表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大罪人もう一度  作者: 御神大河
ゴブリン掃討戦・二つ目の楔
26/36

25.カロン村の悲劇

 部隊長会議が終わりルクスとペトラが宿に戻った後、ドゥカスが冒険者全員を集め全体報告が始まる。

 昼間の戦闘を乗り越えた冒険者たちが眠い目を擦りながら明日の報告を聞く。

 その中には『白妙の光』の姿もあった。


「お帰り、トック。会議どうだった?」

「なんなんすかね?今まで来なくていいの一点張りだったのに、今日になって急に参加しろなんて」

「やはり戦況が芳しくないとかですかね?」

「プロウム草原を預けた援軍が壊滅とかは勘弁すよ」


 『白妙の光』が雑談をしている姿をまるでアイドルを見るかのように遠目から、若い冒険者たちを中心に多くの冒険者がチラ見している。


「ねぇあそこ!アネルお姉さまよ!」

「カッコイイよね~!」

「ああ~、アルメールちゃんと結婚したい」

「俺はエリメールちゃんのペットになりたい!」

「あんな美人3人と一緒にいるトック、マジで許せん!」

「仲間募集してくれないかな~」

「いや、募集しててもお前じゃ無理だろ」


 『白妙の光』は今や冒険者たちから尊敬され憧れられる冒険者チームとなっていた。

 ビギナー級でありながら行商人の護衛依頼はもちろん、公爵からの指名依頼も達成し新人から1年もたたずにレギュラー級冒険者まで駆け上がった前代未聞の冒険者チーム。その強さも折り紙付きで双子の姉のエリメールはドゥニージャ一の弓の名手として評判が高く、妹のアルメールは魔力持ち、さらにアネルもギエール公の依頼達成以降に魔力に目覚めたなどゴブリン掃討戦の冒険者チームの中でも最高戦力であった。

 それだけの成果がありながら横柄にならず誰にでも気さくに声を掛けるため、街民や冒険者仲間からの評判はすこぶる高かった。


「いや、そうじゃなくて……聞いたらたぶん驚くぞ」

「なに?勿体ぶってないで話しなさいよ」


 周囲の冒険者たちは『白妙の光』の会話に聞き耳を立てる。


「全員注目ー!」


 トックが話す前にドゥカスが壇上に立って報告を始めてしまった。


「これから明日の作戦について話す。心して聞くように!皆にも話したと思うが昨日からギエール公から派遣された援軍がゴブリン掃討戦に参加している。そして昨日の戦果だが、プロウム草原のゴブリン掃討が完了した」


 ドゥカスから発せられた内容に場が騒然となる。

 それをファトゥスが黙らせる。


「うるせーぞ!話の途中だ黙って聞け!」

「これを受け、プロウム草原は兵士に任せ、我々冒険者は全部隊を持ってクオダム高原のゴブリンどもを殲滅する」


 冒険者の一人が挙手をする。


「『バラコルヌ』のリーダー、ハイドです。質問よろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「今の説明だとトラン道は援軍に任せるということですよね?援軍について具体的に教えてもらいたいのですが」

「いいだろう。援軍に来たのは魔道士殿だ。そこで明日はビギナー級の1チームには魔道士殿のサポートをしてもらうことになる」

「「魔道士⁉」」


 魔道士という言葉に再びがざわつく。

 魔道士に心当たりのある『白妙の光』のメンバーはトックを見る。


「何名ですか?サポートであるならば人数は重要ですよね?」

「2人だ」

「「2人⁉」」


 本日3度目のざわつき。


「たった2人だと⁉」

「2人だけで百近いゴブリンをたった1日で殲滅したのか……」

「どちらが化け物かわからんな」

「静かに!1チーム魔道士殿のサポートに入ってもらう。やる気のあるものは?」


 一斉に手が3本挙がる。

 手を挙げたのはアネル、エリメール、アルメールであった。

 トックとドゥカスが同時に頭を抱える。


「お前らはダメだ!というかビギナー級だと言っただろ」

「みんな乗り気じゃないみたいだしいいじゃないですか!」

「そうっすよ!」

「お前たちが手を挙げたから他に手が上がらんのだろ!……あーサポートと言っても大したことはないぞ!先方からは特に何もしなくていいと言われているからな。実際ゴブリン数百体に楽勝できる奴らだ、世界一簡単な護衛だとでも思ってくれ!」


 しかし、手が挙がらない。

 『白妙の光』のメンバーが勢いよく手を挙げたことでほぼ全てのビギナー級冒険者が委縮してしまっていた。


「誰かやれよ」

「『白妙の光』が手挙げった案件だぞ。無理に決まってんだろ」

「そんなにヤバいのか?」

「『白妙の光』と言や、ビギナー級の最初の任務でいきなり公爵様の依頼と護衛の依頼を同時にやらせろ!ってマスターに直訴したって話だぞ。それが勢いよく手を上げる案件がまともなわけねーだろ!」

「しかも道中で野盗を皆殺しにしたって!」

「いや、腸を引きずりながらギルドに差し出したって聞いたぞ!」

「どっちにしろやべーよ」


 冒険者たちが押し付け合っているとレギュラー級冒険者から質問が飛ぶ。


「魔道士は化け物級に強いのでしょ?護衛なんているの?」

「あー、護衛というか斥候と道案内だ。両名とも土地勘がなくてな。その辺のサポートをしてやって欲しいんだ」

「なら、レンジャー系の方がいいてことね。サッサと誰か出なさい!」


 すると、ハイドが手を挙げた。


「『バラコルヌ』か、決まりだ!では、『バラコルヌ』は明日北門で魔道士と合流してくれ、その他の者は早朝西門からゴブリンどもを掃討する!『バラコルヌ』は少し残ってくれ。以上解散!」


 全体報告が終わると『バラコルヌ』はドゥカスの下へ向かう。


「名乗り出てくれた助かった」

「いえ、斥候なら俺らのチームが適任ですから。……それに戦闘ではあまり役に立ててませんし……」

「得意なことがあるってのはいいことだ。それに戦闘は経験とともに身についてくる。お前たちはこれからだよ」


 一方、トックはチームメンバーに詰められていた。


「援軍に来てるの師匠ですよね?」

「なんで黙ってたんすか?」

「待ってくれ!俺もついさっき知ったんだよ!」

「で?もう一人は誰?」

「へ?」

「2人って言ってたわよね?もう一人は?どこの誰?」


 トックは目が笑っていない笑顔を浮かべるアネルとアルメールと対照的に蒼い顔になる。


「待て待て!絶対ダメだからな!マジでヤバいから!」


 トックは声を落とす。


「ルクスと一緒にいるの公爵令嬢様だから!失礼働いたら俺たちこの辺で生きていけなくなるから!」

「こっ──⁉」


 驚きから大声を出しそうになる『白妙の光』のメンバーをトックは全力のジェスチャーで黙らせる。


「なんで公爵様のご令嬢が戦場に出てくんのよ!」

「でかい問題だしここはやっぱ公爵様も領民にいいかっこをお見せになりたいと思うだろ?そしたらほら、ご令嬢が魔道士であられる。当然、ご令嬢様が戦地に赴くわな。ということは護衛がいるわけよ!そこで抜擢されたのが、公爵様とも面識のあるルクスってわけだ!だからまあ……その~、親密ではない可能性もな……」

「本当でしょうね、それ?」

「…いや……あくまで予想であって、その~詳しくはこの戦いが終わった後にルクスから直接聞いて欲しいというか……」

「とっとゴブリン片づけるよ!」

「そうですね!」


 トックの精一杯のフォローも虚しく、アネルとアルメールは宿へと帰っていく。


「これ俺が悪いの?」

「ノーコメントっす」

「ええ……」


 決戦前の夜がゆっくりと過ぎてゆく。



 翌朝、普段手ぶらのルクスが腰に布袋を身に付けている。


「そんなもの持っとったか?」

「ギエール公からお金を貰ったから、昨日の夜に買ったんだ」

「ワシ貰ってないのじゃが⁉」

「経費だよ。経費。遊ぶお金じゃないぞ」

「な~んじゃ」


 2人ともリラックスとした雰囲気で北門へと向かう。


「ほ、本日はよろしくお願いします!」


 ルクスとペトラが待ち合わせ場所に着くとルクスより少し年上で構成された冒険者チームが待っていた。

 男子4人女子2人の6人組である。


「ワシはペトラ!こっちはルクスじゃ!こちらこそよろしく頼むのじゃ!」


 結局朝までに帯纏を修得できずに不機嫌だったペトラは、挨拶されると同時に即座に笑顔を作って応対する。

 ペトラの笑顔に男子4人はハートを撃ち抜かれ、見惚れている。

 そんな男子たちに呆れながら、女の子が全員の自己紹介をする。


「私たちは『バラコルヌ』という冒険者チームで、私はミーナと言います。こっちはナティア。ダンダ。ブラマ。ニッシュ。そしてリーダーのハイドです。今回は斥候役として任命されました。ビギナー級ですが、足だけは引っ張らないように頑張ります」」

「よろしく。ところで、トラン道のゴブリンってどういう状態なんだ?門を出てすぐ襲われることもあるのか?」


 ルクスもペトラに倣って笑顔を作ると優しく質問する。

 ルクスに笑顔を向けられミーナも男子同様固くなってしまう。


「い、いえ、ここまで攻め込まれていたのですが、昨日人数が増えたことで攻勢に出れまして、トラン道の先に本来関所の役割も果たしていたカノロという村があるのですが、そこが現在ゴブリンの拠点になっていると思われます」

「キミらはゴブリン相手にどれくらい戦えるんだ?」

「みんな1対1なら勝てるかと……」

「なるほど……。じゃあ行こうか」


 トラン道は道と呼ばれているが、馬車などが通りやすいように土を踏み固めただけにすぎず、周囲は草木が生い茂っている。

 ルクスたちは周囲を警戒しながら、カロン村を目指す。

 突如、右手から連鎖するようにゴブリンの不快な声が響き渡る。


「な、なんじゃ⁉」

「気を付けてください!おそらく何かの合図です!」


 ハイドたちはルクスとペトラを守るように囲む。

 しかし、何も起こらない。


「……ルクス?」

「気を抜くなよ」


 いつまでもこのまま警戒して立ち往生というわけにもいかず、ルクスたちは再びカロン村へ歩き始める。

 『バラコルヌ』もここで逃げる訳にはいかず、全身に冷や汗をかきながらついてゆく。

 暫くすると思わず顔を顰めてしまう悪臭に襲われ、全員が鼻を押さえる。


「なんじゃこの匂い」

「あまり嗅がない方がいいんじゃ?」


 悪臭に見舞われても任務達成のためには引き返すわけにはいかない。

 ルクスたちは苦い顔をしながら歩を進める。

 カロン村に着いたルクスたちは辺りを見回す。


「どうなってんだ?」


 カロン村はもぬけの殻であり、ゴブリンたちの姿がない。

 だが、村は見るに堪えない状態であった。

 村の家々は破壊しつくされ、大量の血痕と引きずられた痕跡が残っている。

 引きずられた痕跡の先は2ヶ所。

 1ヶ所は村の外へ。もう1ヶ所は村の隅へと続いている。

 その村の隅には食いちぎられ苦悶の表情を浮かべる村民がゴブリンの排便とともに無残に放置されていた。


「不快じゃな」

「くっそ」


 ペトラが噴き出そうになる怒りと魔力を押し殺しながら、静かに呟く。

 ハイドも怒りを吐き捨てると死体に手を合わせる。

 ミーナとダンダ、ニッシュは悲惨な光景に耐えきれず吐いてしまった。

 ルクスは食い捨てられた死体にしゃがんで手を伸ばす。


「ルクス?」

「な、なにしてるんですか⁉」

「冷たくなっているが血はまだ乾いてない。恐らくさっきの合図でここにいた奴ら全員が移動したな」

「ならまだこの近くに⁉」

「もしかして囲まれた⁉」


 『バラコルヌ』は周囲を見回す。


「それはないだろうな。仮に罠を張るなら絶対に立ち寄るであろうこの村が最適だ。そして罠を張っているのだとしたらオレたちが村を見回る間を与えるわけがない。この村は捨てたんだろう」

「逃げた?」

「なんで逃げんだよ?」

「ペトラ様たちがいるからじゃ……?だって昨日もの凄い損害を与えたんだし……」

「ルクス、どうするのじゃ?」


 ルクスは少しだけ悩む。


「ゴブリンの声は全て右方向から聞こえた。つまりクオダム高原の方へ向かった可能性がある」

「やばいんじゃないですか⁉」

「クオダム高原で総力戦になっただけだ。それに1か所に固まってくれた方がこちらとしても都合がいい」

「早く向かうのじゃ!」


 ルクスたちはゴブリンを追ってクオダム高原へと移動する。



 クオダム高原は冒険者とゴブリンによる戦闘が行われていた。

 戦力を集中させたことにより数で勝る冒険者たちが押してはいるものの、ゴブリンの数はあまり減らせていない。


「ちょこまかと逃げ回りやがって!昨日までの威勢はどうした!」

「ファトゥスさんに続け—!」


 ゴブリンたちは自分たちに有利な隠れることのできる茂みを捨て、トラン道沿いの林へと走る。

 これまでと明らかに勢いの違うゴブリンの様子にドゥカスは違和感を覚える。


「先頭!突っ込み過ぎだ!罠かもしれん!」

「弱腰こいてんじゃねーぞ、ドゥカス!向こうに勢いのない今、数減らさなくてどうすんだ!」

「今回はあいつの言う通りだわ!罠に怯えてたらいつまでたっても掃討なんてできないわ!」

「おい!エミーナ!」


 自分たちが優勢と見たレギュラー級冒険者は獲物を刈り取るために加速する。

 だが、戦場慣れしていないビギナー級冒険者はその速度感について行けていない。

 隊列がレギュラー級とビギナー級で2分割されそうになる。


「ドゥカスさん!」

「トック!先頭の奴らに速度を落とすように言ってくれ!このままだと隊列がちぎれる!」

「逆にビギナーを急がせてください!罠であっても逃がすわけにはいかない!そうでしょ!隊列の間は俺らが繋ぎます」

「くっそ!全員走れー!」


 動き出しが遅れたことにより、隊列は完全に伸び切ってしまっている。

 しかし、林に足を踏み込んですぐ先頭の冒険者たちが止まり、隊列が縮む。


「どうし──⁉何だこの数……」


 突如、ゴブリンの数が倍以上に膨れ上がった。

 さっきまでいなかったホブゴブリンも揃っている。


「横へ隊列を広げろ!」

「ギィヤアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


 同時に指示が飛ぶと正面からぶつかる。

 だが、今度は数で負けている上に、隊列が伸び切ってしまったために陣形をうまく組めない冒険者の方が旗色が悪い。

 ゴブリンたちは先頭の孤立した冒険者たちを的確に狩ってゆく。

 冒険者たちは隊列を組んで互いの背中を守る形を取ろうとするが、木が邪魔して隙間を上手く埋められない。前線が押し込まれ、その間をゴブリンたちが抜けてくる。

 抜けてきたゴブリンが前線の背後を取る隙を与えず、後方で構える冒険者たちが相手をする。なんとか隊を維持しているが長くは持たない。


「うわああああああああぁぁぁぁぁぁっぁぁ!」


 ホブゴブリンが隊を組んで攻撃してきたことで前線の一部が完全に崩壊する。

 ゴブリンたちは女性冒険者の足を折り、男性冒険者のみを的確に殺す。

 その意味を知るビギナー級冒険者たちは未来を想像しパニックになってしまう。


「エリメール!」

「わかってるっすよ!」


 放たれた矢が次々にゴブリンの脳天を射抜く。

 アルメールがホブゴブリン目掛けて地面を蹴る。

 向かってくるアルメールに対しホブゴブリンは棍棒を振り下ろす。


 ッズッパンッ


 棍棒を振り下ろしたホブゴブリンの頭が高速で奔る鞭によって弾け飛ぶ。

 同時に、その横にいたホブゴブリンの上半身もアルメールの拳によって吹き飛ばされていた。


「林の中は不利だ!クオダム高原まで下がれー!ビギナー級は負傷者に手を貸してやれ!フェミナ、後方集団を任せる!」

「了解!」


 ドゥカスの指示で隊がゆっくりと後退を始める。

 その流れに逆らってトックとドゥカスが前線に躍り出る。


「ファトゥスさん!エミーナさん!もう少し踏ん張れますか⁉隊を一度クオダム高原まで退がらせます!」

「貧乏くじじゃない⁉」

「うるせー!こいつは突っ走った奴の責任だろ!」


 前線の踏ん張りにより、冒険者たちはクオダム高原への撤退を完了させる。

 しかし、ここからが本番である。

 ゴブリンたちの方が数も士気も上である。

『白妙の光』や『フィールムベイス』が何とか数を減らすものの冒険者側も人数が減り続け、このまま速度でお互い数が減れば先に尽きるのは冒険者の方であった。

 旗色の悪さを察した何人かの冒険者たちは背中を見せて逃げ始めてしまった。

 一人が逃げ始めるとその流れはそうそう止められない。冒険者の部隊は壊滅していた。


「……まずいな」

「ウソでしょ!ここで逃げるとか冗談よね!」

「文句言ってもしょうがねーだろ!実際レギュラー級冒険者の俺たちがこのざまなんだから!」


 ルクスたちがゴブリンに追いついたのは、冒険者の部隊が崩壊している只中であった。

 林から全体を見渡せるルクスたちからであれば、冒険者の劣勢は火を見るより明らかである。


「うそ……負けてるの?」

「ヤバいのでは?」

「ぼさっとすな!早く助けに行くのじゃ!」

「待て待て待て」


 慌てて助太刀に入ろうとするペトラと『バラコルヌ』をルクスが止める。


「なんじゃ!早くせんと!」

「お前らが今の戦場にふわーっと出て行ってどうにかなるのか?」

「ルクスなら助けられるじゃろ!」

「どうすればいいですか⁉」


 ハイドの発言によりペトラは自分がルクスに頼りきりであることに気が付き目線が落ちる。


「士気を上げて逃げ腰の冒険者に喝を入れてやらねーとこの流れはどうにもならない。えーと…『バラコルヌ』だっけ?お前たちは戦場に散って一斉にゴブリンから冒険者を引き離せ、ゴブリンの群れにペトラの魔法を叩き込む。それとこの辺にいるから『白妙の光』を呼んできてくれるか?」

「「了解です!」」


 重要な役目に深く深呼吸すると目を開く。『バラコルヌ』の目には強い闘士の火が宿っている。


「ハイド。こいつを渡しとく」


 ルクスが手渡したのは、野球ボールほどの大きさの球体。球体には一周するようにロックがかかっている。


「なんですかこれ?」

「オレお手製の音爆弾だ。全体がゴブリンから離れ始めたら、このロックを外してゴブリン目掛けて投げろ。ただ、あまり乱暴に扱うなよ!ロックが外れて手元で破裂するから」

「あの~音爆弾って?」

「使ってみたらわかる」


 ハイドがルクスから音爆弾を受け取ると、『バラコルヌ』は戦場に向かって走り出す。


「ペトラ。巻き込むかもとか思って加減する必要はない。助からない1人に手を差し伸べるとそれ以上の人数の手が滑り抜けるぞ。それと一時的にペトラを『白妙の光』の奴らに預ける。冒険者の中では強い方だ心配はない」

「どういうことじゃ!」


 ルクスはペトラの口に指をあて黙らせると淡々と説明する。


「カロン村での死体、男ばかりだった。恐らく女は別の場所へ攫われてる。そこへ向かう」

「じゃったらワシも──!」

「ペトラ!何が待っているのかオレも予想できない。そんな場所に今のペトラは連れていけない」

「ワシは足手纏い?」

「ああ」

「……そうか……気を付けるのじゃぞ!」

「お互いにな」


 ペトラは悔しい気持ちを飲み込み、両手の間に火球を生み出すと魔力を込める。

 膨張を抑えるように魔力を注ぎ続けることで、ペトラの火球は徐々に白い炎が混じりまるで黄金のように輝きを放つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ