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大罪人もう一度  作者: 御神大河
エルフ国動乱・二つ目の楔
33/36

32.vsリッチ

 数日後、ルクスとファーナはシーナの指示でマーガス丘陵に構えられたマーガス要塞に来ていた。

 マーガス要塞からは広大なマーガス丘陵が一望できる。


「おお~!見晴らしいいな。景色はあれだが」

「想像以上の数ですね……」


 ファーナは目の前の景色に息を飲む。

 目の前にはマーガス丘陵を埋めんばかりのアンデットの大群。その数は優に数万を超えている。

 ルクスとファーナがマーガス丘陵を眺めていると老齢のエルフが一人近づいてくる。


「救援感謝いたします、魔道士殿。私この要塞の守護を任されております、アシヌスと申します」

「ミラリアム王国ドゥニージャ公爵領領主ドゥニージャ・ギエール公爵の要請により参上いたしました、ルクスと申します」

「これはこれはご丁寧に。最初は我々も打って出ては数を減らしていたのですが、一向に減る気配がなくこちらは疲労が蓄積するばかりで……ついに限界がきまして、籠城していたら見ての通りです。我々が不甲斐ないばっかりに数が多くて申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いします」

「お任せを」


 ルクスは要塞のへりに足を掛ける。


「あのっ!わたしも……」

「悪いが、対アンデットは初めてだから他に気を回す余裕があるかわからん。自信がないなら待っててくれ」

「……お気をつけください」

「ああ。行ってくる」

「ちょ、何を!?」


 アシヌスの質問を待たずに、ルクスは要塞を飛び降りアンデットの大群の中に降り立つ。

 アンデットはルクスの生気に反応して一斉に襲い掛かる。

 と同時に、アンデットが宙を舞う。

 次から次へと骸骨は骨片にゾンビは肉塊になってゆく。


「すごい……」


 アシヌスのみならず要塞の多くの戦士たちが身を乗り出してルクスの戦闘を見学する。


「あっという間に数が減ってく……」

「人の魔道士とはこれほどまでに強いのか……」

「というか、あれ魔法使ってるのか?」

「確かに…殴り飛ばしてるだけのような……」

「まぁ倒せてるしいいんじゃないか?」

「そうだな」


 ルクスはエルフたちが言うように全く魔法を使っていなかった。

 あまりに数が多いため途中で魔力切れを起こす可能性があり、そうなった場合最悪アンデットの大群の中で眠る羽目になる。また、あまり力を見せない方がいいとルクスが判断した結果である。

 そのため、ルクスは最小限の魔力操作のみで暗くなるまでアンデットを屠り続けた。

 入口付近のアンデットがルクスにより殲滅されたことにより、途中からエルフたちも参戦し最終的に数万単位のアンデットの討伐に成功した。


「いや~ほんとにお強い!半日足らずで半分近く減らしてしまうとは!朝から晩まで1日中要塞の扉をドンドンドンドンと叩いてくるので寝不足に悩まされていたのですが、今夜はぐっすりと安眠が取れそうです」

「魔法使っていませんよね!魔法使ったらもっと強いんでしょうか?」

「そりゃそうでしょ!もしかしたらドゥルケ陛下やシーナ様よりお強いのでは?」

「かっこよかったです!」


 要塞に帰ってきたルクスは戦士たちに囲まれていた。


「あ、あの~、ルクス様にはお休みいただかないとなりませんので、失礼いたします」


 ファーナは囲まれているルクスの手を掴んで集団から引っ張り出す。


「ちょっと何よ!」

「なんなのあのダークエルフ!」


 ファーナに向かってヤジが飛ぶ。

 そんなヤジを無視して手を引きながらルクスを浴室まで案内する。

 ルクスが湯浴みをしている間、何人かのエルフがルクスの背中を流そうと浴室に入ろうとしたが、ファーナが浴室の入り口に陣取り死守した。

 湯浴みを終えたルクスはファーナに案内され部屋のベットへと腰を掛ける。


「お疲れ様でした」

「ああ。ありがと」

「ルクス様はなぜ魔法を使わなかったのですか?野盗に襲われた時も最小限でしたし」

「今回に関しては、最初から全開でいったら最後まで持つかわからなかったってのが大きいかな。まぁ、今日の調子なら魔法を使っても全滅まで魔力が持ちそうだ」

「本当ですか!?それはよかったです!」

「後は相手がこちらを舐めてかかるからな、そこに一撃叩き込みやすい」

「なるほど!」


 ファーナはルクスを労うと遠慮ぎみ少し距離を開けてルクスの隣へ腰かける。


「その~、ルクス様に教えていただいた魔力操作なのですが、纏帯がなかなかうまくいかなくて……」

「まぁ、基礎の中では一番難しいからな……というか、ファーナの魔法の性質上纏うのは向いてないのかもな」

「どういうことでしょうか?」

「ほら、物をしまう時も出す時も基本体から少し離れたところに効果が出るだろ?つまり、密着させる纏帯は普通のやつより難しんじゃないかと思ってな」

「なるほど!……ではどうしたらいいのでしょうか?」


 ファーナは首を傾ける。


「そうだな……ファーナの能力で作り出した空間は時間も位置情報も無視してるだろ?で、物を入れたり出したりする時、手を入れてるよな?」

「はい」

「ということはその空間に生き物が入っても問題ないってことだし、空間の出入り口を2つ作れば遠距離のものに影響を及ぼせるんじゃないか?例えば、今ここに座った状態で扉を開けるとか」

「なるほど!?……やってみます!」


 ファーナは自身の前に異空間の入り口を作る。そして、扉の前に出口を作ろうと魔力を上げる。


「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううううううううう」


 顔を真っ赤にし必至に作ろうとするが、そう簡単にはうまくいかない。

 それでも、ファーナは魔力の纏帯よりも手応えを感じていた。


「どうだ?」

「はあ……はあ……はあ……成功はしませんでしたが、できる気がします!ありがとうございます!」

「そうか。なら将来的には世界の端から端まで繋げられるようになるかもな」

「世界の端から端……頑張ります!」


 ルクスの言葉は一見無茶を言っているように聞こえる。しかしその中には、きっとできるであろうと言う期待が込められていた。

 今まで否定され続けてきたファーナはその欠片を敏感に感じ取る。

 ファーナの目にはやる気と自信が映りこんでいた。

 ファーナが再び修行のため手を伸ばした時、遠くから夜番の交代の声が聞こえてくる。


「わたしがお邪魔していますとお休みになれませんね」


 そう言うとファーナはベットから立ちあがり、部屋を出る。


「お休みなさい」


 部屋の外からひょっこりと顔を覗かせ挨拶するとファーナは扉を閉め自分の部屋へと戻る。



 翌朝、ルクスとファーナはアンデット討伐のために支度をする。

 今回はルクスが相手の数を減らしたこともあり、要塞で籠城していたエルフの戦士たちも開幕から打って出る。

 人数をかけて一気に片を付けようという算段である。


「すごい熱気ですね」

「そうだな。空回りしなければいいが……」

「油断大敵ですものね」


 ルクスとファーナが門の前に移動すると、アシヌスたちが集まってくる。


「魔道士殿に任せっぱなしというわけにもいきませんからな!本日は前線を我々に任せ後方でごゆるりとしていて下され!」

「私たちも頑張りますね!」

「強敵が出た時だけ頼みます」

「おっしゃ!やるぞー!」

「「おー!!」」


 今回、アンデットの相手は基本的に要塞を護るエルフたちが担当する。

 理由は2つ。

 一つは、ルクスばかりに任せるわけにはいかないとエルフたちが張り切っているからである。

 このエルフの中にはダークエルフであるファーナも含まれている。

 ファーナはルクスから教わった魔力コントロールの成果を実践で試せると人一倍気合いが入っている。

 そしてもう一つが、このアンデットの異常発生が人為的なものである可能性が高いからである。

 召喚主が存在する場合、その召喚主は魔道士であり、かなりの猛者であることが想定される。

 エルフたち的にはできる限りルクスの体力を温存したいのである。

 よって、今回ルクスの役割は後方でピンチになったエルフのサポートである。


(まぁどうせ今後は自分たちの国を自分たちで守れるようにならないと、何度も呼び出されるなんてことになりかねないし、のんびりやるか)


 エルフたちは気合十分、ルクスは気の抜けた状態でアンデットとの二回戦が始まった。


「突撃ーーーー!!」

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」


 アシヌスの号令でエルフたちが一斉に要塞から打って出る。

 魔力操作が可能なエルフたちであれば、1対1を意識している限りスケルトンやゾンビ程度問題にもならない。

 サクサクとまではいかないが、何とか数を減らすことができている。

 ファーナも魔力をコントロールし身体強化をすることで、素手でアンデットに応戦できている。


「ルクス様どうですか?」

「ああ。ちゃんとコントロールできてるぞ」


 今回の戦い、ルクスは非常に退屈していた。

 ピンチになっている者がいれば手を貸しはするものの、基本後方で保護者のようにエルフたちの戦闘を見守るだけである。

 その割に、ファーナを筆頭に数名のエルフたちがアピールしようとチラチラとルクスの顔を窺うため、退屈そうな素振りを見せるわけにもいかない。


(なんか、戦闘よりも疲労感が……)


 エルフたちは順番に休憩をとりながら、徐々にアンデットの大群を山の方へ押し戻す。


「いけるぞー!」

「気合い入れろ!」


 エルフたちの頑張りによりマーガス要塞からアンデットの大群をそれなりに押し戻すと、次第にワイトの数が増えてくる。


「魔法に気を付けろー!ワイトがいるぞ!」

「こっちにもワイトだ!魔力に余裕のある奴らで対抗しろ!」


 ワイトの放つ氷雪魔法や砂岩魔法に対し、エルフたちは得意の精霊魔法で対抗する。

 精霊魔法の真骨頂は防御と封印である。

 ワイトの攻撃魔法に対し、エルフたちは強度が落ちないよう入れ替わり立ち替わり防御を張り、隙を見て攻撃をしてゆく。

 見事な立ち回りにより、多少の負傷者は出た者の一人の被害もなく視認できるワイトの殲滅が完了した。


「よーし!この調子だ!

「これなら全滅もいけるぞ!」


 エルフたちの士気が最高潮に上がった時、地面に巨大な魔法陣が浮かび上がる。


「なんだ!?」

「総員一時退避!!」


 ルクスも含め、エルフたちは魔法陣の外へと飛び退く。

 魔法陣が強烈な光を放つとアンデットの肉塊が魔法陣へと沈み、突風が砂埃を巻き起こして吹き荒れる。


「ルクス様あれって!?」

「ああ。王都で見たやつに似てるな」


 突風が吹き止むとそこには1体の魔物が宙に浮いている。

 ボロボロの薄汚いローブを羽織り、そのローブからは鬱血したような紫の骨の手が見えている。フードを深く被っているとはいえ顔は不自然なほど暗くて見えないが、青白い眼光がユラユラと光っている。


「「リッチ……」」


 何人かのエルフが呟く。


「あれがリッチか……」

「恐らく。わたしも初めて見ました」


 ルクスは言葉の通り、場の空気が明らかに変わったことを感じていた。

 まるで、灼熱の大地のように空気が乾燥していく。


「怯むなー!!相手は1人だ!行くぞーーーー!!」


 1人が発破をかけたことにより、エルフたちが先ほどまでの勢いを取り戻し突撃を開始する。

 リッチは薄っすらと不敵な笑みを浮かべると、両手を突き出す。


「まずいっ!」


 ルクスが即座に飛び出る。

 ほぼ同時にリッチから濁流と見まがうほどの紫紺の炎が放たれる。

 突撃したエルフたちは防ぐ手段がなく、衝撃に備え目を閉じリッチに背を向ける。


 ゴゥンッ!


 激しい衝撃とともに視界が眩む砂埃が巻き起こる。


「……助かったのか?」

「……なにが?」


 死を覚悟したエルフたちであったが、自身の身に何も起こっていないことに驚きリッチの方へと恐る恐る振り返る。

 振り返ったエルフたちの目にルクスの姿が映る。

 ルクスの前にはまるで透明な壁があるように地面が焼き払われ煙と砂埃が立ち上っている。


「ま、魔道士殿……」

「ファーナ、全員を要塞まで撤退させてくれ」

「は、はい!みなさん!要塞まで撤退してください」


 全員がファーナの指示に従い、迷いなく撤退を開始する。

 この場の全員が自分たちでは全員でリッチに挑んでも決して勝てないと自覚すると同時に、ルクスの強さを信じていた。

 エルフたちが撤退を始めた時、砂埃が晴れルクスとリッチが対面する。


「あら?一撃で全滅させるつもりだったんだけどな。あなたが防いだのかしら?」

「訊くまでもないだろ?」

「ノリわるーい!ちょっとくらおしゃべりに付き合ってくれてもいいじゃない!減るもんじゃないし」


 そう言うとリッチは饒舌におしゃべりを始める。

 ルクスはその話をただ黙って聴いていた。

 そうしているうちに、エルフたちは要塞まで撤退を完了させる。


「悪いな、待ってもらっちゃって」

「別にいいわよ。どうせあなたさえ倒せば後は吹けば飛ぶような埃程度だし」

「そうか。だったら譲れないな」


 ルクスの魔力が高まる。


「無理よ!私の方が強いもの!」


 呼応するようにリッチの魔力も高まる。

 エルフたちは全員が要塞の見張り場へと駆け上がり、ルクスとリッチの戦いを見守る。


「……精霊が怯えている」

「魔道士殿は勝てるのだろうか?」

「勝ってもらうしかない」

(ルクス様……)


 ファーナが祈るのと同時に、ルクスとリッチが動く。

 リッチから放たれたレーザーのような炎に飲み込まれる前に、ルクスは高速で回避しながら距離を詰め始める。

 これではルクスにヒットしないと見るや否やリッチは即座に技を切り替える。


(狐火?)


 リッチを取り囲むように複数の火の玉がふわふわと浮遊すると、高速でルクス目掛けて打ち放たれる。

 狐火は一直線のものから大きな弧を描くものまで様々な軌道でルクスを追尾しながら襲い掛かる。

 しかも、ただ追尾するだけではなく、ルクスの前方で爆発する狐火も存在する。

 ルクスは上下前後左右へと常に進行方向を変え続けることで全て回避する。


「ふふふ。弾切れ待ちは無理よ!」


 狐火はまるでマシンガンのように順番に発射され即座に補充される。

 その挙動を見たルクスは多少の被弾は割り切り一直線にリッチへと走り出す。

 ルクスの動きがリッチに対し直線的になったことで、狐火の弾幕はさらに苛烈さを増す。

 だが、ルクスはその全てをいなし、見る見る距離を詰める。


「へ~、やるじゃない!でもダメ—!」


 リッチはルクスから逃げるように弾幕射撃しながら距離を取る。


「だったら──」


 ルクスは足に魔力を圧縮すると、体勢を低くし地面を蹴る。

 ルクスが加速する瞬間、空気の層はバネのように圧迫され視認できるようになり、地面はめくれ上がり数百メートル上空まで跳ね上がる。

 その光景は要塞のエルフからはまるで土色の巨大な津波が発生したように見えていた。

 ルクスは一瞬で距離を詰めると血結魔法で生み出した剣をリッチへと振り下ろす。

 その剣をリッチは魔法で防御が間に合わず、素手で受ける。

 だが、ルクスは構わず剣を振り抜き、ぼとりとリッチの片腕が落ちる。

 仕留めるには絶好の機会であったが、ルクスは違和感を覚え追撃を止める。


「あー危なかった!ねぇ、あなたのその力、生体を使った力でしょ?私はリッチ、命を喰らう者!ふふふ。どうやら私とは相性が悪そうね!」


 勝機を見たリッチは手に黒いオーラを纏い、強調するように構える。

 そうすることでリッチは近接戦を抑止しようとしていた。

 だが、ルクスには他に選択肢がない。

 一切の躊躇なく、近接戦闘に転じる。


「はあー?普通躊躇するでしょ!」


 ルクスの生成した槍がリッチの体の中心を貫く。

 が、目を丸くしたのはルクスの方であった。

 リッチを貫いた槍はまるで溶けるように原型を保てず崩壊する。


「もう!なんて威力してるの!?普通の人間ならどんなに頑張っても傷一つ付けられないはずなんだけど!?」

「さっきからペラペラと、痛みどころか危機感もないのか?」

「死体だからね!痛みはもちろん死の恐怖すら感じないわ!……ただ、さすがにあんた邪魔ね」


 リッチの纏う雰囲気が変わる。

 ルクスが警戒して構えた瞬間、リッチが広範囲に一気に炎を拡散させる。

 その範囲があまりにも広く、ルクスは一瞬で炎の中に飲み込まれる。

 しかし、その炎はルクスの考えとは違う意図のものであった。


(熱くない?視界を奪いにきたか!?)


 ルクスは魔力を纏帯させ即座に反応できるように全神経を研ぎ澄ます。

 だが、リッチの攻撃は来ない。

 ルクスの脳裏に嫌な予感が奔る。


(この目くらましはオレを足止めするためのものか!?まずい!要塞が!?)


 ルクスの意識が要塞に向かった瞬間、リッチの手が音もなくルクスの右腕に触れる。

 ルクスは反射的に飛び退く。


「チッ」

「あれ?おかしいな、全身氷漬けになる予定だったんだけど……」


 リッチに触られたルクスの腕は完全に凍りつき、冷気を放っている。

 ルクスはチラリと自身の腕の状態を確認すると、リッチへと向き直る。


「これで、お揃いね!ふふふ。あんまり動かない方がいいわよ。砕けて無くなっちゃうから。まぁ、腕を大切にし過ぎると別のものを失うことになるけど、ねっ!」


 リッチはルクスを横目に要塞の方へと向かう。


「行かせるわけねーだろっ!」


 ルクスは躊躇なくリッチを追う。

 激しく動いたことにより、腕が砕け散り空気中の霧散していく。


「やっぱりね」


 ルクスが腕を失う程度で怯むことはないと、ある種の信頼を置いていたリッチはにやりと嗤う。

 ルクスがリッチの間合いに入った時、リッチは振り向きながら懐で溜めに溜めた魔力を紫紺の炎に変えてルクスに向かって打ち放つ。

 その炎にルクスは左手に盾を生成しを突き出す。

 高火力の紫紺の炎が盾を腐食させながら焼き払うとその後方のルクスへと襲いかかる。

 ルクスは体から逸らすように炎を掴み振り払うが、炎に纏わり付かれた腕はボロボロと炭化し崩れ落ちる。


「くはは。これで私の勝──!?」


 勝ちを確信し高笑いしたリッチであったが、炎を突き破ってきたルクスの消滅したはずの右腕を見て声を失う。


「なん──」


 ルクスの振り抜いた拳がリッチの顔面を消し飛ばし、リッチの残骸が地面へとパラパラと落下する。

 そして、地面に到達する前に跡形もなく風に攫われていった。


 ルクスとリッチの戦闘を応援していたエルフたちは、ルクスが勝利したことを確信し要塞から飛び出すと、歓喜の声とともにルクスの下へと駆け寄る。


「ルクス様ーーーー!!!」

「凄すぎました!!」

「「さすがです!!」」

「いや~、必ず勝つと信じておりましたが、それでもやはり感服いたしました。ささ、本日のところはゆっくりとお休みください、お疲れでございましょう」

「そうです。夜の間は我々がアリ一匹通しませんから!」


 ルクスはエルフたちの言葉を汲み、要塞へと戻る。


「改めましてお疲れ様でした!」

「ああ」

「今回のリッチの召喚、あれで今回の一件は何者かが引き起こしたことはほぼ間違いないですな。しかし、リッチを召喚できる者が相手とは……」

「リッチは自然発生しないんですか?」

「するにはするのですが、あのように魔法陣からは発生いたしません」

「なるほど」

「それにしてもすみません。部下たちが騒がしくて……」

「別に気にしてません」


 今日の戦闘により、ますますルクスを取り囲み黄色い声を上げるエルフたちが増えた。

 そのため、終始ファーナがルクスの壁となりブーイングを浴びていた。

 そんなファーナはルクスに疲労があるだろうと遠慮し、今日だけはルクスの部屋に足を運び修行つけてもらうことをせず、ルクスの部屋の前で夜這いに来たエルフたちを追い出す門番をやっていた。


「騒がしいな」


 外で言い争う騒音を遠ざけるため、ルクスは頭から布団を被り眠りについた。



「おはようございます!ルクス様!」


 翌朝、ルクスはファーナに起こされ目を覚ます。

 そのファーナの目には隈ができている。


「寝てないだろ?戦場に寝不足の奴を放り込むわけにはいかん。今日は要塞にいろ」

「そんな!わたしは1日2日寝なくても大丈夫です!同行させてください!」

「ダメだ。同行したいなら今度からは、オレに気を回してばっかいないできちんと己の体調を整えろ」


 ルクスに叱られファーナはシュンと肩を落とす。


「かしこまりました。では、せめて見送りだけはお許しください」

「まぁ、それくらいならいいか……」

「ありがとうございます!!」


 ルクスは今日もエルフたちを介護するために門へと向かう。

 門には既にエルフたちが気合いを入れて待っていた。


「本日もよろしくお願いします!魔道士様!」

「「お願いします!!」」

「では行くぞー!!今日で忌々しきアンデッドどもを全て天に帰し、この騒動の首魁(しゅかい)を討伐する」

「「ぃよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!」」


 アシヌスの号令とともに出撃しようとした時、王都から伝令がファーナの下へ走ってくる。


「お待ちくださいファーナ殿!」


 全員が足を止めて振り向く。


「ど、どうしましたか?」

「至急王都に戻るようにとシーナ様からのご命令です!ファーナ殿の帰還に合わせお手数ですが魔道士殿も一度ご帰還願います」

「な、なぜ?」

「先日の王都防壁が機能していなかったことについて話が聞きたいと」

「……わかりました。ということですので、わたしとルクス様は一度王都へ戻ります。すみません」

「いえ、構いませんよ。魔道士様のおかげで時間的猶予がかなりできましたので」


 ルクスとファーナはアンデット討伐を中止して王都へと向かう。

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