔法成形、付与魔法の練習。
もう1日は森の奥で素材採取と魔獣狩り。
飛行魔法を使えば森の奥でも2時間で行けるのでわざわざ野営するメリットは無い。
屋敷でのんびりと料理長の美味しい料理に舌鼓を打つのは至福の時間。
ちなみに陛下から王都内での飛行許可を貰っている、というよりも積極的に飛べと言われた。王都にSランク冒険者が住んでいると言う事をアピールしたいらしい。
王都の住民に判るよう、胸に大きくSの字を描いた服を着ろと言われたがさすがに却下。
鳥だ。飛行機だ。いや、Sランク冒険者だ。って、どこのヒーローだよ。
着替える電話ボックスも無いぞ。
目立つのは嫌だが歩くのは面倒なので森に行く時には飛んでいる。
森に出掛けた日は料理長に獲物を渡す。
厨房の料理人達も最近は解体に慣れて来たので大型の魔獣でも解体してくれる。
茸や果実も厨房が喜んでくれるから出来るだけ採取するようにしている。
家族のいない俺にとって使用人達は家族同様。
1週間のうち5日は寮生活なので、屋敷に居る時くらいは使用人達を喜ばせてあげたいと思った。
今年は選択科目で魔道具作成Ⅰを取った。
小さな変更でも良いから1年間で1つ今までに無い魔道具を完成させると言う科目。
俺が目指しているのは通信の魔道具。
禁書庫の本に構造が載っていて、基本的には2つの魔道具を亜空間で繋げるらしいが難しくてうまくいかなかった。
教授に教えて貰いながらなら何とかなるのではと思って魔道具作成Ⅰを選択した。
教授は通信の魔道具は大賢者様にしか作れなかったが、キラなら作れるかもしれないから全面的に協力すると言ってくれた。
今年は無理でも来年は魔導具作成Ⅱで続きをやればいいとも言ってくれた。
国語を飛び級したので空いている時間に帝国語を選択した。
この大陸にある国ではミュール王国の次に大きい国が帝国。
正式名は長くてややこしいので誰もが帝国と呼んでいる。
いずれ帝国にも行ってみたいと思って選択したが、前世では英語が苦手だったことを忘れていた。
しまったと思ったが、ミュール語も前世の日本語から思えば外国語。
0歳の時にミュール語を殆ど理解出来るようになったのだから何とかなるか、と気楽に考えたらめっちゃ簡単だった。
単語も文法も全く違うのにすらすらと理解出来る。
ひょっとしたらファンタジー小説定番の言語理解のスキルがあるのかもと本気で思うほどだった。
久しぶりにお星様を戴けました。
本当にありがとうございます、ポイントが増えるのは素直に嬉しいです。
もう暫く隔日投稿を頑張ります。
継続して読んで下さっている皆様、ありがとうございます。
これからも宜しくお願いします。




