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大罪人もう一度  作者: 御神大河
エルフ国動乱・二つ目の楔
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28.ざわめく大森林

 ミラリアム王国の北にある妖精人(エルフ)の国、カエダム国は隣接した獣人デミティアの国、ベスティア国と数百年前からいがみ合いが続いていた。

 主な原因は食性の違い。

 獣人は草食性の兎人ハーシーなどもいるが犬人クーシー猫人ケットシーなどの肉食傾向の強い種族が多くを占めている種族である。対して、エルフは菜食主義であり、乳製品すらもあまり好んで口にしない。これにより文化的にお互い相容れず仲が良くない。

 人が中心であるミラリアム王国はこのいがみ合いには一切手出ししないということで、カエダム国、ベスティア国の両国ともに友好国という立ち位置となっている。

 これには混血問題が大きく関わっている。

 かつて、邪龍や突如現れた魔族に対して人とエルフ、獣人は共闘した歴史があった。その際にエルフと獣人はお互いに劣情を催すことがなく混血がほとんど生まれることはなかったが、人とエルフ、人と獣人の血は混じり合い多くのハーフが生まれた。

 血を分かち合った者を無下にすることもできず、カエダム国もベスティア国もミラリアム王国と一応の友好関係を築くことに至った。

 そんなカエダム国であるが、現在危機的状況を迎えていた。

 憎しみが憎しみを生み激化するベスティア国との対立。それに加え、最近になってミラリアム王国の元宮廷魔道士ディアタナスが国を裏切りカエダム国の傍にディアタナス魔王国を建国、そこから発生した魔物によって国力を奪われ続けていた。

 なんとか自国のみで対応していたが、追い打ちをかけるように突如カエダム国南東にあるマーガス丘陵に屍人(アンデット)が大量発生。

 ついに手が回らなくってしまった。


「報告します!マーガス丘陵にて大量のアンデット発生!付近の戦士たちが急行し時間を稼いでおりますが、このままでは王都付近まで突破されるのは時間の問題かと!」


 王城にて軽武装の一人のエルフが膝をつき、カエダム国女王へと報告する。

 しかし、女王よりも早く隣に立っているエルフが反応する。

 そのエルフの名前はシーナ・カウサ。装備の上からでもわかるスラッとしたシルエットに決して不健康そうに見えない白い肌。切れ長の鋭い目と短く切り揃えられた眩しく輝くブロンドの髪が目を引く端整な女性である。


「なぜアンデットごときに突破されるんだ⁉」

「突如現れたアンデットは土地を飲み込むほど数が多い上に強く、一介の戦士では足止めがせいぜいかと……」

「役立たずどもめ。どれくらい持つ⁉」

「半月も難しいかと……」

「ひと月持たせろ!!姉上いかがいたします?精霊防壁がある以上王都が落ちるということはないと思いますが」


 シーナに姉と呼ばれた人物こそカエダム国女王ドゥルケ・カウサである。シーナ同様にスラリとした体型に真珠のような白い肌。優しく垂れた目にシーナ以上に美しいブロンドの長髪が気品と威厳を醸し出している。しかし、それよりも何より両目に輝くオッドアイが重要である。古来よりエルフにおけるオッドアイは神に選ばれた王の証である。


「民が傷つく前に早めに対処すべきでしょう。ミラリアム王国に救援要請を出しましょう。それなりの人間を派遣しないとなりませんね……。王都守護の任を解きます、シーナ行ってくれますか?」

「かしこまりました。おい!準備しろ!」

「はっ!」


 命令されたエルフは一礼すると走って退席する。


「では、私も失礼します」


 シーナもミラリアム王国へ出立するため席を外す。

 シーナが装備を整えるなど出立準備を終え、城の外に出るとエルフの戦士たちがバタバタとミラリアム王国への出立準備をしている。


「グズグズするなー!」

「はっ!」


 出立準備が完了するとシーナは団員を整列させる。

 整列した戦士たちを見てシーナの表情が険しくなる。


「おい!コンコ!ファーナの奴はどうした?」


 シーナは薄っすらとしわの入った副団長に質問する。


「訓練場でシーナ様に命じられた訓練をまだやっていると思われますが」

「何をやってるんだ!とっとと連れて来い!」

「はっ!」


 コンコは訓練場に走る。

 訓練場にはくすんだ小麦色の肌に灰を被ったような桃色の髪、三白眼が特徴的な小柄なダークエルフがヘトヘトになりながら訓練場を周回していた。


「ファーナ!」

「コンコ副団長⁉ど、どうしましたか?」


 ファーナは膝に手を付きたい現状に必死に耐えながら胸を張って敬礼する。

 顔を上げたファーナの瞳は三白眼のせいで分かりづらいが左右の色が僅かに違っている。


「シーナ様がお呼びだ。とりあえず来てくれ」

「わ、わかりました(なんだろ?また怒鳴られるの嫌だな)」


 ファーナとコンコはシーナの下へ走る。

 コンコは走りながら不安そうな表情をしているファーナに状況を説明する。


「マーガス丘陵で大量のアンデットが恐らくだが人為的に沸いている。そのため我々がミラリアム王国へ救援要請へ行くことになった。状況はこんな感じだ」

「わ、わかりました。ありがとうございます(初めての他の国だ!緊張するけど、なんかちょっとだけ楽しみかも)」

「お待たせいたしました!!」

「ふぇ⁉」


 ファーナは自分以外の団員がミラリアム王国への出立準備が完了していることに気付き、素っ頓狂な声を上げる。

 そんなファーナを無視してシーナは全体に号令をかける。


「我々第三(だいさん)王箭騎士団(おうせんきしだん)は今よりミラリアム王国へと向かう。誇り高きカエダム国の戦士として、決して侮られるような言動はするなよ!」

「「はっ!」」

(今から⁉)


 第三王箭騎士団がミラリアム王国へ出立しようと整列を解こうとしたタイミングでファーナが躊躇いながら手を挙げる。


「あ、あの~、わたし何も聞いてなくて…格好もその~……」

「あ゛?それはサボりたいと言っているのか?それともなんだ?貴様が湯浴みし着替えている間、我々全員に待てと言ってるんか?」

「す、すみません……(また怒られた、余計なこと言わなければよかった……)」


 シーナに叱られファーナは小さく縮こまる。

 他の者は目を伏せながら各々の準備を進める。

 シーナは舌打ちをすると3台用意したうちの真ん中の馬車へと乗り込む。

 しょぼくれながら荷を馬車に運ぶファーナにコンコが声を掛ける。


「ファーナ、さすがにその恰好で他国へ入るのは体裁としてマズい。出発したら最後方の馬車で着替えろ」

「……はい」


 第三王箭騎士団はミラリアム王国王都ウル・ミヤブスを目指してカエダム国を出発した。



 所変わって、ミラリアム王国玉座の間。

 ミラリアム王国の貴族たちが集まり、顔見せ及び報告会が行われていた。

 玉座にはミラリアム王国女王レクス・オプリス・カルギーナが座っている。

 そして玉座から横向きに並ぶように2列、貴族たちが向き合うように並んでいる。


「続きまして、ドゥニージャ公爵領で発生した、ゴブリンの大量出現についての報告です。ゴブリン数千体と数百体のホブゴブリン、更には複数体のオーガが確認されたとの報告を以前あげさせていただきましたが、いずれも掃討完了。再発生も確認されてないとのことです」

「ドゥニージャ領?苦戦していると聞いていたが、誰を派遣したんだったかしら?」

「魔道士の派遣は見送りとなっておりました」

「見送り?ならば魔道士は送っていないということよね?報告に間違いがあるのでは?本当にそれだけの魔物を兵士や冒険者のみで掃討しきったの?」

「いえ、報告では当初は敗色濃厚でしたが、魔法を使える者が2名参加し4日後には掃討が完了したと」


 玉座の間がざわつく。


「ドゥニージャ領内にあなた以外に魔道士がいるとの報告は受けていませんが!どういうことですドゥニージャ卿!!」

「さあ?領には暫く帰っていないので知りませんけど」

「チッ!その2名についての情報は⁉」

「1名はドゥニージャ・ペトラ。ドゥニージャ・モナ卿のご令嬢であり、今巷で噂になっている「黄金の紅焔姫(おうごんのこうえんき)」とのことです。数百のゴブリンと複数のホブゴブリンをオーガごと魔法で焼き払い、その魔法の才は英雄級との噂もあり、魔道学院も目を付けているそうです」

「あら、無能だと思っていたあの子が才能に目覚めたのね。しかも英雄級」


 最後尾に並ぶモナは不敵な笑みを浮かべる。

 その表情を見て他の貴族たちは面白くなさそうにする。


「それで!もう1人は?」

「それが……現在調査中でして、ギエール公爵様とも関係があることから恐らくペトラ嬢の許婚(いいなずけ)ではないかと……」

「許婚?戦果は?」

「単騎でゴブリン数千とホブゴブリン数百を殲滅し、オーガを複数撃破となっているのですが……その戦闘を目にしたものはおらず、どこまで信用していいか……」

「口だけなら何とでもいるのでは?」

「ですが、本当なら魔道士として十分通用する戦果ですよ?無視するのは愚策でしょう」

「それよりも、今の報告的に男ってことよね?そっちの方が重要だと思うのだけど?」


 貴族たちは思い思いに考えを述べる。

 するとここで、玉座に座っている女王が口を開く。


「確認はした方がよさそうですね。なにかよき案はないかしら?」


 モナ以外はなんとかして謎の魔法が使える存在であるルクスを排除したいと考えていた。

 魔法や魔力の保有量は絶対ではないが遺伝する。謎の魔法が使える者は現状ドゥニージャ公爵に囲われている可能性が高い。そして、魔法の才を発現したペトラと結ばれた場合、その子どもはより強力な魔道士になる可能性が高くなる。

 ミラリアム王国において、魔道士は絶対的権力である。現にドゥニージャ公爵家は魔法の才能により、平民から公爵位まで成り上がった。

 そんなドゥニージャ家が更なる力を手に入れようとしている。他貴族たちはなんとかこれを抑制したいと考えていた。

 しかし、無茶な要求はできない。

 ドゥニージャ家に囲われているとはいえ王国の民である以上、女王にとっても重要な人材である。また、自分たちもそのような幸運が巡って来た時に、今回課す仕打ちが自分たちにも牙をむく可能性が高い。

 その場の貴族たちが互いに顔色を窺う。


 コンコンコン!


 玉座の間の扉が鳴り、兵士が一人入ってくる。


「会議中に失礼いたします!カエダム国から緊急の用として先触(さきぶ)れが到着しております。通してもよろしいでしょうか?」

「緊急の用?ええ、通してください」


 カルギーナの許可が下り、カエダム国の先触れであるエルフが入室する。


「お目通しいただきましてありがとうございます。カエダム国女王ドゥルケ・カウサより書状を預かって参りました。ご一読いただけますようお願い申し上げます」


 跪き深々と頭を下げると書状を差し出す。

 最前列に立つオルクトゥス・アマータ公爵妃が書状を受け取ると、細工がないか素早く確認しカルギーナへと手渡す。


「拝読いたします」


 カルギーナは封を外すと目を通す。


「なんと?」

「救援要請ですね。マーガス丘陵にてアンデットの大群が発生したそうです」

「おおっ!でしたら──!」

「おい!!」


 嬉々として口を開いた貴族をアマータが一喝して黙らせる。


「先触れご苦労様です。カエダム国からの使者が来るまでに決めておきます」

「はっ!よろしくお願い申し上げます!」


 先触れが玉座の間から退出すると会議が再開される。


「申し訳ございません!」

「不用意な発言は王国に不利益をもたらすぞ。以後気を付けろ」

「今後徹底いたします」

「それにしても、丁度よいのでは?」

「そうですね。マーガス丘陵であるならばドゥニージャ領の北ですし」

「アンデットの大群となるとそれなりの難易度ではあると思うが、一流の魔道士であるならば問題もないでしょう。ドゥニージャ卿もそれで構いませんね?」

「ええ。私としてもどの程度か見ておきたいですから」



 ペルディア近郊のゴブリン掃討戦後、ルクスは穏やかな生活を送っていた。

 一日二食の食事をとり、眠たくなったら眠る。そして朝は誰かに起こされるまで布団の中。ほんの少し退屈な幸せな日々である。

 やるべきことは少なく、毎日せがまれるペトラの修業とたまに参加しに来る『白妙の光』の修業に付き合う程度である。

 対してペトラは掃討戦後やるべきことが増え、忙しくしていた。

 絶望的であったゴブリン掃討戦の形勢をひっくり返した勝利の立役者として冒険者たちにより喧伝され、「黄金の紅焔姫」としてミラリアム王国中に知れ渡り、王都ウル・ミヤブスに住む女王の下までその名は轟いていた。

 公爵令嬢かつ若く優れた魔道士ともあれば世間の関心を非常に集める。

 そのため、今まで引きこもっていた分を取り戻すようにアンキーナにより教養から社交儀礼までありとあらゆる常識を叩き込まれ、魔法の修業が削られるほど忙しくしていた。

 それもありルクスはペトラに割く時間が減り、暇な時間は自身の魔法の研鑽と読書をしていた。

 そんなある日、ペトラのおねだりでルクスとペトラの2人はウル・ドゥニージャ南東の高原に来ていた。


「手加減なしじゃからな!!」

「一撃当てられたらな!」

「むうー。今日こそ一撃当てるのじゃ!」


 ペトラは精神を統一し呼吸を整える。

 ルクスもペトラの呼吸を計る。


 〈フラマトゥーラ〉

 〈紅威〉


 ペトラは炎をまるでドレスのように纏う。炎はエンジンを蒸かすかのようにパチパチと音を立てている。

 それよりも速くルクスの全身がほんのり紅く染まる。

 ペトラは炎を噴射すると一瞬で距離を詰め、拳を撃ち抜く。

 常人であれば反応すら難しい速度であるが、ルクスは涼しい顔で背面を取るように避ける。

 ペトラはルクスの動きを追うように炎で範囲を拡大しながら裏拳を放つ。

 が、これもルクスは簡単に止めるとペトラを振り回して上空へ高々と投げる。


 〈フィロフラム〉


 投げられたペトラは炎をコントロールし空中でバランスをとると、炎の飛礫(つぶて)をルクスに撃ち下ろす。

 さまざまな軌道を描いて飛んでくる炎の飛礫をルクスはスッテプを踏むように軽やかに回避する。

 炎の飛礫はルクスに当たることなく、地面に着弾し派手な土煙を巻き起こす。


「へ?」


 ルクスは高速でペトラの傍に移動するとペトラのつま先を掴む。そして、力一杯腕を振る。


「にゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~!!」


 空中にいたペトラは高速回転しながら地面へと落下する。

 強烈な土埃とともにペトラは地面に衝突する。


「自分の攻撃で相手を見失ってどうすんだよ」

「魔力感知勝負ならルクスは苦手じゃしいけると思ったんじゃ!」

「なるほど」


 修行に決着がついたタイミングで都合よくギエールとアンキーナが慌てた様子で馬に跨り走ってくる。


「ペトラ~!ルクスく~ん!」


 ギエールに呼ばれたペトラは2人へ向かって走る。

 ギエールは我が子を受け止めようと手を広げるが、ペトラはギエールを素通りし後ろにいたアンキーナに飛びつく。


「また一撃も入れられなかったのじゃ~~!」

「あらあら、そうなんですか」


 アンキーナはペトラの頭を撫でながらルクスへと視線を飛ばす。


「いや、気を遣ったら怒るし……」

「次頑張りましょ!次!」

「うん」

「いや~ペトラがアンキーナを慕ってくれてうれしいよ……うんうん……」


 ギエールは2人が抱き合ってる光景を見ながら自分を納得させるように呟く。


「それで?ペトラのお勉強の時間か?」

「ああ!そうだった!2人とも来てくれ!」

「ええ~。まだルクスと修業していたいのじゃが……」

「そうおっしゃらずに来てください。重要なことなのです」


 ギエールとアンキーナに連れられてルクスとペトラはギエールの書斎に向かう。

 修業を中断されたことでペトラは頬を膨らませて不機嫌を露わにしている。


「それで、改まってどうした?」

「うむ。今しがたペトラ宛に手紙が届いてな、ミラリアム魔道学院からのものだ」

「ミラリアム魔道学院⁉」


 先程まで不機嫌全開であったペトラであったが、ミラリアム魔道学院という言葉に目を光らせる。


「たしか王国唯一の魔法の学校だったよな?」

「そうだ。ミラリアム王国の正式な魔道士となるためにはこの学院の卒業証明が必須。つまり、まずはミラリアム魔道学院に入学しなければならない。

 そして、入学条件も非常に厳しい。年齢制限があり、16歳以上。つまり成人していなければならない。当然だが、魔法の才能も求められる。魔力があるだけでは認められず、既に何かしらの魔法が使えなければならないそうだ」

「魔法は問題ないが、ペトラじゃ年齢が全然足りないだろ?オレでも1年以上あるし」

「どんな内容なんじゃ⁉」

「飛び級試験についてだ」

「「飛び級試験⁉」」


 ルクスは目を細め、ペトラは目を輝かせる。


「ミラリアム魔道学院にはより優秀な魔道士を育てるための特別入学という例外があるそうだ」

「どうすればその特別入学というのができるのじゃ⁉」

「ミラリアム魔道学院側から出される試験を突破すれば、年齢関係なく入れるそうだ。ただ、危険な試験と言わざるを得ない」

「どんな試験なんだ?」

「試験の内容はいくつかあるようだ。魔力量に魔力操作、魔法の性質に魔法の破壊力の試験、それと遠征試験もあるそうだが……一番の目玉は模擬戦だろうな。例年であれば模擬戦はないそうなのだが、今回はミラリアム魔道学院の主席の人との模擬戦によってペトラの実力を測るそうだ」

「主席……どんな人なんじゃ?」

「私は基本領内から出ることがないから詳しくは知らないのだが……。「氷玲帝(ひょうれいてい)」という二つ名で呼ばれている人物で、誰もが振り向く美しさと冷徹さ感じられる圧倒的強さで出会ったら忘れることはできないという噂だ。

 年の頃はルクス君と同じくらいで出生は不明、複数の魔法を使いこなし、その威力も歴代最強クラスではないかという話だ。西海岸にある鳥人(ハーピィ)の町から救援要請が来た時に出向いたそうだが、襲っていた蛸人(オクトロン)のみならず周囲にいた魔物も容赦なく狩りつくしたとか、王国最強の魔道士と謳われているオルクトゥス・プリンシア嬢と模擬戦を行い勝利したとか、どこまで真実かわからない規格外な話が後を絶たない人物だよ」

「要は王国最強の可能性がある奴との模擬戦ってことか」

「難しそうじゃ……」

「ていうか、例年は存在してない試験なんだろ?なんで今回に限ってそんな試験が存在してるんだ?」

「恐らく、単純にペトラが本当に魔法を扱えるのか疑っているのだろう。ペトラの偉業を広めたのはドゥニージャ領の領民やドゥニージャ領に拠点を構える冒険者たちだからな。言わば身内だ。中央からしたらそれでは信用ならんということなのだろう。

 実際は魔法が使えない貴族の子を危険な遠征に行かせて対処できずに亡くなりましたでは、魔道学院側も外野からなんて言われるかわからないからね」

「なるほどなのじゃ」

「それでこの試験、ペトラは受けるか?私としては別に魔道士になるのに急ぐ必要はないし、ペトラが16になるまで入学は待ってもいいと思っているのだが……。どうする?」


 ペトラは少し悩む。


「受けてみたいのじゃが……その試験に合格したらすぐに入学しないとダメなのじゃろうか?1年後とかに入るとかできるじゃろうか?」

「どうしてだい?」

「ルクスと一緒にその~……」


 ペトラの発言にギエールは刺すような視線をルクスに向ける。

 視線に耐えきれずルクスは目を逸らす。

 そんな3人の様子に微笑みながらアンキーナがペトラの質問に返答する。


「入学時期でしたら融通が利くはずですよ。大人ですら難しい試験に合格できる人材を魔道学院がみすみす逃すはずないですから」

「本当か⁉じゃあ挑戦してみたいのじゃ!」


 堅苦しくて退屈な社交儀礼の勉強から逃げることができるとペトラは喜ぶ。


「では、試験受諾の旨を魔道学院側に通達いたします。よろしいですね?」

「うむ!」

「頼む」


 ペトラは小躍りするように書斎を出る。

 そんなペトラに続いてルクスが書斎を出ようとした時、ギエールに呼び止められる。


「ルクス君、ちょっといいかな?」


 ルクスを呼び止めたギエールの顔はいつになく真剣な表情である。

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