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11 小さなお家を建てて貰った

今、真っ先にするべき事はイータに会いに行く事。

会議が終わるとすぐにイータの所に転移した。

「ただいま。」

「お帰りなさい。今日はお泊りよね。」

「勿論。」

1ヶ月もの間”チョンの間“ばかりだったので随分と拗ねられて、この1ヶ月はお泊り出来た1度しか膝枕をして貰えなかった。

「お義父さん、お義母さん、ただ今戻りました。」

イータの両親、エルフ自治国の国王陛下御夫妻も出迎えてくれた。

「ハリー、お帰り。長旅で疲れたであろう、ゆっくり休むが良いぞ。」

「ハリー、お帰り、お疲れ様でした。」

リビングでお茶を楽しみながらこの1ヶ月の旅の話やエルフ国の話をした。



「ところで、ハリーは暫くキラ殿の下でイータと共に魔法の研鑽をすると聞いておる。 そこで、イータと相談してキラ殿の隣に2人が住む家を用意した。 自由に使うが良い。」

初めて聞いたので驚いた。

「そうなの?」

イータを見る。

「そうよ。 私も頑張っているけど、奇跡山脈を越えるにはもっと力を付けないとダメだってお義父さんに言われたの。 お義父さんに魔法の訓練をして貰うんだから、どうせならお義父さんの薬屋に近い所にと思って、父上に小さなお家を建てて貰ったのよ。」

「そうなんだ。 お義父様、お手数をお掛けして済みません。」

「良い良い。 何か不足な物や手直しが必要な所があったなら遠慮なく申すが良いぞ。」

「ありがとう御座います。」



父さんへの挨拶がてら、早速家を見に行った。

え~と、・・これが”小さなお家“?

確かに父さんの”小さな薬屋“よりは小さいかもしれない。

少なくとも家を囲う塀の高さは父さんの”小さな薬屋“より低い。

「「お帰りなさいませ。」」

槍を持った、見るからに強そうな門番二人が俺達を迎えてくれた。

耳が尖っているのでエルフ、お義父様の家臣?

「世話になる。」

「旦那様のお帰り~!!」

門番の大きな声が響き渡る。

「旦那様のお帰り~!!」

家の奥からも声が聞こえた。

小さな林に遮られて門からは家が見えない。

小石を敷き詰めた道を進むと、”小さな家“が見えて来た。

“俯瞰“で眺めたらコの字型になった木造2階建て。

めっちゃ立派な”小さな家“だった。

玄関前に20人程が並んでいる。

これって全部使用人?

「紹介するわね。執事のタバスと侍女長のセーラ、侍従長のカリムに料理長のメッシよ。そして厩舎長のホースと庭師長のツリー。」

「「「「宜しくお願い致します。」」」」

「・・うん、世話になる。」

子爵になって5年、貴族口調も少しは出来るようになった。

「後ろに居るのは侍従と侍女とメイド。家の中の事をして貰いますので、顔を覚えて下さいね。」

「えっと、厩舎長がいるという事は厩舎もあるの?」

「勿論よ。馬丁は2人しかいないけどね。小さいけど馬場もあるからポッターを連れてくると良いわ。」

屋敷の中に馬場があって上級使用人だけで20人もいる“小さな家“が俺の住居になった。



父さんの所に挨拶に行った。

「ただいま。」

「おう、お帰り。隣に住むんだって?」

「はい。お義父様が家を建ててくれたのでイータと一緒に住みます。」

「この1ヶ月、ちょろっと戻っただけだったろ。」

「あっ、はい。」

「ちゃんとイータとの時間を作らなくちゃダメだぞ。この先何十年も何かある度に、“新婚早々1ヶ月もほって置かれた”と言われるのは覚悟しておけ。」

父さんに説教された。

えっ、そうなの?

何かを思い出すような話し方だったので、父さんの実体験なのだろう。



「出来るだけ一緒に居る時間を作るよ。でもルナ姉から帝国国境の地図作りを頼まれているんだよね。」

「帝国国境か、ちょっと遠いな。転移場所のイメージがしっかり出来れば“転移”で戻れるかも知れないが、山の中では無理か。」

「どこも同じような景色だからね。」

「・・・、そうだイータの魔力は王都からでも感じられたか?」

「勿論。」

「だったら毎日家から国境に通勤する事も出来るぞ。」

「えっ、そうなの?」

「人間の血液や体液には魔力が含まれている。ハリーの作ったショーツにイータの体液を染み込ませれば、2人分の魔力を感じられる筈だ。そんな物は他に無いから場所を特定し易い。」

「でもショーツが魔獣に食べられたりして無くなったら?」

「木の幹に穴を空けて中に隠して置けば良い。」

木は魔力を阻害しないから見えていなくても問題無い。

「そうか。地図作りを中断する場所の木をくり抜いてショーツを入れて置けば、ショーツに染み込んだ俺の魔力とイータの魔力が転移の目印になるっていうことだね。」

「理解できたか?」

「うん。イータ、今履いているショーツを脱いで。」

「ハリーったらまだお昼よ。それにお義父さんの前よ。でもいいか、2人は夫婦だものね。」

イータが人の話を聞かない事を忘れていた。

「そうじゃなくて、イータの染みが付いたショーツが欲しいの。」

「被るの?」

「被らない。」

なんでショーツを被らなくちゃいけないんだ?

「臭いを嗅ぎたいの?」

「嗅がない。イータの魔力の感知をするの。」

「つまんないの。折角上げるんだから臭いくらい嗅ぎなさいよ。」

いやいや、イータの匂いは好きだけど、ショーツの臭いを嗅ぐ趣味は無いから。

「上手く出来たら毎晩帰って来れるかも知れないよ。」

「そうなの?」

「上手く出来たらだよ。試してみるから待っててね。」

「うん。行ってらっしゃい。」

イータが笑顔で送り出してくれた。

父さんが生温かい目で見ていたが気にしない。

イータの使用済みショーツを持って王都屋敷に転移した。



王都邸を引き払う時、結界の魔道具を設置して人が入れない様にしておいたので、王都屋敷に転移しても人に見られる事は無い。

王都に転移拠点を残しておいた方が良い、というレイナ母さんの判断が功を奏した。

俺が作った結界の魔道具なので、俺も父さんも結界を抜けて転移出来る。

隠蔽を掛けたまま屋敷を出て黒い森に転移した。

太い木の幹に穴を空け、中にショーツを入れる。

穴の表面に隠蔽を掛けて父さんの家に転移で戻った。



「戻ったか。どうだ、ここから場所の特定が出来るか?」

「うん、ちょっと待って。」

いつものようにショーツの魔力と部屋に書かれた番号でイメージするのとは違うのでちょっと戸惑ったけど、木の幹と俺とイータの魔力をイメージするとはっきりと場所を特定出来た。

「うん、出来る。ちょっと試してみる。」

ショーツを入れた木の根元に転移出来た。

イータの魔力が染み付いた使用済みショーツがあれば遠距離でも転移出来る事が判った。

これぞ“愛の共同作業”。

木の幹からショーツを取り出して父さんの家に戻った。

「出来た。これで毎晩家に帰れる。父さんありがとう。」

「おう。」


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