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8 マイクロビキニよりも恥ずかしい

夜の闇の中を明日の野営予定地である伯爵領の領都に飛んだ。

街は寝静まって殆ど灯りが見えないが、流石に領主邸はあちこちに篝火が焚かれている。

盗賊として出陣した領兵達の帰還を待っているのかも知れない。

誰一人として2度と帰っては来ないけど。

隠蔽を強化して領主邸に近づく。

結界は無い。

とりあえず、“素材探知”で貴金属を探した。

あちこちに反応があるが、2階奥にひと際大きな反応があった。

他は少量なので無視して良さそう。



2階奥の部屋を詳しく調べた。

どうやら隠し部屋のようで窓が無かった。

手前の部屋の窓の隙間から細くした魔力を送り込み、隠し部屋との壁際に並んだ本棚裏に魔力を送りこむ。

隠し部屋でのドアを見つけ、ドアの隙間から奥の部屋に俯瞰を届けた。

父さんが国王に喚問された時に使った実況中継の手法。

俯瞰で奥の部屋を見る。

真っ暗だが暗視が使えるので問題無く見える。

俯瞰を動かしながら、部屋の中を詳しく見る。

かなりの広さの部屋に沢山の棚がズラ~っと並んでいる。

棚には沢山の箱がぎっしりと詰め込まれていた。

室内を確認するが、誰も居ない。

見える所であれば短距離転移が使える。

俯瞰で見ながら、部屋の中に転移した。

箱がぎっしり詰まった棚を手当たり次第に棚ごと拾って収納する。

大きな金庫が3つ落ちていたのでこれも拾って金庫ごと収納する。

ほんの10分程で部屋が空っぽになった。

隠し部屋から屋敷の屋根の上に転移。

レイナ母さんの第1ミッション、お宝拾いをクリアした。



休憩しながら首や腕の関節を動かす。

緊張の中で作業していると、気付かぬうちに体が硬くなる。

硬くなった筋肉や関節を解して置かないと思わぬ失敗の原因になりかねない。

父さんに教わった潜入の心得。

“忍び込んだ先で糞をすれば落ち着く”と書かれた”忍びの心得“という古文書もあったが、俺は色が白いから、闇夜に白い尻を出したら目立つ。

何よりも、尻丸出しの時に騒がれたら恥ずかしすぎる。

俺は姉さん達とは違って、人前で尻を見せる趣味は無い。



今度は人間の探知。

当主である伯爵を探す。

貴族家の屋敷は殆どが同じような部屋割りがされている。

当主の部屋は大抵が執務室の隣か家族棟の一番奥。

探知には隠し部屋の2つ隣の部屋の中に1人、すぐ外の廊下に2人の反応が有る。

高位貴族の当主を探すには護衛が廊下に居る部屋を探せば簡単。

部屋の中に俯瞰を送り込む。

レイナ母さんに教えて貰った歳恰好の男が豪華なベッドに寝ていた。

この男を生かして置いたら、領兵を再編成してまた盗賊にする。

罪の無い貴族や商人達をこれ以上殺させる訳にはいかない。

証拠を残せないので、俺が特定されるような特別な事は出来ない。。

収納から極ありふれた毒の丸薬を取り出した。

以前、盗賊のアジトで拾ったお宝の中にあった毒の丸薬。

掌に載せた丸薬をベッドで寝ている男の腹の中に転送した。

父さんに教えて貰った転送は結構便利に使える。



最後の仕上げ。

母さんは屋敷を燃やしても良いと言っていたが、俺は水属性なので火魔法は生活魔法程度しか使えない。

テン姉なら火の上級魔法で石造りの伯爵館でも簡単に燃やせるが、俺の力ではそう簡単には火が付かない。

石造りと言っても、床や天井、家具などは木で作られている。

建物1階で人の居ない燃えやすそうな部屋を探した。

倉庫らしい机や家具の置いてある部屋を見つけた。

人の居ない部屋に俯瞰を送り込み、部屋の中を視認して転移する。

収納から油の樽を出して床に撒いた。



ふと上を見上げると、天井も木で出来ている。

飛行魔法で浮いて天井板を剥がし、天井裏に侵入する。

狭い天井裏を飛行魔法で飛びながら天井裏全体に油を撒いて行く。

ヤバい。

油の匂いがきつい。

使用人達が匂いに気が付いて騒ぎ出す前に脱出しなければ見つかってしまう。

取りあえず生活魔法で火を付けた紙を天井裏の油に落とした。

油に火が点くのを確認していたら、ボワッと言う音がして、天井裏が一気に燃え上った。

やばい、やばい。

俺のズボンに火が付いた。

「あちちちち。」

燃え上がったズボンを脱ぎながら家具の置いてあった倉庫に転移で戻る。

火の点いたズボンを脱ぎ捨てたら、倉庫の床に撒かれた油に火が点いて倉庫が一気に燃え上がる。

あっと言う間に部屋が火に包まれた。

「あち、あちち。」

慌てて屋根の上に転移した。

何とか無事に脱出出来た。

「はぁ~っ。」

ほっと、一息吐く。

上着は無事だったけど、ズボンを脱ぎ捨てた時に下着も一緒に脱げたようで、下半身はスッポンポン。

靴もあちこちが焦げている。

姉さん達のマイクロビキニよりも恥ずかしい姿になってしまった。

いや、この格好でモッコリのマイクロビキニを履いていたらそっちの方が恥ずかしいか。

つい、うっかりは俺の欠点。

学院で何度もやらかしたけど、今回も危うい所だった。

反省。

何回目かも判らない反省を今日もする。

きっとこれからも何度となく反省をするのだろう。

はぁ。

収納から替えの下着とズボンを出して履く。

靴も履き替えた。

領主館が燃え上がったのを確認して姉さん達の所に転移した。



「ただいま。」

「お帰り。ちゃんと拾えた?」

「はい。代わりに毒の丸薬と火の付いた油を置いて来た。でも領主館は石造りだったから全部は燃えないかも。」

「あら、ズボンを履き替えたの?」

「まあ、はい。」

「伯爵館には可愛いメイドさんでもいたのかな?」

「そうなの? ハリーにはイータっていう可愛い奥様が居るのにねえ。」

「ひょっとして下着も履き替えてたりしてぇ。」

屋根の上でフルチンになっていたとは言えない。

「ソ、ソンナコトナイヨ。」

俺を見つめる姉さん達から目を逸らした。

「まあ、色々とご苦労様。明日は“お泊りで”イータの所に行きなさい。」

「はい。」

今日はイータの所に行けなかったので有難い。

“チョンの間“でも、行ければイータの機嫌がましになる。

行かないと機嫌がめっちゃ悪くなる。

お仕事かどうかは関係無い。

イータは俺に会いたい一心なだけ。

明日は久しぶりのお泊り。

早くイータの喜ぶ顔を見たいと思いながら眠りに就いた。


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