二つの家族の話し合いは……
生まれた子を抱き、授乳した喜びは母にしか分からない喜びなのだと二人の母親は思いました。
熱が出た時、どんなに心配したのか……。
夜泣きで一人、夜の街を赤子を背負い歩いたこと……。
夫には分からないのだ!と二人の母親は思っています。
だから、何をどう決めるのだ!と二人の母親は思ったのです。
病院長は、二つの家庭が話し合って今後を決めて貰えればよい!と簡単に言いました。
重い空気が流れていました。
誰も何も話せないのです。
鈴木修がその空気を切るように話し始めました。
「僕たちは先日、血液検査を受け、今日、今、結果を聞きました。
聞いたばかりです。
話し合いが出来るような状態ではありません。
頭の中は真っ白です。
妻も同じだと思います。」
「そうです。主人の言う通りです。」
「私どもは話し合うことが出来るほどの……
全く余裕がありません。
話し合う必要があることは理解しています。
ですが、今日、この場で話し合えません。
妻と…… 先ず妻と話し合わねばなりません。
ですので、今日はこのまま帰宅させていただきたいのです。」
「明美、うちも同じでいいか?」
「勿論!」
「鈴木さん、うちも同意見です。
今日はこのまま……
先ず、妻と話し合って……
その結果を話し合うのは如何でしょうか?」
「僕もそうして頂きたいです。」
「では、双方のご家庭で先ずは話し合われて頂きますよう
よろしくお願いいたします。
のちに話し合いの場を持たれる時は仰ってください。
当院の部屋を用意させていただきます。」
「分かりました。」
「分かりました。」
二つの家族の気持ちが一致したので、今日はこのまま帰宅しました。