血液型の検査
血液型の検査を受けることを息子にどのように話せばよいのか分からなかったのですが、話さないと検査を受けられません。
夫婦揃って二人で幸一に話しました。
「幸一、あのな………
もう一度、検査をしないといけないそうなんだ。」
「検査?」
「うん。……前に注射で血を取っただろ。
もう一度、血を取らないといけないそうなんだ。」
「えっ? 注射?!
嫌だ―――っ! 痛いから嫌!!」
「幸一、頼む。受けてくれ。
今度はお父さんもお母さんも一緒に受けるから……。」
「……お父さんも注射するの?」
「うん。する。」
「お母さんも?」
「勿論、お母さんもする!」
「一緒だから……。」
「注射の時、抱っこしてくれる?」
「もう、小学一年生なのに?」
「お母さんじゃない! お父さん、抱っこしてくれる?」
「いいよ。抱っこする。検査、お父さんと一緒に受けような。」
「うん!」
一度、血液検査をしているので、息子は嫌がりましたが、何とか受けさせることが出来そうです。
雄介は浮気で出来た子と見ていた時には、幸一に対しても嫉妬を覚えていたのです。
幸一の姿…それは雄介が勝手に思い込んだ浮気相手の姿に重なったうえでの嫉妬でした。
それが、妻の浮気で出来た子ではないと分かって、生まれた時にあれほど可愛いと思ったことを思い出しても苦しくなくなったのです。
寧ろ可愛いと思った日々が大切な日々だったと思うようになっていました。
妻の愛を失ったと思い込んでいた時の喪失感が、妻と息子に攻撃性を持ってしまったのかもしれません。
その自覚が次の苦しみを産んだのですが、それは周囲の人に向けるものではないことも雄介は学んだように思っています。
「明美、血液検査の後のこと
もし、取り違いが決定だと分かった後
難しいことになると思う。
嫌なこと一杯言った俺だけれど
出来れば許して欲しい。
一緒に二人で考えないと難しすぎる。
そう思うから……。」
「一人じゃ抱えきれないわね。」
「うん。そう……。」
「もう、離婚って言わないでね。」
「勿論、言わない。」
「幸一のことがスッキリするまでは……
離婚しないよね。」
「……スッキリした後も、離婚話はない。」
「分かったわ。」
「とにかく、血液検査でハッキリする。」
「そうね。先ずは血液検査よね。」
明美は取り違いかもしれないと知らされただけで、急に離婚を取り下げた雄介に対して「いい加減で信頼は出来無い。」と思いました。
しかし、離婚を回避出来た今は経済的に安心で、取り敢えずこのままが良いとも思ったのです。
血液検査が終わって、ハッキリしても……その後が大変不安な二人でした。