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22 ハリーったら不器用なんだから

現状説明が終わると立食形式での情報交換会になった。

西部地域に領地を持つ複数の高位貴族が顔を合わせるのはこれまでは王都だけだった。

ミュール王国を離脱した今は、広い西部地域で高位貴族同士が顔を合わせる機会が少ない。

この機会に顔つなぎや近況報告などをする為に情報交換会が開かれた。

俺は情報担当なので出席させられたが、姉弟でこの会に出席しているのは、伯爵以上の高位貴族である上の姉さん達だけ。

盟主であるキラ姉は勿論だが、今回の戦役で活躍したリヌ姉、ドナ姉、リラ姉も貴族に囲まれている。

俺? 

隠蔽で気配を薄めて部屋の隅に隠れてる。

話をするのは苦手だけど、今後の偵察に有用な情報があるかもしれないので、何を話しているかは聞いておきたかったから。

遠聴が使えるので、離れていても声は聞こえる。



ルナ姉の所に集まっている貴族達は、王家の今後の対応について話をしている。

まだ魔獣が少ない東南部の貴族達を王家が纏められるかどうかが問題らしいが、どうなるかは全く予想が付かないらしく、意見が分かれている。

3人の姉達の所は戦役で使った魔法について。

姉さん達は“魔法使いの秘伝“で誤魔化していたけど、戦いの応援部隊として参加していた貴族達が姉さん達の強さを力説している。

おっさん達は砦の上から見ていただけなのに、あたかも自分が魔法を撃ったかのように身振り手振りも交えて説明していた。

戦場が離れた5か所の砦だったので、一部の情報は入ったものの他の場所での情報が不足していたらしい。

お互いに見た事を話して、情報のすり合わせをしたかったらしい。

情報が不足している状態でも姉さん達の実力は認識したらしく、顔を合わせたこの機会に名前と顔を売り込んでおきたいというのが本音のようだ。

間違っても姉さん達と領地争いはしたくないらしい。

まあ正しい選択だと思う。



「本日はお忙しい中お集まり頂き、感謝します。 これからも周辺国や王家との間で色々な事が起ると予想されますが、西部貴族連合として一致団結して立ち向かって行く所存です。 新しい情報が入り次第皆様にもお届けします。それまでは寄り子の皆様と力を合わせて領地の整備発展に努めて下さい。」

魔王の挨拶でお開きになった。

ここからは“ヘイ、タクシー”のお仕事。

西部貴族連合の幹部にも長距離転移は秘密なので、背負って飛行魔法。

めんどくさい。



家族会議が開かれた。

例によってアシュリー公爵の状況説明で始まった。

情報源はお祖父さん達あ使っている諜報部隊の報告と俺の偵察報告。

「帝国の侵攻から1年経ったが、状況は一進一退だ。 帝国軍とミトン派及び北東部貴族の連合軍は、食料確保の為に魔獣討伐を行いながらゆっくりとだが着実にクーラーに迫っている。 ただ、魔獣戦での消耗や占領した街に守備兵を残した為に兵力は当初の48万から15万へと大きく減っている。 魔獣は連合軍の東側を回り込むような形でコータツとクーラーに迫っている。 北東部の村や町はほぼ壊滅した。 ヒート侯爵領にある国境砦や領都、ストーブ侯爵の領都などの大きな街は無事だが、魔獣に囲まれて孤立状態が続いている。 はぐれ魔獣の討伐で何とか食糧を確保しているという状況で防衛するのが精一杯という状況だ。」

「魔獣がミュール川を越えてくる可能性はどうだ?」

アシュリー公爵の説明にドラン侯爵が口を挟んだ。

「ハリーどう思う?」

公爵が俺の意見を聞いて来た。

「え~と、飛行型の大型魔獣は黒い森に留まっているので、ミュール川を越えて西部地域に来る事は今の所無いと思います。」

「そうか。」



「王は近衛師団4000と第1師団・第3師団の2万と共に、連合軍や魔獣が迫っているクーラーを出てアイスに移った。 役人達はクーラーに残したままなので正式な遷都なのかは今の所不明だ。 第2師団と第4師団はクーラー防衛の為に残した模様だが、各師団とも脱走者が相次いでいるようで、今現在どれ程の兵が残っているのかは判らぬ。」

アシュリー公爵が説明を続けた。

もともと国軍は腐っていたから、指揮官の隙を見て逃げ出す兵が頻繁に見受けられる。

北東部の街が魔獣に囲まれて孤立している、という情報は掴んでいる筈だから、囲まれる前に脱出しようと考えた者が多いのだろう。

夜陰に紛れて100人程が纏まって脱出するのを上空から何度か見た。

魔獣に襲われない様に100人隊が部隊全員で逃げだしているようだ。



「兵站線確保の為に追加投入された帝国軍だが、東北部から投入された5万は魔獣の大群と遭遇してほぼ壊滅した。 生き残りはヒートやストーブに逃げ込んだものと思われる。 ミュール川の西にあるミトンから救援に向かった5万も、王都の手前で魔獣の群れに遭遇して半壊。 前方の隊の生き残り5000が王都に逃げ込み、後方にいた1万とミトンに駐留していた後詰の2万がミュール川の橋付近で魔獣と戦っている。 追加の兵力として帝都守護の精鋭部隊の半数をミトンに送り込む準備をしているという情報が入った。 どうやら帝国は東部攻略については第2王子パンプスを旗頭にした連合軍に任せ、ミトン侯爵領を大山脈南側の拠点として領土化するつもりらしい。」

「黒い森がある東部を諦めて、西部に狙いを付けると言う事?」

魔王が真剣な口調で公爵に質問する。

「橋を破壊していないので東部侵攻を諦めた訳では無さそうだが、追加の兵力は精鋭5万を含む10万。 国軍が殆どいない西部を狙っていると予想される。」

西部貴族連合で1番兵力の多い辺境伯軍でも領軍は2万5千。

死の森にいる魔獣への対応があるので、応援に出せるのはせいぜい5千。

西部貴族達に分配したウスラやポンチの捕虜はまだ訓練中で戦力としては計算出来ない。

10万の帝国軍か、う~ん。

ミトン周辺には俺達姉弟の領地が無いから、捕虜をどう配分するかが難しそう。



「帝国軍ってそんなにいたの?」

魔王が首を傾げる。

「大陸最北端なので国境は西側のウスラ公国、ミュール王国、東側にある神国の3か国だけだ。 ウスラ公国は先の戦いで惨敗したから侵攻の恐れは無い。 神国は平和主義なので警戒の必要が無い。 残るはこの国だけ。 総兵力は公称100万だがミュール国の総兵力100万に合わせて公表している数。 直属の皇国軍は実質40万と言われていた。この国に送り込んで来た軍勢は既に30万、兵站部隊の護衛で追加した10万を入れれば40万。 恐らく徴兵した農民兵がかなり含まれていると思われる。 そこに更に10万の兵を派遣するとなれば、いかに帝国と言えども兵力的にも財政的にも苦しいと思われる。 魔獣の氾濫によってミュール王国の短期制圧に失敗したので、長期戦に備えて領土の拡大に方針を変えた可能性もある。」

長槍を武器とする農民兵は、歩兵同士の戦いなら戦力になるが、動きの速い魔獣相手では分が悪い。

そう言えば、兵站を守って行軍していた帝国軍の中央部には長槍を持った兵が多かった。

大量の犠牲者を出して撤退せざるを得なかったのは農民兵が多かったせいらしい。



「という事は追加の10万をやっちゃえば、帝国の兵はいなくなる?」

魔王は過激だ。

「徴兵すればまだ集まるだろうが、精兵はほぼ壊滅残っているのは近衛師団位だな。 やるなら10万の兵が来て西部に侵攻を始めた時だ。 こちらが先にミトン侯爵領を攻めるのは今後の外交や東部貴族との関係を考えると色々と拙い。」

「ハリー、帝国に飛んで早く援軍を送る様に言って。」

シャリー母さんが突然俺に話を振った。

「無理。」

どうしてそんな事を気楽に言えるんだ?

俺が言えば帝国軍が動くと本気で思っているの?

「火魔法でお出迎えするって言えば急いで来るわよ。 拡声魔法を使えば聞いて貰えるわ。」

シャリー母さんは火魔法が撃ちたくてしょうがないらしい。

「だから無理なの。」

火魔法というこちらの手の内を晒すのはさすがに拙いだろ。

というか、シャリー母さんが火魔法を撃ち捲ったら帝国軍が一瞬で全滅するから捕虜に出来ない。

魔王が怒るに決まってる。

「全くハリーったら不器用なんだから。」

器用かどうかの問題じゃないと思う。

「今は様子見をした方が良い。 東部の動きも判らぬからな。」

ドラン侯爵がシャリー母さんを宥めてくれた。

シャリー母さんの実父だから仕方なく口を挟んだのだろう。

頭脳担当のお祖父さん達がいてくれて良かった。


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