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5 見たというよりも見せただろうが

3日目の夕方、漸く隣街に着いた。

街壁の横で野営。

執事のシバスチャンが従者を連れて門番への挨拶に向かった。

本来は貴族家当主が立ち寄ったら、領主屋敷で晩餐会を催すのが礼儀。

ただ最近は貴族が続々と王都を出るので、近隣の街に寄るのは領主に迷惑が掛かる。

かと言って、大勢の護衛を引き連れた貴族家当主が、勝手に他領の領都周辺で野営する訳にはいかない。

それこそ領都への侵攻と捉えられかねない。

そんな訳で生まれた、領主が出迎える手間を省くための作法が使用人による門番への挨拶。

貴族家当主がいるとこうした礼儀が必要らしい。

王都から逃げ出した住民達でこの街は住民が過剰になっているらしく、馬車に付いて来た王都民達は街に入れて貰えなかった。

翌朝、キラ家の馬車列は大勢の王都民達を引き連れてゆっくりと次の街に向かった。



「えっと、盗賊さん?」

3㎞程先、街道が左にカーブして見通しが悪くなった先で倒された馬車数台が道を塞いでいるのを見つけた。

周囲を見ると、左側にある小さな森の後ろには30頭程の馬と盗賊らしい人間50人程、街道を挟んだミュール川の土手下にも50人程が身を伏せている。

道を塞がれて止まった行列を、左右から挟み撃ちにするつもりらしい。

「やった~!」

「盗賊さんいらっしゃ~い!」

「場所は?」

テン姉とレブン姉は単純に喜んでいるが、ナイ姉は冷静だ。

「3㎞先、左手の森の裏と右手の土手の下に50人ずつ。森裏には馬も30頭。」

「「「よっしゃ~!!!」」」

前言撤回。

真っ先に笑顔で馬車を飛び降りたのはナイ姉だった。



姉さん達が馬車を飛び降り、飛行魔法で前方へと飛んで行く。

俺も慌てて後を追った。

前を行く姉さん達のドレスの裾がパタパタとはためいて、シースルーのマイクロビキニがチラチラ見える。

ドレスのまま、ズボンやスパッツを履かずに飛行魔法って、それはちょっと拙いんじゃね?

姉さん達から視線を逸らす為に俺だけ高度を下げた。

「テンは盗賊、レブンは土手、私は馬よ。」

攻撃は姉さん達のお仕事。

俺は収納とお馬さんの配送がお仕事。

「「はい!」」

レブン姉が土手の方向に、俺達3人が森裏の盗賊達の所へと飛行コースを変えた。



「空だ、空を飛んで来たぞ!」

俺達を発見した盗賊達が空に向かって槍を構える。

ナイ姉とテン姉が森裏の盗賊達の真上でホバリングしながら足を開いた。

「はぁあ~?」

何で足を開くんだ?

盗賊達は上を見上げたまま動きを止め、口をポカンと開けている。

ひょっとして姉さん達のドレスの中には敵を威嚇する魔道具があるのか?

「見~た~な~!」

ナイ姉が低いおどろおどろしい声を出した。

ええっ、こんな所で拡声魔法を使うの?

意味が判らない。

いや、真下から見上げれば見えちゃうって。

見たというよりも見せただろうが。

ナイ姉とテン姉が盗賊達に殺気を放つ。

盗賊達の動きが止まり、馬達が暴れ始めた。



「睡眠!」

「安定!」

久しぶりに姉さん達の魔法を見た。

学院で魔法関係ばかりを選択していただけあって魔力制御が凄く上手くなっているし、睡眠の練度もめっちゃ上がっている。

1発で盗賊達が全員眠りに就いた。

ナイ姉が馬に使った安定は俺の知らない魔法。

姉さん達の殺気を浴びて怯えていた馬達が一瞬で落ち着いた。

うん、凄い。

後で教えて貰おう。



レブン姉に目を向けると土手下の盗賊達も全員が眠っている。

離れた所に居た見張りらしい男も倒れている。

姉さん達の探知範囲を考えれば、離れた所もすぐ近くなんだよな。

週末はいつも3人で黒い森に入っていたせいか、連携もバッチリ。

俺も週末はイータと訓練してるけど、姉さん達とでは随分と練度に差がある事を思い知らされた。

うん、凄い。

流石は姉さん達だ。

感心していたら、姉さん達が上空から降りて来た。

立った姿勢のまま降りて来たから、ドレスのスカートが捲れ上がってお臍迄丸出し。

マイクロビキニの布はめっちゃ薄いから・・・。

うん、見なかった事にしよう。



「ハリーは馬を運んで。」

「はい。」

木に結ばれている手綱を解いて、4頭ずつキラの厩舎に“転移”で飛ぶ。

すぐに厩務員が駆け寄って来た。

「合計30頭位いる。世話を頼む。」

厩務員に声を掛けて姉さん達の所に“転移”で戻る。

ナイ姉が頭らしい男の足に剣を突き立てていた。

「どうしたの?」

「剣で刺したら起きるかなぁ、って思って刺してみたら簡単に起きてくれたわ。」

覚醒魔法を使うのが面倒だったらしい。

聞かなかった事にして、俺は次の馬を運ぶことにした。



「ハリ~。」

何度か馬を運んだらナイ姉に声を掛けられた。

「何?」

ナイ姉を見ると、少し離れた所で3人の男達が、剣が刺さったままの足では無く、赤く染まった股間を抑えて呻き声を上げている。

どうやら剣を刺されて目を覚ました男達はナイ姉と“お話“をしたらしい。

すぐに”お話“しなかった盗賊がうめき声を上げている男達なのだろう。

うん、見なかった事にしよう。

姉さん達と“お話“する時は、すぐに正直に答えないと、危険が危ないよ。

「アジトはあの山の麓にある洞窟よ。左に突き出た尖った岩が目印だって。テンと一緒に襲って来て。」

「え~っ、まだ馬が残ってるよ。」

「結構貯め込んでいるみたいだし、馬や馬車もあるらしいの。宜しくね。」

どうやら俺の大きなアイテムボックスでないと収納出来ないらしい。

「はい。」


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