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親子という名の繋がり  作者: yukko
三好夫婦の場合
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夫に話す

それから、明美は娘を背負って買い物に行き、息子の帰宅を待ちました。

何のために病院から電話があったのか全く分かりません。

息子は小学一年生になったばかりです。

帰宅するのは早くて、毎日あっという間に過ぎてしまいます。

今日も、買い物に行って帰宅すると息子が帰って来ました。


「ただいまぁ~。」

「お帰り!」

「いってきまぁ~す!」

「あ……宿題は?」

「後でする!」


毎日、帰宅したら玄関でランドセルを投げるように置いて遊びに行く息子。

今日も元気に行ってしまいました。


夕方になると息子は帰ってきて、それから宿題をします。

夕食は夫が帰宅してからです。

三好家は夫の雄介の職場近くに住んでいるので、残業が無い限り帰宅は早いのです。

今日もいつも通りの6時半に帰宅しました。


「ただいま。」

「お帰り~」


声と同時に夫に抱っこしてもらいたがる息子。

その息子を少し嫌がるそぶりの夫。


「お父さん、手を洗うから……。」


抱っこしてもらえなくて寂しそうな息子。


「お帰りなさい。」と、声を掛けた妻を無視して、夫は妻の背に居る娘に話しかけます。

その顔は笑顔です。


「ただいま。愛子ぉ~。」


夫が笑顔を向けるのは、娘・愛子だけなのです。

息子が誰にも似ていないからです。

それに、小学校入学前の血液検査の結果で、三好夫婦の間では生まれない血液型で生まれて来たのが息子の幸一だからです。

夫は妻の浮気を疑い、息子はその結果で生まれたと信じています。

どんなに「浮気などしていない。」と妻が訴えても信じません。

身に覚えが無いことなのに……理不尽だと妻は思うのです。

愛子のことも浮気相手の子だと思っていたのですが、一応調べよう!と思った夫は、愛子の血液型を調べ、その結果、夫婦間で生まれる血液型でした。

夫は愛子だけ自分の子だと言うのです。

夫の血液型・B型、妻の血液型・O型、愛子の血液型・B型、そして幸一の血液型はA型。


夕食後、夫は毎日「離婚しよう。」と離婚の話をします。

今日も……きっと……


「いつまで、こんな嘘の生活をするつもりなんだ?

 お前は俺を裏切ったのに、いつまで俺の稼ぎで暮らすんだ!

 早く、離婚して出て行け。

 幸一は俺の子じゃないから、お前が連れて出ろ。

 愛子は俺の子だから置いていけ!」

「あなた、何度も言ってるけど離婚したくない。

 私は幸一とも愛子とも離れない。」

「俺は俺の子だけ育てたい。俺の子じゃない幸一を育てたくない。

 それだけだ。お前の浮気相手との子をどうして俺が育てないといけない!」

「……あなた、離婚の話は止めて!

 それよりも、聞いて欲しいの。」

「離婚の話以外、必要あるか? 無いじゃないかっ!」

「あなた、お願い! 聞いて!!

 今日、病院から電話があったの。」

「それが、どうした!」

「急に電話があったのよ。

 私が幸一と愛子を産んだ病院から……。」

「だから、それは俺に関係ない!」

「来てください!って…… 夫婦で……。」

「どうして俺が行かないといけないんだよ。

 俺は関係ない。お前がひとりで行け!」

「御夫婦で!って……」

「俺は関係ない!」

「愛子のことだったら?」

「愛子のこと?」

「そう…… 愛子のことでも私一人で行くの?」

「愛子のことなら……俺も行かないと……。」

「日にちは、いつにする?」

「急ぎなら……明々後日(しあさって)休むようにする。」

「分かったわ。休めるって分かったら、電話頂戴ね。

 明日、病院へ連絡したいから……。」


雄介は「どうして病院から?」と呟きながら、愛子の寝顔を見ました。

幸一の寝顔を見れないのです。

幸一が待望の我が子だと思っていた日は幸せだったと思う雄介でした。

DNAによる親子鑑定がなかった時代の唯一の鑑定方法が血液型でした。

生まれてこない血液型によって、親子ではないことの証になったのです。

この方法では、実際には親子でなくても親子として認定されていたケースも多々あったと思います。

そして、何よりも…

この方法では「妻の不貞」が疑われる可能性があったのです。

それは、「産む性」の悲しい現実でした。

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