向き合うこと
辰井病院の病院長の説明を聞いて自宅に帰るまで、そして帰ってからも夫婦に会話はありませんでした。
何が起こったのか……まだ理解できていなかったのです。
小学校から帰って来た息子の声を聞くまで、ただ茫然と時を過ごしていたのです。
「ただいまぁ~。」
「あ……お帰り……。」
「お…お帰り。」
「あれっ? お父さん居る。」
「あ……ちょっと……な。」
「ふ~~ん。 いってきまぁ~す!」
「幸一!」
「何?お父さん。」
「早く、帰って来いよ。」
「うん!」
いつものようにランドセルは玄関に投げ置いて遊びに行った幸一。
父親が居ること、父親が声を掛けてくれたことを嬉しそうに走っていきました。
その後姿を見つめて雄介は幸一の後姿に言いました。
「幸一、すまん。悪かった。」
夕食を済ませ子どもを寝かせてから、夫婦は話を始めました。
「明美、浮気を疑って……悪かった。」
「………どうするの。離婚するの?」
「いや! 離婚……しない。」
「あんなに離婚だっ!って言ってたのに?」
「悪かった。本当にすまん。」
「これから、どうしたらいいと思う?」
「先ずは血液検査だろう。
全てはそれから……考えよう……な。」
辰井病院での血液検査が終わって、本当の子どもが分かって……どうするのだ?と二人共に思いました。
何もかも嘘のような話で……
何も今は考えられなかったのです。