35.アンデットの支配者
マーガス丘陵に着いたルクスの眼前には、一度目に見た時とは比じゃない数のアンデットが溢れかえっていた。
マーガス要塞はアンデットによって崩壊し、要塞を超えてカエダム国の内側までアンデットが闊歩している。
その中には、アシヌスたちらしきアンデットの姿も確認できる。
ルクスは見晴らしの良い高所へ移動し、周囲に生存者がいないか確認する。
(避難は完了してんのか。ありがとう。これなら本気でやれる)
最後の最後までアシヌスたちがマーガス要塞を護っていたことで、近隣住民は最も安全と思われる王都に避難が完了していた。
ルクスは目の周りに魔力を集中させ、視力を上げる。
(あそこか。ローブのせいで顔はよく見えないな……)
マーガス要塞を堕とし、王都へ侵攻しようとしているアンデットの長をルクスはその目で捉えた。
だが、ルクスが標的を捉えたのと同時に、空を飛んでいた黒い鳥たちがルクスの上空を旋回し、けたたましく鳴き始める。
その鳴き声を合図にアンデットの大群がルクスへと向きを変える。
「生物なら何でもアンデットにして操れるのか」
アンデットが自身に向かって動き始めたのを見て、ルクスも一直線に加速しながら駆け降りる。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううらっ!!」
互いが交錯する瞬間、ルクスは刀身が10メートル近いサーベルを生成し、アンデットの大群目掛けて振り抜く。
骨や鎧で止まる様子は一切なく、まるで豆腐のように刃が通過し、アンデットの体が断裁機に入れらてた紙のように真っ二つとなり、上半身が宙を舞う。
アンデットは恐怖を感じない。
故にルクスが圧倒的な力を行使しても微塵も怯むことなく、その刃に身を投じる。
ルクスが刃を振るたびにアンデットは切り裂かれ、辺りは血の海となってゆく。
「もう!仲間だった人たちを攻撃することに躊躇とかないわけ!?薄情なのね!」
いまだにルクスの上空を旋回している鳥の1羽が、突然話し始める。
「その声、あの時のリッチか?」
「あら覚えてたの?」
「どうなってんだ?あの時消滅させたと思ったんだがな」
「あの時はリッチちゃんに私の声を貸してあげてたの!でも、今回は鳥さんを通して私がお話してるのよ。凄いでしょ!それと、この子の目を通してあなたの力は見せてもらったわ!あなたが話に聞いてた、物を異空間に出したり入れたりできる人ね!」
「(ファーナと間違えてるみたいだが、まぁいいか)ならリッチはキッチリ倒せてたんだな」
「そうね!あの子は間違いなくあなたに消滅させられちゃったわ!お友達を奪ったあなたは許さない、から!!」
上空の鳥がそう叫ぶと、辺りに巨大な魔法陣が4つ浮き上がり、アンデットが全てその魔法陣の中へと引きずり込まれてゆく。
大量に蠢いていたアンデットが魔法陣に飲み込まれたことで、その場には一時的にルクスとアンデットの召喚主の2人きりになる。
(こいつ……前に遭遇した魔族の同類か!?)
ルクスの前に姿を現した人物は小さな女の子の姿をしている。
その肌はペンキで塗ったかのように白く、唇や舌は真っ青である。真っ黒の服に身を包むその姿は、かつてパトリア村の魔獣が現れた森で遭遇した、いきなり襲ってきた敵と酷似している。
「ようやくご対面だな」
「そうね!私はエスピダ。一応聞いといてあげるあなたは?」
「ルクスだ」
「そう。じゃあルクス、さようなら!」
魔法陣が周囲が眩むほどの光を放つ。
あまりの眩しさにルクスは目を手で覆う。
視界が晴れた時、ルクスの眼前には4体のリッチが立っていた。
「うふふ。あんたがボロボロになりながら必死に倒したリッチちゃんが4人!どう!?絶望した!?」
「こいつら4体倒したら、てめぇに手が届くってことでいいのか?」
「ふーん。随分と強がりね。まぁいいわ、いつまでその強がりが続くか試してあげる!!」
リッチが一斉に魔法を放つ。
リッチの魔法は互いに混じり合い増幅すると、辺りを吹き飛ばす大爆発を引き起こす。
爆発により発生した突風により、魔法を放ったリッチたちすら後方へと吹き飛ぶ。
「あーあー。これじゃ後悔する間もなく木っ端微塵ね!」
周囲のものが全て吹き飛びリッチすら強風に煽られる中、エスピダは微動だにせず立っている。
「はあ!?」
しかし、そんなエスピダが驚愕の声を出す。
爆風により発生した砂埃が薄くなると、エスピダの瞳に強大な球体の影が映る。
残留していた砂埃が風に攫われるのを待っていたかのように、球体が熱湯をかけられたチョコのように溶けて消え、中からルクスが姿を現す。
「その魔法、血結魔法!?あんた吸血鬼?いや、まさか、そんなはずないわよね?」
「何を困惑してんのか知らんが、オレは人間だよ」
「そう。そうよね!そんなはずないものね!まったく、驚かせないでよね!」
先ほどまで困惑の表情を浮かべていたエスピダは、ルクスが人間であると宣言したことにより、再び自身の溢れた表情に戻る。
そんなエスピダに呼応するようにリッチたちが再び魔法を構える。
「次はこっちの番だろ」
ルクスは一瞬で空中に浮かぶリッチの前へと移動する。
エスピダはルクスの動きを目で追えていたが、リッチまるで反応できていない。
スパンッ
リッチの頭がルクスの拳により消し飛び、リッチ1体が消滅する。
「まず1匹」
「空中にいて回避はどうする気!?」
ルクスに向かって三方向から紫の火炎が襲いかかる。
しかし、ルクスは空気中の魔素を魔力コントロールによって掴み、空中に立っているのである。
空中を蹴ると悠々と魔法を躱す。
ルクスの人並外れた魔力コントロール見たエスピダは、気を引き締めてルクスから距離を取ると魔力を上げる。
ルクスは着地と同時に再び加速する。
「お願い、リッチちゃんたち!!」
一度ルクスの動きを見たリッチたちは、今度はルクスの速さに対応してくる。
2体のリッチが両手に黒いオーラを纏いながらルクスへと向かってくる。
(あれは、凍りつくやつか……まぁ、近接戦はこちらとしても都合がいい)
ルクスが踏み込もうとした瞬間、ルクスの進行方向に魔法が降りかかる。
「チッ!」
左方向からは既に1体のリッチが迫っているため、ルクスは逆方向への回避を余儀なくされる。
ルクスが横方向へと進路を切り替えると、再び進行方向に魔法が放たれる。
ルクスが魔法に当たらないよう、ブレーキをかけたところに、もう1体のリッチが高速で突っ込んでくる。
ルクスは体を捻って、紙一重でリッチの攻撃を回避する。
(前衛の2体が圧力をかけて、後ろの奴が遠距離からオレの行動をコントロールしてんのか!?絶妙な連携だ)
その後もルクスは襲い来るリッチの猛攻を紙一重で回避し続ける。
だが、リッチの放つ冷気はたとえ直接触れていなくとも、ルクスの体をじわじわと蝕む。
ルクスは筋繊維や血液が凍らないように、体温を強制的に上げることで対応する。
しかしそれは、急速に体力を消耗することに等しい。
ルクスの吐く、白い吐息の量がそれを物語っていた。
(このままだとジリ貧だな。エスピダに辿り着いたころには出涸らしになっちまう。この攻撃、要はどれかは被弾を受け入れろってこったろ?)
覚悟を決めたルクスは盾を生成すると、遠距離から放たれた紫の炎に飛び込む。
生気を奪う力を付与されたリッチの魔法は、血液でできた盾を溶かし、ルクスを飲み込む。
しかし、ルクスが魔法に飛び込んだことにより、リッチたちの計算が狂う。
リッチが攻撃を透かしたことにより、ルクスはガラ空きのリッチの側面をとる。
(イメージしろ!あの時の先生を!)
<──棘皮──>
ルクスがリッチに触れた瞬間、体内の血液が棘となり、リッチは毬を纏っているかのように串刺しとなる。
「2匹目」
仲間がやられてもリッチには動揺がない。
1体は魔法を構え直し、もう1体はルクスへと突撃してくる。
だが、ルクスの方が次の動きも早かった。
即座に鞭を生成すると、遠距離で魔法を構えるリッチに絡みつかせ引き寄せる。
2体のリッチがルクスに近づく。
リッチの凍てつく手がルクスに届くよりも数瞬早く、ルクスは鞭で引き寄せたリッチを盾にしてその手を防ぐ。
「3匹目」
ルクスに盾にされたリッチは、同族の手によって瞬時に氷像化し砕け散る。
砕け散るリッチの中からルクスの手が伸び、最後に残されたリッチの頭に触れる。
「終いだ」
最後のリッチも2体目同様、全身から棘を生やし消滅した。
全てのリッチを倒し切ったルクスは大きく息を吐く。
「さて、これでようや──」
エスピダへと向き直ったルクスは驚きから目を見開く。
リッチがルクスの相手をしている間に、溜めに溜めた魔力が目に見える形でエスピダから放出されている。
(なんちゅう魔力だ……)
「リッチちゃん4人がかりで時間稼ぎが精一杯なんて、やっぱり普通じゃない。あなた本当に人間?人の皮を被った化け物なんじゃないの?」
「化け物はお互い様だろ。魔族ってのはどいつもこいつもそんな魔力量してんのか?」
「魔族?私もあなたと同じ人間よ?」
「なに!?」
ルクスは怪訝な表情をする。
「どこの国の者だ?」
「別にどこの国には所属してないわ」
「なら何なんだ?どこかの国に雇われたのか?」
「雇われる?そんなわけないでしょ!」
「だったら、何が目的だ?
魔族は繁殖や食事のために人やエルフを襲う、こちらとしては悩みの種ではあるが、それは行動として理解ができる。
だが、お前は人間なんだろ?しかも、どの国にも属していないし、雇われてもない。だったら、戦争ってわけでもないよな?
なぜエルフの国を襲う?この国に恨みでもあんのか?」
「この国のことなんてどうでもいい。私たちの目的はただ一つ、神と会合することよ」
「神?……お前らアポストってやつか?」
「アポスト?ふっ。それあれでしょ、神を信奉してる私たちのパチモン集団。あれと一緒にされてたくないなー。私たちは神へ挑戦したいのよ!」
「神へ挑戦?どういうことだ?」
「これ以上は教えてあーげない。それに知る意味ないわよ?だってあなたはここで終わりだもの!」
パンッ!
エスピダは手を合わせる。
<──降霊、不死王──>
術の発動とともにエスピダの姿が魔力の渦に飲み込まれ視認できなくなる。
あたりの空気が風となり、エスピダへ向かって吹き荒ぶ。
次に魔力の渦から現れたエスピダの魔力は、もはや別物となっていた。
禍々しい魔力が小さな体からとめどなく溢れ出し、魔力に触れた地面は乾燥し砂漠のように変化し、生命を奪われているのがわかる。
姿も多少なり変化している。
体の一部は白骨化し、真っ黒だった服装にも装飾が施され、まさに不死の支配者と言った風貌である。
(また厄介そうだな……)
ルクスが様子見している間にエスピダは次の行動に出る。
<──召喚、死天使、魔屍王──>
エスピダの召喚に応え、黒いローブに身を包み大鎌を担いだスケルトンと異形の形をしたリッチが大量に現れる。
「また、数押し?」
「この子たちは私の魂を削った特別な子たちよ!さっきのとは違うんだから!」
<──死者の狂宴──>
召喚された大量のグリム・リーパーが高速で迫り、デモン・リッチはグリム・リーパーへの被弾お構いなしで、弾幕を張るようにルクスへと魔法を打ち放つ。
デモン・リッチにより一斉に打ち放たれた魔法は、全てを破壊する勢いで辺り一面に着弾する。
ルクスは盾を生成すると、その場に踏ん張り、自身の飛んで来た魔法のみを受け流す。
だが、魔法の着弾に間髪入れずに、グリム・リーパーが迫っていた。
(はやっ!)
先ほどまで戦闘していたリッチとの感覚との差から、ルクスの反応が遅れ、首元を鎌が通過していく。
「チッ」
「は!?今確実に首を刈り取ったはずじゃ!?」
エスピダはルクスに対して感じた違和感に動揺したが、グリム・リーパーやデモン・リッチたちは気にしない。
ルクスの生命を刈り取り切るまで、執拗に攻撃を繰り返す。
相手の攻撃を見切るため、暫くの間回避に専念していたルクスであったが、2種のアンデットの動きを見切ったと判断し、反撃に出る。
ルクスは大技ではなく、シンプルな拳でグリム・リーパーの頭を飛ばす。
大技を使わないのは、相手に特殊な回避方法や防御方法がないかを確認するためである。
(回避も防御もなし。いや、単純に反応できなかっただけか?)
1体のグリム・リーパーを倒したルクスは、即座に別のグリム・リーパーへと標的を定め、複数体を倒す。
しかし、ルクスが別のアンデットを仕留めている間に、ルクスの背後で破壊したはずのグリム・リーパーが復活し始めた。
ルクスは背後から迫る再び動き出したグリム・リーパーの鎌に気付かなかった。
「ぐっ!?なにが!?」
ルクスの背から血飛沫があがる。
ルクスは不規則に高速移動しながら、アンデットの群れから距離を取る。
距離を取ったルクスの目に、歯嚙みしたくなる光景が映る。
ルクスが倒したはずのアンデットたちが次々と復活していく。
「短期決戦ってことか?」
<──紅威──>
ルクスは大きく息を吐くと、戦場を駆ける。
高速で疾走するルクスは突風を発生させ、アンデットを巻き上げながら目にもとまらぬ速さで破壊してゆく。
だが、一時的に数は減らせるものの、倒されるたびにアンデットは復活し、最終的な数は一向に減らない。
「これじゃあ、キリがねーな」
「無駄無駄ー!!どんだけ速く倒そうとこの子たちがやられることは絶対にないわ!それよりも、そんなに深入りしていいのかな?」
召喚されたアンデットたちがルクスを逃がさないように取り囲む。
「入れたら出れる、常識だろ?それとも、誘い込んでやったから逃がさないとでも思ってんのか?」
「当たり前でしょ!!」
グリム・リーパーは一直線にルクスへと襲い掛かり、お互いに当たることも気にせず大鎌を振り回す。
デモン・リッチもグリム・リーパーごと焼き払う勢いで魔法を連打する。
「死なないからってやりたい放題だな!」
このままでは倒せないと判断したルクスは、再び距離を取ることに思考を割く。
この時をエスピダは今か今かと待っていた。
<──棺への送還──>
ここまで一度も攻撃する素振りを見せなかったエスピダからルクスが目を切った瞬間、イモータルルーラーを憑依させたエスピダの魔法が放たれる。
エスピダの魔法は召喚したアンデットを巻き込みながら、ルクスを飲み込む。
「しぶといわね。でも、流石にこれでおしまいでしょ!」
エスピダによって放たれたアルデバランは獲物を捕らえるとその場に留まり、獲物の魂を刈り取るまで効果を発揮し続ける。
アルデバランの中は岩を穿つほどの水滴が不規則に飛び回り、摩擦によって発生した雷がゴロゴロと鳴り響く、それらを閉じ込めるように皮膚を切り裂くほどの烈風が吹き荒れ、さながら雷雲に閉じ込められたかのようである。
アルデバランに飲み込まれたルクスは血の盾で自らを囲み耐えていたが、このままでは一生続くことを察し、烈風でズタズタになりながらも無理矢理脱出する。
ルクスが脱出したことにより、アルデバランは効果を失う。そして、捕えられ殺され続けていたアンデットたちも復活する。
「もう!しつこいわね!!」
「お互いにな」
エスピダはとっておきの魔法で仕留めることができず、ぷりぷりと怒っている。
しかし、怒りとは裏腹にまだ自身の絶対的勝利を確信していた。
その様子に、ルクスは思案する。
(死なないことを利用してのフレンドリーファイヤー上等の攻め手は流石に厄介だな。
それに物理で倒しても魔法で倒しても即座に復活しやがるアンデットどもが邪魔だ。
腕や足を落としても再生して足止めもできねーし。
こいつは確かに特別製だな。
面倒だ。
アンデットは無視して、本体を叩くしかねーな)
ルクスは再び加速する。
アンデットの群れとぶつかる直前に跳び上がり、エスピダに向かって空中を駆ける。
「そう来ると思ってたわ!」
ルクスの牙が主人へ向かったことを察して、アンデットたちも空中へと浮き上がる。
「まぁ、そう安々とはいかねーよな。だが、下への選択肢がある分、空中の方が捉えづらいだろ!?」
次々と襲い来るアンデットの大鎌と魔法をすり抜け、ルクスは構わずエスピダへと向かう。
ルクスの動きを捉えられず、このままでは主人に到達されると考えたアンデットたちは、密度を上げて盾になろうと動き始める。
「させるか!」
ルクスは体を前傾させ、背中に朱殷の翼を生成すると、一気に加速しアンデットの壁が完成する前に突破する。
突破されたアンデットたちは、ルクスの加速によって発生した衝撃波により吹き飛び、ルクスを追うことができない。
ルクスは拳を弓のように引くと、加速した勢いも丸ごと拳に込め、エスピダへ向けて振り抜く。
ブッシャァ!!
大量の血が飛び散り、地面が朱く染まる。
「ガッハッ!」
「アハハハハ。アハハハハハハハハハハハハハ!!
届いたと思った!?勝ったと思った!?思ったよね!思ったよね!
ブッブー!ざーーーんねんでしたーーー!!
いや~、私もちょっとだけ焦ったんだよ!ホントに!
実はね、ここまで辿り着いたのあなたが2人目なんだ!やっぱ経験は力だね~!」
ルクスの拳はエスピダの目の前で止まっていた。
エスピダに届く直前、エスピダの真下から武器を持ったゾンビが這い出て、ルクスへ向かって武器を突き出したのだ。
勢いのついたルクスは回避することができず、正面から突き出された大量の武器に突っ込み勢いを殺された。
ルクスの体には槍や剣など突き刺さり、ボタボタと大量の血が流れ落ちている。
「本当はもうちょっときれいに倒したかったな。傷だらけになっちゃた!
でもでも、かなり強かったし、傷だらけでもコレクションとしては申し分ないかな~?
ストックしてたリッチちゃんも全部やられちゃたしね!」
「イテーな…くそ……」
「えー!?まだ生きてんの!?やっぱ魔道士はしぶといねー!」
エスピダは更に煽ろうとルクスに近づく。
「ねえねえ、あとどれくらい生きてられそ──」
ルクスの手から伸びた血の槍が、エスピダの額を貫通する。
「え?なん…で……?」
「油断しすぎだ」
エスピダの体が崩れ落ちるのと同時に、エスピダによって召喚されたアンデットたちも朽ち果てる。
「流石にこいつは不死身というわけではなかったか。
それに初めからこいつを倒しておけば、他のアンデットを相手する必要もなかったのか。
今後の参考にしよう」
エスピダを倒したルクスは、身体から大量に刺さった武器を一本ずつ抜いていく。
「ふー。マーガス丘陵のアンデット問題の解決だったよな?これでオレの任務は完了か。
この後は、勝手に帰っていんだろうか?
それとも誰か迎えを待った方が──」
突如、ルクスの目の前の空間が歪み、真っ黒な異空間への扉が開く。




