後編
後編
優奈は画鋲付きの椅子に座らされ、足も腰も腕もガムテープで椅子に固定され動く事が出来なかった。さらに口も目もガムテープで塞がれ、見ることも声を出すことも出来ない状態にされていた。
・・・ううっ、どうして誰も助けてくれないの? ・・・
優奈は自分がどうしてこんな目にあうのか考えるが何も思い当たる事はなかった。昨日までは極普通の毎日だった。それが突然、優奈の周囲の人間が全て豹変したように、優奈を敵視し虐めてくる。優奈はわけが分からず尻に刺さる画鋲の痛みに耐えていた。その時、1時限目のホームルームの開始を知らせるチャイムが鳴った。優奈はホッとした。先生が来ればきっと助けてくれる。そう思いながら優奈が心待ちにしていると、ガラッと教室のドアが開く音がして教師が入ってくる気配があった。優奈はこれで解放されると思ったが、何時になってもそれは訪れなかった。それどころかホームルームの議題が何か不穏なものになっている。
「せっかくだから、色々拷問を実践してみようか 」
教師のよく通る声が教室に行き渡り、生徒たちの賛成という声が優奈の耳に飛び込む。そして、優奈は椅子毎持ち上げられ教壇の上に運ばれていった。
「よし、男子は用具室からコンクリートのブロックを運んできてくれ 女子は理科室からこれを頼む 」
何人かの生徒が教室を出ていく気配があり、その後何かを運んで戻ってきた気配があった。
「御苦労さま じゃあまず石抱きという拷問だ 」
教師の指示で優奈を拷問する準備が整えられていく。
「腕はそのままでいいから椅子から降ろして、この板の上に正座させるようにな 」
優奈は椅子から降ろされ画鋲の痛みからは解放されたが、ギザギザの洗濯板のような物の上に正座させられ悲鳴を上げた。
「ふごぅ、ふごぅ、ふごぅぅぅ 」
そして、正座している優奈の太ももの上にコンクリートのブロックが載せられる。1つ、2つ、3つ……。
「ふごぉぉぉぉぉぉ 」
優奈は絶叫したが、まだブロックは重ねられていく。
「ふごぉぉ、ふごぉぉぉーーー 」
天を仰ぎ激痛に苦しむ優奈の頭が押さえられ口を塞いでいるガムテープに穴が空けられた。そこに理科室から持ってきた漏斗が差し込まれる。そして、その漏斗に水が流し込まれた。優奈は無理矢理水を飲まされていく。1リットル。2リットル。優奈は頭を押さえ付けられて漏斗に水を注がれ続けていた。
・・・苦しいよぉ 助けてぇ ・・・
優奈は必死に助けを求めるが誰も優奈を助けようとする者は現れなかった。優奈の腹がパンパンに膨れていく。
「次の拷問は“焼き鏝“だ これも石抱きや水責めと並んでメジャーな拷問だな 尤も江戸時代にはこんな電気器具はなかったから火で熱してたけどな 」
優奈は再び画鋲付きの椅子に座らされ固定されていた。
「見える所だと不味いからなスカートを捲って太ももに捺してあげよう 」
目を塞がれている優奈には自分が何がされるのか分からなかったが、焦げ臭い臭いが漂ってきているのが恐怖を煽っていた。
「さあ、焼き印を捺してあげよう 」
その言葉と同時に優奈の太ももに耐え難い痛みが襲いかかる。
「ふんごぉぉぉぉぉぉぉぉ 」
・・・痛いぃぃぃぃ 助けてぇぇぇぇ ・・・
絶叫する優奈の太ももに真っ赤に焼けた半田鏝の先端が押し付けられていた。それも一度ではなく何度も何度も……。
ホームルームの時間が終わり優奈は椅子に固定されたまま机の前に戻されていた。その後の授業でも優奈は完全に無視され、そのまま放置された。休み時間になると優奈への虐めが開始される。頬は平手でバンバンと打たれ真っ赤に腫れ上がり、髪の毛も鋏でめちゃくちゃに切られざんばらな髪になっていた。そして、それはやってきた。水責めで水を大量に飲まされていた優奈は我慢の限界にきていた。
・・・お願い、おトイレに行かせて お願いぃぃ ・・・
優奈は自分の状態を伝えてトイレに行かせてもらおうとするが、授業中はまるで無視され、休憩中も虐められ続け誰も優奈の状態に気付く者はいなかった。昼休みの時間だった。また半田鏝が熱せられ太ももに焼き印を押され絶叫している時、優奈の股間から勢いよく尿が漏れだした。
・・・見ないでぇ ・・・
優奈本人は必死に止めようとするが、一度出てしまった尿は容易に止めることが出来ず、あとからあとから止めどなく溢れ続けていた。
「汚いっ!! こいつ漏らしてるよ 」
優奈の太ももに焼き印を捺していた女子が大声で叫ぶと教室に残っていた全員が集まってくる。そして、スカートを捲られ漏らしている姿をスマートフォンで動画撮影されてしまう。
「まだ、漏らしてるよ こいつ、いつまで漏らすんだ、汚ねえな 」
「床、びちゃびちゃじゃない どうすんの 」
「こいつに掃除させれば良いだろう ほら、ほどいてやるから早く掃除しろよ 」
優奈は拘束から解かれ、泣きながら掃除用具を取りに行こうとすると腕を捕まれる。
「何やってんだ 自分でしたんだから舐めろよ 」
優奈は無理矢理四つん這いにされ、床に広がる自分の尿に顔をつけ舐めさせられる。
「もう嫌だ 死んじゃいたい 」
自分の尿を舐めさせられ優奈は泣きながら呟く。
「おーい、こいつ死にたいってさ 」
優奈の呟きを聞いた男子の一人が大声を上げると、それなら準備してやろうと教室の窓の枠からロープが吊るされ輪が作られる。
「ほら、ここに首を入れて窓から飛び降りれば首吊りの完成だ 」
同級生たちは優奈の腕を縛り、ロープの輪に首を通し窓枠に立たせる。
「嫌だぁぁ、死にたくなんかないよ 嘘だよぉぉ 」
必死に抵抗しながら優奈は叫ぶが、後ろから押され窓から外に飛び出してしまう。
「うぐうぅぅ 」
優奈は4階の窓から外に吊るされ、首にロープが食い込み苦しさで暴れる度にさらに激しくロープが食い込んでくる。優奈は脚をバタつかせていたが、だんだんとその動きが小さくなっていった。そして、優奈が暴れた為に、少しずつ窓枠が破損していき、ついに折れてしまう。
バキィ!!
窓枠が壊れ、吊るされていた優奈は校庭に落下していった。
グシャアァァ!!
鈍い音が響き優奈の体はコンクリートの地面に叩きつけられ手足は変な方向に曲がり、首は折れ頭も潰れていた。見ただけで優奈はもう絶命しているのが分かる。4階の窓から下を覗いた同級生たちはがっかりしたように呟く。
「あーあ、もっと苛めて遊びたかったな 」
* * *
「ねえ、駅前のたこ焼き屋行こうよ 」
「やめた方がいいよ 」
セーラー服を着た中学生の女子二人が歩きながら話している。
「どうして? 幸せのたこ焼き屋さんらしいよ 」
「井川ヨーコが言ってた噂でしょ 」
「そうそう タコが3個入ってたら幸せになれるんだって 」
「そうだけどね もうひとつ噂あるの知ってる? 」
「ええっ、知らないけど 何? 」
そこで、セーラー服を着た少女の一人が立ち止まり真剣な顔で言う。
「呪いのたこ焼き…… 」
「何、それ? 」
「もし、タコが一つも入っていないたこ焼きがあったら呪われるという噂だよ 考えてみてよ 幸せになるばかりで、その逆がないなんておかしいでしょ ”all or nothing”だよ 」
「知らなかった でも、言われてみればそうだよね 」
「幸せを求めるのも大切だけど、不幸を回避するのも大事だよね 」
「うん、そうだね 噂って怖いね 一面しか見ないと取り返しのつかない事になりそうだよ 」
「惑わされないように自分をしっかり持っていないとね ところで駅前のハンバーガーに行かない、お腹空いたし 」
「あー、でも、駅前のハンバーガーは食べると太るって噂がある 」
「うわっ、それも怖いね 」
セーラー服姿の女子二人は楽しそうにケラケラと笑いながら歩いていた。
お読みくださり有難うございます。
もちろん、こんな“たこ焼き“はありませんので気にしないで下さい。
感想頂けると嬉しいので、よろしくお願い致します。
ありがとうございました。